青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

マテリアル系生産財

80-2/4 薄型テレビでプラズマと液晶の競争

画面大型化の経済性に関し、松下電器は(大型画面になればなるほど)部材コストと設備コストの二点でプラズマの方が液晶よりも有利である、と説明しています。 生産財の需要は、最終製品の需要からの派生需要ですから、大局観に基づく布石が極めて大切になりま…

液晶パネルの基板用ガラスでは米コーニングが世界世界シェアの5割、2位の旭硝子が2-3割、3位の日本電気硝子が2割・・と3社で殆どを供給していますがドイツのショット社も攻勢をかけています。

韓国での生産展開に関し、ジャスダック上場の倉元製作所はガラス基板の調整加工「切る・磨く・成膜する」の加工メーカーですが、電波新聞2007年2月26日付で「ドイツのガラスメーカー、ショットが75%出資、TFT-LCD用ガラス基板メーカーの倉元製作所が25%を出…

プラズマテレビ向けPDPパネルの基板用ガラスでは旭硝子が世界シェア7-8割でトップ、追いかけるのが日本電気硝子とセントラル硝子です。

ガラス業界で収益率トップの日本電気硝子は、2006年3月に「主力販売先の松下電器の尼崎新ライン稼動に併せて滋賀県高月事業所でガラス製造の二基目の窯を100億円投じて新設し、42型6枚取り換算で月産800千枚から1600千枚に倍増し、切断や加工など後工程でも1…

薄型テレビの派生需要でガラスに関し、耐久生産財の加工設備も進化が続きます。

大型液晶向けガラス基板のエッチング装置」に関し、日経新聞2006年6月2日付で「ワイエイシイが第八世代対応のガラス基板を加工できる縦横2メートル超で世界最大のエッチング装置を開発した。エッチング装置は、ガラス基板の表面に形成した薄膜を削り、回路を…

薄型テレビ向けガラスでは、MRO間接生産財ではパネル製造段階で露光装置にセットして使われるフォトマスク、マテリアル系生産財ではモジュール製造工程で取り付けられる光源のバックライトにもガラスが使われます。

液晶パネル製造の露光で使うフォトマスクのガラス基板に関し「ニコンが第八世代など大型パネル向けで本格参入する。材料は純度が高い石英ガラス。これまで自社の石英ガラスを切り出して外部に研磨を委託して基板として納入していたが、神奈川県サ寒川町の新…

ガラスもマテリアル系で進化が続きます。旭硝子の06年12月期決算の事業別内訳は電子・ディスプレーで営業利益792億円/売上高4766億円、ガラスが営業利益465億円/売上高8153億円、とのことです。

統計上の業種分類はガラス・土石ですが、実際の事業の中身はスパイラル進化で統計分類とは大きく異なる内容です。半導体産業新聞2007年3月28日付は「旭硝子は電子・ディスプレーとガラスが特に順調に推移、FPDガラス基板はTFT液晶用及びPDP用ともに堅調に推…

PDPフィルムで新製品開発が活発なのがPDP光学フィルムと貼り合わせる電磁波遮断シートです。

PDPのEMI(電磁波シールド)フィルムは、銅箔の精密エッチング製品を貼り合せたラミネートフィルムで量産開始されましたが、生産数量が拡大してくるとフィルムに導電薄膜を成膜した成膜フィルムへと移行し、更に各社各様の様々な工法が提案されています。 フォ…

PDP光学フィルターのトップランナーは旭硝子と三井化学です。実態との乖離が目立つ産業分類や株価欄で言えば異業種対決となります。

旭硝子は反射防止フィルム(商品名:アークトップ)とガラス板を自社製造し、電磁波シールドについては81と82で前述のスパッタリングでフィルム原反への透明導電膜の成膜を行い、これらをラミネートしています。旭硝子の最終出荷工場として精密貼り合わせを旭…

PDPパネルにはAR(反射防止)フィルム、NIR(近赤外線遮断・色補正)フィルム、EMI(電磁波シールド)フィルム、などが使われています。

PDPの最前面のAR(反射防止)フィルムでは85で前述の日本油脂が世界シェア7割で一強ですが、大日本印刷や富士写真フィルム、住友大阪セメントなどが挑戦しているところに松下電工の参入も報じられています。 PDP光学フィルターは上述の反射防止(AR)フィルムと…

液晶パネルの偏光板に関し、日本企業からの部材を調達して張り合わせて製造する韓国企業と台湾企業のシェアが急伸しています。

半導体産業新聞は2007年2月28日付で韓国の偏光板メーカーに関し、ディスプレイバンク社の「韓国メーカーは2006年に25%を供給した。2007年は約30%に伸びて、全世界偏光板供給能力4億56百万㎡の内訳で1億25百万㎡を供給するだろう。」との見通しを紹介していま…

液晶パネルの製造で使われる偏光板は「限りなく機能部品に近い部材(マテリアル系生産財)」といえます。

液晶パネル1枚当りで2枚の偏光板と4枚のTACフィルムが使われます。偏光板とは特定方向に直線偏光することで「一定方向の光だけを通す」機能を素材に付加した機能性フィルムです。PVA(ポリビニルアルコール)のフィルムにヨウ素や染料、テレビ向けではヨウ素の…

TFT-LCD大型パネル向け光学フィルムの素材(原反)に関し、偏光板素材のPVAフィルムでは世界シェア8割のクラレと日本合成化学、位相差フィルムの素材も古河系の日本ゼオンとJSRが主たる供給者です。

位相差フィルム素材は、古河系の日本ゼオンが自社開発のCOP(シクロオレフィンポリマー)を溶融押出で加工したゼオノアフィルムを開発し市場投入を本格化したことで、それまで独走していたJSRのアートンと逆転してトップに躍り出たと報道されています。それま…

液晶パネル向け光学フィルムの需要は成長が続きますが、ISO9001で言えば7.2.1の顧客の暗示の要求事項への自主対応の蓄積の差が近未来の競争力の源泉へと繋がっていきます。

日東電工社長の竹本正道氏は競争戦略について「液晶フィルムは面積が大きくなればなるほど作るのが難しい。当社は比較優位にある。フィルムは半導体と違って製造設備を持っていればどうにかなるという代物ではない。ノウハウが他社との競争に打ち勝つ上での…

薄型テレビの派生需要では高機能フィルムの進化と市場拡大が特筆されます。

薄型テレビは携帯電話などに比べると面積が大きいので膨大な派生需要を育み続けていること48と49で前述の通りですが、電子基板向けに関し、58でFPCではテープ基板の需要が伸張していること、57で絶縁基材のポリイミドフィルムで宇部興産の供給能力拡大を前述…

薄型テレビではPETフィルムが上述の反射防止(AR)向けを始め、様々な用途のフィルム素材として多用されています。

反射防止(AR)以外でもTFT-LCDでは位相差フィルムを積層するための剥離フィルムや偏光板の保護フィルム、バックライト用高反射フィルムなど、PDPでも電磁波防止フィルムや近赤外防止フィルムなどで使われているようです。 半導体産業新聞2006年11月1日付で「…

日本油脂はPDP向け AR(反射防止)フィルムでシェア7割のナンバーワンですが、PDP向けで成功したAR処理のスパイラル展開で今度は液晶テレビに展開しているそうです。

Electronic Journal 2007年1月号の記事はマテリアル系に着目する筆者/青草新吾にとってもシーズのスパイラル進化とマーケティングの関係について参考になりました。 「液晶テレビはAG(映りこみ防止)フィルムを使うことで(画像が)白っぽくなり黒が本当の黒で…

PDP前面板の保護膜兼カソード材料として酸化マグネシウム(MgO)が使われています。

酸化マグネシウム(MgO)は透明、高絶縁性、高融点で二次電子放出性が高いのでPDPの透明電極を保護する透明絶縁体(誘電体)の皮膜及び電子放出のカソード材料として使われています。 PDP発光セル(RGB画素の発光)で使われているMgOは、宇部興産系の宇部マテリア…

PDP製造で多用される各種ペーストやドライフィルムは精密化されたマテリアル生産財をマテリアル系で複合したマテリアル系生産財といえます。

PDPの背面板誘電体と前面板誘電体及び隔壁の形成で使われるガラスペーストでは、上述の東レや旭硝子以外に、東証上場のノリタケが数年前の決算短信で「新規に開発したPDP向けのガラスペーストと積層コンデンサー用ペーストが伸張し」と発表していました。ま…

PDPの画素製造工程ではガラス基板に絵付けを焼き固めていくように背面板と前面板を形成していくとのことですが、松下電器の広報では「正に日本ならではの備前焼のような工程」と表現していました。

PDPのパターニング(電極・誘電体・隔壁・蛍光体RGB)は感光性ペーストを多用する印刷技術なので「絵付けの焼き物」と比喩されます。83で前述した液晶パネルのTFTパターニングが半導体分野で進化したフォトリソグラフィであるのと対照的です。 PDPパネルの背面…

液晶パネル製造の前工程では、マスク、フォトレジスト、薬液、特殊材料ガス、ターゲット材、などの生産財を使います。何れにおいても日本勢が世界シェアの4割から7割を獲得しています。

ガラス基板に画素ごとのパターン形成をするアレイ工程とカラーフィルター工程では蒸着・レジスト塗布・露光・現像・エッチング・レジスト剥離・洗浄などがくり返されます。この分野ではJSRと東京応用化学(TOK)が圧倒的な存在感を示しているようです。 使用さ…

液晶パネル製造のアレイ工程とカラーフィルター工程のパターニングでは複数種類のターゲット材が使われます。ターゲット材はバッキングプレートにボンディングして供給されます。

液晶パネルの配線膜で使われるモリブデン粉末に関し、三菱マテリアルの子会社で、モリブデン粉末のトップメーカーである日本新金属(大阪府吹田市)は、兵庫県三田市に本社工場の分工場を建設し、液晶向け生産能力を倍増する、と日刊産業新聞2006年10月23日付…

液晶パネル製造で使われるマテリアル系生産財の部材では日本メーカーが世界シェアの過半を獲得していますが、大阪ガスはフルオレンの唯一の量産メーカーとのことです。

液晶パネル製造は、前工程で背面側のガラス基板に画素ごとのパターンニングでTFT(トランジスタ)を形成するアレイ工程と前面側のガラス基板にRGBを形成するカラーフィルター(CF)工程、後工程はアレイ基板とカラーフィルターを合わせて液晶を注入しパネルを組…

薄型テレビの主要デバイスであるTFT-LCDやPDPの透明導電膜の形成で使われるITO(インジウム・スズ酸化物)ターゲット材の供給が逼迫していますが、リサイクルを含めた増産と代替材料の実用化で需要は何とか賄えていけるだろうというのが大方の見方です。

レアメタル・ニュース2007年1月1日付で透明導電膜用ITO(Indium Tin Oxide/インジウム・スズ酸化物)ターゲット材で世界トップの日鉱金属 ・電子材料カンパニー・液晶ターゲット事業部の大野守一事業長へのインタビユー記事を紹介していました。 曰く「世界需…

フラットパネルディスプレイ(FPD)の透明電極や透明回路の形成では透明度が高くてエッチング性に優れるITO(インジウム・スス酸化物)がターゲット材として使われています。

生産財マーケティングでは、顧客業界の製造プロセスの流れを把握することが重要です。透明導電膜はITO(インジウム・スズ酸化物)がガラス基板にITOプロセスのスパッタリングで形成されます。液晶テレビのTFT-LCDではカラーフィルターの対抗電極とTFTアレイの…

コベルコ科研は、三菱電機系のメルコ・ディスプレイ・テクノロジー(熊本県合志市)に、アルミニウム合金だけ(の1層構造)でゲート配線を形成できる(アルミ合金の上に異材質を被覆する2層構造を必要としない)次世代ターゲット材を納入開始した。・・と日刊工業新聞が昨年2006年6月に報道していました。

TFTのゲート配線の材料で世界標準の地位を獲得できたコベルコ科研は「2層構造から1層構造への工程削減と原材料削減」で更なる進化を提案しているとのことです。 このターゲット材料は、合金化技術、インゴット製造技術、成形技術・・・の合わせ技で、まさに…

液晶パネル製造のTFT(薄膜トランジスタ)パターニングで行われる成膜に関し、神戸製鋼とコベルコ科研が供給するアルミニウム・ネオジウム合金のターゲット材が世界シェア8割で今や業界標準とのことです。

液晶パネルの画素に付くTFT(薄膜トランジスタ)のパターン形成では、ガラス基板への成膜とエッチングがくり返されますが、最初の成膜で使われるのがアルミニウムにレアメタルのネオジウムを添加した[Al-Nd合金のターゲット材料]とのことです。TFTゲート配線の…

日本は「世界人口の3%で世界GDPの1割強の付加価値額を生産する経済大国」ですが、75で前述の通り「レアメタルの世界消費では3割を占める消費大国」でもあります。レアメタルへの依存率が極めて高いのが日本経済の特徴です。

レアメタルとは、15.と75.で前述の通りベースメタルである鉄・アルミ・銅・鉛・亜鉛の5金属以外の金属のことで、日本国の統計対象は、例えば通関統計では貴金属を除く184品目です。 レアメタルはマテリアルに様々な機能を付加し高付加価値化な高機能素材を実…

化合物半導体ウエハーの供給では、総合1位が住友電工、2位が日立電線、3位が三菱化学、と日本勢が上位を独占しています。

Electronic Journalのレポートによると、2005年度の化合物半導体のエピタキシャルを含めての世界需要は約770億円で、世界シェアは、1位の住友電工が19.9%、2位の日立電線が15.8%、3位の三菱化学12.3%、4位のFreiberger11.7%、5位の昭和電工8.4%、以下、米Kop…

化合物半導体ウエハーで日本企業は世界シェアの過半を獲得できており、日本企業の競争力が高いという点で19と20で前述のシリコンウエハーと同様です。

化合物半導体ウエハーの需要規模はシリコンウエハーの6-7%で、素材別需要では6割がGaAs(ガリウム砒素)、2割がGaP(ガリウム燐)で、残るその他大勢の2割にはInPや次世代の窒化系などが含まれます。 単結晶の供給企業が顧客関連のプロセスを形成しているのは、…

日本企業が圧倒的な強みを発揮しているハイテク素材の一つが化合物半導体です。3G携帯電話の高周波デバイスや半導体レーザーやLEDのような発光デバイスで需要増加に加速がつき始めています。

マテリアル系生産財を象徴する化合物半導体ウエハーは、非鉄製錬や電線製造の周辺で志を持った方々が数十年の雌伏の時期を支えてきた事業ですが、高周波デバイスと発光デバイスへの需要の高まりで事業拡大へとドライブがかかり始めました。17で前述の「100年…