青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

エコシステム型の生産財営業でイノベーション共創と好社会を目指す。

156-3/3. 2009末COPへの不安 / 日本のみが負担過重はよくない

2009年末のCOP15コペンハーゲン京都議定書の二の舞とならぬよう、鳩山・新政権が“裏づけを持った必達目標”のみを話すこと、宇沢弘文氏の比例炭素税方式など日本ならではの“公平で実現性が高い政策”を進めることを期待します。

COP(気候変動枠組み条約締結国会議)は既にどろどろとした国益が衝突する“武力を行使しないだけの経済戦争”のような状態です。交渉術を駆使する外交交渉なのですから、鳩山政権と関係官庁の役人諸氏には、国益を背負って踏ん張って欲しいものです。COP3では橋本政権外務省出身大木環境庁長官は“排出権購入という数兆円バラマキ”のワナに追い込まれて獲物になってしまいました。1997年のCOP3では、“1990年基準”を勝ち取った欧州連合(EU)にとっては易々と実現できる削減目標となり、実質的な削減義務を負わされたのは米国日本カナダの三国だけでした。注目したいのはその後の米国とカナダの巻き返しです。米国ブッシュ政権は“排出大国の中国が参加していない”からと離脱カナダも“こんな目標は無理”と離脱し、日本だけ居残りました。残った日本は、GDP当たりの排出量が世界一の省エネ国なのに、あるいは、一人当り排出量では英国やドイツと同等なのに、理不尽にも日本だけが“排出権購入という数兆円ものペナルティ支払い”に追い込まれています。政権交代した鳩山政権が年末のCOP15大失敗の上塗りせぬよう、日本国民の血税と企業の努力の結晶を、欧米の金融業者にピンはねされて、次に削減義務を負わないままで排出権を売って儲けようとする中国やロシアに無意味にばら蒔くようなことにならぬよう、祈るのみです。
東大名誉教授の宇沢弘文氏が“省エネ対策に尽力した国が損するおかしさ”と題して1年前のWEDGE[2008.Oct]に寄稿しておられました。曰く「排出権取引とは、反社会的非倫理的な制度である。経済的合理性国際的公正性からは、“比例炭素税”こそがもっとも有効地球温暖化対策である。・・・・一人当たり比例炭素税額は、例えば2005年で言えば、米国2,500ドル豪州2,300ドル星国(シンガポール)1,300ドルドイツ980ドル英国950ドル日本840ドルニュージーランド790ドル韓国560ドル中国40ドル・・である。社会的共通資本の理論を地球温暖化に適用すると、大気の帰属価格が各国の一人当たり国民所得に比例するという結論が得られる。“大気という社会的共通資本”について、大気中の二酸化炭素1トン増えたときの価値の減少を各国の一人当たりGDPで補正して算出する。経済的、社会的、文化的、あるいは自然的恩恵などで減ずる価値の減少を各国の立場に立って評価する。・・・・地球温暖化について危機感を持つ経済学者1990年ローマに集まり、自分が提案した“比例的炭素税”の考え方が、欧州の経済学者の間で圧倒的な賛同を得た。しかるに京都会議では、各国が空疎なスローガンを掲げて、自国の利益を露骨に主張し、政治的な取引を行う醜い場になってしまった。・・・・今回、“福田ビジョン”の中で、二酸化炭素排出権取引市場の試行的導入が決定された。排出権取引とは、京都会議で提起された温暖化対策のうち、もっとも喧伝され、又現実に実施されてきたものである。・・・・この排出権取引という制度ほど反社会的反倫理的なものはないといってよい。たまたま自らへの割当が実際に必要とする量よりも多くて余裕があれば、この余裕分を排出権と称して、市場で売って儲けようとすること自体、倫理的な面からも、また社会正義の観点からも疑義ありである。・・・・各国の二酸化炭素排出枠政治交渉で決められる。二酸化炭素排出抑制のために何もせず、“怠けに怠けてきた国ほど、削減をし易いのだから報われ”、日本のように“省エネ対策に尽力してきた国削減し難いので大きな損失を被る”ことになる。これが排出権取引の本質である。これを単純な炭素税で、(つまり上述した各国の一人当たり所得で補正した比例的炭素税ではなく、補正をしていない単純な炭素税だと)、大雑把にいえば、エネルギー効率が高い日本だとトン当たり300-400ドルもコストがかかる。対してエネルギー効率が悪い米国だと20-40ドルで済む。炭素税とは、排出削減に伴う痛みを示す。」と憤懣やるかたない義憤を吐露しておられました。環境問題の看板を掲げた国際交渉パワーゲームの場で、各国共に自国の国益を最優先して交渉していますが、日本事件捏造メディアマルダメ(まるでドメスティックな世界オンチ)な報道を執拗に繰り返し、環境省は利権獲得のチャンスとばかりに、外務省は楽チンなイエスマン交渉のために排出権取引をまるで良いことであるかのように粉飾し、捏造メディアがこれに乗って、削減目標は高いほうが良いのだとばかりの報道を繰り返しています。現実の国民負担経済や社会とのバランスを欠いています。結局、泥をかぶるのは税金を払う国民と企業(従業員)です。
地球環境工学専門家で前東大総長、現三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏は“各家庭に低炭素設備を設置する低炭素国債”を提唱しておられます。同氏は、日経新聞2009年5月13日付で「日々の暮らしで低炭素化を進めるために、例えば、太陽光発電であれば、政府が低炭素化国債を発行して資金調達し、政府が購入し、各家庭の屋根に設置する。政府が発行した国債は、電力買取制度で償却を進める。15年くらい償却した時点で政府から各家庭に譲渡すればよい。この制度を太陽光発電窓の断熱化家庭用ルームエアコンインバータ照明高効率HP給湯ハイブリッド自動車を対象に運用すれば、それだけで日本の排出量13.5%削減できる。・・・・・・日本の総排出量45%が、鉄鋼、化学、紙、窯業、自動車、家電などのものづくりから、総排出量の55%日々のくらしから排出されている。日々のくらし内訳は、家庭17%オフイス15%、自家用・業務用の自動車が主体の輸送23%である。つまり工場生産ではなく、日常生活がCO2排出量の過半を占めている。総排出量の過半を占める日々の生活では、エコハウス省エネビルエコカー、など、8割削減もそれほど困難ではないが、ほとんどの分野でエネルギー効率で世界トップを走るものづくり排出削減を進めるのは非常な困難を伴う。この事実からは、日本の温暖化対策の基本方針は“日々の暮らし”を低炭素化し、ものづくりでは一層エネルギー効率が高い製品の生産を目指すことなのである。・・・・そのために有効な制度が“政府低炭素国債で調達した資金で、低炭素化機器各家庭に設置し、省エネ・創エネ償還し、償還が終わったら、各家庭に低炭素化機器を譲渡するという制度”である。・・・・我国の世帯総数46百万戸太陽光発電の市場規模は総額1.1百兆円に相当する。低炭素国債発行枠としては毎年2兆円を設定する。これは我国の住宅着工数である1百万戸に、一戸あたり設置費用2百万円を乗じた金額である。・・・・21世紀のパラダイムに呼応する新産業の育成こそが内需創出の鍵である。その一つが環境・エネルギー分野、いわゆるグリーン・グロース(環境分野を伸ばす成長戦略)であり、低炭素化はその主要な具体例である。既存産業中心有効需要創出財政出動が、長期的な内需振興に有効に機能しないことは明白だ。」と妙案を提唱しておられます。
駒澤大学高巌(たか・いわお)氏と小野宏哉(ひろや)氏は、排出権取引の修正案を提案しておられます。排出取引からマネーゲーム的な要素を制限することで投資対象としての魅力減じ、同時に、排出削減に向けて有効性を担保するための修正案です。政府が割り当てる排出枠を3年で使用価値が失われる棚卸資産とすることで、投機を抑制できるし、“製造原価の中で費用化される原材料と同じ扱い”とすることで、日常の事業活動と結びついたものとなると主張しています。日経新聞2009年8月13日付で「12月のCOP15(第15回国連気候変動枠組み条約締結国会議)を控え、次期政権(鳩山政権)は、排出量取引制度の構築を避けて通ることはできない。・・・・欧州連合(EU)の“欧州排出量取引制度(EU-ETS)では排出枠金融商品”とみなされ、排出枠が“預金のように蓄積(バンキング)可能”と考える。排出量削減という目的からは、重大な欠陥である。・・・・各企業の排出できる温暖化ガスの上限(キャップ)を決め、枠が足らない企業と枠が余る企業が過不足を取引(トレード)するキャップ&トレード型(C&T)の最大の難題は“どうやって皆が納得できるキャップをかぶせるか”にある。例えば、実績案文方式の場合、これまで排出削減に努めてきた企業が、努力しなかった企業よりも低いキャップをかぶせられるおそれがある。・・・・提案では、参加企業を電力会社(自家消費と送電ロスを電力会社分とする)と化石燃料を消費する川下事業者とする。提案の第一は、政府参加企業に毎年一定価格(有償)で排出枠を割り当てること、である。当面は、年間の実質使用排出量に応じて、政府から還付すればよい。第二は、排出枠を使用目的で保有する企業(使用企業)が政府より有償割当を受けた場合、“原材料・貯蔵品等の棚卸し資産”として処理するのが合理的だ。一定量の製品を作る際に電力化石燃料を使用するが、これに相当する排出枠を充当しなければ完成品はできない。第三は、政府割当排出枠の使用価値を数年に限定することである。排出枠が、無限に蓄積可能な資産となれば、使用企業も営利目的で排出枠を頻繁に売買するようになる。使用目的を離れた売買が膨らめば、マネーゲームが盛んになる恐れがある。・・・・以上の提案(有償だが3年で失効棚卸し資産)をセットとして導入した時、C&Tの最大の難問は、簡単に解決される。EU-ETS は“余剰排出枠が高く売れるというインセンティブ”を事業者に与えて排出量削減を図ろうとするが、今回の提案は“購入コスト削減というインセンティブ”を与え、排出量を抑制しようとするものである。」と寄稿しておられました。