青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財営業でイノベーション共創と社会貢献を目指す。

184.日本企業の国際化が“素材や部材を含めた産業集積レベルでの国外シフト”の段階に入ったことで、国富の源泉が輸出から“対外直接投資からの受取額”にシフトしつつあります。

日本も米国のように「貿易収支の赤字を、外資からの配当金利で埋め合わせる」経済構造に移行しつつあるような気がします。2010年度ITI統計でみると、日本企業の対外直接投資残高83.1百億ドル。直接投資からの収益受取額3.82百億ドルで下術の通り9位のベルギーを抜いて世界7位の蘭に追いつきつつあります。・・・・多くの日本人日本企業が国外に出て仕事をし、稼ぎの一部日本に持ち帰るような経済構造に進化しつつあるのですが、日本から出ていくだけでなく、他の国からもっと多くの外国人が来日してくれるような国や都市にしていきたいものです。大阪市長選挙で圧勝した橋本徹市長は「世界から人が集まる大阪にする」と宣言しましたが、大阪府の財政を黒字化した手腕とその発想力並びに実行力は大いに期待できます。11月と12月に興隆著しい上海シンガポール(星国)を訪問し、衰退し続けてきた大阪市と比較すればするほど、橋本徹氏への賛同の意が強くなりました。
世界経済への日本国の貢献度合いは、GCP(グローバル総生産、Gross Global Production )の考え方が参考になります。GCPが成長することで“領土内の付加価値生産額を示すGDP”よりも“国境を超えた個人と企業の豊かさ”を示すGNI(“雇用所得と財産所得の内外収支”を反映、かってのGNPと同じ)が大きくなり、GNIとGDP乖離が拡大していく一方です。・・・日経新聞2010.7.31付では「金融と新興市場を除く上場660社の10年3月期は、営業利益内外比率で、海外が国内を上回る内外逆転企業245社5年間で4倍に増えた。資産の内外比率で国外比率50%超が45社、コマツやパイオニアでは国外資産が国内資産に迫りつつある。」と報道していました。
日本からの輸出主要品目は、加工組立型製品の家電が1980年代、自動車が1990年代に生産の海外シフトして以降、2000年代には、製造設備バイス・部品などの中間財が主な品目となり、最近では、部材(マテリアル系生産財)と素材(マテリアル生産財)が最後に残る輸出品目といわれてきました。今は、その部材素材の分野で国外生産が活発化してきています。・・・・“国内から国外へ”という動きに加えて、“中国からベトナムへ”というような海外間の流れについて、鉄鋼新聞2011.12.29付は古河電工に関し「古河電工は、エアコン向けを主力とする銅管生産国内縮小を完了した。大阪・尼崎の生産キャパを月間1.8千トンから約半分の月間1千トンに、人員も配置転換などで3分の2まで縮小した。・・・ハーネス生産については、中国沿海部の賃金上昇を受けて、恵州古河汽配有限公司の生産の95%、月間十数億円分を占める日本向けは、ベトナム(越国)に順次移管していくことを決めた。ハーネス事業の全体で、14年度で年間2千億円、世界シェア5%を目指している。」と報道していました。
昨今の特長は、人件費の安さよりも頭脳インフラを求めて、“韓国シンガポール(星国)への高度な技術を伴う拠点シフト”も目立ち始めていることです。特に半導体の最先端分野や有機EL(OLED)の部材や素材の分野で顕著です。韓国は、法人税日本の6割電気代3-4割、とインフラコストが安く、しかも日本の隣国だけに、日本の産業集積そのまま活用できる点でとても有利です。半導体産業新聞2011.12.14付で「主要部材メーカー国外進出加速度的に進んでいる。・・・・半導体業界では、HOYA世界シェア8割を持つマスクブランクス山梨県の長坂事業所だけでしか製造してこなかったが、ついに星国に進出した。最先端の22nmプロセスにも対応する。」と、またOLED(有機EL)では部材メーカーの韓国へのシフトが目立ちますが「・・・・OLEDは、SMD(サムスンモバイルディスプレー)が世界に先駆けて量産を開始。次世代の量産計画明確だ。現行の5.5世代(LGD4.5世代)を12年から13年にかけていずれも8.5世代にジャンプアップし、大幅な低コスト化と大型パネルの量産にチャレンジするという大きな目標がある。SMDの本気度を感じとった国内の部材メーカー装置メーカーは今年に入って相次いで韓国進出を決めた。それもベース基材のポリイミドワニス(宇部興産)まで現地化されようとしている。戦略部門の研究開発拠点を構築するところまで事態が進んでいる。有機EL発光材料メーカー保土谷化学工業をはじめ、JSRも今年に入って相次いで研究所を設けた。装置メーカーのアルパックも“超材料研究所”と名づけた研究所を韓国平澤市に設置した。前工程のLTPS製造装置や、蒸着・封止工程の主要プロセスを持つ同社が立地した意味は大きい。日系のみならず、独メルクも同市に研究拠点を開設。世界のOLEDの頭脳呼び込んでいる。画期的な技術韓国企業先んじて実用化しつつあることも注目に値する。サムスン電子は、日本の科学技術進行機構(JST)から“透明アモルファス酸化物半導体(TAOS)”の特許ライセンシー契約を受け、着々と次世代TFT有機ELへの応用展開を進めている。・・・イビデンも、従来は国内でしか製造してこなかった半導体やPV製造装置で使われる特殊炭素製品で“部材から韓国進出”を決めた。富士フィルムスラリーフォトレジストなどの部材の量産を開始する。・・・重要部材の生産国外に出すという主要部材メーカーの苦渋の決断だが、生き残るためには必要な措置である。国内セットハウスが魅力的なセットを打ち出すことがなくなり、このままでは、関連するデバイスや装置・部材産業が衰退化していくのだから。2000年のITバブル崩壊以降、この流れが顕著で、日本電機業界負のスパイラルとなって重くのしかかってきている。研究開発で先行しておきながらも、いざ商業化段階の本格量産で出遅れるという“日本勢負けパターン”を断ち切る必要がある。 」と俯瞰情報をまとめてくれていました。電機業界は国外のEMS企業に委託する例が急増し、自動車業界も新興国市場の拡大に対応しての国外生産拡大が続きます。三洋電機を完全子会社化したパナソニックは、太陽電池事業について、技術流出の懸念から国内生産にこだわってきたコア技術のセル製造について「技術ブラックボックスのめどがつき、生産設備も内製化できること」並びに「マレーシア(馬国)は、水、電気料金、ガスといったインフラが完備し、税制優遇といった政府の支援も手厚い」ことから、馬国への進出を決定しています。パナソニック アジアパシフィックの100%出資で、4.5百億円を投資し、生産能力300MWの、ウエハー加工からセル・モジュールまでの一貫工場を建設すると発表しています。
他方で日本国内での投資にも注目しておく必要があります。半導体産業新聞2011.12.21付でまず半導体業界で外資が日本国内で投資する動きについて「日本でしか製造できない製品はまだまだあるはず。2011年は、海外メーカーによる日本の企業・工場買収も目立つ年となった。10年にテキサス・インスツルメンツSpansionの会津工場買収し、オンセミコンダクタ三洋半導体買収した。この動きが11年にも続き、タワージャズセミコンダクタによるマイクロンテクノロジー西脇工場買収台湾シノアメリカンによるコバレントマテリアルのウエハー部門買収も行われた。“日本のものづくり技術”を海外企業がいまだ高く評価しているという側面もある。このことを日本はもっと誇りに思うべきだ。 」と、また京都のメテック北村の社長/北村隆幸氏は同紙で「安定した品質で提供できる銀めっき技術を確立し、これが80%以上の高い可視光反射率を持つために、LEDリフレクターとして採用が急増している。LED産業集積を進める徳島県の誘致で、徳島県阿波市新工場建設に踏み切り、この秋に立ち上がった。工場排水は完全クローズドシステムを採用し、場外に排出しない。国内外におけるコスト競争力をつけていく。・・・国外では、馬国(まれーしあ)と泰国に拠点工場を持っており、徳島の新工場で培った省人化プロセスを段階的に海外工場に移植していく。国内350人国外550人で、今や国外の方が従業員も多い。最近の年商は1百億円前後で横ばい。今後の成長については、新技術開発につきる。先ほどの銀めっき工程を使って、ガラスへの乾式めっきを“湿式めっき”に変えるとコストが安く、液晶よりも割安なECDディスプレーができる。自動車、高速鉄道、航空機、住宅やオフィスなどの窓ガラスで大きな需要が出てくるとみている。2次電池向け“粉体めっき”も開発中。無機材料に無電解めっきする手法で取り組んでいる。・・・国内における不毛な消耗戦は避けて、グローバリーゼーションで勝負していくことが重要。 」と述べておられました。
GDPよりも一国の世界経済への貢献の実態をつかみ易いGCP(グローバル総生産、Gross Global Production )を見ていく上で参考になるのが、上述した対外投資と対外投資からの受取額です。以下で米国など他国と比較してみます。日本はGDPで世界3位の大国ですが、対外投資ではそこまでの大国になれていません。世界の中で、日本企業の対外直接投資はまだまだ少ないほうで、例えば、対外投資残高で世界1位の米国対外直接投資残高4.843兆ドルは日本の5.8倍、直接投資からの収益(受取額)43.2百億ドルで日本の11.3倍もあります。以下、直接投資からの収益(受取額)を国別にみると、2位が英国12.6百億ドル、3位の香港8.7百億ドル、4位の独8.65百億ドル、5位の仏7.32百億ドル、6位のスイス6.91百億ドル、7位の蘭4.98百億ドル、に8位日本3.82百億ドルが続きます。日本の後ろには9位のルクセンブルク3.78百億ドル、10位に加3.67百億ドルが続いています。米国経済の強さは、規模もさることながら投資が出て行くだけでなく“他国からの対内投資”が209.9兆ドルもあり、対外直接投資の7割ぐらいの規模対内投資を呼びこんでいます。つまり双方向で投資が動いています。一方の日本は対外直接投資45.0兆ドルに対して、国外からの対内投資10.8兆ドルと、対外投資の2-3割規模で、投資の流れ大きな偏りがあります。政府・行政には「日本にもっと投資と人材を呼び込む」努力が求められます。
2011年度は、3月の東日本大震災津波で寸断されたサプライチェーンがようやく復活し、生産を取り戻そうとした矢先に泰国での洪水が起こり、年末にかけては欧州危機が深刻化するという、多くの日本企業にとってはまさに試練の年であったとともに、多くの企業がアジア展開への一層の傾注を決意した年でもあったと思います。
2012年度は、多くの日本企業がアジアを中心として世界経済への貢献度を更に一層高めることを通して収益を拡大し、一方で日本国が行政の財務省以下、自治労官公労などの組合を含めた役人の既得権益拡大で食いつぶされて破綻に追い込まれることがなきよう、どうしようもなく不具合な政治プロセスがまともに機能できるように、“公務員改革”と行政改革が始まる年になりますように。