青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

エコシステム型の生産財営業でイノベーション共創と好社会を目指す。

東洋経済新報社から5月に出版されたばかりの「電子材料王国ニッポンの逆襲」の中で、半導体産業新聞編集長の泉谷渉氏は、半導体・電子部品・ディスプレー・太陽電池などのエネルギーデバイス、を総称するデジタル素材に関し、2015年の市場規模を30兆円と見積もった上で、この市場で圧倒的な世界シェアを持つ、且つご自身が取材された企業から60社以上ものデジタル素材の企業群を紹介しておられます。

半導体業界歴30年泉谷渉氏は「いまやマテリアルの時代が到来してきているとの確信を胸に、日本列島を駆け回り、その立てた仮説がやはり正しかった」と著書*1の中で述べておられますが、生産財営業歴30年の筆者もまったくの同感です。

以下 「電子材料王国ニッポンの逆襲」からの引用です。

素材という産業は、まさに忍耐の産業だ。開発に10年〜15年もかかることは日常茶飯事だ。タキロンの井平室長は、「こんなにかったるいことをして、さらに実搭載される製品との[摺り合わせ]に膨大な時間をかけ、価格戦略を決め、マーケティングに出る。こうした一連のロングレンジの作業は、日本人であるがゆえに、合っているのだ」ともいう。(中略)長くとも四半期単位で利益を出さなければ気がすまない米国や台湾、韓国などの企業には、この素材カルチャーは似合わない、ともいえよう。214頁。

援護する飛行機を1機も持たず、裸同然の戦艦大和は、米国の航空機数百機が群がり、何千発という砲弾をくらい、魚雷もまた十数発ぶちこまれ、なおかつなかなか沈まなかった。「この戦艦は化け物か!」と米軍の指揮官たちは舌をまいたという。大和を作った昭和16年時点での日本の技術力は、すでに世界最高レベルであった。60頁。

新日鐵化学電子材料部門を率いるリーダーの野瀬正照副社長は、ニッポン及び新日鐵グループの強さについてこうコメントする。「太平洋戦争の敗北が、このニッポンを強くした最大の要因だ。(中略)この悔しさが、戦後、鬼のようになって世界一の素材技術を作り上げていく原動力になる。」、鉄鋼非鉄金属化成品などの素材メーカーは、世界に冠たる技術に磨きをかけ、デジタル向け新素材の開発に今も執念を燃やしているのである。65頁。

デジタル素材を中心とする電子材料という分野が、いかに日本人の国民性にマッチしているのか、(中略)きめ細やかな感性、品質に対する徹底的なこだわり、さらには愚直なまでに1つのことを追求するある種の緩慢さがこの分野にあっては、日本の大きな武器となる。かって欧米企業によって徹底的に批判された日本の集団性が、デジタル素材という産業にとっては逆バリ的に有利に作用する。(中略)日本国民の教育水準の高さ(中略)、集団行動で圧倒的な強さをもたらすというかっての伝統が、いまや世界中で注目を集めている。246頁。

100年企業を中心に化学繊維非鉄金属印刷などの伝統ある素材産業は今、「日本の集団性」を武器に「電子材料」という黄金テクノロジーで復活してきた。ものづくりカルチャーにかけていく忍耐力こそが、日本の持つ最高の財産だといえるだろう。

*1:電子材料王国ニッポンの逆襲」泉谷渉 isbn:4492761608: