青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

132-2/2. 電子基板の多層化と高密度化

プリント配線板(PWB)は実装密度の高まりによる回路の結線と配線の増加で多層板[貫通多層板・IVH多層板・ビルドアップ多層板]の進化が続きます。

進化とは発達退化です。国内生産では退化傾向が強い片面基板のスパイラル進化に関し58[06年9月]で前述しました。31[06年6月]では、JPCA統計から国内の電子基板生産1兆円強の25%がフィルムベース基板、75%がリジッド基板と記述しました。136[08年7月]では多層板の内訳で2-3割を占めるビルドアップ多層板が当初の予想ほどには伸びていないという伸び悩みについて記述しました。ビルドアップ多層板の工法は、IBMが開発し今は京セラSLCテクノロジーが手掛けるSLC法、パナソニックエレクトロニックデバイス(旧松下電子部品)が開発したALIVH法、東芝が開発し今は大日本印刷がファミリー形成を進めるB2itがあります。大日本印刷が主導するビルドアップ配線板製造技術B2itに関し電産新報2008年7月28日付は、「B2itは、スクリーン印刷で形成したバンプを用いて層間接続(ビア接続)する技術。現行ファミリー企業は、携帯電話向けで先行するクローバー電子工業メイコーエルナー(いずれもレーザーを使用)、韓国サムスン電機など。このほど新たに大日本印刷が技術供与で合意したのが台湾のユニマイクロン・テクノロジー香港での合弁会社設立でも合意した。新会社の[UDアライアンス・テクノロジー]はユニマイクロンの中国・昆山工場に携帯電話向けプリント配線板の生産を委託し、大日本印刷とユニマイクロンに販売する。」と報道していました。
薄さの追求で貢献するフィルムベース基板に関し、電産新報2008年7月28日付は「日立電線TAB事業で2011年度に2007年度見込み比2倍の5百億円を目指すとする中期計画を策定した。メモリ用TABでは、次世代マイクロBGAの投入と生産能力増強により、ボリュームゾーンへ進出する。COFでは、カシオマイクロニクスから買収するフィルムデバイス事業との統合効果で25%(当社10%、カシオ15%)のトップシェアを目指し、2009年度の黒字化を実現する。特定用途TABではTABの応用市場を開拓する。」と、部材のCCL(銅張積層板)に関しては、ポリイミド銅張積層板(2層CCL)を展開する宇部興産の動きに関し「宇部興産は2000年にCCL事業に参入して以降、松下電工に製造技術をライセンス供与するなど取組を強化してきたが、4月1日付で全額出資子会社の宇部日東化成2層CCL(ユピセル-N)を事業移管した。従来、宇部興産宇部日東化成に自社製ポリイミドフィルムに銅箔を張り合せる工程を委託していたが、開発と販売を含めた全事業を移管することで市場対応力を高める。」と、報道していました。
回路微細化による小型化を牽引してきた半導体バイスですが、微細化の限界が近づいてきているそうです。半導体を含むエレクトロニクス業界の進化と発展のパターンでパラダイムシフトが起こるかもしれません。産業レベルでサプライチェーンでみると、3兆円の半導体材料と5兆円の半導体製造装置から28兆円の半導体バイスへと供給され、半導体バイス産業からは、22兆円のPC、14兆円の携帯電話、35兆円のデジタル家電、70兆円の自動車へと繋がっています。オムニ研究所の湯野上隆氏はElectronic Journal [2008年7月]で「今後、28兆円規模の半導体メーカー及び5兆円規模の半導体製造装置のメーカーが生き延びていくためには、微細化神話からの脱却が求められる。昨年、米TIソニーなどが、相次いで45nm世代以降の微細化を行わないことを発表した。半導体の品種別には、微細化の最先端を走るのはMPUメモリ及びロジックの一部(ASICとASSP)であり、半導体全体(28兆円)の1/3程度である。半導体の微細化が止まった場合のアプリケーションから見たインパクトを論じる。22兆円産業のPCは、PCの性能に飽和感があり、世界の趨勢は低価格PCに移行しつつある。2006年11月には100ドルPCが発売された。次々と数百ドルPCが発売された。・・・携帯電話の場合には、2006年時点で14兆円市場であるが、今後、最も大きな成長が期待できる。半導体の微細化が止まっても今まで携帯電話の内部で処理していた機能を、基地局で処理するようになるだろう。・・・価格下落が激しいデジタル家電の市場規模は35兆円だが、、微細化が止まっても、あまり影響はないだろう。北米テレビ市場では2007年8月に、たった90人のVIZIOが50型のHD PDP-TVと42型HD LCD-TVを999ドル(約110千円)で発売し、シェアトップに立った。この結果、大手メーカーには、撤退や企業再編の波が押し寄せている。・・・70兆円規模の自動車の場合には、原価に占める半導体の割合が増えていく。2000年時点で16%程度であったが、2010年には40%以上になる、との予測もある。しかし微細化については、トヨタ、日産、デンソーダイハツなどの設計者にヒアリングを行ったところでは、信頼性コストが重要なので、最先端の微細化は必要ないとという回答が多かった。」と報道していました。