青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

2012-05-06 185-1/2 日本というシステム

企業の国際化は更に加速し、生産財営業も輸出よりも直接投資で稼ぐ時代に入っていきそうです。“企業と国民の発展を阻害”している“明治そのままの日本の統治機構既得権益”はリセットが必要なようです。

筆者/青草新吾は、半年ぶりに曼谷(バンコク)を訪問し、子供の日の5月5日に帰国しました。日本は連休ですが、現地は稼動しているので、どうしてもこの時期には国外にでるスケジュールが入りやすくなります。昨年の東北大震災と、泰国の洪水で、多くの日本企業が背中を押されるように「輸出縮小・現地生産拡大」を更に加速しています。筆者/青草新吾が司る事業組織もこの間にインドネシア上海の両方での事業拠点設立へと動きました。取引先をみるとインドネシア泰国からの再投資上海長江デルタでは「需要の高級化」に対応した拠点増強という側面が強いと感じます。
今の日本では“企業が果たす役割”がとても多く、その企業は国際化の潮流を航海しています。ドイツ経済の強さは「“地方中堅中小企業”の“国際化の厚み”」です。「あっぱれ技術大国ドイツ」[ ISBN:9784101322339 ]でそのことを思い起こしました。米国経済の強さは「産業の分厚さ」と「地方の分厚さ」です。日本総合研究所の廣瀬茂夫氏によると「フォーチュン500の売上高5百億ドル以上で、米国は金融保険、小売り、産業機械、日用雑貨、食品、化学といった幅広い産業が出てくる。一方で、日本は自動車、電力、郵便、商社の4分野に偏りがある。米国45社本社所在地39都市に散らばり、ニューヨークは6社に過ぎない。一方、日本はといえば“20社中15社が東京”で偏りが大きい。」ということです。
日本のGDPは過去20年間、5百兆円前後で横ばいか微減です。他の先進諸国と同様に、年2-3%の成長が実現できていたと仮定すれば、今は約9百兆円ぐらいになっていたはずです。ソ連共産党が打ち立てたソ連崩壊以降、グローバル化フラット化が進展し、“規格型大量生産競争”の場が新興国にシフトし、先進国の付加価値の源泉は“多様化差異化の競争”にパラダイムシフトしました。・・・今の“明治以来そのまま日本というシステム”は環境の激変に不適合のままです。“画一的で均質的なシステム”は“キャッチアップの時代”にはとても威力を発揮しましたが、同時に多くの既得権益を生みました。代表的なのは規制に守られた公務員や大企業の労働組合、福祉法人などです。東京への一極集中公務員制度とテレビや新聞の大メディアに多くの癒着と既得権益をもたらしました。競争原理が働かないところでは歪み腐敗が進行します。
“日本というシステム”の競争力を復活するという点からは、大阪市長橋本徹氏の「大阪は上海や星国(シンガポール)との都市間競争で伍していけるようになりたい。そのためには明治以降の統治機構の維新が必要だ。」との主張は極めて正しいと感じます。VOICE.2012.5月号で、大前研一氏は「現在の都道府県の枠組みリセットして、十くらいの組織に括り直し、好き好きに競争させて自活の道を探してもらう。世界から繁栄のための資金と人材を“集めてくる自由”を地方に与える。例えば日本の建築基準法は一律でかつ、コンピュータでは判断できない“担当役人による裁量部分”が多い。星国(シンガポール)では、コンピュータにCADでつくった図面を入れれば、適法かどうか瞬時にわかる土地利用では、港湾地区は国土交通省、工業地帯は経産省などとタテ割りだから、日本では水際の一等地に住宅地ができない。“土地の使い方地方に委ね”た方が“日本の活性化”につながっていく。・・・橋本氏の考えで問題なのは、原発対応だ。再稼動できるものは再稼動させないと、おそらく今年の夏は乗り切れない。仮に計画停電で乗り切れたとしてもそのような地域は衰退するし、外から新しく企業が来ることもない。もう一つ、所属議員たちの能力には疑問があり、“橋本の足下”が崩れないことを祈っている。」と述べておられましたが、筆者/青草信吾もほぼ同感です。
ザインエレクトロニクスの社長/飯塚哲哉氏は半導体産業新聞2012.3.14付けで「日本の未来を担う若者への就業機会も作らないまま、年金給付開始年齢の引き上げを検討するなど、アンチビジネスの風潮が強くなっている。日本は、高い法人税、厳しい労働規制貿易協定の遅れ過大な温室効果ガス削減電力不足円高といった六重苦を解決できない状況。このままビジネス環境が改善されずに放置されない場合、BCP(事業継続計画)の選択肢として国外へのシフトが加速していくだろう。」と述べておられましたが同感です。但し、184[2011.12.30]で前述しましたように、ベルリンの壁ソ連共産主義体制崩壊の後に起こった企業間競争の猛烈なグローバル化パラダイムシフトからは、日本企業の国際化は一層進めていくべきです。理想的なのは、消費財ユニクロのように、東レのハイテク素材を使った生産をすべて国外で行う“輸入販売”でありながらも、国外に出す付加価値は2割で、国内に残す付加価値が8割にも及ぶというモデルでしょう。
現代社会では「企業」が社会を構成する主要な単位になっていますから、元気な社会にするためには無数の元気な企業が必要です。高い生産性革新性に溢れた元気な企業付加価値を生み出すことで国民を豊かにします。高い生産性と革新性企業に集まっていますから、フェアな競走で稼ぎ出す企業が報われる「フェアな競争社会」が必要です。明治以降中央集権戦後の一極集中で生まれたきた既得権益打ち壊す統治機構改革としては、道州制がその入り口にある課題と考えています。今、世界を見渡すと、元気な国や都市は“地方と地方企業に厚みがある国”ばかりです。チャイナ(支那)も、日本よりは米国に近い地方分権国家です。上海や大連の市長たちは発展を競っています。明治以降の統治機構が邪魔をして、世界の変化についていけない日本では、統治機構改革極めて重要です。この点で、大阪市長橋本徹氏の公務員改革・行政改革には大いに期待していますし、大阪を上海や星国(シンガポール)と同格の“世界中からヒト・モノ・カネが集まる”都市にして変えていって欲しいと期待します。