青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財営業でイノベーション共創と社会貢献を目指す。

141-3/3. 20世紀前半までの植民地争奪戦

20世紀前半までの帝国主義は植民地争奪戦でした。歴史のスパイラル展開で21世紀に帝国主義が勢いを増すとすれば、有限な地球で生存をかけた金融、食糧、天然資源の争奪戦になりそうです。

18世紀から19世紀にかけて西欧で起こった産業革命とその後の植民地獲得競争はアジアなどの非西欧諸国過酷な植民地支配の歴史を書き加えていきました。同じ時期に日本は鎖国の中で世界史上稀に平和で豊かな社会を実現しており、江戸時代までの蓄積があったことから、欧米列強の植民地とされることもなく、明治維新という世界でも稀に穏やかな権力交代を行い、当時の覇権国家であった英国と日英同盟を結んで殖産振興富国強兵で急速な国力増強を実現していきました。その後、第一次世界大戦(1914−18)を経て覇権国家英国から米国へと移り変わっていく過程で、ロシア革命(1917)でソ連が建国されたことから日本の立場複雑になりました。米国では共和党フーバー政権(1929-33)が誕生し、アジアの反共の防波堤として強い日本を期待していました。しかし世界大恐慌(1929-33)によって勢いを得て政権交代した民主党ルーズベルト大統領はフーバー政権とは正反対にソ連と組んで日本と対峙する政策を取り始めました。ルーズベルト政権の中枢には、ソ連共産党コミンテルンの活動家多数入り込んでいたことがソ連崩壊後公開公文書次々と明らかになってきていること144[2008.10.28]で記述した通りです。
敗戦後の日本にとって、米国主導の世界良かったのは、国家統治における原則としての“法の下の平等”、国家意思を決定する原則としての“民主主義”、人間が生まれながらにして持っている自然権としての“思想・良心の自由”、これら国民国家の基本概念の普及でした。しかし米国の進歩主義思想は、全体主義みたいに振舞うことも多々あります。米国建国以来の進歩思想、つまり自由と民主主義こそが進歩の最高段階にある普遍的価値であると信じて疑わないからです。だから後進国と決め付けた諸国に対して様々な押し付けを行います。米国リベラル左派に至っては、敗戦国の日本では、後進性と決め付けた伝統を破壊する革新GHQ支配を通して行いました。米国の進歩主義イデオロギーは、男女の生物学的違いを無視した“行き過ぎたフェミニズム”や“捕鯨反対”などを世界中にばら撒きまいてきました。米国による米国流の押し付けに関し、140[2008.8]で前述した堺屋太一*1モンゴル帝国米国を比較しながら「世界帝国の何よりの敵は、主観的な価値観のおしつけである。押し付ける本人は正義と感じ、相手も幸せにすると信じているから始末が悪い。・・・・米国も自らの正義と美意識を他国に押し付けるべきでない。例えそれが民主主義市場経済であっても。グローバル化悪疫広める米国の経済文化グローバル化が進むと同じことが生じている。」と指摘しておられますがまったく同感です。堺屋太一氏は、モンゴル帝国の強さと崩壊について「チンギスハンが生きている間に物心ついた孫たちまでは、チンギスハンの“文化不介入大量報復戦略による安上がり政府”というコンセプトをよく守った。だが孫の子孫の孫となると宗教による差別文化介入が始まった。無限無差別の取り込み主義は破れ、文化への介入が始まり、帝国の内部争いから軍事力が分散して大量報復も実行されなくなり、弱体化していった。」と歴史から引用していました。
米国は民主主義国家のはずですが、こと金融に関してはとても全体主義に振舞ってきました。今回の危機をもたらした米国の過激で無分別な金融資本主義主義は、クリントン42代大統領民主党政権下で行われた1992年の“グラススティーガル法改悪”による商業銀行業界と証券業界の垣根外しが決定打となりました。・・・ここで今一度、米国政府の中で米国流の金融資本主義が勢力を増してきた経緯をレビユーしておきます。・・・米国はレーガン40代大統領共和党政権(1981-89)で保守主義運動のピークを迎へ、大きな政府から小さな政府へと潮の流れが変わりました。それまではルーズベルト32代大統領の民主党政権で定着したリベラル路線(=革新左派、政治は自由主義だが経済は政府主導)によるニューディール政策に代表されるような“大きな政府”が潮の流れでした。レーガン大統領は“減税規制緩和”による小さな政府の政策を実行し、1990年代の米国経済の復活の下地を作りました。米国がこの程度までの規制緩和で止まっておけば良かったのですが、クリントン政権で銀行と証券の銀証の垣根を破壊したことで、投資銀行ファンド暴走が止まらなくなってしまったようです。・・・クリントン政権ではルービン財務長官主導しました。ルービン氏は民間と政府を往復するスーパー役人といえます。今回就任したオバマ大統領の民主党政権で国家経済会議(NEC)委員長に就任したサマーズ氏はクリントン政権でルービン氏に続いて財務長官となった御仁ですし、オバマ政権の財務長官となったガイトナー氏はサマーズ氏の下で国際担当財務次官だった御仁です。親分格のルービン氏は、オバマ政権では経済顧問として影響力を保持しています。金融行政については、大きな政府民主党であれ、小さな政府の共和党であれ、米国も日本と同様に官僚専制といえますが、異なるのは、金融行政においてはウォール街が支配する官主導になってしまっているようです。ですから過激な米国流の“無分別・金融資本主義”がどこまで収まっていくのかはまだ見えません。
21世紀型帝国主義金融、食糧、天然資源の争奪戦とすれば、金融食糧に関しては米国今後とも圧倒的な強国であることには変わりがありません。オバマ政権が機能すれば金融危機のショックからのある程度までの回復を1-2年で実現できるかもしれません。News Week日本版で“中国米国もたれあう酔っ払いどうし”という表現を見つけたときには言いえて妙と感心しました。次頁から再開するシリーズ論考で、シナ(China)の中国、生産財アイテムとして電子部品を再開します。

*1:「チンギス・ハンの世界」堺屋太一ISBN:4062128500