青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

158\1/2. CO2排出削減に貢献する日本の高炉メーカー

世界の鉄鋼産業が“日本の鉄鋼産業並みのエネルギー効率”を実現すれば、それだけで4%排出国の日本一国分の排出削減ができます。

日本は、温暖化ガス排出量で世界の4%を占める4%排出国です。4%排出国の日本の国内排出量を部門別にみると、直接排出量の側面からは、電力などのエネルギー転換部門3割強産業部門3割弱運輸部門2割弱、・・・間接排出量の側面からは、産業部門3割強運輸部門2割弱民生業務部門2割弱民生家庭部門1割強です。産業部門の内訳では4割を占める鉄鋼産業ですが、世界的には最高のエネルギー効率を達成しています。ちなみにIEA統計で、鉄鋼生産1トン当りCO2削減可能量(トン)と省エネ可能量(GJ、ギガジュール)でみると、日本0.07トン/0.83GJで、乾いた雑巾ですが、中国0.48トン/5.57GJずぶ濡れ雑巾の状態、米国0.14トン/1.98GJで濡れた雑巾、欧州0.14トン/1.98GJと米国よりはましな状態・・というところです。国内で国民に苦行を強いるよりも、世界の鉄鋼産業エネルギー効率を高めることの方が、はるかに効果が高いのです。4%排出国の日本が相当な無理をして25%削減を達成できたとしても世界の1%を削減するのみに過ぎませんし、1%の削減など、20%排出国の中国経済成長に伴う排出増加ですぐに掻き消されてしまいます。
CO2削減のための国の制度を活用した鉄鋼製品の新工場建設に関し、鉄鋼新聞2009年11月5日付は「東京製鉄は、3年以内にCO2排出総量を08年比6%以上削減すると誓約し、環境省利子補給制度で、今年7月にスタートした“京都議定書目標達成特別支援無利子融資”を活用し、先月26日に三井住友銀行から1百億円資金調達をした。田原工場建設資金の一部にあてるという。借入れ金利1.38%に対し、国から3年間利子補給を受ける。返済期限は5年間のため、4年目からは利子付きで返済する。今回の融資は、田原工場で生産される鋼板1トン当りCO2排出量が高炉品に比べ4分の1の0.5トンとなることから、同工場の設備投資が省資源・省エネ地球温暖化防止に貢献すると認定された。 」と、報道していました。同じく鉄鋼製品の高炉製品に関し、日本の高炉5社は世界最高の省エネ生産を実現していますが、更なる製鉄法の革新二酸化炭素排出の削減に取り組んでいます。二酸化炭素の排出削減の切り札として開発が進められているのが“水素還元製鉄”です。2030年頃に実現するといわれています。
水素還元製鉄”とは、高炉で酸化物の鉄鉱石を還元するために使う還元剤として水素を使う方法です。従来法で使用しているコークスを水素に代えることで、二酸化炭素の排出が大幅に削減されます。コークスを還元剤として用いる従来の銑鉄製造法は、大量の二酸化炭素を排出します。産業革命以降、連綿と3百年に亘って改良が続けられてきた製鉄法とは、高炉の中で、鉄鉱石(酸化鉄)を還元することで、つまり酸化鉄から酸素を奪うことで銑鉄を製造しています。還元では、石炭を焼いたコークスを還元剤として用いていますから、大量の二酸化炭素が発生します。石炭・コークスの代わりに水素を使えば、二酸化炭素の排出は大幅に削減できます。しかし水素を製造するために二酸化炭素が発生したり、他にも様々な次なる課題が発生します。
自動車でいえば電気自動車と内燃機関自動車の間でハイブリッド車が市場を拡大しているように、日本では完全な水素還元製鉄ではなく、従来の製鉄法で石炭を焼いてコークスを製造するコークス製造工程で発生する水素を回収し、高炉で利用する技術の開発が進められています。・・・・・コークス製造工程で発生した排ガスから水素を分離して回収し、回収した水素を高炉で還元剤として使うことで、高炉のコークス消費量大幅削減し、高炉で発生する二酸化炭素の発生も大幅削減する、更に高炉で発生した排ガスから二酸化炭素を化学溶液で吸収することで回収し、高炉から排出される副産物(スラグ)の排熱利用で、化学溶液で吸収して回収した二酸化炭素を溶液から分離回収する新しい製鉄法です。日経新聞2009年8月4日付は「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NRDO)の支援を得て、08年からCO2排出量を現在より約30%削減できる新しい製鉄手法の開発事業“コース50”に取り組んでいる。CO2削減目標30%の内訳は、20%製鉄所内での回収・分離で、10%水素代替などで賄う。・・・高炉で鉄鋼石とコークスが反応した際に発生するCO2の吸収技術については、JFEが今年度中に千葉市の研究所で、適した吸収剤の開発と実証実験を進める。10年度には製鉄工程で発生する副産物“スラグ”の排熱回収設備も設ける。スラグの温度は1200−1600摂氏度あり、炉盤材などで使うために水で冷却するなど熱を無駄にしていた。回収したCO2の分離技術では、新日鉄グループが君津製鉄所に試験設備を設ける。溶液で吸収したCO2を分離するには過熱する必要があり、スラグから回収した熱を活用する。水素還元、つまり鉄鉱石中の酸素分を“水素を使って除去”する技術では、高炉5社がそれぞれ実験設備を設けて研究を分担する。高炉は場所によって内部の温度が異なる。5社は担当部位ごとに反応の進み方などを調べる。現在はコークスの炭素分を酸素と反応させて取り除いているが、コークスの一部を水素に切り替えると大幅にCO2発生量が減る。水素炭素より素早く反応する性質もあり、高炉に水素濃度約10%のガスを入れると反応は5割早まるという。高炉での水素の活用やCO2吸収、排熱回収などを組み合わせた一貫実証設備を建設。効果などを確かめて30年にも実際の高炉に適用する計画だ。 」と報道していました。
日本国の二酸化炭素排出量で、直接排出量の内訳で約3割を占める電力などのエネルギー変換産業ですが、二酸化炭素排出削減のための研究開発が進められています。日本電線工業会低圧CV-Tケーブル導体サイズアップで日本のCO2排出量の1%削減を提言しています。日本電線工業会CO2削減特命部長の益尾和彦氏は日刊産業新聞2008年6月19日付で「個別各社ができないような横断的なテーマを電線工業会で企画し、JECTEC(電線総合技術センター)と共同でやろうと思い始めた。CVケーブルの導体サイズアップ削減できるCO2年間14.3百万トンで、白熱灯を蛍光灯に取り換えることで削減できるCO2年間2百万トンの7倍の効果が見込まれる。電線年間出荷量850千トン約4分の1を占める低圧CV-T大量の通電ロスを生んでいるに違いないと考えたのが発端だった。発電所から需要家まで通電ロス7%、需要家の構内通電ロス7%は、導体サイズを倍にすることで、ロス半分の3.5%に減らせることが判った。すると発電電力も3.5%節約でき、それにより無駄なCO2排出量が減り、日本全国の総CO2排出量の1%が減ることになる。・・・電力会社のケーブル銅量1.2百万トンに比べ、需要家向けCV-Tケーブルの銅量は3倍の3.1百万トンもある。電力会社のケーブルには電流がつねに流れていて、稼働率はほぼ100%であるのに対し、需要家の工場構内配線は年間200日、1日15時間で計算すると、稼働率は35%程度。実効通電銅量は、電力会社1.2百万トン需要家1.1百万トンとほぼ同じで、通電ロスもほぼ同じとなる。」と述べておられました。