青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

154-1/3. 高性能大型二次電池

リチウムイオン電池は、パソコンや携帯電話などのポータブル用途の小型電池で立ち上がって進化してきましたが、今は車載や産業といった分散電源用途の大型電池が本格的立ち上げのステージに入りつつあります。

リチウムイオン電池について、105/106[2007.9]の記述で触れた大型電池が、大河が水源から河口(江)に向けて様々な支流と合流し大きな流れを形成されるように、小型電池の需要に加えて大型電池の需要が急拡大しつつあります。需要と供給の両方で構造変化が始まっています。
蓄エネ・デバイスリチウムイオン電池半導体太陽電池のようにターンキー方式の製造ライン一式のビジネスが始まるのでしょうか?半導体産業新聞2009年7月22日付は「東レエンジニアリングは、沼津工場に世界で初めてリチウムイオン大型電池の一貫製造デモラインを完成させた。調合する材料を各自持ち込めば、設置された調合装置で調合でき、電池の試作・検査を実施して性能評価データも提供される。同社は、リチウムイオン大型電池の標準プロセスが存在しないことに着目した。(電極の構造は)従来の巻回方式からスタック方式が主流になっていくとみている。同デモラインでは20Ahのセルを月産20千セル、生産できる。装置構成は、調合装置2台、コーター1台、カレンダー(ロールプレス&スリッティング)、シートカッター1台、スタッキング装置1台、タブ溶接装置1台、注液装置1台、ヒートシーリング装置1台、充放電装置(48ch)2台、組立装置1台、タブカッター1台など。 」と報道していました。
車載用リチウムイオン電池は、新神戸電機が世界初の量産を立ち上げ、その後に日立製作所が競争力強化を目的として日立ビークルエナジーに事業統合したところまで105[2007.9]で前述しました。近況について日経新聞2009年7月2日付は「日立製作所2015年をメドにハイブリッド車向けリチウムイオン電池の生産能力を現在の約70倍にあたる年700千台に引き上げる。投資額3-4百億円になる見通し。生産は子会社の日立ビークルエナジーが手掛ける。日立はGMが10年以降に発売予定のハイブリッド車100千台のリチウムイオン電池を受注しており、まず来秋までに年産能力を現在の7倍強に増強。国内のメーカーからの受注も目指す。・・・一般にハイブリッド車1台30-50個リチウムイオン電池が搭載される。」と報道していました。日立は今年2009年に“車載リチウムイオン電池第4世代”を発表しています。電波新聞2009年5月27日付は「日立グループは、車載用リチウムイオン電池事業売上高として、15年度(16年3月期)に年間1千億円を目指す。今回、出力密度4500W/kgの第4世代を発表した。正極はマンガン系で新規の開発材料を採用した。日立グループは、2000年に世界で初めて安全で高性能かつ長寿命な自動車用リチウムイオン電池の量産を開始した。これまで累計600千セル出荷実績を持つ。現在量産中の第2世代車載用リチウムイオン電池は、出力密度2600W/kg第3世代出力密度3000W/kgも開発済みで10年からの量産開始を予定する。さらに今回、出力密度4500W/kg第4世代を開発したもの。第4世代の仕様(開発レベル)は、サイズ120x90x18mm重量0.24kg平均電圧3.6V容量4.8Ah出力密度4500W/kg。供給はセル単品又はモジュールで。」と、また現在流動中の第2世代についてはElectronic Journal 2009年6月号で「正極にMn系材料、負極にカーボンを採用。充電状態SOC(State of Charge)は30-70%と幅広い。現在、量産しているのは、口径40mmX高さ108mmの第2世代と称する円筒タイプで、容量が5.5Ah、出力が2600W/kg、質量が0.3kgある。いすゞ自動車ディーゼルHEV“エルフ”や三菱ふそうトラック・バスのHEVに搭載されている。生産は日立ビークルエナジーが担当し、月産能力40千セル、04年から現在まで累計600千セルの出荷実績がある。」と紹介していました。
車載用リチウムイオン電池の特徴に関し日経産業新聞三菱自動車アイ・ミーブの開発に関する記事で「EV開発チームに加わると、戸塚を待っていたのは電池パック設計の仕事だった。GSユアサなどと共同開発した電池セルを88個を、各部分で制御する小型コンピュータ22個。さらにこれらを統合制御するバッテリー・マネジメント・ユニットを載せた電池パックは実は精密部品の固まりだ。中にはリレーヒューズといった高電圧部品も搭載。・・・新しいサプライヤーの協力も得て何とか開発したのが総重量230KGのEVの心臓部だった。 」と説明されていました。また現代自動車が09年中に量産開始予定のハイブリッド車(モデル名:アパッチポルテ)に搭載する高性能2次電池に関し、半導体産業新聞2009年7月8日付は「韓国LG化学は、2015年HEV/EV向けバッテリー市場世界シェア2割強を目指す。09-13年の5年間に1兆ウォン(12ウォン換算で約833億円)を投資する浮上戦略を打ち出した。生産能力で現在の年産1百万セル規模から13年頃5百万セル水準に拡大する。同社が生産するリチウムイオンポリマー電池は、従来の液体型とは異なるゲル形態のリチウムイオンで安全性に優れる。」との同社発表を掲載していました。
パナソニック経営統合を目指す三洋電機の2次電池事業は世界最大規模ですが、車載向け供給の投資を活発化しています。半導体産業新聞209年6月17日付は「三洋電機兵庫県加西事業所内にハイブリッド車向けのリチウムイオン電池新工場を建設する。2010年7月の完成で月産1百万セル規模を予定。同社はニッケル水素電池をフォードとホンダに供給し、フォルクスワーゲンとは次世代ニッケル水素電池リチウムイオン電池の両システムの共同開発を進めている。徳島工場にもリチウムイオン電池の量産設備を導入し、09年末の稼働を予定している。」と報道していました、
大型電池に主要な用途は車載用産業用です。新神戸電機は“産業用リチウムイオン電池”の事業展開を本格化すると発表していますが日刊産業新聞2009年4月9日付で「新神戸電機は、90年からパソコン向けリチウムイオン電池事業を開始し、00年からは自動車向けに展開。その後、世界初となる電気自動車(EV)やハイブリッドカーへの搭載を成功させた。04年からは日立グループ内の合弁会社である日立ビークルエナジーを核に事業展開を進め、新神戸電機産業用を販売してきた。今回の産業用電池の展開強化は、NTTファシリティーズマンガン系正極材を用いた大容量・難燃性・長寿命据置用電池を開発し、製品展開にめどがついたことが背景にある。同社によると非常用バックアップ電源向けのリチウムイオン電池の需要は、11年から本格的に立ち上がり、15年には約1.5百億円の市場が想定されるとしている。そこで50%以上シェア獲得を目指し、さらに太陽光発電風力発電における電力貯蔵用も視野に入れている。他には、建設機械輸送機械鉄道のハイブリッド化による需要の高まりが見込まれる。同社は彦根事業所で電極製造、埼玉事業所で組み立てを行っている。」と報道していました。
車載と産業用に続いて分散発電システム電力貯蔵用の開発も進められています。家庭工場で使う定置型リチウムイオン電池ではシャープ大和ハウス工業などが出資する慶大発のベンチャー企業であるエリーパワーについて日経産業新聞2009年5月19日付は「エリーパワーは約40億円を投じ、川崎市リチウムイオン電池の量産工場を建設する計画。家庭用に換算すると2千軒分に相当する年間200千セルの生産を想定している。さらに1百万セルまで量産する方針。価格は1軒分1百万円以下を目指す。電池の正極には安価で調達しやすいリン酸鉄リチウムを採用した。微細に加工した材料を素早く塗る技術を、機械メーカーと共同で開発。電極の層重ねる工程初めて全自動化し、生産スピード10倍近く上げた。従来の蓄電池生産は積み重ねに手間がかかっていた。リン酸鉄は酸素と鉄が強く結びついており、火災が起きにくい特徴もある。リチウムイオン電池では正極材料にこれまで希少金属のコバルトやニッケルを使うことが多かった。コストがかさむうえ、燃え易いなどの難点があった。リン酸鉄リチウムを厚く塗ったことで、単位重量当りの蓄電容量もコバルトなどを使った既存品に見劣りしない。1時間でフル充電でき、30分で7-8割までの高速充電が可能。」と報道していました。次頁では、台湾や中国のリチウム電池産業について記述します。