青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

114-1/3 組織生産性で分業

規模の経済が働く機能別分業の組織デザインでは、トヨタ自動車に代表される職能別組織と、松下電器(パナソニック)に代表される事業部制組織がモデルを提供してくれています。

自営業などの一人組織の中には、ISO9001(業務品質)の認証取得にチャレンジされる方々がおられるそうです。ISO9001の診断は、人体の健康診断診断手法が似ています。健康診断では、各器官機能チェックを行い、各器官が統合されたシステムとしての人体健康状態を診断します。ISO9001も、主なプロセス機能チェックを行い、それらのプロセスが統合されたシステムとしての組織全体業務品質を診断します。一人組織であっても、営利事業には営利事業としての世界共通プロセス(機能目的別の一連の仕事)がありますから、部分部分のプロセスの機能チェックとシステムとしての組織の有効性は検証可能です。自営の一人組織であれ巨大組織であれ、事業を営む営利組織とは、最高経営責任者の下で、開発(創る)・製造(作る)・販売(売る)などの付加価値を生み出す主要プロセス経理などの支援プロセスから構成されています。一人組織の場合には、一人でこれらの機能をこなしておられます。
自営の一人組織では、自営経営者が一人で仕入販売や経理などの組織の諸機能をこなしていますが、販売員や会計事務員など他人を雇用すると、経営者従業員垂直分業が始まります。経営者は、垂直分業で従業員に実行作業を任せることで経営者ならではの作業により多くの時間を割くことができるようになります。次に従業員が増えてくると従業員の水平分業が始まって、職能別組織(functional organization/最近は機能別組織と訳す人も多い)が形成されます。上述の水平分業には並行分業と機能別分業があります。並行分業とは、類似作業の従事者数を増員することです。増員の効果で、全体の出来高が高まるとともに、コストセンターの支援プロセスからの共通配賦では一人当り賦課(割掛経費)が薄まります。機能別分業とは、例えば調製加工(下ごしらえ)と加工(調理)というように仕事を機能分解することで生産性を高めることです。機能別分業の利点とは、並行分業の利点である共通配賦による単位当りの負担軽減に加えて更に、タスク分解(純化)による人件費削減、熟練と知識の専門化の効果です。121で前述しましたが、機能別分業がもたらす規模の経済による生産性向上とは、上に凸の正規分布曲線と同様で、集団規模がマネジメント限界に到達するまでは生産性向上が続きます。マネジメント限界を超えてしまうと逆に生産性低下が始まります。集団規模が大きくなってくると、マネジメント限界への予防から組織分割が行われます。このあたりから職能別組織と事業部制組織の選択肢が大きな意味を持つようになります。職能別組織の代表事例がトヨタ自動車です。クロスファンクショナルな主査制度などの様々な工夫がなされているようですが、軸足は職能制度ということです。事業部制組織の代表事例が松下電器(パナソニック)です。
事業部制組織(Divisionalized organization)あるいは事業部制(multidivisional system /M-form)とは、経営を事業別分権化する組織あるいは経営制度です。日本企業のカンパニーとは、事業部制組織のことです。事業部トップは、総合本社から与えられた全体方針枠組み範囲内自律的経営を行います。自己完結的な企業内企業として事業部トップの指揮下には、主要プロセス(開発・製造・販売)に加えて支援プロセス(人事・財務・情報システム)までの殆どの職能が配置されます。1930年前後に米国のデュポンGMが先鞭をつけ、日本では松下電器が1933年(昭和8年)に導入して先鞭をつけました。米国GMの場合には、それまでの[持株会社+子会社群]ではあまりにも分権すぎて無秩序になり易いという反省から、求心力を高めるため事業部制へと編成替えされたそうです。米国とは逆に、日本では松下電器のように、企業規模の拡大と多角化が進展したことで分権化が進んでいった事例が多いようです。次頁では、松下電器の事例を通して事業部制組織の進化と21世紀型組織のヒントについて記述します。