青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

143-3/3. ニッポン電子部品産業の方向性

世界シェア5割を獲得している日本の電子部品産業ですが、今大きな転換点に立っています。台・韓・中の追い上げに対し電子部品各社は固有の独自能力を核とした製品の高付加価値化に邁進中です。

昨年秋口からの急激な生産減少に関し、電子部品業界の一部では「2月に底打ち」「3月に底打ち」との声も聞こえ始めています。電波新聞2009年2月27日付は「日系電子部品メーカーの中には、生産調整、在庫調整にメドがついた商品が出始め、華東地区でも2月に入り受注回復の兆しが見受けられる。中国では“家電下郷”政策(テレビ、携帯電話、冷蔵庫、洗濯機、パソコンなど8品目を対象に政府が購入額の13%を補助)の効果が早くも出始め、内陸部消費が立ち上がり始めた。」としてニチコン田淵電機オーナンバ行田電線の現地責任者から取材した内容を報道していました。
電子部品業界の09年第3四半期(08年4-12月)連結決算では、大半が減収減益となる中で、好決算の企業数社混じっていました。電波新聞2009年2月23日付は「主要電子部品メーカー55社の中で、ホシデン増収増益を達成。アミューズメントが好調。第一靖工もノートPCや無線LAN向け細線同軸コネクタなどが好調。日本電気硝子は、ディスプレイ用ガラスの好調などで増収増益。指月電機製作所は、電鉄車両、風力発電用など省エネ・新エネルギー向けの伸張で微増ながらも増収。・・・・・」と紹介していました。日本の電子部品メーカー各社ともに「次の成長」に向けての準備を進めています。電子部品業界は、エレクトロニクス分野向けで伸びてきましたが、今は自動車新エネルギーロボットバイオ環境関連とアプリケーションが広がっていく過程にあります。
2009年以降に電子部品の需要が拡大していく分野に関し、電子基板大手のメイコーは、社長の名屋佑一郎氏が電波新聞2009年2月23日付で「景気に左右されない強固な体質を確保することが大切だ。製品戦略では、今後の成長分野であるLED照明太陽光発電エコカーなど新エネルギー・環境関連の分野で需要を発掘していきたい。」と、またTDKは、取締役の横伸二氏が電波新聞2008年11月28日付で「住設関連分野では、省エネ、環境保全などの新たな視点で技術開発が進展している。エアコンはインバータ化技術が進展。照明はLED化が期待できる。TDKのコア技術であるフェライトやマグネットといった材料から、コイル、トランス、電源、コンデンサなどの応用製品まで供給できる。そのため、住設・環境システムに関する営業の人員を増強し、新しい一つのビジネスモデルとして育成していく。」と、KOAの常務取締役/吉池勝彦氏は電波新聞2008年7月29日付で「ローエンド品とはすみわけし、高付加価値製品、品質を重視した製品の分野で競争力をさらに高めていく。例えば、携帯電話一つとっても、BRICsで需要が伸びているローエンド機の場合、日本の電子部品を使用していない。日本の電子部品業界にとっては、ハイエンド機の生産台数が伸びることを歓迎する。ただ(今はローエンド機主体の)BRICsも、3年後、5年後には、日本の電子部品メーカーにとっても大きな市場として成長するのは間違いなく積極的な対応が必要。」と述べておられました。
大手電子部品メーカーの趨勢に関し、電波新聞2008年7月17日付で「大手電子部品メーカー各社は、設備投資抑制気味だが、研究開発には積極的投資を続けている。パナソニック エレクトロニックデバイス(PED)は、快適、安心・安全、環境をキーワードに、3つの源泉材料プロセス技術(薄膜・MEMS基板・実装パワーマネジメント)の強化に取り組む。取締役開発技術センター所長の久保実取締役は、国内の開発技術センターの3研究所(材料プロセス研究所、デバイスインテグレーション研究所、パワーマネジメント研究所)とデバイスソフトウエア開発センターでの材料プロセス及びトータルソリューションデバイスの開発を強化する。アルプス電気は、事業開発本部長の栗山年弘取締役によると、固有技術を複合的にインテグレートした製品を開発する、新規のセンサー事業では、薄膜プロセス、材料技術などをベースにオプトデバイスにも注力する、07年にはIC設計室を発足させ、ASIC設計を本格化させた。ミツミ電機(副社長/佐藤勲氏)は、コア技術(精密加工、半導体、高周波、光など)を深堀し、モジュール化/ユニット化した高付加価値製品を開発する。そのためにプロセス技術、さらにシミュレーション技術の開発も進め、ソフト開発要員は今後も増員していく。TDK(高橋実取締役常務執行役員)は、スペシャリストを結集した要素技術分科会を中心に技術の横串を通し、創業以来培ってきた要素技術を結集し、顧客に提案を行う従来のアプリケーションセンター内にFAE(フィールドアプリケーションエンジニア)を設置。研究開発のプロジェクト大枠は、薄膜パワーエレクトロニクスモジュールの3つ。村田製作所は、専務執行役(技術担当)の坂部行雄取締役によると、ナノヘルツからテラヘルツをキーワードに、創業以来のこだわりを忘れず、社内の達人思いつき専門知識に立脚した発想を大事にしながら、外部の優れた技術と知識を取り入れていく。日本ケミコン(内秀則常務取締役)は、デジタル情報家電パワーエレクトロニクスカーエレクトロニクスの重点3市場を成長分野として位置づけている。利益を創出する新製品の開発をテーマに、技術部門を統合した。一元管理のキーワードは、技術の融合、全体最適、開発フローの一体化(マーケティング・基礎研究・製品開発・ハード開発・生産・営業)とベクトルの一致。」と紹介していました。電子部品で接続部品のリレーに関し熊本県山鹿市に本社をおくオムロンのリレー専業子会社/OER(オムロン リレーアンドデバイス)の多田幸一社長は電波新聞2008年11月4日付で「オムロンにとってリレーグローバルNO1戦略8重点商品の一つ。3年以内世界トップリレーメーカーになるためにやるべきことをすべてやる。(社内分社間の横断的な調整として) ECB(エレクトロニクスコンポーネンツビジネスカンパニー)に10月1日付で車載リレー事業部を発足し、オムロン飯田の車載リレー事業の帰属先をAEC(オートモティブエレクトロニックコンポーネンツビジネスカンパニー)からECBに集約した。OERの5.3百億円に飯田の事業2.5百億円が加わることで売上高は7.5百億円規模になった。産業用リレーについてもIAB(インダストリアル オートメーションビジネスカンパニー)からのOERへの統合を進めており、3年以内にリレーでグローバルシェアトップを目指す。インフラ向けシグナルリレーの生産ラインでは、フープによる材料投入から組み立てまでの一貫自動生産を実現。3直24時間でフル稼働させている。ハイブリッド車用DCパワーリレーは専用棟に07年4月、サブアッセイした材料を投入すれば、自動で組み立てるロボットラインを導入している。二次電池向けではハイブリッド車向けに加えて太陽光発電システム携帯電話基地局向けを拡大していく。OER連結の中で海外生産は、数量で7割金額で6割強。従業員が7千人を超えている中国の深圳(Shenzhen)では、ブロックごとの全自動化に取り組み、インバータエアコンC&Cリレーでは手組みから自動化ラインに切り替え、既に3ラインが稼働している。」と述べておられました。
日本のエレクトロニクス産業の競争力に関し電波新聞2008年7月30日付でトヨタIT開発センター最高顧問の内海善雄氏は「車でもレクサスクラスだと30%強が、プリウスになると50%以上エレクトロニクスのコストです。・・・海外に追いつかれた液晶パネルもガラスや素材そしてバイスは日本の部品です。産業構造をシステムや製品づくりにするのではなく、素材とかデバイスに特化していってもよいのではないでしょうか。」また富士通相談役の秋草直之氏は「電子情報技術産業協会(JEITA)に属している企業では、部品企業利益率はるかに良いです。輸出比率も断然高く競争力もあります。」と述べておられました。
筆者/青草新吾は、欧米システム思考に強いのは牧畜キリスト教に根ざす文明に由来する部分が大きい、同様に、単体の作りこみに強い日本人の思考、即ち、日本企業の産業競争力の源泉は、日本文明日本文化に根ざす部分がとても大きいと考えます。この点からは、農業林業漁業など自然に向き合った1次産業のスパイラル展開による時代に適合した1.5次産業としての再強化、工芸など伝統文化の維持強化、文系とか理系にとらわれない教育体系(例えば工学と哲学の同時専攻など)の構築、などが“素材と部品に強い日本産業”の競争力の維持再生産に有効であろう考えています。次頁からは、今後の成長産業について記述をしていきます。