青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

123-2/2 携帯電話端末向け中間財のモジュール

携帯電話端末の世界出荷が10億台を超え、日系企業が世界シェアの過半を獲得している携帯電話端末向け電子部品の需要拡大が続きます。

携帯電話端末の世界出荷は、2000年4.25億台が03年からBRICs需要が急増し、04年/6.83億台、05年/8.10億台を経て06年は10.0億台に到達しました。上述の携帯電話の出荷台数の需要拡大は、中国や印度(インド)を中心とするBRICs諸国における新規需要増加と、欧米などでのハイエンド機種への買い替え需要の増大です。需要がハイエンドローエンド二極分化しています。供給は、128[携帯電話の世界需要]で前述通り、今はトップ5社(ノキアサムスンモトローラソニーエリクソン・LG)が世界シェア8割強を抑える寡占状態です。筆者/青草新吾が、携帯電話向け供給で関わりだしたのは第1世代の黎明期ともいえる87年頃ですが、当時は、首位のモトローラを、日本勢のNECと松下通信が追い、北欧のエリクソンノキア三菱電機がぴたりとつけていたように思います。
端末の供給では日系メーカーのシェアが低下しましたが、17[電子材料王国ニッポン]で前述通り、マテリアル系電子材料並びにこれらの電子材料を駆使した中間財の電子部品の供給では、日系メーカーが圧倒的なシェアを獲得しています。
電子部品需要の全体は、小型・高機能化の進展で回路部品のモジュール化と1台当りの部品点数削減が進みながらも、今のところは端末の台数増加と高機能化による部品需要創出による市場拡大効果の方が、部品点数削減や価格低下による市場縮小効果を上回っており、需要拡大が続いています。携帯端末1台当りでみると、ハイエンドで使用されるデバイスの高機能化という増要因と、ローエンド端末における使用点数削減などの減要因という増減の両要因がありますから、携帯電話の増加ほどは需要が伸びない現象もみられます。例えば照明デバイスLEDの場合には、携帯電話1台当たりの使用個数が減少しているようです。半導体産業新聞2007年7月25日付で「携帯電話では、LED一個あたりの高輝度化によって、以前より一台あたりの使用個数が減っている。国内向け端末で平均10-20個海外向け端末だと4-6個、超ローエンド端末の場合2個というケースさえある。」と報道していました。携帯電話が使用する電子部品・デバイスJEITAの統計分類で整理すると、接続部品でコネクタや操作系スイッチ、変換部品でスピーカーやバイブモータ、回路を形成する受動部品(LCR)と電子基板、その他でスイッチング電源と水晶デバイスなど、電子デバイスで液晶やCCD/CMOSやRF LSIなどの集積回路、他にJEITA統計外では、105、106で前述した電池などがあります。ハイエンドの携帯電話だと、1台当り7百個デジタル部品が使われていると聞きます。
ハイエンド携帯では日本は今でも世界有数の市場です。この点で日系電子部品メーカーは有利です。日本国内で先行して立ち上げてから、世界市場に投入できるからです。因みに電波新聞2008年3月19日付(ガートナージャパン)によると「07年度の国内販売実績は、カメラ付携帯電話で買い替え需要が大きく伸びた03年を上回る5.23百万台でこれは日本の携帯電話産業史上、最も高い数値である。首位はシャープ(24%)、2位がパナソニック(12%)、3位富士通(11%)、東芝(10%)、NEC(9%)・・。」とのことです。高機能化は更に115から120で前述したHDDやMEMS技術を応用した超小型3軸加速度センサー手ブレ補正モジュール・・などの開発と搭載が進みます。
昨年から市場投入が活発になっているワンセグ対応のチップ・チューナー(ワンセグ受信用モジュール)は、携帯電話以外でも、携帯ゲーム機モバイルPCポータブルTVポータブルDVDプレーヤーカーナビ電子手帳などにも搭載が進んでいます。モジュール化することで、ユーザー側のセット設計効率やコストダウンを考慮した製品開発が進みます。欧州、米国、中国、アセアン(ASEAN)など、各地区仕様に合わせたチューナーの開発も進められています。電波新聞2007年10月31日付は「現在のワンセグの需要主体である国内携帯電話に占めるワンセグ搭載率30%程度国内ワンセグ受信機の需要は、06年の年間4百万台から、07年は2千万台近くまで増加すると予想される。携帯端末内蔵用のワンセグチューナーは、外形10ミリ角程度で高さ1.5ミリ程度の第2世代チューナーの生産が本格化している。低消費電力化では100mWを切る対応のものが製品化されている。チューナーモジュール向け回路部品の水晶デバイスに関し、日本水晶デバイス工業会(QIAJ)の調査によると、ワンセグチューナー向け水晶デバイスは、2010年に概ね5千万個に達する見通し。」と報道していました。
ワンセグ放送受信用モバイルチューナでトップを走るシャープに関しElectric Journal 2008年4月号は「ワンセグ用チューナーモジュールでは、シャープが08年2月に業界最小パッケージ(VA3A)を発表した、同社第一弾からは体積比で80%減の5.9x5.9x0.9mmを、消費電力は高周波ICの採用で消費電力80mWを実現。OFDM復調ICとチューナICのレイアウトを最適化することで省サイズ化し、従来品と同等の高感度特性である-109dBmを確保。今後はフルセグチューナの開発も進めて、現行50x40x15mm程度から小型化を図り、数年後にはモバイル用のフルセグ対応製品を実用化するという。テクノ・システム・リサーチによると、携帯電話2007年度国内出荷の36.9%/18.8百万台がワンセグ受信対応。2010年には同75%/34.1百万台へと成長する見込み。」と、また電産新報2008年3月3日付は上記内容に関し「シャープが開発したワンセグ用チューナーモジュールVA3Aは、従来品VA2Aに比べて面積を35%、厚さを28%削減したもの。9月末から月産1百万個で量産を開始する。ワンセグ受信機能を搭載した携帯電話の累計出荷台数は、2007年末時点で20百万台、総出荷台数に占める搭載比率は55.3%に達している。」と、また、2008年1月28日付電波新聞ではシャープの電子部品事業本部長/山内美芳氏が「電子部品事業の4重点拡販商品が、モバイル放送チューナー、光ピックアップ、LED、半導体レーザー。モバイル放送チューナーでは、シェア50%獲得を目指す。」と表明しておられました。
同じくシャープのLSI事業本部センサーモジュール事業部長/本道昇宏氏が、トップを走るカメラモジュールに関し電波新聞2008年3月14日付で「世界シェア25%の携帯電話用カメラモジュール(月産12百万個)を拡大しながら、非携帯電話分野のDSC用監視カメラ用車載用医療用を開拓し、非携帯電話向けを早く50%にまで引き上げたい。」と述べておられました。
モジュールということでは、欧州で普及した無線LANブルートゥースモジュールが日本でも、また超小型GPSモジュールやカメラ用の手振れ補正モジュールなどの開発も進んでいる、と報道されています。