青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

2007-11-18 106-1/3 組織論で自己愛障害リスク

組織論を掘り下げていく上で、自己愛性人格障害に起因する生産性低下と組織崩壊の研究は、実際的で有効です。

  複雑な事象に対しては禅語の惺々著(眩まされるな!)の心構えが何かと役に立ちます。自己愛性人格障害から放散される事象は眩まされやすいようなのです。3カテゴリー10タイプの人格障害共通項の一つが現実検討能力弱いということです。その中で自己愛性人格障害とは「妄想の中の何でも思い通りにできる偉大な自分(誇大自己)を、現実の中の例えば職場で、ありとあらゆる理由をつけて妄想の中の誇大自己演出し、周囲への優越感に浸り続けようとする病的性格」です。
  自己愛性人格障害最悪モデルヒトラーといわれています。ヒトラーは選挙活動を通して勢力を拡大し、同床異夢の反共勢力からの支援も取りつけて大きな勢力となり、当時のヒンデンブルク大統領もしぶしぶとヒトラーを首相に任命。政府組織自己愛上司となったヒトラーは政府組織を変質させながら、最後は自らの墓穴を掘っていきました。
  現実の企業組織でも、組織の一部署自己愛上司が登用されると徐々に組織の変質が始まり、全社組織からは不全組織や癌細胞のような存在となり生産性低下が進みます。自己愛上司が見抜かれにくい理由は「出会い頭自己演出が得意であること、口先では組織のためとか社員のためなどと建前正義正論の立派なことをいったり、大言壮語のビジョンを語ったりする」から眩まされやすいのです。言ってることは建前で、やってることが本音だと考え、日々の生活習慣や言動、長年の実績に注目すると見抜きやすくなります。
  組織論と自己愛性人格障害に関し、114で前述の矢幡洋氏は「私の見るところ、上司になると困るタイプワースト・ワンを争うのが自己愛性パーソナリティと呼ばれるタイプの性格者である。仕事をきちんとやろうとしている真面目な社員疎まれて、ゴマすりだけが横行している組織、もの言えば唇寒し、の恐怖政治状態になっている組織、これに類して生産性を大いに低下させてしまっている組織、私の見聞した範囲内では、そのような組織解体の原因の中心は常に上司のパーソナリティ問題であった。」ということです。組織を崩壊させる自己愛上司のパーソナリティとは「組織目標口先でいうだけで、実現に見合うほどの努力はしない。勝手なシナリオを作って、自分が努力しなくても周囲が期待通りに動いてくれるのを当然のこととして勝手にその気になって期待している。内心抱いているカッコイイ俺サマ自己演出することにはかなりの労力を費やしている。口でいうことの立派さと、実際に自分がしていることのお粗末さのアンバランス、そのワガママ身勝手さと、それを寸毫も自覚することなく、凄まじい悪口を言って回る。自分で勝手に作ったシナリオ通りにならないと、ことごとく周囲のせいにする。自己愛上司は、自己演出に熱中するが、やらなければならない雑用をやりたがらない。仕事の軽重とそれにかけるべき労力のバランスが致命的に悪い。(事実を知る者からみれば手柄の横取りや作り話のような)自慢話を(事実を知らない第三者に)吹きまくる。」と述べておられます。組織崩壊への道筋は「前向きな努力を続けている仕事志向の社員士気低下で組織が崩壊していく。自己愛上司の、自分以外の人間に対する酷評、辛辣なコメントなどは耳に入るだけでも仕事志向の社員の士気を挫き周囲を傷つける。自己愛上司の下では仕事の上で挙げた業績については必ずしも評価されなくなっていく。自己愛上司を喜ばす連中が湧いて出てきて重要な権限を任されるようになる。」です。上述のような自己愛型の病的性格者とは、ウイルスのように生物の細胞の中に入り込んで、エネルギーや栄養源を奪い、抵抗する細胞組織を次々に破壊して最後には生物体を死に追いやるのと同じような存在といえるかもしれません。114で前述した米国の従業員支援プログラムのように「上司の命令で自己愛上司を強制的に治療させるプログラム」も一つの可能性かもしれません。
  次頁116では人格障害全般と自己愛性人格障害、精神医学者・心理学者の小此木啓吾氏の著書「困った人たちの精神分析*1について記述します。

*1:「困った人たちの精神分析小此木啓吾ISBN:4102900527