青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

エコシステム型の生産財営業でイノベーション共創と好社会を目指す。

153-1/3. 電動車(xEV)の派生需要/ 日本文明の内向き精緻化

HEV(ハイブリッド車)やEV(電気自動車)のものづくりは、日本文明の強みでもある“内向きな役割の精緻化”を象徴していると考えられます。

日本文明とは、古神道を源流として、輸入された仏教や儒学を独自に日本化して独自に発達させ、明治以降は、近代西洋和魂洋才で貪欲に吸収し、文明の坩堝(るつぼ)として東洋精神文明西洋物質文明の融合を担ってきました。循環する自然を敬い先祖を崇拝し、大地の恵みへの感謝こそは、日本人の心性そのものです。自然を征服することを目標とした西欧文明との大きな違いです。グローバリズムあるいはグローバル・カジノ・キャピタリズムとも表現される“強欲な金融資本主義”がもたらすバブルの濁流に呑み込まれて先進国の自動車産業強烈な痛手を受けてしまいましたが、ハイブリッド車や電気自動車などのエコカーを中心にした自動車の進化によって、日本の自動車関連産業がパラダイムシフトしてゆく21世紀型の産業として立ち直ることを期待しています。進化とは発達退化の両方を意味しますから、退化していく部分もあります。
筆者/青草新吾は、日本文明を特徴づける日本的思考メカニズム日本的社会行動パターンについて、104[2007.8]、125[2008.1]、136[2008.7]で小笠原泰氏の著書*1から引用しました。日本人の思考パターンの特徴は“役割の精緻化である”に全く同感です。ハイブリッド車の進化をみるにつけ、実感します。HEV(ハイブリッド車)や今現在のEV(電気自動車)は、最先端の車載電装デバイスで構成されています。そしてこれらのデバイスは、日本が強い素材部材といったマテリアル系生産財サプライチェーンが支えています。
ハイブリッド車と電気自動車の登場で、自動車のマテリアル系部材構成変化していきます。例えば鉄鋼製品分野では、電気自動車となると、特殊鋼を中心としたパワーユニット系の部品が不要になったり、エンジンのような高温部品が少なくなると、車体外装で鋼板以外の素材を使い易くなります。一方では、モーター用の電磁鋼板の需要が増えます。尚、前頁161で前述の三菱自動車アイ・ミーブ向け主要サプライヤーに関し日経産業新聞2009年6月23日付では「モーターとインバーター明電舎、DC/DCコンバーターニチコンリチウムイオン電池リチウムエナジージャパン(GSユアサ他)」と紹介されていました。
車載用電線分野のハイブリッド車向け素材や部材の製品開発に関し日刊産業新聞2009年4月9日付は「日立電線は、ハイブリッド車(HEV)用のノンハロゲン耐熱電源ハーネス(組み電線)を開発した。HEVの電源部では、バッテリーとインバータをつなぐ“直流ハーネス”と、インバータとモーターをつなぐ“交流ハーネス”が使われる。エンジン近くの高温環境下でも大電流通電に耐える高耐熱性と、限定されたスペースでもスムーズに配線できる柔軟性が求められる。欧州RoHs指令、自動車業界の禁止・申告物質リストGADSLといった有害物質規制にも対応する。樹脂はエチレン系の共重合体がベースで、参加防止や難燃効果のある金属水酸化物を添加した。接続部のネクターは、銅合金ステンレス製ばねを組み合わせた2ピース構造の端子と、シールドを兼ねるアルミ合金製ハウジングを開発、採用した。銅合金で高導電性を、ステンレスでばね力を確保した。シールドは電磁波の漏れによる誤動作を防ぐ。」と報道していました。日立電線自動車関連連結売上高比率を直近の10%(565億円)から20%まで高める方針ですが日刊産業新聞2007年9月3日付は「巻線事業の06年度売上高は840億円だが、中期的に自動車向け生産重量比率を5−6割に高める。自動車の電装化HEVの普及拡大で、1台当たり巻線使用量増加傾向にある。HEV向けでは平角巻線や、高電圧に耐えるインバーターサージエナメル線など、高付加価値の巻線が求められる。ブレーキホースは10年度、供給能力を世界全体で年5千万本に、世界シェアを現行の13%から20%に拡大する。直近2-3年で海外競合メーカーが相次いで事業撤退し、シェア拡大の好機を迎えている。HEV用電源ハーネスは10年度で年商60億円を計画する。高機能材料はHEV用リチウムイオン電池向けの圧延銅箔、高強度・高導電性の銅条などの拡販を図る。」と報道していました。
ハイブリッド車の登場で自動車部品軽量化に弾みがついていますが、軽量化の主要部品の一つが組み電線(ワイヤーハーネス)です。古河電気工業によると、自動車用ワイヤーハーネス(組み電線)を構成する部品の中で、電線の占める質量はハーネス全体の6割強銅量の比率は同9割。銅をアルミ化すれば40-50%軽量化効果がある。乗用車1台当り電線搭載重量一般車20-30KG大型高級車では59-60KGに達する。アルミ電線極細径銅電線など他の要素技術を組み合わせれば、1割以上重量削減を実現できる。ということです。車載電線アルミ化の動きが加速していることについて日刊産業新聞2008年1月22日付は「アルミ電線で先鞭をつけたのがトヨタ自動車ハイブリッド車2003年プリウスでは、矢崎総業アルミ製バッテリーケーブルを供給し、1台当り使用長約5メートルで銅電線に比べて約1KG軽量化効果があった。2007年レクサスLS600hでは、エンジンルーム内のインバータと自動車後部のニッケル水素バッテリーを結ぶバッテリーケーブルアルミ化された。アルミ電線では、ネクター端子(銅)との接続では、三菱電線超音波溶接法古河電工二段圧着方式がある。異種金属接合による腐食防止のために接続部防水機構も必須になる。フジクラは、銅導体よりも40%以上軽量化できて、接合信頼性も確保できる銅被覆アルミ線(CCA線)を展開したい考え。アルミ電線採用導体径太くなることへの対応では、通信系極細径銅電線の採用が有力視されている。06年レクサスLS460では矢崎総業導体断面積0.13平方mm(0.13スケア)の製品が、07年秋タンドラでは住友電工の製品が採用された。次世代の0.06スケア電線も既に開発が始まっている。」と報道されていました。
上述のトヨタのレクサスLS600hで実現された軽量化に関し日刊産業新聞2007年10月29日付は「第40回東京モーターショーで自動車ワイヤーハーネス世界シェアトップの矢崎総業トヨタのレクサスLS600hのワイヤーハーネスを展示した。エンジンルーム内のインバータと後部のバッテリーを結ぶ電線の導体がアルミで、アルミ電線採用は03年発売のプリウスに続き2台目。プリウスの場合、アルミ電線の使用長は約5メートル、銅電線からの置き換えによる軽量化効果は車1台約1キログラムに達した。尚、車1台当たりのワイヤーハーネス搭載総重量は一般的に約30キログラムといわれる。」と報道していました。
軽量化ということでは、車体部品へのアルミ材採用も増えてきていますが、ハイブリッド車でのアルミ材採用に関し日刊産業新聞2009年5月19日付は「トヨタ自動車が18日に発表した3代目プリウスアルミを多用軽量化を実現。新型プリウスのボディには、ボンネットフードリアドア部分にアルミを採用。またフロント・リアブレーキアルミシリンダーを用い、サスペンションの一部にもアルミを使用した。」と紹介していました。
軽量化は、素材転換だけでなく同じ素材の改良でも進められていきます。神戸製鋼所980MPaハイテン材に関し日刊産業新聞2008年3月24日付は「神鋼は、トヨタ自動車から軽量化・特別賞を受賞したと発表した。受賞対象は、980MPaの超高張力(ハイテン)材を使ったセンターピラの開発で、レクサスLSハイブリッドに採用されている。従来、センターピラには440MPaから590MPa級のハイテン材が適用されていた。約25%軽量化を実現し、側面衝突安全性ではIIHS(米国道路安全協会)が定めるSUV基準の側突衝突性能で最高評価のGOODを得た。乗用車の二酸化炭素排出に関し、EU委員会12年までに1キロメートル当り130グラム(06年の西欧主要5カ国平均は同160グラム)まで減少させないと制裁金を課す方針を固めるなど、CO2排出規制は世界的に強化される方向にあり、自動車メーカーからは衝突安全性と軽量化と相反する性能を両立した素材が求められるようになっている。」と報道されていました。
車載リチウムイオン電池向けを含む電解銅箔の増産に関し古河電工日刊産業新聞2008年11月28日付で「リチウムイオン電池向け電解銅箔で世界シェアの約55%を占める古河電工は、今市東工場で1百億円を投じて新工場を建設し、2012年のフル稼働を目指す。月産能力は12年時点で2.5百万平方メートル。既存工場の携帯電話やノートパソコン向け月産能力も現在の0.75百万平方メートルから5百万平方メートルに増産するので、新工場が稼働するとリチウムイオン電池向けの能力は7.5,百万平方メートルになる。」と紹介されていました。

*1:「日本的改革の探求」小笠原泰著 ISBN:4532310393