青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財営業でイノベーション共創と社会貢献を目指す。

147-3/3. 中国の汚職と格差

中国では共産党幹部に代表される裏社会の汚職成金に加えて、経済成長によって表社会の富裕層も増え続けていますが、内陸の農村地方では格差の淵に追いやられた人々が存在してます。

中国の表社会富裕層に関し産経新聞2009年4月19日付は「中国で10百万元以上(円換算で約1.5億円以上)の個人資産を持つ富豪が約825千人に上ることが、中国在住の英国人会計士フーゲワーフ(中国名:胡潤)氏がまとめた“2009胡潤財冨報告”でわかった。人口10千人あたりでは北京88人とトップ。約114人に一人が富豪という計算になる。これに上海62人、さんずい折江省(Zhejiang Sheng)の同22人が続く。個人資産は預金有価証券不動産のほか、経営権をもつ未上場企業の資産などがカウントされた。富豪の平均年齢は39歳。このうち個人資産が1億元以上(14.5億円以上)の大富豪も約51千人いるという。中国では昨年の金融危機以来、都市部への出稼ぎ農民約2億人のうち約23百万人以上が失業するなど、格差拡大が大きな社会問題になっている。」と報道していました。表の富裕層の資産を仮に単純に一人当たりで10百万元とすると825千人の合計で8.2兆元(約119兆円)ですから、表の富裕層の資産合計は円換算で数百兆円規模と推察できます。これら表社会の富裕層の資産規模との比較において、中国の裏社会の汚職成金のスケールには驚かされます。表社会の資産と重なる部分もあるのでしょうが・・・・。
中国で摘発される汚職の規模の大きさに関し、産経新聞記者の福島香織氏は著書*1で「2006年台湾陳水扁前総統夫人ら4名が横領などで起訴されたニュースに対し中国のネットでは“え〜っ、たった14,8百万台湾ドル(3.5百万元)の横領で起訴?台湾の司法制度は凄い”とか“大陸においでよ、大陸なら問題ない額だ”という反応だった。そりゃそうだ。なんせ中国の汚職規模といえば、億元単位(円換算で14.5億円単位)。中国の検察機関が摘発した汚職官僚の数といえば、2003年1月から06年8月までで67,505人。海外に逃げた汚職官僚少なくとも4千人持ち出した公金は計3千億元から4千億元というから3.5百万元なんて子供のおやつか盗み食いくらいにしかみえないだろう。」と紹介していました。日本で摘発される汚職とは二桁三桁違う感じです。日本国第82/83代総理大臣で元総理大臣の橋本龍太郎氏が2004年日本歯連闇献金事件1億円の小切手を受け取ったことが明るみにでましたが、中国共産党の幹部が“(橋本龍太郎)をたかが1億円で買収できるのならば、日本の政治家全部買収してしまえ”と、2004年の闇献金事件以降に、中国から日本の政治家への工作が活発化したと聞いたことがあります。真偽のほどは判りませんが。
裏社会の資産家に関し、台湾出身の黄文雄氏は著書*2で「汚職官僚不正GDP20-25%に達すると推定され、また政府高官による公金海外持ち逃げは広がる一方だ。人口の1%党幹部高級官僚国富の半分以上を占める。一方では年収1百ドル未満農民7-8億人にも達する。・・・・月刊[争鳴]記者・羅水の調査報告によると、2006年3月末で、1億元以上(約14.8億円以上)の資産を持つ者は3,220人いる。そのうち2,932人高官幹部の子女で合計資産は2.45兆元(約30.3兆円)に上ることがあきらかになった。一方では、年収わずか2百元(約3千円)程度で満足に食べることさえできない貧困層が8千万人以上も存在していることを見落としてはならない。中国の格差差にはこれほどの開きがあるのだ。」と紹介しておられます。日中韓三国に精通する金文学氏は著書*3で「中国は古来、汚職腐敗が構造的、日常的であった。中共の官も中国の伝統に由来しているのだから、中共の官の腐敗や汚職当然の帰結なのである。共産党ではなく、他の勢力がもしも中国を支配しても、伝統的システムを踏襲する以上は、中国は今後も変わらない。共産党政権の今日の腐敗や汚職を、ただ単に共産党の悪として断罪するのは、一面的な見方にすぎない。・・・・フランスの知識人ギ・ソルマンは“中国には西洋を騙す才覚があり、西洋がこのような暴力的君主国家に幻想を抱いたら、きわめて危険だ”と警鐘をならしている。」と述べておられます。
昨年2008年5月の四川(Sichuan)地震では、同じ被災者でありながら救援センターにかけこんでも「戸籍がないために救援を受けられない人々」が大勢いることが明るみにでました。学習院女子大学准教授の阿古智子氏はエコノミスト誌[2008年7月22号(中国大失速)で「中国では、生まれながらにして定められた戸籍所在地でしか社会保障を受けられない。出稼ぎなどで戸籍所在地以外の場所にいると、社会保障を受けることができない。地域によって条件が大きく異なるため、好き勝手に戸籍を移すことができないのだ。中国の格差問題は、戸籍社会保障制度が作用して生じている側面が大きい。・・・・・例えば昨年聞いた話では、同じエイズウイルスの感染者でも生活保護受給額地域によって大きな開きがあった。・・・上海薬害被害者月1千元(約15,500円)、河南省都市部の輸血による感染者は3百元(約4,650円)だが、戸籍が同省の貧困村にしかないとすると3十元(約465円)しか受け取っていなかった。・・・農業戸籍の人は、都市に出て農業以外の分野で働いても農民のままだ。・・・」と寄稿しておられました。都市地方格差ということでは、日本でも明治維新以降、特に敗戦後の日本では、東京への一極集中が進んで、東京では多くの土地成金が生まれたり、“金融関係の高給社員”や“天下りや渡りで生涯給与が高い高級官僚”が東京に集中していたりのシナジーもあったりで、東京への富の集中が進み、地方との経済格差が拡大しました。されど、今の中国沿海都市部内陸部農村との格差は、日本とは比べようもないくらいのとてつもない大きな格差です。中国の格差の一方で取り残された農村は、共産党による革命を支えたにもかかわらず、取り残されたままです。トン小平(Deng Xiaoping)が改革開放政策の中で唱えた先豊論(先豊起来)では、先に豊かになった沿海の都市部が内陸の貧しい地方を助けるはずでしたが、内陸部の農村の貧しさは、餓死者こそでなくなったものの、沿海都市部との格差は拡大する一方できました。中国の歴史は農民の反乱で王朝や政権が崩壊する歴史の繰り返しでした。現在のシナ大陸を支配する共産党一党独裁が抱える最大の矛盾が“沿海都市部と内陸農村との格差”“共産党官僚の腐敗と汚職”です。
以上、日本からの生産財輸出最大仕向国となった中国に関し、132[2008.5]から156[本頁]で約1年間のシリーズ論考を行ってきました。昨年2008年の3月から4月にかけて世界中で繰り広げられた北京オリンピック聖火リレーの異様な騒動を契機に132[2008.5]の論考を開始してから、134[2008.6]では中国共産党によるチベット侵略や周辺諸国との領土紛争をレビユーし、以降、中国とのビジネスの上で押えておきたいリスク管理予測着眼点を整理する目的で、156[本頁]まで、記述を続けてきました。サブプライム問題を起点とする世界的な経済危機は、欧米にとっては1百年に一度、敗戦で一度は国土が灰燼に帰した日本にとっては敗戦に次ぐ60-70年ぶりの経済的危機です。この経済危機のトンネルを抜け出る数年後(あるいは10年後?)、経済危機以前とは異なる経済危機後世界の様相になっているものと推察します。そのような時代的背景と歴史の方向性の中で、隣国中国どう付き合っていくか?は日本国の国民経済の上からも安全保障の上からも最重要テーマです。生産財事業を営むこと、即ち生産財営業の上からは、中国市場へのマーケティングを行いながらも過度に依存しすぎないよう、地域別には台湾や韓国、アセアン向けとのバランスを維持していくことが肝要と考えています。数十年後にはシナ大陸における中国共産党による一党独裁も崩壊している可能性が高いと見ますが、できるだけソフトランディングしていって欲しいものです。
生産財営業では、サプライチェーンバリューチェーンの中で多面的な関係構築をしていきます。顧客の組織的調達への対応では、51[2006.8]や35[2006.7]、7[2006.4]で記述した“生産財マーケティングにおける購買センター概念”が役に立ちます。同様に国と国の関係多面的な関係構築が求められます。日本の政界も官界もそしてビジネスマンも、147[2008.12]に記述した中国専門家/宮坂聡氏の警鐘「インドネシアでは、日本はODAなどを通して物凄く大きな影響力をもっていたのに、スハルト大統領失脚すると、日本の影響力ゼロになってしまった。相手国の権力に取り入ろうとするあまり、相手国の一般国民の目線を気にしないのが日本の陋習(ろうしゅう=良くない風習)である。」は正にその通りであり、相手国の政情の変化にも耐えうるような、相手国各層との長期的な関係をバランスよく構築していく視点がますます重要になっていると考えています。

*1:「危ない中国 店 点撃」福島香織ISBN:9784863060296

*2:「中国[魔性国家]の正体」黄文雄ISBN:9784880862262

*3:「混(フン)の中国人」金文学著 ISBN:9784396613174