164-1/2. モバイル端末産業の構造変化
欧米ビジネスマンの多くが購入するBlackBerryや、個人のプライベート使用で人気が高いiPhoneなど、スマートフォンの登場で、パラダイムシフトは「携帯電話」産業でも加速しています。
スマートフォンの高成長期が到来したようです。スマートフォンは世界中のビジネス需要が牽引して立ち上がり、ホビーなどのプライベート需要も急増しています。ビジネスマンの需要はグローバルにみると機能や使い勝手が優先する安定した需要です。日本の携帯電話産業は、マーケティングのセグメンテーションに弱点がありそうです。
電波新聞が掲載した米ガートナーの調査では、2010年1Q(1-3月期)の携帯電話端末の販売台数は前年同期比17%増の314.6百万台で、伸びの牽引役がスマートフォン。スマートフォンは前年同期比48.7%増の54.3百万台。スマートフォンのOS別シェアは、シンビアンが44.3%、BlackBeryのRIMが 19.4%、アップルのiPhone-OSが15.4%、マイクロソフトのWindows/Mobileが 6.8%、Linuxが3.7%、とのことです。スマートフォンを含む携帯電話端末全体では、上述通り17%増の314.6百万台で、サプライヤー別内訳は、ノキア35.0%、サムスン電子20.6%、LGエレクトロニクス8.6%、と3位までは従来通りですが、4位にBlackBerryのカナダRIMが割って入り、5位がソニーエリクソン3.1%、6位がモトローラ3.0%、7位にiPhoneのアップルがランクイン。8位には中国のZTE(中興通訊)、9位に香港のG-ファイヴ、10位に中国のファーウエイ(華為技術)・・・。スマートフォンの2ケタ伸張と、新興市場、特にインドでノーブランドのホワイトボックス製品が伸びていることで、全体の台数が伸びているそうです。・・同じく電波新聞が掲載した米調査会社IDCの調査によると、2010年1Q(1-3月期)のスマートフォン生産台数は、前年同期比で56.7%増の54.7百万台。ブランド別には、ノキア39.3%、BlackBerryのRIM が19.4%、米国のアップルが16.1%、台湾のHTCが4.8%、米国のモトローラが4.2%・・・、2010年は、OSのBlackBerry、シンビアン、ウインドウズ・モバイルの更新で、一段とスマートフォン需要が刺激されると予想しています。・・・・・電波新聞2009年11月23日付は業界団体GSMAのレポートを紹介していましたが「アジア太平洋17カ国(AP17)の携帯電話加入者は、2013年には世界の携帯電話人口のほぼ半分の30億を超える、と推定される。携帯電話関連がもたらすAP17カ国での売上高は、年間36.8百億ドルとなり、AP17カ国のGDP全体の2.82%を占めると試算。1千億ドル以上の設備投資と1千万人の雇用が見込める。 」そうです。
早稲田大学・国際情報通信研究センター・工学博士の高川雄一郎氏は電波新聞2009年12月25日付で「人口5.3百万人のフィンランドのノキアが、世界シェアの4割近くを占め、創業20年ほどの華為とZTEを併せると中国勢が世界3G基地局市場の4割以上を押さえているのは何故かを研究すべき段階だ。これらの成功の裏には、政府系金融機関が低利で後押しするベンダーズファイナンスがある。Eモバイルがエリクソン製品を購入する場合に、スエーデン政府系の金融機関から低金利の長期融資を得ることが好例である。中国企業も国の資源外交政策と連動しつつ同じような戦術で成功している。また、国外に出て生活する国外赴任家族向けの日本人学校や医療機関の整備なども重要だ。民間の進出企業や現地の個人に何もかも負担させているようでは、21世紀の山田長政は誕生しない。 」と訴えておられました。
スマートフォンが新しい需要を押し上げながら、次世代携帯電話方式LTE(ロング・ターム・エボリューション)や4G携帯電話に向かっての商品開発も加速しています。電波新聞2010年4月27日付は「全世界の携帯電話需要は、09年は11億台を超え、10年は12億台越え、が予測されている。携帯電話需要は、09年2月頃から持ち直し、その後は回復基調。特に欧米系スマートフォンメーカーや、韓国系・中国系の携帯電話メーカーなどでは09年春以降に堅調に需要が増加し、日系部品企業の業績回復に寄与した。・・・搭載部品には一層の薄型・省スペース化や低消費電力化が求められる。手振れ補正モジュールやMEMS技術を活用した超小型3軸加速センサーの開発も進む。モジュール化の動きも活発で、ブルートゥース、GP3、ワンセグチューナーなどは、個別部品の小型化と同時に、回路基板ではLTCC(低温焼結セラミック)技術を用いた基板面積の小型化を実現している。最近では防水機能の付加が定着化し、回路基板とガスケットを一体化する技術が採用されるようになった。 」と報道していました。
尚、筆者/青草新吾は、法人用として検討すべく、4月からNTTのBlackBerryを使っていますが、ビジネス用途としては、一般の携帯電話端末よりも数段優れています。キーボードがパソコンに近いので、使いやすいし、エクセルなどを開いて見れるのは、出張が多い者には正に福音です。パソコンとデータを共有できるのも有難い。メモ帳が、パソコンのメモ帳と同じ感覚で使えるのも、新聞や雑誌の切り抜きが多い筆者にはヘルプフルです。キーボード操作が楽なので、移動が多く、メールの発信や、移動中のメモ書きが多いビジネスマンにはお薦めです。