青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

エコシステム型の生産財営業でイノベーション共創と好社会を目指す。

2016-07-31 201.英国のEU離脱と米国の大統領選 で「これからの日本」

「英国にとってEUは功罪相半ば」「米国の本流はハートランド(中西部)」といったところが日本の報道では欠けているようです。メディアの報道はどうしても偏りがちですから自分のネットワークでも情報を集めて、世界とニッポンがどう動いていくのか、自分に何ができるか、どうしていけばよいか?を自分の頭で考えていくしかありません。

筆者/青草新吾、半年ぶりに筆を執ります。英国のEU離脱に関して。英国人にとってはポジティブな側面とネガティブな側面の両方があるようですが、日本の報道では「離脱すると大変なことになる」という残留派の主張に偏って報道されている場合が多く見受けられました。英連合王国は、2015年度でGDP2.8兆ドル、世界5位の経済大国です。その英連合王国を頭とする英連邦には53カ国が加盟し、内訳は英国王を国王とする加豪新など16カ国と、38の共和国です。人口20億人、世界貿易の20%を占めるそうです。英連邦とは「英語と英米法に代表される近代国家のインフラを共有」する国々の集まりですが「英語と英米法」こそは、金融街シティの強みです。
その英連合王国の国際競争力を維持し強化していく上ではEUは功罪相半ばします。英国は米国と同様に金融立国です。金融立国にとっては「緩やかな金融規制と低い税率」がベターです。ところが独仏主導のEUでは年々金融規制が強化されています。この点でシティの皆様も必ずしもEU残留に必死であったということではないようです。多国籍企業を誘致する税制を進めていくうえでもEUの規制から自由になることはベターでもあります。最近では「離脱賛成の英資産運用会社経営者」の「イノベーションを生む枠組みとしては、EUは疑わしい」との発言も報道されていました。
EU非加盟でも豊かなクオリティ国家なのが、ノルウェー(諾)とスイス(瑞)の両国です。ノルウェー(諾)はEU単一市場を全面的に利用できるEEA(欧州経済地域)に加盟し、スイス(瑞)はEEA(欧州経済地域)には加盟せず、自国にとって必要な部分のみにEUと二国間協定を締結して単一市場に参加しているそうです。スイス(瑞)も金融立国の側面もありますから「長年築いてきた独自の伝統的制度や政策の方が国民にとっての利益が大きい」のでしょう。
米国の大統領選に関して。日本の報道は偏りすぎています。理由は「日本の外務省やメディア・知識人は米国との関係が偏っている」からです。2008.10.25[144.米国人による東京裁判批判]でも前述しましたが、日本の学校教育やメディア報道はリベラル左派や東海岸エリート層の米国ばかりを伝えてきています。筆者/青草新語は米国通ではありませんが、米国出張の度に「米国は偉大な田舎や共同体が実にパワフル」と感じたことを思い起こしています。トランプさんの極端な発言ばかりが日本で報道される傾向にありますが、おそらくはあのトランプ氏の訴えは「典型的なハートランドアメリカの人々の琴線に触れている」のだと思います。米国中西部、ミシシッピ川オハイオ沿いのハートランドには「選挙にはいかないが教会には行く人の方が多く、今回はそのような人々がトランプ支持で立ち上がっている」と江戸川大学名誉教授の高山眞知子氏がWILL2018.6(トランプはバカじゃない)で寄稿しておられました。そもそも米国では共和党モンロー主義(他国不干渉主義)が歴史的な潮流として脈々と流れています。共和党伝統共同体を重視し小さな政府を目指す政党です。伝統的に親日反中・反共産主義だが国益重視の反国際主義の流れが強いようです。ちなみに米合衆国の南北戦争では、北部で黒人奴隷解放を主張したのが共和党、南部で奴隷制維持を主張したのが民主党です。事実に基づく判断が大切です。民主党は、リベラル大きな政府志向グローバリズム嫌日親中・容共・国際主義の流れが強めです。米合衆国が世界の警察官になったのは、容共派でソ連共産党のスパイに取り囲まれていた民主党Fローズヴェルト大統領(1932-1945)の代にモンロー主義を放棄して日本を開戦に追い込んでこれを理由に欧州戦線に乗り込んで以降です。民主党Fローズヴェルトの代に国際主義の傾向を一気に高めた米合衆国も、1960年代以降は国連離れの傾向が出始めており、1980年代のレーガン大統領と英国サッチャー首相の時代に「米ソ冷戦で勝利(ソ連崩壊)」して以降は、徐々に現代版モンロー主義的な雰囲気が出始めていたような気がします。ローズヴェルト以来の再選を果たした1990年代の民主党クリントン政権が金融グローバル化を強力に進め、2000年代前半の共和党ブッシュ大統領ネオコン(民主党から民主党右派が共和党に流れ込んだ反共・国際主義者)と組み、イラク戦争に乗り出したものの今はその反動が大きくなっているようです。
日本国内の報道はとても偏っていますが、お互いに声をかけあいながら自分の頭で考え、ありのままの現実を受け入れて「良い方向にもっていく努力」に勤(いそ)しむしかありません。自分たちに何ができるか、できることに集中することが大切です。
今のこの時代は、恐らくは人類史の中でも有数の数少ない大転換のさなかかもしれません。変化の荒波のなかで必死に船を漕ぐにしても目指す方向性が大切です。その場合には次世代に何を継承していけるのかが大切です。先人の努力の積み重ねで私たちは今の平和で豊かな生活ができています。東洋経済2016.6.18で一橋大学名誉教授の斉藤修氏が「幕末維新の時代の一人当たりGDPは800ドル台-1000ドル台、現在の20分の1くらい。1950代のタイ(泰)、80年代のベトナム(越)。維新後に豊かになっていったが1955年まで西欧12カ国の約半分の水準、周辺のギリシャ(希)やスペイン(西)や旧東欧7カ国並みだった。敗戦後の高度成長米英などの先進国に追いつけた。」と寄稿しておられました。・・・今の日本はグローバル化少子・高齢化が進む成熟社会ですが、安倍政権は「お金がかからない改革」が手薄です。時代の変化を理解できていない旧来パターンに凝り固まった政治家や官僚に囲まれているからではないでしょうか。・・・まずやるべきは税金投入が要らない景気浮揚策です。増税よりもまず先にやるべきことです。VOICE2016.7で瀧本泰行氏なるお方が「消費税増税で景気を下げるよりも確実な財政再建策。安倍内閣が”労働休暇を適法状態に戻す”と閣議決定するだけ個人消費が最初の12カ月で12兆円増え、雇用も大幅に緩和される」と寄稿しておられましたがとても頷(うなづ)けます。長期休暇や働き方改革で「1年中いつでも利用できるコンビニ」のように「役所や大企業の高価な設備が1年中稼働し、一人一人が計画的に連続休暇がとれるようになる」ならば日本経済の生産性が高まります。「子育て支援日本を救う」なる著書では「財政再建につながる政策は”保育サービスを中心とした子育て支援だ」との実証研究が発表されていると本朝の日経新聞2016.7.31読書欄で紹介されていました。各種規制は役所と癒着業界の既得権益になりやすいのですが「規制緩和も税金投入を必要としない景気浮揚策」です。
経済社会に大きな影響を及ぼすのが金融政策企業活動です。本朝の産経新聞2016.7.31で田村秀男氏が「"金融機関の日銀当座預金"と"企業内部の利益剰余金"が642兆円にも積みあがっている。このお金が消費や雇用・設備投資に回っていれば安倍政権の目標である名目GDP600兆円はとっくに達成されているはずである。・・・銀行最大手の三菱東京UFJは、マイナス金利に反発し国債入札の特別資格を返上したが、国債売却資金はそのまま日銀当座預金にため続けている。国内の銀行貸し出しは増えないが、そのくせ債務膨張が不安な中国に大型融資するなど海外向け融資には熱心だ。・・・手元資金が豊富になった企業もマイナス金利で資金調達できる環境であるにもかかわらず設備投資や雇用拡大には慎重だ。・・・このままでは日本国内に循環しないマネー巨大化するだけだ。銀行は”国内向け融資拡大”に総力を挙げ、企業は剰余金を"雇用改善や技術革新に"回すべきだ。」と寄稿しておられましたが実に悩ましい内容です。「政治と行政が未来のビジョンを示せない」ので、一部のパイオニア的な企業を除けば「その他大勢の普通の企業は思い切った一歩を踏み出せないでいる」のです。財務省や税金に寄生する既得権益関係者など増税したい勢力が「増税のため不安煽り」を行い、メディアでも「不安を煽る方が売れるし視聴率も稼げる」とばかりに不安を煽り続けてきた結果です。安倍政権の財政出動について田村秀男氏は「政府は25年1月に大型補正予算財政出動して景気を押し上げたが、その後の消費増税で一挙に効果が吹き飛びデフレ圧力が再燃し今に至る。そもそも20年にもわたる"慢性デフレに染まった民間資金"を単発的な財政出動だけで揺り動かすことができるのか。欧州はEUへの期待の低下、中国は不況下のバブル、米国では反グルーバリズムの勃興と、日本はリスクの大海に浮かんでいる。日銀や企業内部で"膨らみ続ける余剰マネー"を活用できない限り、日本の再生はおぼつかない。」と嘆いていますが同感です。
"民間資金を活用"し"イノベーションを活性化"していくこと、"子育て支援"や"働き方改革"などで"未来に向けての希望と目標"を持ちやすい社会にしていくことです。そのためには今の「明治維新以降の"官僚型・中央集権政治"」から江戸時代のような「地方分権」を進め、各地域の特徴に合わせた政策で「各地方政府が実績を競いあう道州制へと近づいていくのがベターと考えます。組織をマネジメントする経験があればわかることですが「発展していくための適正規模」「マネジメントするための適正規模」があります。東京一極集中で霞が関や永田町で統治するには今の日本は複雑で大きすぎるのです。194[2014.7.20 ニッポンができる世界への貢献]で前述した”クオリティ国家”、つまり日本よりも一人当たりGDPが豊かな民主主義国は、スウェーデン(典)フィンランド(芬)スイス(瑞)シンガポール(星)などは国家統治の適正規模と思われます。米合衆国連邦共和国は"連邦制で統治の適正規模を実現"しています。適正規模で地域のことをよりよく分った地方政府が「独自の産業振興策を行い実績を競い合う」ことで、複数のエンジンを持った連邦国家が実現されています。次頁では、自動車産業グローバル化と日本経済への貢献を振り返ってみたいと思います。