青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

エコシステム型の生産財営業でイノベーション共創と好社会を目指す。

159-2/2. 省エネ素材で電磁鋼板など

日本の鉄鋼製品メーカーは、日本国の温暖化ガス排出の4割を占める産業界では電力と並んで排出ウエイトが高いのですが、トン当たり排出量では世界最小であることに加え、排出削減に貢献する創エネ・蓄エネ・省エネの素材と部材(マテリアル系生産財)を世界に供給していることも銘記しておくべきです。

鉄鋼新聞2009年11月27日付によると、CO2削減で果たしてきた日本の鉄鋼業界の貢献について、鉄鋼連盟が発表したこれまでの実績の試算として「地球規模では08年削減量48百万CO2トン環境に優しい鉄鋼製品を供給してきたことや、新興国の鉄鋼メーカーに省エネ技術・設備を普及させてきたことで実現されている。・・・・日本の鉄鋼業界は省エネ関連の設備投資に71年度から89年度までの約20年間約3兆円90年度から08年度までで1兆7千億円を費やした。これによって高炉・転炉法によるエネルギー消費原単位世界最高水準に達している。」と、またこれからの削減目標について「日本鉄鋼連盟宗岡正二会長(新日本製鉄社長)は、26日、地球温暖化に向け、鉄鋼業として2020年まで1兆円を投資して、次世代コークス炉(スコープ21)、高炉炉頂圧回収発電設備自家発電設備高効率化更新など、最先端の省エネ技術を導入、CO2排出削減年間5百万トンを目指すと表明した。前提条件は、粗鋼生産年間約1億2千万トン。 」と、そして二酸化炭素の大幅な削減を可能とする(本稿でも166で前述した)COURSE 50(鉄鉱石の水素還元と高炉ガスからのCO2回収)について「宗岡会長は、“難しい技術だが2050年ごろまでに実用化にこぎつけたい。”と語った。 」と報道していました。
マテリアル生産財電磁鋼板とは、鉄の磁気特性を利用した機能材料ですが、日刊金属特報2009年7月23日付は「電磁鋼板で世界最大サプライヤーである新日鉄」に関し、「新日鉄は、方向性電磁鋼板(GO)では技術供与先を含めると世界シェア50%以上。GOは世界の年間需要2百万トン程度、高機能分野0.5百万トン程度とされる。新日鉄技術供与先は、米国のAKスチール、欧州のティッセン・クルップスチール、英国のコジェント社、中国の武漢鋼鉄など。・・・無方向性電磁鋼板(NO)は、世界的に競合が多く競争が激しい分野。新日鉄ではGO製造の技術を応用し、製鋼から仕上げ工程まで一貫した造り込み技術の開発・改良により、結晶方向を精密にコントロールし、低鉄損化を進めた。現在では60年代に比べ40-60%の改善を実現。高速回転のHDD向け板厚0.15ミリ極薄化も達成。環境対応では07年クロムフリーコーティング技術を開発。06年に施行された省エネ法では、エアコン、テレビ、冷蔵庫、自動販売機など20を越える製品トップランナー方式が導入された。自動車分野でも、政府が15年をめどに新車販売に占めるハイブリッド車と電気自動車、燃料電池車の比率を半分にするとの目標を打ち出している。自動車の高速回転に耐え得る高張力電磁鋼板を85年から、ハイブリッド車用高効率材97年から製造開始している。 」と紹介していました。省エネ素材を代表する方向性電磁鋼板については日刊産業新聞2009年4月9日付でも「世界的な鉄鋼需要の急減で高炉メーカーの操業は大きく落ち込んでいるが、新日本製鉄JFEスチール方向性電磁鋼板(GO)はフル操業の状況。GOは鉄の結晶を一方向にそろえ、優れた磁気特性を持たせた薄鋼板。主に送電・発電用変圧器(トランス)などに使われる。世界の年間需要は2百万トン強。日本では新日本製鉄JFEスチールの2社が、海外では、中国の武漢(Wuhan)製鉄、韓国のPOSCO、米国のAKスチール、欧州のティッセンクルップスチールなどが製造している。特にエネルギーロスの少ないHGOと呼ばれるハイグレード品は、日本ミルの得意分野。米エネルギー情報局が発刊した国際的なエネルギー展望によると、05年から30年までの間に世界のエネルギー消費は50%拡大すると指摘。世界のエネルギー消費は中長期で増加が続くとみられる。」と報道していました。同じく方向性電磁鋼板に関し日刊金属産業新聞2008年10月17日付は「BRICsをはじめとする新興国を中心に電源開発が活発化して需要が旺盛。厚板と並び鉄鋼製品の中で最もタイトな品種。特に日本ミルが得意とするハイグレード分野は製造できる鉄鋼メーカーが限られているうえ、加工を行うトランスメーカー能力余力も少ない送電効率の高いハイグレードの方向性電磁鋼板の引き合い強いIAEA(国際エネルギー機関)が発表した世界のエネルギー需要見通しによると、2030年1次エネルギー需要2000年比約66%増152億7千万トン(石油換算トン数)と予測されており、需給緩和の可能性は少ない。」と報道していました。
変圧器の鉄心素材の珪素鋼板アモルファスについて2007年11月の114で前述しましたが、米国エネルギー省2010年から変圧器消費電力削減義務付けたことへの日立金属の対応に関し日経産業新聞2008年8月19日付は「日立金属はアモルファス金属材料を日本の安来工場と米国サウスカロライナ州の子会社でそれぞれ年間25千トンを生産しているが、2015年までに日米で三倍年産150千トン体制にする。変圧器用鉄心は新日本製鉄などが強みを持つ電磁鋼板が主流アモルファスの普及率5%程度とみられる。米国変圧器省エネ化義務付けられたことでアモルファス需要が急拡大しているという。日立金属は2015年普及率20%を見込んでいる。アモルファス金属材料は鉄に数%のホウ素を混ぜ、厚さ25umの箔状の材料。アモルファスの製造技術は米アライドシグナル社が開発。その後に米ハネウエルが買収した。日立金属03年にハネウエルのアモルファス工場を傘下に収め、子会社化07年国内生産開始しており、アモルファス金属材料市場でのシェア9割以上。」と報道していました。
電磁鋼板の東南アジア展開について日刊産業新聞2008年9月8日付は「住友金属の電磁鋼板加工拠点であるタイスミロックスは、加工板厚0.2-1.6ミリ幅300-1300ミリスリッターライン2基を持ち、月間約4百トンペースでスリット加工を、また3百トンや2百トンなど各プレス設備を持ち同6-7百トン二次加工を手掛けている。現地ユーザーから二次加工に対する要望が強いことから、3百トンプレス1基増設して4基体制としプレス能力を30%増の月間9百トンに引き上げる。すでにモーターコアの組み立ても始めており、今後、機能強化を一段と進める。」と報道していました。
インフラ分野の電力の送電変圧で、電力会社のCO2排出削減事例について鉄鋼新聞2009年11月5日付は「九州電力は、2020年の実用化を目標に、次世代のイットリウム超電導を用いた変圧器の開発を進めている。線材の製造はフジクラ昭和電線HDが担当。開発はNEDOのプロジェクトの一環。通電性能の高い超電導を使用することで、電力損失従来の6分の1まで減らせ、使用者のコストやCO2の排出を削減し変圧コイルに用いる巻線などを削減変圧器サイズ3分の2重量半分に小型化・軽量化できる。九州電力では“発電所から遠い低電圧の変電所での適用を見込んでいるが、将来的には工場設備などへの応用もありうる”としている。」と紹介していました。電力の送電ではロスが少ない直流送電への期待が高まっていますが、国内初の事例が発表されています。日刊産業新聞2009年5月7日付は「住友電工日立電線が折半出資する高圧電力ケーブル製造会社、ジェイ・パワーシステムズ(JPS)は直流CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)は、このほど電源開発から、北海道から本州の海底区間に敷設する直流CVケーブルを受注した。JPSは今回、直流用で絶縁性能に優れる独自の架橋ポリエチレンを開発した。・・・・JPSはこの電源開発向けの実績を足がかりに海外受注を目指す。直流CVケーブルは現状、競合メーカーが欧州大手電線メーカー1-2社に限られる。直流送電は交流送電に比べて送電ロスが少なく、大電力の長距離送電に適する。海底直流送電ではOFケーブル(油侵紙絶縁ケーブル)が主流だが、CVケーブルだと給油設備が不要となることから代替が期待される。」と報道していました。
ハイブリッド車バッテリー電圧を昇圧する回路で使われる部品(リアクトル)の素材に関し、日刊産業新聞2009年7月24日付は「大同特殊鋼は23日、トヨタ自動車が5月18日から発売開始した3代目プリウスの部品(リアクトル)に、同社が開発した金属磁性粉末が全面採用された、と発表した。昇圧機構で使われるリアクトルは、鉄心にコイルを巻き、電流を流すことで鉄心を磁化させて使用するが、鉄心部分これまでは電磁鋼板を使用していた。新型プリウスのリアクトルでは、金属磁性粉末を金型に充填し、プレス成形により製造した鉄心が使用されている。従来500ボルトまで上昇させていたものを650ボルトにまで引き上げることができ、銅線の線形細めることができるなど小型化に寄与する。売上高ベースで本年09年度は金属磁性粉末が10億円、粉末事業全体で50億円を目指すとともに、5年後の2014年には金属磁性粉末で1百億円、粉末事業全体では2.5百億円を目標にしている。 」と報道していました。
159でパワーデバイスSIC(炭化ケイ素)ウエハーとGaN基板について記載しましたが、米国のインターナショナルレクティファイアー(IR)は、世界初GaNパワーデバイスを発表しています。半導体産業新聞2009年5月27日付は「米IRが量産開始するのはFETベース。下地基板には6インチのシリコンウエハーを用いたヘテロエピタキシャルウエハーを使用する。オン抵抗については、200V品ではシリコンに比べて今後5年間10倍の改善が図れるという。10年の第1世代品のオン抵抗は約15オームだが、14年には5オーム以下に低減できる見通し。量産では、もっともアプリケーションが多い耐圧20-100Vクラスをターゲットと位置づけ。1000V以上はSiCが担う領域としてすみわけを明確にする。」と報道していました。
神奈川県秦野市日本インターショットキーバリアダイオード(SBD)で省エネ素材として期待が高いSiC(シリコンカーバイド)を採用したと発表していますが半導体産業新聞2009年4月22日付は「日本インターは、SiCをSBDの素材として活用。自動車太陽光発電装置デジタル家電向けに電力損失や電源容積を抑制する環境対応型エコデバイスを供給していく。一例として、薄型テレビなどで力率改善(PFC)回路に使用することによって部品点数の削減と電源容積の抑制、自動車や太陽光発電で高温環境における適用性・対応性から環境負荷低減や問題解決の寄与・推進が見込まれる。SiCはシリコンと比較して絶縁破壊電界強度約10倍熱伝導率約3倍飽和電子速度約2倍動作上限温度300-400度摂氏と高温で優れた物的特性を有し、電力損失やスイッチングノイズが小さい。日本インターは、全額出資子会社のフィリピンインターエレクトロニクス(PIEC、サンバレス州スービック)でSic-SBDの専用組立ラインを設置する。2009年6月稼働予定。立ち上げ時の月産1.5百万個。生産品目は600V(6A、10A)1200V(10A)TO220F外形を予定。」と報道していました。
放熱用途で使用されるアルミも省エネ素材といえます。アルミ放熱基板に関し電産新報2008年9月8日付は「長野県茅野市富士ネームプレートLED実装用アルミベースプリント配線板の量産を開始した。通常の樹脂基板に比べて7倍の放熱性を実現し、高輝度LED発光効率向上長寿命化と0.3ミリまでの薄型化を実現したもの。アルミ部分の厚さは0.3-1.6ミリ。最大サイズは400X500ミリ。価格は樹脂製と同等の1m2あたり1万円程度。富士ネームプレートは、親会社である宮坂ゴムなどと絶縁材料を共同開発してコスト削減を図っている。新製品は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けて2005年から進めてきた。放熱基板ということでは、電気化学工業ダイワ工業が2007年6月に共同出資でデンカAGSPを設立した事例がある。」と報道していました。