125-1/2 中国共産党のプロパガンダ詭弁とチベット雪山獅子旗(せつざんししき)
生産財輸出の最大仕向国である中国のカントリーリスクが高まりつつあるようです。中国の共産党政権から流布される洪水のようなプロパガンダを裏読みして、長期展開を洞察していかねばなりません。
多くの嘘や捏造を流布するのが戦時下のプロパガンダです。反対に、科学技術やビジネスは事実の積み重ねの上に成立しています。
経営品質活動の前提は事実に基づく判断です。仏教も諸行無常や生々流転で宇宙の真理と人間の真理と向き合うことを教えています。トヨタ生産方式の故大野耐一氏は「事実を重視する。次にデータも重視する。」*1ですし、本田技研を創業した故本田宗一郎氏は「私は行動に100%の表現力を認めている。私は、言葉や文字を信用できない。泥棒にも三分の理屈で、人間、理屈をつける気になると、相当に無理なことにも一見モットモらしい正当づけ、あるいは合理づけができるものである。さらに高等技術を駆使する連中にかかると、権威づけまでやってのける。」*2と述べておられます。
先進国では民主主義や裁判の原則も事実に基づく判断です。経営品質や品質管理の基本は事実に基づく判断です。
この反対で、事実に基づかない捏造話が多いのが中国共産党が流布するプロパガンダの特徴です。筆者/青草新吾は、2030年頃には中国が世界最大のGDP大国になるだろうという能天気な予測には懐疑的な立場です。事実を軽視するような民度が低い国家社会で、テクノロジーやその対極にある精神文化もともに発達するとは思えないからです。
ジャーナリストの高山正之氏はWILL(2008年7月号)で「五月の連休に中国に行った。滞在先で観た中国のテレビ放送は、列車事故について、フランス人4人を含む70人が死亡した惨事だというのに事故から3日後にようやく放送した。それも大したことではないといわんばかりにほんの軽く流しただけだった。(反対にこれこそ大事なことだといわんばかりに)毎晩流し続けていたのがチベット問題だった。
そしてチベットは12世紀から中国領だったとやっていた。これは詐欺師の言い方だ。12世紀といえば元のフビライの時代のことらしい。この場合の中国人とは漢民族のことだから、事実はモンゴル人の元が漢人の中国とチベット人のチベット、この両方を支配したのであって、中国がチベットを支配した訳ではない。
12世紀の中国はチベットと同じく元に征服された身だったはずだ。それを中国の一部であるモンゴルが12世紀にチベットを併合したのだから、チベットは中国の一部(つまり漢民族のもの)なのだ、と平気でいう。毎晩この調子で番組を流すから、中国人(漢民族)はみながチベットはオレの国のものだと信じて疑わない。
ただ当のチベット人も、英国人も日本人もどこの国の人もそう思っていない。それを北京は中国人には知らせない。(共産党のプロパガンダの中で生活する)中国人に教えなくてはならない真実があまりにも多い。
中国には共産党幹部用を除き墓がない。毛沢東の大躍進の失策で数千万人の餓死者が出た折に毛沢東が死体を畑の肥やしにするよう指導した。それで農村の墓が消えた。次に文化大革命では、走資派を鍋で茹でて殺して食った(N・クリストフ「新中国人」)ように、反革命分子や走資派と名指しされた人々のすべての墓が暴かれ、都市の墓地も消えた。今は火葬にして納骨堂に収めるが、それにしてもあのころ中国人は中国人に生まれたことを呪ったものだ。」と寄稿しておられました。
戦時体制の延長にある中国の共産党独裁政権は政治目的の嘘は正当であると考えています。だからこそ中共政権の発表には嘘が多いのは当然だし、言論の自由が保障された国々に持ち込まれる中共政権のプロパガンダは鵜呑みにしないように注意するしかありません。
中国の共産党独裁政権から流されるプロパガンダについては、中国内部で教育を受けた方々の経験談が参考になります。月刊中国(発行所:兵庫県河東郡東条町、発行人:木下清美)の編集長/鳴霞氏(日本名が木下清美さんらしい)は「中国共産党は政治利用のためなら平気で嘘をつく。南京大虐殺三十万人なんて(中国の)教科書に出てきたのは1981年からです。それも(朝日新聞が連載した)本多勝一氏の中国の旅の中国語版を読んで知ったという中国人がほとんど。じゃそれまで何と教えていたか。国民党が三十万人を殺した、です。」*3と。
また亡命チベット人のTash Despa氏は「亡命後に、チベットでの報道の多くが中国政府のプロパガンダであったことを知った。テレビではほとんど毎晩、日本軍が中国人の男の首を刎(は)ね、女を強姦する番組が流されていましたからね。チベットはまるで網に捕らえられた鳥です。」(CORRIER Japon 2008年6月号)と自らの経験を吐露しておられます。
世界的なベストセラーとなったマオ MAO*4の著者ユン・チアン(Jung Chang)女史は、中国四川(Si Sheng)省でのご自身の経験、ソ連の共産党独裁政権が崩壊した後に明るみに出てきた膨大なロシアの開示資料、480名に上るインタビュー、その他膨大な文献からこの大作を発表されました。第42章チベット動乱の中に「チベットでダライラマに次ぐ地位にあるパンチェンラマが1962年に周恩来にあてて書いた7万語にのぼる書簡は、周恩来自身がこの手紙に書かれた内容が真実であることを認めている。・・・・人々は目、耳、口、鼻から血を流すまで殴られ、手足の骨を折られて気を失った。あるいはその場で死亡した。チベット史上初めて、自殺が珍しくない行為になった。・・・反乱軍の平定にあたった中国軍は、残虐きわまりない行為を行った。ある場所では、遺族が呼び集められ、中国兵から、きょうはめでたい日だ。おまえたち、みんな死体を埋めた穴の上で踊れと・・・チベット人にとくに大きな精神的苦痛を与えた命令は、仏教による葬式が禁じられたことだった。」という記録が記述されています。
また訳者あとがきで土屋京子氏は「本書には、毛沢東が朱徳などの部隊を乗っ取り、わざと死の行軍へと導き、主明に毒を盛り、数千万人の国民を餓死させてまで食糧を輸出してソ連から武器を購入した事実が書かれている。・・・・本書の全編が、いままで伝えられてきた毛沢東像のみならず、中国近現代史の共通認識まで問い直しかねない、ショッキングな暴露の連続なのだ。・・ユンチアンと夫のジョンハリディが多くの新事実を発掘してマオを書いたことがわかる。」と述べておられます。
言論の自由を尊ぶ自由主義諸国に対して、中国共産党の一方的なプロパガンダをそのまま流布してきた米国人/エドガー・スノー氏(「中国の赤い星」の著者)や日本の朝日新聞の歴史的な罪は大きいと思います。
台湾人は、中国と日本及び米国との交流が深いだけに、日本人にとっては比較文化の視点からの判り易い情報を提供してくれます。中華思想について金美齢氏は正論7月号で「まことに中華思想は厄介である。それ自体が多くの中国人を不幸にしているのだが、その逆説に気づく中国人はいない。中華思想とは、中国とは世界の中心であり、周辺の国々はそれを取り巻く衛星にすぎない、という信仰なのである。・・・台湾では、日本の統治時代を経験している世代を中心に、戦後50余年、日本精神が日々薄れ、代わって、中国式に染まりつつある台湾社会に危惧の声が上がった。リップルチェンシンという台湾語として定着した日本精神とは、勤勉、向上心、正直、仕事を大切にする、約束を守る、時間を守る、フェアであること等々、戦前の日本人が台湾に持ち込んだ諸々の徳目であり、それを良きものとして受容し、大切にしてきた台湾人の思いである。
対する中国式とは、自分だけが得をすればよいという物事の考え方、お上を絶対に信じない、秩序を絶対に信じない、上に政策あれば下に対策あり、という中国人の思考様式である。人命軽視も中国式である。文化大革命では7千万人が殺戮されたという。晩年の毛沢東は、訪中したフランスのポンピドー大統領に、場合によっては米国と戦争するかもしれない。中国は人口が多すぎるから、2-3千万人くらい死んでも一向に構わない、と答えたエピソードにも人命軽視の中国式が表れている。」と寄稿しておられました。
台湾出身の黄文雄氏は著書*5で中国の領土観に関し「中国のいう絶対不可分の固有領土とは、モンゴル人(Mongolian)の元や満州人(Manchus)の清など異民族王朝にしてこそ成し遂げられた征服領土までをも、中国(漢族)のものだと主張しているのである。中国には古来から中華思想にもとづく伝統的な固有領土観がある。終戦直前の1943年のカイロ会談を前に、中華民国の蒋介石(Chiang Kai-Shek)は、米国のルーズベルト大統領に、朝鮮半島の返還を要求した。中華人民共和国の樹立後の1950年には、毛沢東が農奴解放を口実にチベット(雪国/カワチェンと発音)を占領した。・・その後も中印、中ソ、中越をはじめ、17回に及ぶ対外武力行使で領土紛争を繰り返してきた。1992年の領海法制定では、南シナ海を中国の内海と宣言した。・・今でも、海を越え、南シナ海をはじめ、北上して日本とは尖閣諸島、さらに沖縄をも領土紛争の視野にいれている。韓国とも、離於島(韓国名=イオド、中国名=蘇岩礁)、鴨礁、虎皮礁など島嶼をめぐる領土紛争を繰り広げ、もちろん台湾併呑をもめざしている。・・・・
毛沢東が自ら編纂したといわれる近代中国小史という本の附図には、帝国主義に奪われた中国の固有領土として、パミール高原、ネパール、シッキム、ブータン、アッサム、ビルマ、タイ、ベトナム、台湾、ルス群島、琉球(沖縄)、樺太、を挙げている。さらに、ロシアに侵略された領土は5.5百万平方キロメートルもあり、日本の国土面積の約15倍に達すると主張している。・・・」と説明してくれています。筆者/青草新吾もこの説明で、何故に中国起因の領土紛争が多発するのか、理解できました。
共産党独裁下でおこる事象は多くの日本人の理解を超えてしまっています。領土紛争の最前線に出張ってくる人民解放軍の言動、あるいは文化大革命の頃までの記録が残っているという勝者が敗者を屠殺して食べてしまう食人文化(?)など、次頁では黄文雄氏他の著作などから拾い出してみます。
*1:「トヨタ生産方式」大野耐一著 ISBN:4478460019
*2:「得手に帆あげて」本田宗一郎著 ISBN:4837900658
*3:「チベット大虐殺の真実」 ISBN:9784775512050
*4:「マオ」ISBN:406213201X
*5:「日本人が知らない中国の正体」黄文雄著 ISBN:9784880862262