青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

110-1/3 健康な組織の正当性パワー・同一化パワー・情報パワー

組織とは組織目的を持続的実現するために編成される責任と権限の体系ですが、意思決定への影響力は必ずしも組織通りとは限りません。

生産財調達の意思決定モデルである購買センター概念を72[本稿抄録]や7[生産財消費財の違い]で記述しましたが、組織の中には多様なパワー(影響力)が存在しています。113で前述の奈良市役の病休不正に関して一橋大学大学院教授/沼上幹氏の奇妙な権力についての記述を引用させてもらいましたが、沼上幹氏は著書*1で、権力の源泉について次のように述べています。以下抜粋[権力の源泉が単純素朴に1.正当性パワー、2.同一化パワー、3.情報パワー、4.賞罰パワーのみであれば、組織は極めて健康であり、健康な組織にあっては、自分の権力を大きくしたければ、自分で努力をしたり知識を身につけたりして、人間的魅力を高めるしかない。この場合には健全な競争が促される。しかし常日頃に経験しているドロドロした現実では、組織の中で奇妙なパワーが実在している。例えば大企業に多い優等生組織を温床として跋扈する厄介者の権力や、天下った人が自分の貢献を大きく見せようとしてキツネの権力を発揮して「二つの組織の間をいろいろかき回す」ことや「誇張した外部の脅威で自分の立場を強くする、例えば顧客が実際以上に強く、強い交渉力を持ち、厳しいクレームをつけてくるとか、競争相手がこちらよりも圧倒的な開発力を持ち、はるかに賢いなどとの競争相手を神格化してみたりで、組織が踊らされて組織腐敗が進行する]以上抜粋。これらの奇妙な権力が発生し跋扈するのは、117で前述の優等生組織減点主義形式的年功序列3点セットが揃った組織です。この対極にある組織が、加点主義できるまでやるを標榜する日本電産かもしれません。HDDモータ世界トップの日本電産創業者/永守重信社長が厄介者やキツネにとって天敵みたいな存在なのかもしれません。
永守社長は著書*2で「組織を乱す考え行いには毅然たる態度で臨め。」と、また「大企業出身者は、個人的には非常に優秀で、能力も高い。しかし部下を動かしたり、組織をコントロールしていくための訓練ほとんど受けていないというのが、わたしの実感である。途中入社の社員で入社早々しかるべきポストについた者は、必ずといっていいほど、『みんなの前で、部長をあんなに叱って大恥をかかせたら、あの人の立場がないんじゃありませんか?』と忠告してくれる。私は『あんた、そんなことを言うてるうちは、まだワシに叱られるにはほど遠いな。』と答える。結果的にみると、さんざん人前で叱られて恥をかかされた人間は一人も辞めていない。反対に非常に気を使って、たまに『君はよくやってくれるな』と声をかけてやったりした人の方が辞めている。」「叱って育てるのはまず幹部から。ポストと権限を大幅に委譲する。(逆に)この人間はこのままではダメになってしまうと判断した場合は、思い切った降格を行う。(降格した後に)降格された本人がやり直すことができれば、すぐに元へ戻す人間は何度かやり直しがきくものである。」と述べておられます。組織内部や組織と組織の関係では様々な人間模様が織り成されていきますから、顧客関連のプロセスや営業プロセスのコミュニケーションを考察する上で上述の知見はとても参考になっています。