青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

エコシステム型の生産財営業でイノベーション共創と好社会を目指す。

156-1/3. 高性能二次電池の部材

ハイブリッド車(HEV)は瞬間的に大電流を流しやすいニッケル水素電池が主流ですが、電気自動車(EV)では電力貯蔵の容量が大きなリチウムイオン電池へのニーズが高まります。

陸上の輸送手段動力源が“分散発電電力貯蔵を組み合わせた電動モーター”へとパラダイムシフトするとともに、2次電池電極材開発は更なるスパイラル進化が進みます。ハイブリッド車の登場から10年を経て、電気自動車(EV)を市場投入する動きが加速し、車載リチウムイオン電池の電極材の開発も加速しています。
筆者/青草新吾は、1995年頃に電池製造機械の関係で“中国・華南でBYD(比亜迪)なる企業がリチウムイオン電池製造プラントの商談を行っている”との案件に多少の係わりをもったことがありますが、中国発リチウムイオン電池の工場とはどんなものだろうか?ととても興味を掻き立てられたことがあります。その1995年に2次電池メーカーとして産声を上げたBYD(比亜迪)も、今は世界の主要なプレーヤーで、しかも166で前述しました通り、プラグインハイブリッド車EVへの参入を開始しています。電波新聞2009年9月4日付は「中国のBYD(比亜迪)が、独自開発の電気自動車(EV)のe6の販売を開始、10年には米国にも輸出する。e6は同社独自開発の大容量燐酸鉄リチウムイオン電池を使用、1回充電の走行距離は業界最高レベルの400km。・・・1995年創業で2次電池メーカーのBYDは03年の秦川自動車買収をきっかけに、自動車業界に参入。北京、上海、深圳(Shenzhen)、西安に四つの自動車生産基地を持ち、部品材料からエンジン、車体までの一貫生産を目指して、現在一部の高級機種を除いて70%を自社調達している。今年上半期180千台の販売実績を挙げ、年内に400千台を達成できる見通し。 」と報道していました。そのBYDについて、フォーブス日本版2009年9月号で日刊自動車新聞記者の畑野旬氏は「安全性と性能を両立させるバッテリーを作る上で、BYD(比亜迪)をはじめ中韓新興勢力も、日本の材料メーカーから部材を調達するのがベストと考えている。」と述べておられますが、筆者/ 青草新吾も自らのビジネス経験を通して同様な感触を得ています。
リチウム電池正極材低コスト化にむけての研究開発に関し日刊産業新聞2009年8月19日付は「NEDO(新エネルギー・産業技術総合機構)は17日、希少金属のコバルトを使わず、安価な鉄などを使ったリチウムイオン二次電池用の酸化物正極材料を開発したと発表した。2010年の早い段階に電池メーカーにサンプルを提供し、早期の実用かに結び付けたい考え。NEDOの委託で産業技術総合研究所田中化学研究所が、湿式化学製造法により、リチウムニッケルマンガンで構成する酸化物正極材料を開発した。作動電圧は、既存正極材の4.0ボルトに近づけた。 」と報道していました。
リチウムイオン電池を構成する主要部材について電波新聞2009年7月1日付で「リチウムイオン電池の構成は、正極負極セパレータ電解液である。電解液に非水系溶媒を用いるため、起電力が3V以上と高い。・・・正極材料の種類によってその性能や特徴が大きく異なる。携帯機器用ではエネルギー容量が大きなコバルト系リチウム酸化物が主に用いられているが、自動車用では、熱安定性、過充電耐性、資源埋蔵量、材料コストの観点からマンガン鉄系での開発が進んでいる。負極材料は、エネルギーではグラファイト、パワーの観点からはハードカーボンが適している。カーボン系以外では、シリコンや錫などの合金系やチタン酸リチウムのような酸化物系の検討も進んでいる。・・・形状からは円筒形角型シート型に分類され、外装容器からは、金属缶ラミネートフィルム外装に分類される。電極構造からは、巻回型積層型に分類される。・・・・自動車用2次電池では、走行時に大電流の充放電が頻繁に発生するため、電池の直流抵抗を出来るだけ低くし、充放電時のジュール熱の発生を抑えるとともに、発生した熱を速やかに逃がし、電池の温度上昇を抑制することが重要となる。 」とまとめてくれていました。
リチウムイオン電池材料市場について矢野経済研究所日刊産業新聞2009年6月18日付で「矢野経済研究所2011年度の世界市場は23.45百億円で08年度比9.5%増と予測。正極材料は、08年度の9.22百億円が11年度10.0百億円で08年度比23.6%増。正極集電用のアルミニウム箔0.38百億円で同7.3%増。負極材料は、08年度の2.62百億円が11年度2.83百億円で同25.2%増。負極集電用の銅箔1.89百億円で同16.7%増、セパレータが、08年度の6.69百億円から11年度7.3百億円で同9.2%増。電解質が、08年度の0.91百億円から11年度1.05百億円で同13.9%増。正極材料コバルト酸リチウムから設計自由度が高いコバルト・マンガン・ニッケル3元系や、安価で熱安定性に優れるマンガン酸リチウム、安価で高容量特性に優れるニッケル酸リチウムなどが増えると予測。負極材料では、今は高容量化に適する人造黒鉛のシェアが高いが、同程度の容量で低価格の天然黒鉛へ需要がシフトし始めている。高容量化が可能な金属系負極材料もあるが、熱安定性に課題があり、高価なため、出荷は現状一部に限られている。」と紹介されていました。
リチウムイオン電池正極活物質(リチウム酸化物)は、上述通り、コバルト系マンガンニッケル系、これらを組み合せた三元系、が実用化されており、最近ではリン酸鉄系が出始めています。正極活物質の製造企業について、日経産業新聞2009年5月14日付がインフォメ−ションテクノロジー総合研究所の調査レポートから「コバルト系リチウム酸化物では、日亜化学工業韓国ユミココリアACGセイミケミカルマンガンで、米トロノックス日揮触媒化成中国BYD(比亜迪)ニッケル系戸田工業日本化学産業住友金属鉱山三元系で、韓国ユミコアコリア韓国LGグループ日亜化学工業リン酸鉄米国A123システムズ中国BYD(比亜迪)米国バレンステクノロジー、と記載ありました。ニッケル系について日系新聞2009年8月11日付は「リチウムイオン電池の部材大手の戸田工業は、米国にニッケル系正極材の工場を建設し稼働させることで、正極材の世界シェア約7%から10-20%に引き上げる。現在はカナダの子会社で製造した水酸化物を輸入して、北九州市の子会社工場で正極材に仕上げている。北九州市の拠点の生産能力年1千〜2千トン。10年度からアジアや欧米向けの輸出が本格化する見通しなので、米国工場を立ち上げて欧米市場への供給拠点とする。正極材世界市場規模30〜40千トンとみられ、15年約100千トンになるとの試算もある。米政府は今年から電気自動車普及策の一環として総額24億ドル助成事業を始めている。戸田工業の米国法人は、電池部材の分野で日系企業として唯一助成対象に選ばれた。投資総額7千万ドル(約70億円)の50%米政府からの助成でまかなう。 」と報道していました。
リチウムイオン電池の負極の集電体で使用される銅箔について、古河電工が環境車向け供給を発表しています。日刊産業新聞2009年6月22日付は「古河電気工業は、車載リチウムイオン電池向け電解銅箔の供給を開始した、現在、月2百平方メートルで、12年末までに生産能力を月間0.7百万平方メートルまで高める計画。同社の2009年度の国内生産計画は月間7百万平方メートルで、半分以上がリチウムイオン電池向けで、残りがフレキシブル電子基板や、パッケージ基板向け。台湾工場は、テレビや自動車のリジッド基板の向けに使われる汎用箔に特化しており、月間7.5百トンを計画している。」と報道していました。
ニッケル水素電池の電極は、基材となるニッケルめっき穿孔鋼帯に活物質のスラリーを塗工して製造されます。この基板として使われるニッケルめっき穿孔鋼帯とは、鉄箔をプレスで穿孔し、ニッケルめっきを施したものです。この鉄箔並びにニッケルめっき穿孔鋼帯の両方を供給する東洋鋼板について日刊産業新聞2009年6月22日付は「東洋鋼鈑は、ハイブリッド車(HEV)のニッケル水素電池で使われるニッケルトップの第2ラインが立ち上がり、ハイブリッド車月間100千台に対応できる体制が整った。極薄厚の鋼板(鉄箔)に、独自開発したロータリープレス方式で、多数の孔を規則的に開けた角孔芯体材として生産する。この角孔芯体材は、ニッケルめっきしたものは直接電池メーカーに、非めっき品はプレスメーカーを経て他の電池メーカーにそれぞれ供給されている。」と報道していました。