青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

2017-08-05 205 地政学プラス地経学の時代

国際政治では覇権国の役割で中国共産党が狡猾に米国にとって代わろうとしていますし、産業面では規模が最大の自動車産業で大変化が進行中です。内向きな日本のテレビや新聞の低俗報道は日本を悪くするだけです。惑わされずに判断していく必要があります。

 国際政治学者の中西輝政氏がWILL 2017.9月号で「米合衆国覇権の海洋の世紀から、ユーラシア・ヨーロッパ大陸の国々が経済的に結びつく大陸の世紀へと移りつつあり、対馬海峡英仏海峡が世界の大地溝帯になりつつあります。・・・軍事力を背景に覇権を持つ地政学の時代から、今は経済的手段を用いて地政学的な目的を達成しようとする地経学の時代に入っています。」と寄稿していましたが、筆者/青草新吾も同感です。欧州では、独連邦の国力が図抜けた存在となり、仏は何とか対等な立場を維持しようと懸命です。マクロン新大統領の最初の訪問先がベルリンではなくモスクワだったというのが象徴的です。英連合王国は、既に独連邦が盟主となった欧州連合からの離脱(EU離脱)を決め、米合衆国との関係を重視していく方向です。欧州の歴史は、英仏が連合し、仏がさらにロシアと提携し、独連邦と対峙してきた歴史です。二度の世界大戦は米合衆国を巻き込むことで独連邦を戦争では負かしてきました。しかし戦後はやはり独連邦の経済発展が図抜けており、「独連邦を抑え込みながらの平和共存策として欧州連合」に進んできたわけです。ところが英仏の思惑とは裏腹に独連邦の経済力が図抜けたことで、今や独連邦が欧州連合の盟主になっています。その独連邦は、こともあろうに中国共産党との連携で経済力を高めてきています。例えば独フォルクスワーゲンの販売は、チャイナは欧州全体と同じ4割を占め、自国(独連邦)の5-6倍の販売規模です。
 日本はどうすべきか? 歴史から学ぶことは? 120年前にアジアで独立を保っていたのは日本と泰王国だけでした。当時の泰王国のラーマ5世は「アジアの独立国同士の応援も兼ねて、明治33(1900)年に仏教開祖釈迦の遺骨真舎利を日本国民に寄贈」され、名古屋の日泰寺・泰安塔に安置されています。筆者/青草新吾もタイ人スタッフを伴い訪問したことがあります、明治日本の多極世界でのサバイバルは、明治人の優れた適応力のお蔭でした。つい昨日まではサムライだった方々が公の精神を発揮して頑張ってくれたからです。しかし体制が固まり学校秀才・勉強エリートが、例えば海軍のハンモックナンバー(海軍兵学校の卒業席次)のように、学歴と卒業席次でそのまま出世してしまう社会になってしまって昭和の迷路に入り込み、日英同盟を破棄して、あろうことかナチスドイツと組んだために、ナチスドイツと重ねられた日本のイメージが悪用され、今でも韓国や中国共産党反日ネガティブキャンペーンのネタにされ続けています。朝日新聞の執拗な捏造報道に端を発する慰安婦問題では「慰安婦を性奴隷に言い換え」たり、毎日新聞報道に端を発したであろう南京虐殺でもねつ造で誇張され続けたり、最近でも長崎軍艦島が地獄のような強制収容所だったりとかの捏造が行われ韓国で史実として映画化されたり・・・ヘタレ外務省の無作為やリベラルな自民党宏池会の言動(例えば河野談話)が悪用されるばかりです。
 日本としては、今形成されつつあるユーラシア枢軸(独連邦・中国共産党・ロシア)ともうまく付き合っていくことに努力しながらも、海洋国連合で、法治主義に基づく自由主義民主主義を原理とする米・英・豪や近隣の台湾や比国(フィリピン)と環太平洋経済圏を形成していくのがよいと思います。環太平洋から東南アジアさらにインド洋の印度へと繋がっていきます。朝鮮半島には深入りせず距离を置いた付き合いが良いと思います。北朝鮮の拉致犯罪許すべからずです。・・・経済面ではやはり強い製造業を維持していくことに努力すべきです。世間知らずの学者や評論家の無責任な評論と異なり、世界の現実は「製造業が強い国豊かであり続ける」です。米国は製造業・農業・エネルギーがすべて世界一です。これに1990s以降にITと金融が加わり、米国の経済の強さは揺るぎません。米合衆国よりも人口規模が小さな日本と独連邦は製造業の比率が高いのが特徴です。常葉大学教授の山本隆三氏が「日本の産業で圧倒的稼ぐ力を持っているのは製造業だ。製造業の一人当たり付加価値額は全産業平均よりも大きく、付加価値額から支払われる給与も産業平均を上回る495万円だ。製造業の稼ぎにより周辺のサービス業にもお金が回る。・・・その製造業の足を引っ張るのが電気料金だ。独連邦の輸出産業に属する製造業の会社は、再生エネルギー新興のためのFIT(Feed-In Tariff 再生エネルギー高価買取制度)の負担を免除され、輸出産業の電気料金は日本の半額程度である。導入決定者の民主党・菅元首相や反原発の小泉元首相には責任を感じて欲しい。」という指摘は参考になります。
 今にして思えば、2001年が歴史の流れの転換点だったような気がします。9.11のテロ12.11のチャイナWTO加盟が同時並行でした。2008年のリーマンショック頃になると、チャイナの覇権国化と米合衆国の没落が明確に浮かび上がってきました。それにしても不甲斐ないのが日本の政治とメディアの体たらくです。政治の面では、自民党は分解して、地方分権の小さな政府の保守メンバーと維新が合同し、リベラルメンバーは民進党あたりと合同して保守とリベラルの二大政党を形成すべきです。米国で言えば共和党民主党です。現実はというと、自民党は保守といいながらもリベラル色が強く、野党といえばリベラルというよりも左翼政党ばかりです。日本国民にとっての不幸は、自民党がまっとうな保守政党でないことです。今の安倍首相で困るのは、言動は保守ですが実際の政策は社会主義大きな政府のようでリベラル色が強いことです。世界の主要な政治家と比較すると安倍さんは中道左派ではないでしょうか? それでも今の自民党政治家の中で比較する限りではやはり安倍さんがベターな存在といえます。最悪なのは民進党です。かっての社会党と同じで、政権党を引きずりおろせば、自動的に自党に票が集まるような勘違いをしているようです。アホとしかいいようがありません。
  メディアの問題は、やはり朝日新聞です。日本国民に対する背信行為は許されません。「朝日新聞慰安婦強制連行の報道誤報だった、よって朝日新聞の報道を根拠にした日本非難はあたりません。」と、韓国や米国そして欧州で訂正報道を行う義務があるはずです。国連を含めて訂正報道して回るべきです。朝日新聞誤報(実は意図的な捏造?)と日本国民に対する背信行為で、日本国の歴史が歪められ、国際的な信用を失墜し、どれほどの経済的な損失も強いられてきたことか・・。本日の産経新聞2017.8.6付で「国連ユネスコ記憶遺産に対し、中韓慰安婦(性奴隷)の記憶資産登録で申請した英国の帝国戦争博物館の資料30点が判明したが、内容は強制連行したり性奴隷であったりしたことを示す資料はなく、逆に慰安婦が戦地における公娼の役割を果たしていることが示してあったりで、中韓の申請を裏付ける資料見当たらない」そうです。同紙で高橋史郎・明星大特別教授は「申請資料は日本軍が管理した公娼であったことを示すが、中韓の申請は”日本軍が女性や少女を性奴隷に強要し、奴隷制度を設立・運営した”であり、公娼制を示す資料まで性奴隷の資料として世界で定着してしまう。」と日本政府の無為無策を嘆いています。・・・しかし日本語の資料誤りは日本から発信しないと資料の妥当性や適切性に問題があることさえ分りません。ここまでねつ造話を世界に流布した朝日新聞の責任は極悪犯罪並みに大きい。朝日新聞は罪滅ぼしで世界に向けて誤報訂正を繰り返し発信すべきです。
  手前どもビジネスマンは、日本人の公の精神を大切にしながら、武士道と商人道の心意気で、イノベーションを推進し、付加価値を生み出し、まずはこの日本国を国民がより幸福に生活できる国に改善し、そのうえで周辺諸国や国際社会のお役に立っていく努力をしていかねばなりません。久方ぶりにブログに参加しました。次回は、安倍政権が音頭をとる働き方改革や、会社のガバナンス改革などに触れてみたいと考えてます。
  



 

2017-01-21 204. トランプ時代のデフレ脱却と自動車ロボット産業

本日のトランプ大統領就任に象徴される大転換の一つは、アジア太平洋の時代の幕開けともいえます。生産財がおりなす最終製品で、ロボット分野は「米国を含むアジア太平洋が世界需要の過半を占める」ことになりそうです。またロボットメーカーの乱立が予想されるチャイナ(支那/中国)には中間財の供給が有望です。

国民全体がある程度豊かになるためには「稼ぐ力を高める」ことが必要です。競争力の高い財サービスに移行し、労働が生み出す付加価値に対する適正な分配で、従業員が消費者として消費活動をより活発化することで循環が生まれます。個人会社地域国家稼ぐ力を高めていく必要があります。個人や会社の生産性を高めながら、役所政治家による税金の無駄遣い無駄ドリを進めるには構造改革規制緩和が必要です。個人の生産性や所得を高める働き方改革や、次世代への貧困の連鎖を断ち切るひとり親など貧困家庭の子ども支援も必要です。

生産財営業の観点からは、最終製品の次世代自動車ロボットに多くのビジネスチャンスを見出せそうです。自動車産業では、1百年ぶりの大転換が始まっています。パワートレインの電動化に加えて、自動運転やインターネット利用で、ADAS(Advanced Driver Assistance System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)といったイノベーションから様々な派生需要が生まれてきます。
ロボット産業も、産業用ロボットに続いて様々なサービスロボットの市場投入の動きが活発になってきています。JEITAが2016.12に発表した需要予測を電波新聞2017.1.10付が紹介していました。産業用ロボットに加えて、これから実用化が始める「非産業用のサービスロボット」は、4種の需要、より具体的にはa.コミュニケーションロボット、b.業務支援ロボット、c.介護ロボット、d.掃除ロボット、が伸びていくようです。産業用ロボットを含めた「ロボット5種」の世界重要が、15年実績1.7兆円が、25年には38.5兆円へと、年平均成長率36.6%もの重要拡大の見通しが立つそうです。その内訳ですが2025年時点で、aのコミュニケーションロボット20.2兆円へと年平均で76.9%、bの業務支援ロボット7.0兆円へと85.1%もの需要拡大が見込めるそうです。この段階の向け先は、FAインフラ向け270千台、公共ビジネス向け24.8百万台、個人向け34.2百万台、医療介護向け7.0百万台、農業向け2.0百万台。・・・地域別では日本とアジア太平洋31%(内訳で日本が12%)、米州25%、中国20%、欧州24%、ということです。TPPとかぶりますが、米国を含めた広義のアジア太平洋(米国・日本・その他)で括ると過半の56%です。日本にとっては「アジア太平洋という括り」がとても大切で「国別では米合衆国」がきわめて重要です。チャイナについては、最終製品よりも高級部材やデバイスといった中間財が有望です。スマホの市場では、華偽(Huawei)や小米(Xiaomi)のようなグローバル志向の会社は日本製のデバイスや材料を多用しています。ロボットでも同様と見込みます。日本の国民経済の強みは産業集積と素材・部材・デバイスです。

日本にとって「米国とアジア太平洋」の重要性が高まります。その米国にとって「日本の存在価値」は「アジアで米合衆国の国益を維持していくための足掛かり」といえます。「民主党のリベラル国際主義」であろうと、「共和党の内政優先・対外不干渉主義」であろうと、米合衆国の勢力圏は「アジア太平洋米州」というのは変わりません。米国のアジア太平洋への関わりを理解するには、史料で裏付けられた「事実としての歴史」を知る必要があります。米にとって、アジア太平洋は自国の勢力圏です。
米の星条旗州の数を記していますが、米東部の「13植民地がそのまま13共和国」となり、さらにこれら13共和国が連邦を組んで「連邦政府に外交権、徴税権、徴兵権を委譲した1789年の合衆国憲法」からは13州(13 states)となりました。独立当時の13州が今は50州へと増えています。本国の「王権から離脱して共和国を建国」し「資本主義を発展させた」という点では「独立革命は1789年の仏革命と比肩」します。・・・・米の州の増加領土拡大は、1803年の仏からのルイジアナ買収1812年米英戦争を経て、先住民が英国を支援したことを口実に次々に先住民から領土を収奪していきました。先住民だったインディアンの方々から食料のとうもろこしを教えてもらうなどの世話になりながら、反面では西部開拓と称して侵略(中国共産党チベット侵攻とそっくり)を続けました。・・・1819年に西(スペイン)からフロリダを買収し、1823年にはモンロー主義(勢力範囲特定による相互不干渉主義)を発表します。モンロー主義とは「勢力範囲の相互不干渉」を意味します。一国主義とか孤立主義は誤訳です。当時はナポレオン戦争後で、勢力を盛り返した欧州諸国が中米(ラテンアメリカ)に介入しようとするのを牽制・遮断するためでした。・・・・1845年にはスペイン領だったテキサスで、入植者が独立運動を起こした上で、併合(ロシアのクリミア併合そっくりです)し、隣国メキシコとは米墨戦争へと持ち込み、1848年に加(カリフォルニア)州など買収形態で獲得。・・・米で西武開拓史と称する歴史を経て、西海岸に到達。以降、19世紀後半頃から「太平洋への対外拡張」へと進んでいきます。ラテンアメリカに続く勢力圏として狙いを定めたのが「アジア太平洋」です。今の米合衆国はこの延長線上です。1823年からのモンロー主義(勢力範囲特定による相互不干渉主義)は「誤訳(孤立主義)のままだと米の外交を理解できず」となります。本日、日本時間2017.1.21未明に就任したトランプ第45代米大統領の場合の発言も「勢力圏内の内政重視・勢力圏外に対外不干渉主義」と訳すべきと感じます。孤立主義は誤訳です。
アジア太平洋への拡張の最初は1853年以降のペリー艦隊の派遣です。チャイナ(支那/中国)との貿易の中継港を確保するのが目的でした。1898年にはキューバをめぐって米西戦争が起こりますが、最大の戦闘地域は太平洋の比国でした。カリブ海ではありませんでした。モンロー主義を発した共和党、当時のマッキンリー大統領や後の大統領となるセオドアローズヴェルトは、太平洋では実に活発な拡張主義でした。同じ1898年にはハワイ王国併呑を行い、加(カリフォルニア)州からハワイ経由マニラ太平洋の兵站がつながりました。
1905年には日露戦争和平を仲介したものの、日本が露から入手した南満州鉄道利権折半で失敗。日本に要求したものの、日本が反発しました。以降、チャイナ(支那/中国)の利権をめぐって日本との利害衝突が始まります。・・・それでも共和党フーバー第31代大統領までは、共産主義との対決を重視して日本との協力を模索していましたが、第32代大統領をめぐる1933年米大統領で、チャイナ(支那/中国)と協調して日本叩きを優先した民主党Fローズヴェルトが当選したことで、日米対決が加速されて太平洋戦争へと流れていきました。・・・太平洋戦争後、米民主党政権にとっては、チャイナ(支那/中国)の利権を独占できると踏んでいたようですがチャイナ(支那/中国)の共産化で思惑は見事に外れました。「米国というのは敵を見誤ることがよくおこる国」です。・・・冷戦終結90年代半ば以降、トゥ小平(Deng Xiaoping)の経済開放政策でチャイナ(支那/中国)の経済が活況を呈しだしたところで「米証券会社は中国株の急伸を演出して膨大な利益を手にした」ものと推察できます。このタイミングで自動車の「GMも進出」し、今では販売台数が中国で約4百万台弱と、米本土の販売台数約3百万台強を凌ぐようになってきています。・・・そのチャイナ(支那/中国)でも不安定さ不確実性が高まり、米国発のリベラル国際主義衰退が始まったとなると、日本にとってのチャンスが増えます。このチャンスを生かすには、政治家や官僚の「世界とのコミュニケーション能力」なかんづく「米国世論への働きかけ」が重要です。

失われた20年間で「主要先進国の中で日本だけが底ばい」でした。国民の一人当り平均賃金は、過去四半世紀もの間、先進国が2倍前後に伸びた中で、日本だけが底ばいでした。消費者物価も同様でした。・・・過去1百年間の米国発リベラル国際主義最大の経済的受益者チャイナ(支那/中国)だったといえます。その米国発リベラル国際主義衰退しだしたことで、日本には追い風が吹きやすくなってきました。この潮の流れ変化を活かすためにも、日本の政治家は「米国への“親日世論形成”にもっと努力」すべきです。・・・歴史に学ぶとすれば「日本の政治家・官僚は世界と対話するコミュニケーション能力が足らない」ので、いつも日本は後手に追い込まれ日本国民へのとばっちりとなります。
戦前の日米はともに1933年ロンドン世界経済会議(64カ国)までは「ブロック経済に反対し自由貿易を主張」で共同歩調でした。がしかし、同年の第32代米大統領民主党のFローズヴェルトが当選し、潮の流れがニューディール政策を経てリベラル国際主義へと大きく変わりました。・・・ブロック経済形成に方向転換します。当時の日本は今以上に米国への貿易依存度が高かったようですから致命的でした。・・・日本の政治家・官僚は戦前も今も世界と対話するコミュニケーション能力が足りません。例えば満州事変では、「契約したら日本の主張世界に広めてあげます」との売り込みで広告会社セールスパーソン日本大使館に殺到した際に、当時の出淵勝次大使は「日本は下品な宣伝活動などやらない」と追い払ったそうです。一方で、中華民国大使館はその逆でどんどん契約していったといいます。数か月後ジュネーブ会議(1931.11)あたりからは日本の孤立目立ち始めたそうです。戦前のギャラップ調査の米国世論は「対日2%対チャイナ76%」ということだったそうですから、既に「対米情報戦日本は負け孤立していた」といえます。

米合衆国は、前頁203で前述の通り、民主党のFローズヴェルト第32代米大統領の下に集まったニューディーラー以降のリベラル国際主義行き過ぎに対する自浄作用で、共和党トランプ第45代大統領登場してしまいました。米中西部ハートランドラストベルトといわれる本流アメリカ意識の方々が「リベラル行き過ぎ反対」をつきつけた結果のようです。ですからポリティカルコレクトネス(PC/偏見や差別が含まれない言葉)に名を借りたリベラル主導の言論統制行き過ぎも正常化されていくと期待できます。・・・ただしグローバリズムについては、手前どもビジネスマンはもっと正確に分解して理解しておく必要があります。・・・自由貿易は、経済合理性を高めて消費面で人々の生活を豊かにしていると思います。・・・問題なのは「無国籍金融人の移動」です。実体経済からかけ離れたマネーが自由に国境を越えて移動するのは弊害が大きいから規制やむなしです。人の移動も然りです。
政治外交しっかりしてこそ民間の経済活動持続的に発展できますから、内弁慶が多い日本の政治家や官僚の諸氏には是非とも頑張って欲しいところです。テレビや新聞、特に朝日新聞毎日新聞NHKなどは政治色が濃い活動家のプロパガンダのような報道は差し控えて、読者が判断するため事実の報道に努めて欲しいところです。手前どもビジネスパーソンは「より価値が高い仕事の創出」にまい進していかねばなりません。

2016-12-30 203.米国トランプ大統領登場のリスクと機会

1920年以降の国際政治の二大潮流(共産主義とリベラル国際主義)のスパイラル変化で、ロシア革命(1905-17)以降の共産主義ソ連崩壊(1991.12)で過去のものとなり、共和党のフーヴァー大統領を破った民主党のFローズヴェルト大統領(1933-)以降に猛威をふるってきたリベラル国際主義も、今回のトランプ大統領選出(2016.11、共和党)で巻き戻しが始まりました。2017年は革命を意味する辛酉(かのととり)の年にふさわしい1百年ぶりの歴史の大転換が始まりそうです。

米国の第45代大統領選(2016.2-11.10)は、筆者/青草新吾も201[2016.7.31 英国のEU離脱と米国の大統領選 ニッポンこれから]で指摘した「メディア偏向報道情報操作」がいかにでたらめで酷いものであるかを実証できるよい機会となりました。日本でトランプ大統領可能性を予見できていたのは、木村太郎氏(ジャーナリスト)や、渡辺惣樹氏(日米近現代史研究家)、高山眞知子氏(江戸川大学名誉教授)など、実際に多様な米国の現実のありのまま、特にハートランドアメリをご存じの方々でした。ニューヨークやロスに時々訪れるくらいの「したり顔で米国通ぶる評論家」の方々の偏見や先入観たるや酷いものでした。・・・VOICE 2017.1で渡辺惣樹氏は「今回の大統領選でメディアの中立性を担保していたのはFOX系メディアだけだった。米国主要ネットワークすべてが反トランプで、特に酷かったのがCNNに登場するジャーナリストやコメンテータの態度。他のメディアの偏向も酷かった。」と寄稿していました。
米国のメディアは殆どが民主党系のリベラル国際主義だそうです。リベラル国際主義は共産主義と同様イデオロギー優先で「レッテル貼り言葉狩り議論封じ」を行います。日本では朝日新聞など同じ手口を真似します。リベラルな米国メディアや国連が「科学を装って政治テーマにしてしまった」のが「地球温暖化」です。164[2009.8.23 排出量取引金づる日本]、167[2009.11.7 CO2削減で貢献する日本の高炉メーカー]、171[2010.4.17 ねつ造報道メディアの環境問題報道]で前述しましたが、日本も既にかなりのお金を巻き上げられてしまいました。地球温暖化では、多くの科学者が「地球温暖化と人類の炭酸ガス排出とは殆ど関係ないのではないか」と考えていますが、メディアにはこのような意見はあまり登場しません。最近の米国ではデパートでクリスマスツリーを飾らなくなったそうです。ポリティカルコレクトネス(PC/偏見や差別が含まれない言葉)は必要です。しかし拡大解釈されてリベラル急進派のイデオロギー聖域化するような濫用は行き過ぎです。道徳や理念といった「モラルを悪用」するという点では、パワーハラスメントの中でも最も悪質で巧妙といわれる「モラルハラスメント」とよく似ています。・・・加藤諦三氏(ニッポン放送人生相談)によるとモラルハラスメントとは「加害者のサディズムが良識や理念のモラルに変装して、被害者の尊厳と人格を壊すことを執拗に続ける陰湿なパワハラ犯罪行為*1です。今回の電通事件のように、多くの日本企業にとって職場の「安全配慮義務違反」は「コンプライアンス(対社員・対株主・対取引先・対消費者・他)」の重要事項です。
今回の米第45代大統領選でトランプ氏に投票した方々の分析をしておく必要があります。まず投票をされた方々で特筆すべきは、米国の歴史で本流を形成してきた中西部の方々、ミシシッピ川オハイオ川に沿ったハートランドアメリカや、元々は民主党の大票田だったラストベルト(Rust belt/錆びついた工業地帯)の方々がトランプ大統領に一斉に投票したようです。上述の渡辺惣樹氏は同じくVOICE 2017.1への寄稿で「多くの米国人がリベラル建前ばかりの言語空間にもう疲れた。建前ではない本音のアメリ取り戻そうとトランプに投票した。安倍政権を含めて自民党は、大きな政府民主党のリベラル政策に近似してきた。トランプ政権は共和党の小さな政府を志向し、過度な政府規制を排除し、民間経済を活性化させようとしている。大きな政府を目指す自民党安倍政権がどのようにトランプ政権と折り合いをつけていくのか、難しい舵取りになろう。」と述べておられます。・・・一方で、トランプ氏に影響力を行使する政治勢力については、反グローバリニズム勢力からの支持が目立ちましたが、この反グローバリズム勢力に加えて、中西輝政氏(京都大学名誉教授)は「伝統的グローバリズム(アングロサクソンユダヤ系)に属する金融業界、ニューヨーク、ワシントンの面々にはトランプ支持者がかなりいた。もっと注目すべきは新たに登場してきた無政府主義に近いネオ・グローバリズムがトランプ政権に便乗しだしたこと。ネオコン(筆者は異論あり後述)や新興のヘッジファンドSNSとそのフォロワーなどである。2016.6のブリグジット(Brexit 英国EU離脱)では、反グローバリストネオ・グローバリストが、伝統グローバリストをなぎ払った。シティの中の新興金融勢力EUの規制を嫌って、反グローバリストの離脱派に大量の資金を供給して、ブリグジットを実現させた構図である。トランプ政権下では、これら反グローバリズムと伝統グローバリズムに加えて、ネオ・グローバリズム、の三つ巴の主導権争いがどうなっていくか、三つ巴の構図から分析していくことが求められる。」とVOICE 2017.1に寄稿しておられました。
米国のネオコンとは、元々はロシア革命ソ連から追い出されてメキシコで暗殺されたトロツキーからの流れもあると聞いたことがあります。リベラル国際主義をパワーアップしたFローズヴェルト政権(1933-1945)の時代あたりからは、米民主党と合流し、戦後の冷戦時代には米民主党タカ派として強硬な反ソ連共産主義の国際主義を推進、共和党に近づきだしたのはレーガン政権あたりからで、親中嫌日クリントン政権時代の中東政策への反発から共和党に鞍替え。続く共和党ブッシュ政権時代にイラク戦争を主導したのがネオコン。今回の共和党の大統領候補の指名では、共和党内で反トランプに回ったのがこのネオコン共和党内ではトランプ氏が勝利したことで、ネオコンはヒラリー支援に回ったともいわれています。中西輝政氏が言われるようにネオコンにとってトランプ政権への便乗はそう簡単でないような気がしてます。しかしビジネスマンあがりのトランプ氏ですから「ネオコンの利用価値が出てくれば」利用するでしょう。それがどのような場合かは筆者/青草新吾にはよく分りません。
共和党は、第3代大統領ジェファソン(1801-1809)のリパブリカン自由主義(Republican) といわれる「小さな政府・緩やかな共和国連合(分権連邦政府)」から発展した「家族共同体の自治自由」を標榜する政党です。第16代リンカーン大統領(1861-1865)が「奴隷解放を主張」したのは北部の商工業者を支持母体としていたからです。外交については、総じて「反共且つ親日嫌中・嫌国連国益重視の対外不干渉主義」といえそうです。・・・民主党は、ジェファーソンの対極としてハミルトン(-1804)が目指した「大きな政府・連邦主義(中央集権連邦政府)」から発展した「各個人の自由リベラル国際主義」とを標榜する政党です。「奴隷解放に反対」したのは南部の白人を支持母体としていたからです。外交については、総じて「容共且つ親中嫌日・親国連リベラル国際主義」といえます。・・・この民主党のリベラル国際主義からでしょうか、米国の対外戦争は、第一次世界大戦第二次世界大戦朝鮮戦争ベトナム戦争、とすべて民主党が主導しました。・・・米共和党と米民主党について実によく整理されたブログ*2を見つけましたので貼りつけときます。
日本経済と生産財営業にとって、重要性が一番高い国はやはり米国です。手前どもビジネスマンの肌感覚からは交易による利益を日本にもたらしているのは米国市場が一番です。OECD(経済協力開発機構)やWTO(世界貿易機関)が発表した「付加価値貿易統計」がこの肌感覚の正しさを立証してくれました。日本の輸出先トップは付加価値ベースでは今でも米国です。中韓アジア諸国への輸出も最終的には米国で消費される場合が多いからです。もうひとつこの統計のお蔭で判ったのが、日本の輸出に占める「国内付加価値の割合は85%(2009年)」で「他のOECD諸国よりもかなり高い」ことです。米国向け国際生産分業からの収益依存度が高いだけに、トランプ政権の貿易政策から影響を受けやすくなっているから要注意ではあります。

リベラル国際主義のポリティカルコレクトネスにケチをつけるわけではありませんが、国際舞台で「人種平等最初に主張したのは日本だという歴史的事実」を銘記しておきたいと思います。パリ講和条約(1919)で日本の牧野伸顕が提出した「人種差別撤廃提案」に反対し葬ったのは、議長だった米民主党ウイルソン大統領と英豪です。・・・太平洋戦争については、1933年の米大統領選で共和党のフーバー第31代大統領(日本と連携して共産主義と対決する)が敗れて、第32代でFローズヴェルト(ソ連・中国と連携して日本と対決する)が就任した影響が大きかったと思います。この点では、米政治学会長と歴史協会会長のチャールズ・ビーアドなるお方が1948年の出版で「日米は戦う必要なかったのに、ローズヴェルトは表向き不戦の態度を貫きながら、裏では日本に先に撃たせるべく、日本を追い詰めて、開戦へと突き進んだ」と発表されたことがあるそうです。
144[2008.10.25 米国人による東京裁判批判]で、江崎道朗氏の寄稿「「戦前において米国の保守主義者たち強い日本がないと、米国による極東への介入が起こり、戦争に巻き込まれると考えていた。戦争は必然的に政府権力を強大化させ、国民の自由を抑制する全体主義に発展するから保守主義者は戦争に巻き込まれることを嫌った。」を紹介しましたが、この一文は、米大統領になるトランプさんの発言通底するものがあります。米共和党保守主義者(反共且つ親日嫌中・嫌国連の国益重視の対外不干渉主義)にとっては、強い日本が防波堤となって、米国を巻き込まないでくれというところが本音でしょう。そのうえで対等な日米同盟を期待しているのです。中国寄りで日本を抑え込みながらの米民主党の容共リベラル国際主義の中での従属的な日米同盟よりは、対等な日米同盟に発展させていくチャンスが到来してきているといえます。

過去1百年の国際政治の二大潮流(共産主義リベラル国際主義)のスパイラル変化、螺旋を上から見ると巻き戻し、横からみると次の次元への昇華が始まったようです。日本にとっては「リスクと機会」が大きく広がっているといえます。ロシア革命以降の共産主義は、ソ連崩壊(1991.12)で下火になり、米民主党のFローズヴェルト大統領(1933-)以降に猛威を奮ってきた、そして敗戦後の日本を支配し洗脳してしまった「リベラル国際主義と戦後」の終わりの始まりです。その脈絡で、トランプ大統領の登場は、クリントン大統領よりもベターといえます。この機会を活かしていきたいものです。政治家の皆様、よろしくお願いします。手前どもビジネスマンも「日本国の稼ぐ力」をさらに高めていきましょう。

2016-10-01 202 自動車産業の1百年に一度の大変化

日本の自動車産業が大きく飛躍してくれたお蔭で、日本経済の20年間にも及ぶ経済停滞も緩和されました。1百年に一度ともいわれる自動車産業の変化とこれからの日本経済を俯瞰してみます。

筆者/青草新吾は、トヨタプリウスが販売開始された1997年に大阪インテックスの電気自動車シンポジウムでお聞きした豊田章一郎会長(当時)の「自動車の歴史は、電気モーターで始まり、内燃機関で発達し、そして今、トルクコンスタントの内燃機関とパワーコンスタントのモーターを組み合わせたハイブリッド車を販売開始します。」とのメッセージが強烈な印象で残っています。
今、世界の自動車業界は、次世代自動車に向かって激しい競争の真っただ中にあります。次世代自動車は、EV(電気自動車)、HEV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)で、これらすべては電動モータで駆動します。長期的にはFCV(燃料電池車)が有望とされますが、目先はEV(電気自動車)とHEV/PHV(ハイブリッド車)が主役となります。
米国や中国では、トヨタが独走するハイブリッド車を避けてPHV(プラグインハイブリッド車)とEV(電気自動車)を押し立てた政策を推進しているようです。欧州ではフォルクスワーゲンに代表されたエコディーゼル戦略が行き詰まり、ハイブリッドよりも難易度が低いマイルドハイブリッドを押し立てた政策を推進しているようです。米国では電気自動車のテスラが快走しています。中国は、エコカーの生産台数で米国を凌駕するようになってきています。パワートレインの電動化に加えて、自動運転技術まで出てきました。さらに都市部では所有から利用のカーシェアリングの普及が進んでいます。クルマは正に1百年に一度の大変化・動乱期に入っています。
日本の自動車産業は、日本自動車工業会(JAMA)の2015年度実績発表によると、総務省調査で日本の就業人口の8.3%の5.29百万人(内製造部門で0.8百万人)、経産省工業統計で製品出荷額の17.5%の53.3兆円、財務相外国貿易概況で商品別輸出額の21%、15.89兆円、日本政策投資銀行調査で設備投資の20%の1.4兆円、総務省科学技術研究調査で研究開発費の23.4%、2.7兆円を占めています。今や世界生産27.38百万台、生産の内外内訳は、34%が国内の9.28百万台、66%が国外で18.10百万台です。・・・日本の自動車生産は、東京オリンピックの翌年、1965年頃に2百万台を突破し、日本社会のモータりーぜーションで伸び続け、1990年に過去最高の14百万台近くまで増えました。1990年は国内販売も過去最高でした。がしかし、1985年のプラザ合意以降の猛烈な円高で輸出採算の悪化が著しく、1994年頃には完成車輸出と国外生産が逆転し、以降、猛烈な勢いで国外生産が増え続けました。2007年には、国内生産と国外生産が逆転し、以降は、国内生産が10百万台を割り込むようになり、国外生産は伸び続けています。・・・しかしながら、各社ともに国内生産の一定規模を死守するとしていることを銘記しておかねばなりません。
日本の場合は、産業集積の点でも、個別企業の生産性の点においても「日本国内の生産性が諸外国よりも図抜けて高い」という特徴があって、マザー工場の役割が高いのです。国際競争力を維持していくための国内生産の規模に関し、トヨタは国内生産台数「3百万台」、日産は国内生産「1百万台」を掲げています。
日本の自動車メーカーの生産性に関し、東大教授/新宅純二郎氏が日経新聞2016.9.29で「日米の生産性比較[1台当工数(人・時間)]。1989年時点から2000年にかけて、日本企業の母国工場が16.8から12.3へ、対する米国企業の母国工場が24.9から16.8へと日米ともに生産性が向上した。米国は1989年時点の日本企業母国工場並みに追いついたが、日本もよくなったので格差はそのまま残った。・・・日本のマザー工場とアジア拠点との比較。日本国内の自動車10工場の1台当り工数は、00年の12.3から10.7へとさらに改善されている。一方で泰国の日系5工場は25.2、日本の賃金水準5.4倍を加味した1台当り労務費となると、日本100に対し泰国44、中国工場28.4に日本の14倍の労務費を加味すると中国19へと、図抜けた日本の生産性も製造コストでは逆転してしまう。日本の工場単独では稼ぐ力は劣っているが、国外の工場を良くし収益力を向上させる発信基地としての日本のマザー工場の機能はまだまだ健在である。」と寄稿していました。
世界の自動車生産は、新興国での需要拡大で1億台までには届きそうで、まだまだ伸びます。一方で、米欧日と中国では次世代自動車の普及が加速していく方向です。2020年以降は生産のピークアウトを迎えるかもしれません。また自動車の構造も大きく変わり、ネットワーク化が進んでいくことで、生産財の最大市場の自動車産業がどのように変わっていくか・・・。生産財営業の視点からは、まだまだ10年くらいはクルマ向け割合を高めていく方向でしょうが、ピークアウトに備えて非自動車分野の種まきもしていく必要があります。
政治にお願いしたいのは、構造改革を急げということです。大阪府や東京都で明らかになってきたように地方政治の改革を進めていく必要があります。中央政府レベルでは、外交・安全保障や通貨などに集中し、地方政府でできることは地方で進めていく地方分権の方が時代に会っています。道州制くらいの単位で、各々の地方政府が経済振興のエンジンとなって産業振興を競い合うようになって欲しいものです。
スタンフォード大学教授の星岳雄氏が日経新聞2016.9,30で「日本経済の20年間もの停滞は、需要不足のみならず、供給側の潜在成長率低下で引き起こされた。緩やかなデフレに止まり、デフレスパイラルにまで陥らなかったのは、需要側に加えて供給側も停滞していたからだ。・・21年前の95年9月。日銀は兆しが見えていたデフレを防ぐために公定歩合0.5%引き下げを行い、同時に思い切った構造改革の必要性を訴えた。思い切った規制緩和など構造改革が必要だと発表した。以後20年間訴え続けてきている。構造改革を今こそ本格的に進めないと、日本経済は再び復活の機会を失ってしまう。」と寄稿していましたが同感です。増税よりもできるだけまずは減税と補助金などの歳出見直し、起業と雇用増促進や、労働スタイル(働き方)改革、子育て支援、親子近住やコンパクトシティの推進などなど・・・政治の役割がますます高まっています。特に、国政をスリム化して、住民から近い地方政治の改革と充実に期待したいし、そのための投票行動を呼びかけていきましょう。

2016-07-31 201.英国のEU離脱と米国の大統領選 で「これからの日本」

「英国にとってEUは功罪相半ば」「米国の本流はハートランド(中西部)」といったところが日本の報道では欠けているようです。メディアの報道はどうしても偏りがちですから自分のネットワークでも情報を集めて、世界とニッポンがどう動いていくのか、自分に何ができるか、どうしていけばよいか?を自分の頭で考えていくしかありません。

筆者/青草新吾、半年ぶりに筆を執ります。英国のEU離脱に関して。英国人にとってはポジティブな側面とネガティブな側面の両方があるようですが、日本の報道では「離脱すると大変なことになる」という残留派の主張に偏って報道されている場合が多く見受けられました。英連合王国は、2015年度でGDP2.8兆ドル、世界5位の経済大国です。その英連合王国を頭とする英連邦には53カ国が加盟し、内訳は英国王を国王とする加豪新など16カ国と、38の共和国です。人口20億人、世界貿易の20%を占めるそうです。英連邦とは「英語と英米法に代表される近代国家のインフラを共有」する国々の集まりですが「英語と英米法」こそは、金融街シティの強みです。
その英連合王国の国際競争力を維持し強化していく上ではEUは功罪相半ばします。英国は米国と同様に金融立国です。金融立国にとっては「緩やかな金融規制と低い税率」がベターです。ところが独仏主導のEUでは年々金融規制が強化されています。この点でシティの皆様も必ずしもEU残留に必死であったということではないようです。多国籍企業を誘致する税制を進めていくうえでもEUの規制から自由になることはベターでもあります。最近では「離脱賛成の英資産運用会社経営者」の「イノベーションを生む枠組みとしては、EUは疑わしい」との発言も報道されていました。
EU非加盟でも豊かなクオリティ国家なのが、ノルウェー(諾)とスイス(瑞)の両国です。ノルウェー(諾)はEU単一市場を全面的に利用できるEEA(欧州経済地域)に加盟し、スイス(瑞)はEEA(欧州経済地域)には加盟せず、自国にとって必要な部分のみにEUと二国間協定を締結して単一市場に参加しているそうです。スイス(瑞)も金融立国の側面もありますから「長年築いてきた独自の伝統的制度や政策の方が国民にとっての利益が大きい」のでしょう。
米国の大統領選に関して。日本の報道は偏りすぎています。理由は「日本の外務省やメディア・知識人は米国との関係が偏っている」からです。2008.10.25[144.米国人による東京裁判批判]でも前述しましたが、日本の学校教育やメディア報道はリベラル左派や東海岸エリート層の米国ばかりを伝えてきています。筆者/青草新語は米国通ではありませんが、米国出張の度に「米国は偉大な田舎や共同体が実にパワフル」と感じたことを思い起こしています。トランプさんの極端な発言ばかりが日本で報道される傾向にありますが、おそらくはあのトランプ氏の訴えは「典型的なハートランドアメリカの人々の琴線に触れている」のだと思います。米国中西部、ミシシッピ川オハイオ沿いのハートランドには「選挙にはいかないが教会には行く人の方が多く、今回はそのような人々がトランプ支持で立ち上がっている」と江戸川大学名誉教授の高山眞知子氏がWILL2018.6(トランプはバカじゃない)で寄稿しておられました。そもそも米国では共和党モンロー主義(他国不干渉主義)が歴史的な潮流として脈々と流れています。共和党伝統共同体を重視し小さな政府を目指す政党です。伝統的に親日反中・反共産主義だが国益重視の反国際主義の流れが強いようです。ちなみに米合衆国の南北戦争では、北部で黒人奴隷解放を主張したのが共和党、南部で奴隷制維持を主張したのが民主党です。事実に基づく判断が大切です。民主党は、リベラル大きな政府志向グローバリズム嫌日親中・容共・国際主義の流れが強めです。米合衆国が世界の警察官になったのは、容共派でソ連共産党のスパイに取り囲まれていた民主党Fローズヴェルト大統領(1932-1945)の代にモンロー主義を放棄して日本を開戦に追い込んでこれを理由に欧州戦線に乗り込んで以降です。民主党Fローズヴェルトの代に国際主義の傾向を一気に高めた米合衆国も、1960年代以降は国連離れの傾向が出始めており、1980年代のレーガン大統領と英国サッチャー首相の時代に「米ソ冷戦で勝利(ソ連崩壊)」して以降は、徐々に現代版モンロー主義的な雰囲気が出始めていたような気がします。ローズヴェルト以来の再選を果たした1990年代の民主党クリントン政権が金融グローバル化を強力に進め、2000年代前半の共和党ブッシュ大統領ネオコン(民主党から民主党右派が共和党に流れ込んだ反共・国際主義者)と組み、イラク戦争に乗り出したものの今はその反動が大きくなっているようです。
日本国内の報道はとても偏っていますが、お互いに声をかけあいながら自分の頭で考え、ありのままの現実を受け入れて「良い方向にもっていく努力」に勤(いそ)しむしかありません。自分たちに何ができるか、できることに集中することが大切です。
今のこの時代は、恐らくは人類史の中でも有数の数少ない大転換のさなかかもしれません。変化の荒波のなかで必死に船を漕ぐにしても目指す方向性が大切です。その場合には次世代に何を継承していけるのかが大切です。先人の努力の積み重ねで私たちは今の平和で豊かな生活ができています。東洋経済2016.6.18で一橋大学名誉教授の斉藤修氏が「幕末維新の時代の一人当たりGDPは800ドル台-1000ドル台、現在の20分の1くらい。1950代のタイ(泰)、80年代のベトナム(越)。維新後に豊かになっていったが1955年まで西欧12カ国の約半分の水準、周辺のギリシャ(希)やスペイン(西)や旧東欧7カ国並みだった。敗戦後の高度成長米英などの先進国に追いつけた。」と寄稿しておられました。・・・今の日本はグローバル化少子・高齢化が進む成熟社会ですが、安倍政権は「お金がかからない改革」が手薄です。時代の変化を理解できていない旧来パターンに凝り固まった政治家や官僚に囲まれているからではないでしょうか。・・・まずやるべきは税金投入が要らない景気浮揚策です。増税よりもまず先にやるべきことです。VOICE2016.7で瀧本泰行氏なるお方が「消費税増税で景気を下げるよりも確実な財政再建策。安倍内閣が”労働休暇を適法状態に戻す”と閣議決定するだけ個人消費が最初の12カ月で12兆円増え、雇用も大幅に緩和される」と寄稿しておられましたがとても頷(うなづ)けます。長期休暇や働き方改革で「1年中いつでも利用できるコンビニ」のように「役所や大企業の高価な設備が1年中稼働し、一人一人が計画的に連続休暇がとれるようになる」ならば日本経済の生産性が高まります。「子育て支援日本を救う」なる著書では「財政再建につながる政策は”保育サービスを中心とした子育て支援だ」との実証研究が発表されていると本朝の日経新聞2016.7.31読書欄で紹介されていました。各種規制は役所と癒着業界の既得権益になりやすいのですが「規制緩和も税金投入を必要としない景気浮揚策」です。
経済社会に大きな影響を及ぼすのが金融政策企業活動です。本朝の産経新聞2016.7.31で田村秀男氏が「"金融機関の日銀当座預金"と"企業内部の利益剰余金"が642兆円にも積みあがっている。このお金が消費や雇用・設備投資に回っていれば安倍政権の目標である名目GDP600兆円はとっくに達成されているはずである。・・・銀行最大手の三菱東京UFJは、マイナス金利に反発し国債入札の特別資格を返上したが、国債売却資金はそのまま日銀当座預金にため続けている。国内の銀行貸し出しは増えないが、そのくせ債務膨張が不安な中国に大型融資するなど海外向け融資には熱心だ。・・・手元資金が豊富になった企業もマイナス金利で資金調達できる環境であるにもかかわらず設備投資や雇用拡大には慎重だ。・・・このままでは日本国内に循環しないマネー巨大化するだけだ。銀行は”国内向け融資拡大”に総力を挙げ、企業は剰余金を"雇用改善や技術革新に"回すべきだ。」と寄稿しておられましたが実に悩ましい内容です。「政治と行政が未来のビジョンを示せない」ので、一部のパイオニア的な企業を除けば「その他大勢の普通の企業は思い切った一歩を踏み出せないでいる」のです。財務省や税金に寄生する既得権益関係者など増税したい勢力が「増税のため不安煽り」を行い、メディアでも「不安を煽る方が売れるし視聴率も稼げる」とばかりに不安を煽り続けてきた結果です。安倍政権の財政出動について田村秀男氏は「政府は25年1月に大型補正予算財政出動して景気を押し上げたが、その後の消費増税で一挙に効果が吹き飛びデフレ圧力が再燃し今に至る。そもそも20年にもわたる"慢性デフレに染まった民間資金"を単発的な財政出動だけで揺り動かすことができるのか。欧州はEUへの期待の低下、中国は不況下のバブル、米国では反グルーバリズムの勃興と、日本はリスクの大海に浮かんでいる。日銀や企業内部で"膨らみ続ける余剰マネー"を活用できない限り、日本の再生はおぼつかない。」と嘆いていますが同感です。
"民間資金を活用"し"イノベーションを活性化"していくこと、"子育て支援"や"働き方改革"などで"未来に向けての希望と目標"を持ちやすい社会にしていくことです。そのためには今の「明治維新以降の"官僚型・中央集権政治"」から江戸時代のような「地方分権」を進め、各地域の特徴に合わせた政策で「各地方政府が実績を競いあう道州制へと近づいていくのがベターと考えます。組織をマネジメントする経験があればわかることですが「発展していくための適正規模」「マネジメントするための適正規模」があります。東京一極集中で霞が関や永田町で統治するには今の日本は複雑で大きすぎるのです。194[2014.7.20 ニッポンができる世界への貢献]で前述した”クオリティ国家”、つまり日本よりも一人当たりGDPが豊かな民主主義国は、スウェーデン(典)フィンランド(芬)スイス(瑞)シンガポール(星)などは国家統治の適正規模と思われます。米合衆国連邦共和国は"連邦制で統治の適正規模を実現"しています。適正規模で地域のことをよりよく分った地方政府が「独自の産業振興策を行い実績を競い合う」ことで、複数のエンジンを持った連邦国家が実現されています。次頁では、自動車産業グローバル化と日本経済への貢献を振り返ってみたいと思います。

2015-12-31 200. 世界が大変化した2015年の回顧

増税しなくてもやっていけるニッポン”。そのためには“将来世代に目配りした政策”に転換し、敗戦利得者を中心とした戦後の既得権益も規制改革で競争を促し、“一人当たりGDP(稼ぎ)”を高め、“道州制で適正規模の統治構造”とし、“スイス連邦や北欧のようなクオリティ国家”を目指していきたいものです。

本朝の日経新聞201512.31付で慶大教授の小林慶一郎氏が「まだ生まれていない将来世代目配りした政策運営にするには選挙制度を変えるしかない。将来世代の利益を代弁する枠を作れば、今の世代へのバラマキは駄目という意見が出てくるだろう」と寄稿しておられましたが筆者/青草新吾は強い共感を覚えました。
今の日本は大手新聞社経済誌御用エコノミストとグルで財務省プロパガンダを流しますから、国民は騙されてしまっています。民主主義の危機です。選択肢の中から国民が選挙で選ぶ本来の民主主義へと切り替えていく必要があります。明治政府が“地方分権だった江戸時代の統治構造”を“官僚統治型・中央集権国家”に作り替えてしまいましたが、官僚による国家社会主義が行き過ぎてしまいました。戦前は軍官僚と内務省官僚、戦後は財務省に権限が集中して政策運営の誤りもでてきます。現実社会には疎いが試験上手の元学校秀才の机上の詭弁に誤魔化されないよう「“事実に基づく合理的な判断力”に磨きをかけていく」ことが必要です。判り易い事例で今回の軽減税率。2015年は軽減税率(複数税率)の導入決定が税制面での大きな変化となりました。“財務省プロパガンダ(金持ち優遇の軽減税率に反対、(財務省に執行権限を付与される)給付措置に賛成)”が猛威を振るう中で、“事実に基づく知的な議論”をする学者もおられました。そもそも生存するために必要な“生活必需品には非課税低い税率”が原則です。
日経2015.11.5付で京都大学教授の諸富徹氏が「軽減税率(複数税率)OECD諸国で“減るどころか一層活発に用いられる”ようになってきている。我々はその要因を“先入観なく理解すべき”かもしれない。逆進性緩和策としては “給付措置より”も軽減税率の方が“効果的”との判断が趨勢。買い物をすれば“低所得者の税負担自動的に軽減できる利点”こそが“高所得層にも恩恵が及ぶ短所を上回る”という。世界で軽減税率が広く支持されるのは、この利点のためであろう。」と指摘し、OECD諸国で現実に起こった“給付措置の短所”として「申請という形で消費者に負担をかけるので“受給資格があっても受給しない人が4割”もおり、反対に“受給資格がないのに受給”する“不正受給が多々発生”している。 “給付措置とは理論の想定通りに機能する場合のみ有効”なのだ。」と寄稿していました。・・・財務省が邪魔してきた軽減税率(複数税率)の導入が決定しました。
税と社会保障の一体改革も進めて欲しいと希望します。“富裕な高齢者”にまで低負担で済ませ現役若者世代に負担させるのは如何なものでしょうか。日本の場合、富裕層の多くが「不動産持ち・低所得者」なので、“死亡時の相続時点でそれまでのコストを負担してもらう相続時負担”の考え方を導入し、資産税もっと広く薄くかけていけば、税収は増えます。敗戦利得既得権益してしまった日本では、所得税が高すぎる割に、資産税が安すぎる。先進国では「ストック課税は資産税で、フロー課税は間接税(生活必需品は非課税又は低率)で」が趨勢です。日本だけが直接税の「所得税法人税に偏った役人天国」になっています。
ストックに対する課税では、“適度のストック課税(資産税)”は“競争による新陳代謝促進”しますからコストがかからない成長戦略としても機能します。反対に日本のように資産の多くが非課税だったり低率資産税だと、イノベーションを阻害します。一方のフローに対する課税ですが、稼いで雇用を生み出す才能ある企業(個人と営利法人)が世界から集まってくればくるほど、日本は豊かになっていきます。 “所得税法人税ペナルティのように高い”と、公正な競争で努力や才能で稼ぐよりも、既得権益のような不公正競争がはびこり易くなります。
世界経済を見渡すと、2015年前半は“中国共産党による国家資本主義のパワーダウン”とBRICSだのVISTAだのと金融関係者が囃(はや)し立ててきた“新興国経済のペースダウン”が際立ちました。先進国経済主役交代米国経済が強く振興国主役交代の様子でNEXT11フィリピン(比国)メキシコ(墨国)勢いが加速してきているような気がします。10月の環太平洋パートナーシップのTPP合意は、世界経済の雰囲気一気変えしてしまいました。米国と日本経済パワーの運気が高まってきたように感じます。隣国では台湾と韓国が新規加盟を、アセアンからもメンバーのシンガポール(星国)とベトナム(越国)、ブルネイ(文)に加えて、新規加盟で比国と泰国、尼国あたりも参加の意思を示しだしています。TPPが実現してからの遠い将来のことですが、中国共産党が崩壊すれば、ソ連崩壊後のように複数の国に分かれていくでしょうから、道州制を実現できた日本が、台湾あたりと連邦を組む面白い展開が期待できるかもしれません。
個別の産業では“自動車産業が激変”しました。特に9月に発覚したフォルクスワーゲン(VW)不正問題では、呆気にとられてしまいました。その実に目的が明確な“計画的で合理的な不正”こそは、正にナチズムが生まれた国ナチスが育てた自動車メーカーだからなのだろうか?とも考えてしまいました。誰がいつどのように決めて戦争に入っていったのかが今一つ定かでない日本ではあまり見ない不正パターンのような気がしました。ともかくマツダなどの真正面から取り組んで技術的に実現した本物のエコディーゼルと違って、VWのエコディーゼルとは実はインチキのまがい物だったようです。VWは「ディーゼルは腰折れした。エコはディーゼルからハイブリッドにシフト」と方針転換を鮮明に打ち出し始めました。世界最大の自動車需要国となった中国でも、電気自動車プラグインハイブリッドの販売台数がテスラの米国と逆転し、世界最大の市場となりました。上海などでは自動二輪のバイクも電動バイクになっています。二輪に続いて四輪でも世界最大の電動車市場として存在感を高めていくこと間違いなしです。
アラブの春”などと無責任報道でもてはやされた中東では、混乱が深まるばかりです。世界の政治では、テロ勢力とされるスンニ派系のアルカイダタリバンハマスに加えてISIS(イスラム国)までが加わって欧米露と敵対しています。シリアのアサド政権は露から支援されながらも欧米とこれらスンニ派武装集団の両方と敵対しています。
今の中東”はまさに“軍閥割拠だった戦前の中国大陸”のようです。日本軍は深みに足を取られてしまいました。“今の中東”がカソリックプロテスタント30年戦争で殺戮戦を行って人口が半減した17世紀の欧州みたいにならないことを祈ります。本来は寛容な宗教のイスラムから多くの過激派が生まれてしまった・・。元はといえば、部族社会を無視した欧州が“勝手に国境線を引いてしまった”ことから今の中東の争いが起こっているともいえます。ユダヤ教キリスト教イスラム強と“同じ神を奉じるが信じ方が違う”からの争いは過酷です。寛容な日本文化では想像できない世界です。空爆による殲滅など止めて欲しい。太平洋戦争日本列島人口7千万人くらいで600千人くらいが米軍の空爆で亡くなったそうですが、人口2千万人くらいのイラクでは米軍の空爆同じくらい(600千人?)の多数の一般市民が犠牲になったようです。とてもつらい現実です、太平洋戦争時、米国大統領のF Roosevelt(カタカナでルーズベルトとかローズヴェルト)は「日本全体を悪魔化して空爆原爆投下正当化」したそうです。中国どさくさまぎれ平和的なウイグルの活動家テロリスト扱いして虐殺・虐待し、日本に対しては歴史戦争をしかけ「日本を悪魔化」しようとしています。・・・一神教の歴史を持つ欧米の方々はテロリスト殲滅の空爆といいますが、殲滅ということばからは「東京大空襲原爆投下」の歴史と重なります。筆者/青草新吾は“寛容な歴史と文化を持つ日本ならではのお役立ち”ができないものかと思案してしまいます・・。
年末に飛び込んできた「日韓慰安婦問題不可逆的な最終解決」のニュースに対しては、「朝日新聞捏造記事出版物直接の原因なのに朝日新聞は何だ」とも思い、また「多くの戦没者の名誉にもかかわることなので事実を曲げてまで政治決着なんかしないでよ」との反感も感じましたが、橋下元大阪市長が指摘するように「村山談話の無効化に向けての上書き」と考えれば「ならばこれくらいはしかたないか」とも考え直しているところです。
以上、2015年を回顧するにつけ、民主党政権でなくて、守旧派自民党政権でもなくて安倍政権でよかった、でも規制撤廃などもう少し成長戦略で頑張って欲しい、大阪では「おおさか維新」が「大阪をギリシャ化させてきた“自民党から共産党までの既得権益オール与党”に圧勝したこと」は行政改革・統治構造改革に向けては良いことだった2016年以降日本の稼ぐ力もっと高め次世代につないでいけたらと期待しながら、筆をおきます。

2015-08-23 199. 経済再生と政治維新

中国のバブル崩壊はかなり深刻です。日本は何よりも経済力(稼ぐ力)の再建を急ぐべしです。大増税しなくてもやっていける社会を次世代に引き継ぐためにも、子育て家庭への支援や貧困層への支援を厚くしていくためにも、乱暴で無法な中国共産党・紅軍への抑止力としての日米同盟を確保しながら、対米従属から徐々に脱却していくためにも、・・・。

国民総所得(Gross National Income、後述)が伸びて、GDP2%くらいの成長を実現できれば、20年後GDP122%です。政府支出(歳出)今以上に増やさず、今のような国債金利であれば、徐々に政府債務(政治家公務員国民に返済すべき借金)もGDP比率で軽減されていきます。国民経済トレンドを把握する目的だと、安倍内閣が成長戦略で採用した実質GNI [実質国民総所得Gross National Income (GDP+所得収支+交易利得又は損失)]がGDPよりはベターです。グローバル化で「国外からの投資リターンや給与純受取額」が増え続けていますし、一方では交易条件(輸出入価格)の変動による実質所得の増減(交易利得)も発生していますから。・・・日本の失われた20年とは、異常な円高による交易条件の悪化で、常に「実質GDP>実質GNI」となり、国内で生まれた富が国外から吸い上げられてきた状態です。ニッセイ基礎研究所2013.6.14によると「過去10年間、交易損失が26.4兆円」(国外への所得移転。国内居住者の実質所得26.4兆円が国外に流出)していたようです。購買力平価だと対ドル円レートは、工業用製品が100円くらい、生活関連製品が130円くらいだそうですから、適正な対ドル円レートは100円から120円の間です。80円だの90円だのは明らかな異常円高であり、交易を通した日本国からの所得移転に他なりません。明らかな政治の失策です。自社さ政権時代による円79.75円(1995.4)、民主党政権時代の円76.25円(2011.3)という歴史的な超円高は、自社さ政権と民主党政権放置政策の結果だし、日本国内で生み出された富が国外に所得移転されてしまったということです。グローバル化した経済では政治が極めて重要です。
幸いにも日本には世界レベルで図抜けた競争力を維持できている会社(営利法人)やそれらをとりまく企業群(個人事業+会社)が存在しています。地方創生に直結する様々な創意工夫イノベーション、例えば、岡山理科大学好適環境水・養殖(淡水魚の金魚と海水で生きるキイロハギが同じ水槽で泳ぐ、産経新聞2009.10.7)や、最近では、近畿大学完全養殖まぐろウナギ味なまずも実用化・商業化の域に入ってきました。民間の創意工夫や新しい価値を生み出すイノーベーションを役人政治家邪魔しないことを祈るのみです。・・・経済成長を実現していく上では「成長戦略の一部」として「次世代を担(にな)う子供の貧困対策」も重要です。就学前の教育が生涯所得に大きな影響を与えるという仮説が先進国共通の知見になりつつあります。この点に関しては下術で補足します。・・・人口減少高齢化イノベーションの源泉に転じていく努力が望まれます。厚労省独占の医療・介護一律・画一的官製市場を「ナショナルミニマム(政府の基礎的な保障)」の上で、民間事業者の創意工夫を活かす成長分野に変えていく「政府財政健全化両立する成長戦略」にして欲しい。日本経済を再生するために何よりも必要なのは津々浦々での全国民的な草の根のイノベーションです。
伝統の保守とは革新の連続です。世界の老舗企業の半分が日本です。老舗企業大国ニッポンを紹介した拓殖大学教授の野村進氏の著書*1によると創業1百年超の会社が100千社以上あるそうです。保守のために自己革新変わり続けてきた不易流行の企業群です。日々創意工夫で変えるべきは大胆に変え、時代や環境の変化の中で事業継続してきた結果です。過去の成功体験に固執し、上辺(うわべ)だけの伝統継承にこだわりフロンティア開拓のベンチャー精神を忘れた企業は、衰退や消滅していきます。
衰退の中から息を吹き返した企業が多々あります。中堅大企業の領域では森下仁丹の事例。三菱商事出身の駒村純一氏が社長に就任して以降、社内で温存されていたノウハウ(仁丹の被覆技術)のアプリ開発医療カプセルを商品化し、世界へのマーケティングで大きく成長しました。事業転換ではよく聞く話ですが、新事業へのチャレンジについていけずに退社していった方々も多々おられるそうです。金型部品商社のミスミは、初代の創業1期の田口弘社長の時代に大きく成長しました。この田口さんの凄さは自分の後任に「経営パワーの危機」*2や「戦略プロフェッショナル」*3の著者としても広く知られた三枝匡氏(実務経験は三井石油化学とBCG)を指名したことです。創業1期の田口社長の代に大きく伸びたミスミは、2期の三枝社長の代に更に大きく発展しました。正にスパイラルアップの見本です。
大企業の領域では、富士フィルムの事例。銀塩フィルムの時代には「世界の優良企業だったコダック」が連邦破産法を申請し、コダックを仰ぎ見ていた富士フィルム銀塩フィルム派生の生産財(TACフィルムなど)へと主力事業転換をやりきって生き残りました。2000年以降の主力事業転換で社長としてのリーダーシップを発揮した古森重隆氏は、入社3年目産業材料部・営業部員としてこのTACフィルムの市場開拓(アプリ開拓)に取り組みだしたお方とのことです。富士フィルムを救った主要な一つのTACフィルムとは実に30年以上もの商材開発・マーケティングの積み重ねの結果として大きく花開いたことが判ります。・・・東レ日清紡、福井のセーレンなど、日本の繊維産業は、主力アプリの転換(衣料⇒産業素材・生活資材)で大きくスパイラルアップして発展しています。東レは、炭素繊維製品(CFRP)で世界トップですが、実に1970年頃から本格的な事業化に取り組み、航空機分野で一定の需要を得て、とても日本的な用途開発のゴルフシャフト釣竿を経て、今はEVやハイブリッド車自動車軽量化で事業規模も大きな拡大が見込まれます。日清紡の事業ポートフォリオは、自動車ブレーキ摩擦材事業が3割、更に2010年に日本無線を子会社化したことでエレクトロニクスが4割へとスパイラルアップしてきています。・・・福井のセーレンは、傍流部署の社員で「課長昇格が一番遅れた川田達男氏」が、社内で大きな反対を受けながらも干された先輩社員と始めた自動車内装材が大きく伸びたことで、ニクソンショックプラザ合意で巻き起こった繊維不況を乗り越え、イノベーションでリーダーシップを発揮し続けた川田達男氏が社長に就任し、染色加工の受託賃加工から自動車の内装材メーカーへとスパイラルアップして発展し今に至ります。
日本的なイノベーションの多くが守破離です、最初は真似ごとから始まり(守破離の守)ながらも、基礎が固まってきたら独自性を高めて(守破離の破)、最後には独創世に新しいものを生み出す(守破離の離)というスパイラルアップです。イノベーションオペレーションとはマネジメント手法異なります。トップイノベーションタイプが望ましい。でなければ組織が官僚化し大企業病(行き過ぎた管理主義)になり易い傾向があるのかもしれません。一方で既存事業のムダドリ稼ぐ力高め続ける努力も必要です。筆者/青草新吾が見てきた様々な優良企業の事例からは「イノベーション2割オペレーション8割」くらいのバランスが事業内容の新陳代謝を持続しながら発展していく上でベターな気がします。・・・フロンティア精神を尊ぶ米国企業と異なり、日本企業の場合にはイノベーションンに向けてトップのリーダーシップを欠くと、組織全体がずるずると「イノベーション阻害する組織へと変性」してしまう傾向があります。イノベーション天敵害獣となるのは大企業病(行き過ぎた管理主義)です。
事業環境大きく変化しました。日経ものづくり2015.7で「ものづくりを取り巻く環境も大きく変化した。まず第1には、自動車の電動化や自動化に象徴されるハードウエアソフトウエア一体となった制御が求められるようになったこと。第2に、生産のグルーバル化。かってのように日本で製品を立ち上げてから国外移管するプロセスを経ずに、タカタのエアバッグのように“内外のエンジニアが共同開発して、外国で生産する仕組み”が増えた。・・・第3に、持続的なコスト削減圧力の増大。難燃剤が原因の過熱トラブルでは、難燃剤を臭素系から日臭素系に切り替えた際にメーカーサプライヤー臭素代替/赤リンの耐水グレード指示していなかった事例など。・・・第4に、工場における現場力の低下。・・・第5に、流通業メーカー化。流通企業がメーカー的な高い品質コントロールのノウハウを身に付ける必要がある。」と環境変化を整理していました。また「トヨタ名誉会長の豊田氏は“中国などのアジア勢がプレゼンスを高めている。独連邦国も米合衆国もIoT(Internet of Things)を活用する製造業のイノベーションに取り組んでいる。ものづくり産業の国際競争力が低下して2流国3流国になりかねない。日本に残された時間少なくラストチャンスという意識で進めないといけない。”と品質管理シンポジウムで警鐘を鳴らした。」との記載もありました。・・・しかし最後は人材です。ますますコミュニケーション能力が必要になっていきます。相手の価値観、習慣、思考や行動のパターンをきちんと理解した上で協働や提携でないとうまく回りません。相手のストーリーや発言の背景を理解して聴く、自分の考えを筋道立てて根拠も示して伝えていく、ことが必要です。国際社会で生きていく力高める教育が大切です。
上述の「成長戦略の一部としての次世代を担(にな)う“子供の貧困対策”」について。日本では「相対的貧困率(可処分所得の中央値の半分に満たない世帯員の割合)が先進諸国の中では高く」なり続けていて、特に「子供の貧困率は先進国では最も悪化が続く国」になりつつあります。「分配政策の是正改善」が必要です。
失われた20年GDPが縮小してきた日本と、低成長といえどもGDPが拡大してきた欧米とでは、実情が逆です。ピケティの指摘(欧米における富裕層への富の集中による格差拡大)よりも日本社会では「中流下層の所得が減少し貧困が拡大している」ことの方が深刻な問題です。日本では欧米のような富裕層への富の集中はみられませんが「中下位層が貧しくなることで“国民経済全体貧しく”なっている」ことが問題です。それでも中流下層が貧困化していくことで、教育の機会均等が保障されず、貧困親子で世襲されていくと、ピケティが懸念する「相続財産で格差が固定する社会では再分配しないと人々が働く意欲を持てなくなるのではないか」という点で、日本は欧米と同じ課題を抱えています。・・・1980年代から90年代にかけてマクロ経済政策失政の繰り返しや、国会議員の政治の政局ゲームで日本経済は縮小が続き、縮小した部分のシワ寄せ中流下層の貧困化です。90年代後半就職氷河期の方々も中高年になっています。なぜこうなったか?を振り返ってみます。
プラザ合意(1985.9)の後の長すぎた円高政策継続、その後の性急な円高是正政策誘導された資産バブルへとつながり、日銀の遅すぎたくせに唐突に性急執拗バブル潰しバブル崩壊、これにソ連崩壊(1991.12末)の後の日本の政治混迷が重なり、1990初頭の資産デフレへの変調放置後手に回って、今度は景気刺激策と称して史上空前国債発行・公共投資を行い、これまた性急な消費税導入で、とりとめようもないデフレの奈落へ。更にはデフレなのに、IMFの助言を聞かずに「性急なゼロ金利解除」だの、「消費税増税」のデフレ政策の繰り返しの駄目押しして深刻なデフレをもたらした。・・・1991.12末のソ連崩壊で、先進国のマルクス主義左翼ほぼ崩壊したのに、なぜか日本だけは、政局優先の「自社さ政権」誕生で、マルクス主義政党社会党から村山富市首相が出るなど、およそ世界の潮流からかけ離れた政治が行われました。村山政権をもたらした当時の自民党指導層、例えば、河野洋平加藤紘一山崎拓亀井静香といった面々も連座責任は少なくないと思います。・・・当時、日本のマルクス主義左翼はご本尊のソ連が崩壊するのを前にして「格好の勢力維持の手段として歴史問題中韓に焚き付けて」今に至ります。・・・「失われた20年」の流れでは、先進国の中では日本のみが唯一でGDPが伸びず縮小・横ばいでした。GDPが縮小・横ばいなのに、財政投入の膨張政府債務が急増してしまいました。小泉政権で歳出が少し圧縮されて正常化に向かったのに、民主党政権でまた膨張させてしまいました。民主党政権の悪夢を思えば、1990年代初頭の「自社さ政権」の再来のようでした。2012年末の第2次安倍内閣登場で、ようやく小泉政権のレベルまでの政策正常化戻りつつあるところですので、経済再生のためにも、このまま安倍政権が続いてくれることを期待します。でないと中国のバブル崩壊最悪の事態にでもなれば、乗り切れなくなってしまうのではあるまいか?と危惧しています。“公正な自由競争のメカニズム”が働く限りにおいて、個人事業を含む企業は顧客獲得競争を通し創意工夫を行い、富を生み出し社会貢献を続けることができます。安倍政権には「規制緩和構造改革」をもう少しパワフルに進めて欲しいところではありますが。

*1:ISBN:4047100765「千年働いてきました」

*2: ISBN:4532191653

*3: ISBN:4532191459