青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

151-2/2. 石油ピークアウトとCO2排出問題

二酸化炭素排出問題とは“原油枯渇で石油を使えなくなる”までの期限付き問題です。一方で石油は戦争や環境に名を借りたパワーゲームの主な原因であったりします。

温暖化対策で最も有効な策は、石油供給制限することです。二酸化炭素の急増は大量の石油を燃やして使うことで起こった人災ですから、原油枯渇収まる問題です。枯渇が近づいて石油の供給が需要に追いつかなくなるピークアウトを迎えたその時点で温暖化問題解決の方向に向います。石油への依存度がとても高い今の石油文明で急激なショックをできるだけ緩和するためには、今から石油の供給を徐々に制限を積み重ね、ピークアウト遅らせることがとても有効です。
温暖化対策で筆者/青草新吾がいつも不思議に感じていたことは“温暖化対策最大有効策である石油の供給削減”が温暖化キャンペーンや政府の口からあまりでてこないことです。はっきりと口にしているのは小池百合子元防衛相ぐらいではないでしょうか。氏曰く“エネルギー小国の日本のアキレス腱はエネルギー。石油を使わない国にすること。これが最大の安全保障。そのために環境税の導入を検討すべし。”について、筆者/青草新吾は、環境省の省益と利権の拡大になりかねない環境税導入を除き、賛同します。仮に石油消費ゼロを実現できれば、今の温暖化問題の議論は殆どが解決してしまいます。この点について“バカの壁”の著者である養老孟司氏がVoice[2008.9]で「温暖化対策では、5%排出国の日本は、日本の寄与率の範囲で行動するしかない。2050年までに半減しても日本だけならば、世界の炭酸ガスの排出量の2%減程度にしかならない。“後は知らないよ”と世界に向けてはっきりいうべきである。もともと自分の問題じゃないものまで自分の顔をしたがるから、訳がわからなくなる。温暖化対策では、大排出国米国中国ロシアなどの炭酸ガスが減らないと実際の効果はないのだから。」と温暖化問題に関するNHK番組を引き合いに出して疑義を提起しておられます。曰く「NHKの番組で語られなかったこと、典型は石油問題である。石油問題は温暖化問題で最も重要な要素である。そして石油は十年以内ピークアウトする。専門家はそういう意見のはずである。・・・いわゆる温暖化問題とは、知恵者が考えた、ピークアウトに向けた煙幕ではないか。私はそれを疑っている。クリントン政権の副大統領だったゴア大声をだし、それにノーベル平和賞が出たのも臭う。いわば“欧米がグル”になっている。ゴア自身自宅過大なエネルギー消費を批判された。ゴアの書物を読めば、あれが一種のデマゴギーであることは明白である。温暖化キャンペーンは、捕鯨運動禁煙運動よく似た構造をしていると思う。誰がどういう意図で始めたのか、よくわからない面がある。ただ、いずれもが欧米的な価値観の産物であることは疑いない。・・・もう一つ、NHKで触れられなかったのが、石油供給制限の問題である。そもそも欧米人くらい、いわば手前勝手な人たちが、本当に地球が危ないと思うのなら、“石油を絶つ”という手にでるはずである。欧米人は、石油の供給を減らそうともせずに、消費あれこれ制限しようという精神運動を始めた。アンタ、どこまで本気か。総量制限をかけなかったら、私が節約した分を、誰かが“いいように使ってしまう”のをどう防ぐのだ。石油供給の制限をやらないのは“石油を節約せよ”と中国やインドに説くだけが目的じゃないか、と疑う。お前ら二流市民なんだから、我慢すりゃいいだろうと。それが欧米人の本音だろうと私は思う。何よりも不思議なのは、温暖化協奏曲のなかで“原因の石油を絶て”という意見が出ないことである。そこに暗黙の了解があるのなら、NHKに教えてもらいたい。もしそれがないというのなら、現在の温暖化キャンペーンデマゴギーだと断ずるしかない。・・・・経済発展は、エネルギー消費と並行する。しかもそれを発見したのは物理学者だった。だから素人が横から口を出す意義がある。それまでの経済学者は、どこを見て、何を考えていたんだろうか。・・・・産業革命以来高エネルギー消費型文明終りが見えている。その清算に取り掛からねばならない。都会人、文明人の身勝手も、そろそろぼちぼちいい加減にしてほしい。」と述べておられました。
石油はエネルギー源でもあり、石油化学製品の原料です。筆者/青草新吾は、エネルギーとしての石油消費を抑えて、スーパーエンプラなどの生産財に優先して回していく時代が到来するのではあるまいか、と想像しています。アジア経済ジャーナリストの白水和憲氏の著書*1によると「産油国の油田からとれた原油製油所に運び、製油所の処理以降のものを石油という。精製とは、各種石油製品をつくるための分離作業のことで、この精製して出来た製品を留分という。原油約350度摂氏に熱して、常圧蒸留装置の中に送り込むと、温度に応じて各々の留分が分離できて取り出せる。精製後に出てくるのがLPG(Liquefied Petroleum 液化石油ガス)で一般的にはプロパンガスといわれるもの。原油の中でいちばん軽い。炭素数が3や4のプロパンやブタンなど。常温常圧では気体であり持ち運びが面倒なので液化してLPGとする。日本では需要に追いつかず、輸入が多い。LPGの次に軽いのが、揮発油ガソリンナフサ(Naphtha)がある。ナフサは再処理するとガソリンにもなるので粗製ガソリンともいわれる。ナフサは、石油化学製品の原料として使われるのが一般的だが、日本ではナフサをガソリンに変えることが多く、石油化学製品用のナフサ不足から、輸入する。2006年は、国産ナフサ44%に対し、輸入ナフサが56%だった。灯油として分かれた留分は脱硫装置で硫黄を取り除いて精製してから市販用とする。暖房以外に農業用発動機や建設機器用の燃料にも用いられる。灯油の次に取り出される軽油は、ディーゼルエンジン用の燃料として使われることが多い。以上のLPG、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油などを取り出した後、残油灯油軽油調合すると重油ができる。低粘土の軽質から高粘度の重質まであり、粘土が低いほうからA重油B重油C重油、の3種類がある。」と、また石油化学製品とは「ナフサを加熱してナフサ分解を行い、石油化学基礎製品となるエチレンプロピレンB-B(ブタン-ブチレン)留分、分解油などが出てくる。分解油からベンゼントルエンシレンなどを出す。それら石油化学基礎製品を各々精製して石油化学誘導品を作る。この石油化学誘導品には、プラスチック合成繊維材料合成ゴム塗料原料溶剤合成洗剤・界面活性剤など各産業に向けた製品群がある。例えば、プラスチックだとポリエチレンポリプロピレン塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレンなどの石油化学誘導品がある。ナフサ原料としては、原油以外では、天然ガスと一緒にある炭化水素コンデンセートや油田で出てくる随伴ガスがある。」と全体像をまとめてくれていました。
ジャーナリストの清水典之氏は著書*2で「もし欧米のピークオイル派の研究者が言うように、数年後ピークアウトするのだとしたら、温暖化問題解決である。実はIPCCによるシミュレーションには、ピークオイル組み込まれていない。21世紀末まで延々と化石燃料の消費が増え続けるシナリオだが、たぶん、(石油の供給が増え続ける)そんなことはありえない。・・・世界全体でみれば、とにかく米国中国を何とかするのが先決で、日本の省エネ技術を移転すれば相当な削減が可能なのだが、これは政治的に解決するしかない。・・・二酸化炭素の排出量を(2050年までに)本気で50%削減しようと思えば、化石燃料を出来る限り燃料として使わないようにしなければならず、そのためには最低限、電力自動車脱炭素化が必要だ。・・・・エネルギー自給率4%穀物自給率39%の日本はどのように生き残っていけばよいのか。エネルギー自給率4%、穀物自給率39%の日本でも生き残って生き残れる方法を示すことができれば、それは世界のロールモデルとなる。そして日本は原発製造技術と卓越した二次電池に代表される世界を救う技術を持っている。・・・化石燃料の消費を減らす方策すでに見えている。原発に対する不信感水素社会という幻想が邪魔をして、すでに見えている答え目がいかないだけである。」と訴えています。筆者/青草新吾としては“原発は必要であるが、地球にないものを人工的に作り出してしまうので、必要最小限にして欲しい”という条件付きで賛同します。
環境問題温暖化対策と称し科学を装った国際政治のパワーゲームの中で、今の日本ドルパワー民主主義国家として振舞うくらいが丁度良いと考えています。今の日本は、政治役人システム力量不足朝日新聞NHKのような公共性を欠いた扇動主義で粗悪なマスメディアが跋扈していますから、「環境大国として世界のリーダーシップをとる」などと大見得を切るのはとても危険です。日本にお金技術拠出させようとする国連欧州は日本を「環境でリーダーシップをとりなさい。もっと高い削減目標を発表しなさい。」とおだてますが乗らないことです。また日本政府の中国向け環境ODAについては136[20008.9]で前述しましたが、排出権やODAで日本からお金技術巻き上げようとする中国は「削減目標が低すぎる」と非難します。一方で中国の共産党政府は、第12次5ヶ年計画(11-15年)で、GDP当りエネルギー消費量17%改善する温暖化対策の目標を盛り込む検討をしているそうです。電波新聞2009年6月18日付電波新聞は「経済成長に伴い、中国では石炭などを燃やすことによって生じる二酸化炭素の排出量が急増している。2000年のエネルギー起源CO2排出量は30.7億トンだったが、06年には56.4億トンとなった。石炭が枯渇していくとの懸念からも石炭の消費抑制を通じたエネルギー安全保障の確立と気候変動防止を同時に目指す方向となった。」と報じていました。とてもしたたかで老獪ですが、国益追求という点では日本の政治家や役人システムよりも何倍も力量がありそうです。
筆者/青草新吾の目には、歴史のスパイラル進化で、今の日本を取り巻く環境が太平洋戦争に突入していった直前の状態に似てきたと思えてなりません。スパイラル進化とは、一周して元のポジションに戻ることではありません。スパイラル進化とは「螺旋階段のように、上からみると一周して同じ場所のようにみえるが、横からみるとより高いところに上っていく、質的な変化を伴う進化」のことです。歴史のスパイラル進化では、太平洋戦争当時と今とでは、階段の高さ、つまり質的な違いがありますから、まったく同じこと、つまり戦争という武力行使にまで至ることはないのでしょうが、日本が国際的におかれた立場はとても似てきています。144[2008.10]で敗戦後にGHQが行ったWGIP(戦争贖罪意識宣伝計画 War Guilt Information Program )に基づく情報統制を、145[2008.11]で、敗戦後にGHQ全国5紙に対して行った過酷な検閲と、この時期に勢力を伸ばした日教組歴史教育について前述しました。今の日本国民にとっては最も教訓を得ることができる太平洋戦争前後の経験が、GHQ日教組、その流れを忠実に継承してきた朝日新聞毎日新聞NHKなどによって好き放題に歪曲され真実片隅に追いやられているだけに、せっかくの経験が教訓化できていません。歴史は繰り返され、日本のみが環境問題という表看板を掲げて行われる国際政治のパワーゲームの中で孤立させられて、日本国日本国民だけに過大な負担押し付けられることになりかねないと危惧しています。
太平洋戦争(日米戦争)のキーワードは石油でした。1929年から始まる世界恐慌の中、日本は、高橋是清の経済史に残る素晴らしい的を得た政策の御蔭をもって、世界最速でのデフレ脱却成功していましたが、1932年五・一五事件満州事変が起こって、今と同じ官僚(当時は軍部の官僚組織が最大勢力)が政治を牛耳るようになっていきます。“日米開戦に向けて潮の流れが変わった”のが翌1933年です。1933年1月にドイツでヒトラー政権が誕生します。同じく1933年3月には米国第32代大統領ルーズベルトが就任します。144[2008.10]で前述した1933年の米国における政権交代です。“反共日本と連携”しようとする共和党Hフーバー政権から、“中国と連携して日本封じこめ”を目指す民主党Fルーズベルト政権に交代したことで日米開戦の方向に歴史が動き出しています。当時は米国が先に日本を追い込む策にでました。先に喧嘩を売ったのは米国でした。当時の日本の官僚組織(当時は陸軍の官僚が最大勢力)はこの喧嘩をかわせませんでした。今は逆日本の方に問題があります。日本の外務省防衛省鈍感さ力量不足米国の失望繰り返し惹起してしまうことで、日本政府つまり官僚政治家、あるいはマスコミが、日米同盟を破棄通告されても仕方がないような過失の連続失火を繰り返しています。オバマ大統領はとても日本に好意的なスタートを切りました。しかし残念なことに日本の試験上手の元学校秀才ばかりが集う外務省や、シビリアンコントロールの意味を曲解し内弁慶な防衛省(背広組みといわれる官僚組織)、今の日米関係のキーとなる両省は米国からの投げかけに対してうまく対応できておらず、世界オンチで低俗な大手マスコミは、クリントン国務長官の来日や、オバマ大統領が就任後初めて迎えた外国首脳が麻生総理であった、という米国政府からのメッセージを報道することもなく、G20における中川財務相酩酊会見ばかり報道しました。・・・・戦前は、貿易摩擦から石油による対日封鎖へと発展しました。明治維新以降の日本は日英同盟に助けられて力をつけていきました。しかし英国が牛耳っていた中国大陸日英通商摩擦がおき、Fルーズベルトの米国は英国に日英同盟破棄働きかけて英国は自由貿易を主張した日本との日英同盟を破棄しました。・・・当時の日本米国から石油輸入に依存していましたが、満州で油田開発に乗り出しますがうまくいかず、墨国(メキシコ)や蘭領インドネシアからの石油を輸入しようとします。しかし米国スーパーパワーは、墨国に石油の対日輸出を破談させ、(オランダ)も米国からの手回しを受けて、日本への石油売却を破談にしました。Fルーズベルトの米国は最後には、米国英国中国オランダによるABCDラインで日本に対する石油禁輸を実施。更に日本軍事的に叩く決意を持っていたルーズベルト政権は、日本側が絶対に受け入れることがないハルノートを提示し、日本軍による先制攻撃をセッティングしました。裏ではソ連共産党スパイ団が暗躍していた、ともいわれています。追い詰められた日本窮鼠猫を噛むで、出口戦略もないまま開戦を決意した・・。というのが歴史の事実流れです。今のゴキブリ役人と同様に当時の日本にも専横化した官僚組織(陸軍や海軍)が失敗の原因*3積み重ねていきました。一方で純粋に欧米列強過酷な植民地支配からのアジア解放大東亜共栄圏を作っていこうとの善意のアジア主義運動も根強くありました。満州民族(現中国)を含むアジア各国では連動する動きも活発でした。ただし、今の環境問題温暖化対策と同様、“現実表看板とは別のねばねばどろどろが混ざり合ったもの”でした。同盟国のはずのナチスドイツは中国に軍事顧問団を派遣して、中国国民党軍の背後日本軍と敵対していましたし、蒋介石(Chiang Kai-Shek)は実に巧みに米国大統領のFルーズベルトへの影響力を行使しています。これが陸続きの大陸で生き抜いてきた欧米や中国のパワーゲーム冷酷な現実です。日本人にはなかなか理解できないことなのですが・・。筆者/青草新吾は、戦前の日本の外交最大の失敗の一つがナチスドイツとの日独同盟にあったと考えていますが、その日独同盟とは、外務省(武者小路駐独大使)と高級官僚(陸軍省)が先導しています。今の環境対策温暖化対策外務省環境省が先導しているのと同じ構図です。
今の日本をとりまく外部環境は、戦前の太平洋戦争直前によく似ています。欧米中国グルになれば、アジアを助けるつもりの日本がアジアの人々の前で再び一敗地にまみれるようなことになりかねません。それだけに内弁慶外務省防衛省官僚は、米国を失望させるような無能ぶり謹んで頂きたいと切に念じるものであります。外務省や環境省の皆様に訴えたいのは、日本は“環境大国としてリーダーシップをとる”必要などありません、ということです。ドルパワー民主主義国家として、GDP当り排出量最少の世界有数の省エネ国として、5%排出国なりの寄与率の範囲内でベストを尽くし、技術輸出をすることでエネルギー効率が悪い国々排出削減貢献していけばよいのではないでしょうか。世界オンチで科学オンチの公明党のように無茶な削減率をぶち上げて日本国民を“貧しくなるための努力”に追い込むことだけは止めて欲しいと訴えるものです。繰り返しますが、温暖化問題とは実は石油問題です。石油がピークアウトしてしまえば温暖化問題は解決に向います。しかるに何故か。温暖化キャンペーンには、どさくさまぎれに排出権という名の金融商品が登場したり、論理的にも科学的にも可笑しな話多すぎます。次頁では、経営や生産財営業と同様に、環境問題でも論理と科学に基づく思考が大切であること、マスコミで登場する虚報とニセ証言の関係について論考します。

*1:「世界を動かす原油」白水和憲著 ISBN:9784806130055

*2:「“脱・石油社会”日本は逆襲する」清水典之著 ISBN:9784334934552

*3:「失敗の本質」野中郁次郎他 ISBN:4122018331