青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

エコシステム型の生産財営業でイノベーション共創と好社会を目指す。

174. 農業大国ニッポンへの夢 / 農政利権の歪んだ視点

農業利権者は、“世界5 位の農業大国ニッポン”を貶めるプロパガンダともいえる“農業弱者論”や“カロリーベース自給率”による“税金へのたかり”を止め、国民と全国数十万のプロ農家のために農政改革の支援に回って欲しいと希望します。

先進国では人口の1-2%農業就業者(専業農家)がいてくれたら国民の食は確保できるということです。日本の場合にも数十万の農家が“世界5位日本の農業生産”のほぼすべてをカバーしています。自家消費やおすそ分け程度の兼業農家偽装農家農業生産に貢献せず、の状態です。農業生産にさほどの貢献をしていない役場農協に勤める給与所得者、週末農業程度アルバイト農家(パートタイム農家)にまで補償する必要はないと思います。数百万もの農政利権者、具体的には農協兼業農家偽装農家への血税バラマキ止めるべきです。これ以上の次世代へのツケ回し止めるべきです。“国民と専業農家のための農政”に転換して欲しい。
先進国では“全人口の1-2%程度のプロ農家”が“国民全員の食料を供給”し、輸出も行っています。農業大国の米国では、GDPの0.9%農業生産額自給率100%を超え4割を輸出しているそうです。月間農業経営の浅田芳裕氏*1によると“日本の農業生産8兆円”は日本国GDP1.5%に相当し、農業生産の規模では世界5位。所得の半分以上が農業所得の主業農家400千戸が農業生産額8兆円のほぼ全部を稼ぎ出しており、とりわけ年商1千万円を超える全国140千軒ともなると6割を稼ぎ出しているそうです。ということは、農林省ばら撒き対象になっている全国数百万戸の殆どは日本国の農業生産には貢献がない自家消費やおすそ分けの兼業農家や、土地売却狙いの偽装農家ということになります。農業利権者とは、農業生産には殆ど貢献がない数百万の兼業農家や農地売却狙いの偽装農家農協工事業者などです。これら農政利権者へのバラマキのために、毎年数兆円もの血税投入が続けられています。日本の農政は、国民とその食を支える“世界5位の農業生産を支える全国数十万のプロ農家”のために行われていません。
農業生産額8兆円の内訳で、農林省が価格決定を行うコメ官製市場2兆円を占め、その“2兆円の官製市場に毎年1兆円の補助金”が投入されているようです。同じお米の中には“輸出されるほどの輸出競争力がある美味しいおコメ”もあるというのに、何故このようなことになっているのでしょうか。1994年村山富一政権亀井静香政調会長が主導した6兆円ものウルグアイラウンド対策費の支出は、支出目的の「農業の生産性向上」には使われず、農業土木や農道空港などにばら撒かれたといいます。14年間に亘って41兆円が投入された第4次農業基盤整備事業で儲かったのは農協土木建設業者ばかりで、5%の負担を強いられた農家の多くがますます儲からなくなったと聞きます。企業ならば、投資効果を測定しますが、日本の農政ではお構いなしです。全国数百万の農政票は「1票の格差」によって数倍の影響力を及ぼします。加等紘一氏などの自民党の農政族議員は農協を通して兼業農家や擬装農家の票を集めてきましたが、民主党は農協を外して直接に兼業農家や擬装農家からの集票活動に努めているようです。農政の現場では、プロ農家は少数派で、兼業農家や擬装農家が多数派です。1票の格差で更に永田町界隈に対する影響力が増幅されています。結果として、日本では、国民とプロ農家のための農政が行われていません。農政利権者のための農政が行われています。上述通り、先進国では全人口の1-2%程度農業就業者がいてくれたら、国民全員食を賄えますが、日本では何と、統計上の農業就業者数が05年時点で5.3%も存在するそうです。先進国の中では“日本は異様なまでに農業就業者数が多い国”であり、統計上の農業就業者が集票の草刈場になっています。国民の血税賄賂のごとくばら撒いて得票しようとする政治家が後を絶ちません。
農水省は、“農業弱者論”と“カロリーベース自給率”なる詐術を駆使したプロパガンダを行っています。農水省の利権維持を目的とする予算獲得のために、国税を使ったプロパガンダを行い、記者クラブ癒着メディアが現場取材や反対意見の両論併記もないままに垂れ流し、“税金にたかる農政”が放置されています。自給率について、東大教授の本間正義氏は「そもそも市場を無視して自給率の向上を図ることにどんな意味があろうか?有事の際には、必要な食料も平時とは異なるから、平時の食料自給率など有事には意味をなさない。」と指摘していますが全く同感です。大前研一氏はSAPIO2008.11.26で「年間1千万トンのコメを作る水田用地は、豪州なら2百億円で買える。2百億円は、埼玉県の1年間の農業補助金に相当する。日本の農政で無駄に注ぎ込まれた税金をもし効率的に使っていれば、世界の農場や穀物を支配できていた。カーギルやコンアグラなどの穀物メジャー全社買って8.8兆円なのだから。・・・そもそも石油も鉄鉱石も輸入に依存する国で食料だけ自給率に拘るのは甚だしい論理矛盾である。」と、カロリーベース自給率という恣意的でいかがわしい指標について上述月間農業経営の浅田芳裕氏は「世界が使う自給率は“生産額ベース”なのに、何故か日本の農水省のみが“カロリーベース”を喧伝する。このカロリーベースで注意すべきは、分母の供給カロリーには、大量に破棄されているコンビニ食品工場での破棄分に加えて、ファミレス一般家庭での食べ残しまで含めている。自給率低く見せるために、誰の胃袋にも納まらなかった食料のカロリーまでが分母に加えられている。実際の消費化カロリーで計算しないと現実は見えてこない。また分子の供給カロリーには、全国2百万戸以上自家消費おすそわけ程度の兼業農家土地持ち非農家が生産する大量のコメや野菜含まれていない。最近急増している家庭菜園もカウントされていないプロの農家でも、価格下落規格外を理由に畑で破棄されているもの2-3割もあるのに、これも分子に含まれずなのである。い。つまり、実際の生産量と生産力農水省発表の数字よりずっと高いのである。 」と農水省が国民に対して行う情報操作の中に含まれる詐術のカラクを説明してくれています。ウソや情報操作が多い農政を考える上では、惺々著(せいせいじゃく)と眩まされないように真実を知ることは、大切です。
農水省が予算獲得のために行う農業弱者論もまやかしが多い。上述月刊「農業経営者」の浅川芳裕氏はWILLの2011年1月号で「OECD調査によると、日本の農家所得は、国民平均所得の1.2倍。米国の1.1倍よりも高い。・・・日本の専業農家競争力は高い。・・・生産量で世界4位の鶏卵の国際競争力は強い。生産量で世界7位の鶏肉中国との価格差10%以下でしかない。・・・世界の農業貿易額106兆円は、日本の農業生産額の12倍もの巨大市場である。日本の農業は、日本人が豊かになりライフスタイルが変化していくのに合わせて、コメ中心から野菜果物など嗜好品の付加価値生産にシフトしてきた。新興国豊かになるにつれライフスタイルが変化していく。日本は、新興国の未来を先取りしてきたので、農産物輸出増やす追い風が吹いている。・・・・農水省の試算まやかしである。TPP(環太平洋戦略的経済パートナーシップ)に参加するとコメの生産が1.97兆円減るというが、元々がコメは1.90兆円しか生産していないのに、何で1.97兆円も0.07兆円も余計に減るのか?生産がゼロになってさらに追い銭でも出す気か?・・・ 」と、同じく同氏はVOICE[2010.7]で「日本では、日本の農業の良い数字まったく発表されません。日本は世界5位の農業大国です。どの産業でも競争原理を働かさなければ、衰退します。補助金など止めて、何でも作っていいことにすべきです。例えば、野菜の関税3-5%で、すでにほぼ自由化されていますが、日本の野菜農家は勝負に生き残ってきています農家は経営者であって、製造からマーケティングまで、あらゆることを自分で考えられるクリエイティブな仕事なのです。しかるに日本の農業政策は、国(農水省)が経営者で、農協が中間管理職農家は労働者だとの位置づけで、“上に従え”という論理です。本来ならば、市場メカニズム新陳代謝が進むべきところを、政府は、高い関税率補助金といった見せかけの保護や規制で停滞を招き、新分野の育成を妨げ、振興策を装った安楽死政策を実行しています。・・・問題なのはコメです。日本のコメの関税率は精米換算で’’778%。輸入制限ペナルティとして年間700-800千トンのコメを輸入している。わざわざ高いカネを払って輸入するなど、政府は何をやっているのか。可笑しいのは、政府が勝手にコメの需要は伸びない”などと決め付け、無理やりの官製市場を作り、法外な補助金のバラマキを行っていること。・・・農政の目標は、“農家の所得を都市並みにする”ことでしたから、農家の所得都市部を追い越してしまった今は、役割を終えた農水省はお役ご免です。農水省が仕事を作り出すために始めたキャンペーンが“カロリーベースの食料自給率”なるロジックで危機を煽り続けています。農水省にとって都合が良いカロリーベースの自給率で、5年先までの予算閣議決定されています。このような業界は他にありません。・・・・政府や農水省の仕事は、検疫を含めて、農産物と家畜が経済的に生産され流通するための制度設計であって、農家保護でも消費者保護でもありません。」と訴えておられます。 
農政に係る政治について、農政族議員といえば加藤紘一氏が有名ですが、自民党の農政族議員は、集票につながる農道ダムといった農業土木の利権と癒着していたようです。対する民主党は、自民党の資金源切り崩し、並びに兼業農家や偽装農家からの集票目的もあったと想像しますが、自民党時代の利権だった農業土木予算を削って個別所得補償に回しましたから、この点ではお手柄といえます。利権構造の中から農業土木関係が切り離されました。民主党政権下で残された農政利権は、自民党時代からの農協利権と、今民主党が囲い込もうとしている兼業農家や偽装農家へのコメを理由にしたバラマキ利権です。ここではJAの政治力のしぶとさが伺えます。民主党小沢一郎氏は“自民党の農業土木や農協への税金投入”を止めて“農家に直接ばらまく”ことができる個別所得補償制度で農協の政治力と自民党の集票力をそぎ落としてしまいました。農協の政治介入を防ぐ観点からは良かった。しかしその後、今の管政権では、元自民党農水族議員だった鹿野道彦氏が農相に就き、しかもJAを母体とする農政連の推薦で当選した玄葉光一郎政調会長に就任し“農林水産部門会議”なるものが設けられているそうですから、民主党の中に既に農政族議員が誕生しているといえますから厄介です。筆者/青草新吾は、田中角栄型政治の申し子ともいうべき小沢一郎氏は、時代的役割を終えているとみており、勇退して頂くのがよかろうと考えますが、こと“族議員を許しては駄目”という部分、並びに“個別所得補償で貿易自由化に臨む”という二点においては、小沢一郎氏は正しく評価されてしかるべきだろうと考えています。
民主党内部に鹿野道彦氏や玄葉光一郎氏のような“JAの影響力を受けた農政族議員”が湧きだしてきましたが、政党や政権の如何に係らず、TPP(環太平洋戦略的経済パートナーシップ)やFTA(自由貿易協定)を進めていかないと、“農政利権栄え国滅ぶ”になりかねません。日本の農業が世界に出て行くチャンスが到来しています。貿易自由化と農業自由化で“世界5位の農業大国ニッポン”の世界を相手にした食の提供が拡大していくことを期待します。企業家精神と競争力にあふれた農業経営に日夜励んでおられる皆様にエールを送りたい。

*1:「日本は世界5位の農業大国」浅川芳裕著 ISBN:9784062726382