青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

2018-10-23 215.公正公平守る告発や投票 不正権力退治

「もはや内部告発しか改善の手が残されていない」と立ち上がった現場の方々のお蔭で、神戸製鋼や三菱マテ、先週からのKYBなどは「やり直しと健全な会社に回復する機会」を得ました。この「組織をあげて改善に向けて動きだせる」ところが、内向き利権組織の「相撲協会NHK」との違いです。両者のガバナンスの違いは「お客や社会への畏(おそ)れの程度」だと思います。

  オリンパスで2011年、巨額不正を明らかにしようとして解任されてしまった英国人の元社長/マイケル・ウッドフォード氏が「日本社会は、尊敬するサムライと、その反対の愚か者両極端に分かれてしまう。なぜか?」と嘆いたのは象徴的でした。2011年に、情報誌FACTAの記事(「オリンパス経営陣の不正」)をみて調査を始めたウッドフォード社長を追い込んで解任したのは、不正を行った菊川会長らの前経営陣でした。不正を行っていた菊川前会長らは元英国人社長を解任した理由で「この英国人社長は、独断専横的で日本の企業風土を理解していない」などと、癒着メディアを使って人格攻撃まで広めていましたが、2012年に逮捕されました。・・・菊川会長らが逮捕されるまでの加害者が被害者をいびりだすプロセスは、被害者側である貴乃花親方が相撲協会からいびりだされた一連のプロセスとよく似ています。・・・オリンパス相撲協会違いは、オリンパス事件では、外部の所管官庁などガバナンスの最後の砦が機能して加害者が逮捕され、相撲協会の暴行傷害事件では外部からのガバナンスが利かないで加害者が厚遇され、被害者が追い込まれていったことです。・・・会社であれ、公益法人であれ、日本型組織が背負う脆弱な部分は、本稿の後半で掘り下げてみたいと思います。その前に生産財営業に係るトピックスを幾つか列記させてもらいます。
  1989年のベルリンの壁崩壊東西冷戦終結に始まるグローバル化、日本では1991年のバブル崩壊、2000年頃からのインターネットの発展で、大きな会社も揉みくちゃにされながら変身しながら生き残ってきています。その中にイトマン・住銀事件日鐵住金物産があります。この時代のとても象徴的な事例です。
  繊維分野の名門商社イトマンは、1990年の日経新聞の報道で、住友銀行を巻き込んだイトマン事件が起こりました。内部告発住友銀行取締役の國重惇史(くにしげあつし)は「住友銀行秘史*1を上梓したので、より分り易くなりました。さすがに人材豊富な住友銀行イトマンでした。内部告発のお蔭で腐った頭が差し替えられ、路線が軌道修正され、1993年にイトマン住金物産が買収しました。イトマンの商号は110年の歴史に幕をおろしましたが、事業を継続できたことで、イトマンで育ったプロ社員の方々は移籍先の住金物産で事業を発展させていきました。・・・2013年には住金物産日鐵商事が合併し、日鐵住金物産へと巨大化し、さらに三井物産からの事業譲渡も受けて、4月から日鉄物産に商号を変更するそうです。イトマンからの繊維事業は「メーカー型商社」としてOEMメーカー事業で発展を続けてきているそうです。そしてこれからはODM事業の機能を高めていくそうです。世界のアパレル産業の規模180兆円くらいとのことですから、アパレル産業は自動車産業並みの規模といえます。
   テレ東BSのモーニングプラスで赤羽高(たかし)なる東海東京証券のアナリストがヘルスケア分野の解説をしていました。その中で医療手術ロボットでは、本稿214[ 2018.9.15 ]で早大の木村秀紀さんの「世界トップの要素技術がそろっているのにシステム製品がない事例が手術ロボット」を紹介しましたが、赤羽さんの説明では「ダビンチや、川重とシスメックスの協業が頑張ってる」そうです。本庶佑(ほんじょたすく)京大特別教授のノーベル賞受賞に象徴されますが、がんの分野日本がとても強いそうです。特に放射線では陽子線重粒子などでは世界の半分くらいのイメージでダントツとのことでした。
  自動車産業は、CASE(Connected /Autonomous /Shared /Electric)に向かった流れがどんどん強く広く大きくなっています。生産規模は、ビジネス+IT Magazine なる出版物(vol.31)でまとめてくれていましたので以下引用します。1位の独VW10.1百万台、2位のトヨタ9.9百万台、3位ルノー日産8.5百万台、4位現代自8.1百万台、5位の米GM7.9百万台、6位の米フォード6.3百万台、7位本田4.9百万台、8位がフィアットクライスラー4.9百万台、9位が仏PSA3.2百万台、10位スズキ2.8百万台。・・・VWナチス政権下の国策会社でスタートしたが、今はポルシェ家とピエヒ家の両家が支配株主で、ポルシェやアウディもグループ入りしており、英のベントレーや伊のバイク/ドゥカティもグループ入りしているようです。・・・米国勢は、GMがスバル、いすゞ、スズキ、スエーデンのサーブといったグループ会社の株をすべて売却、6位のフォードも、マツダ、英ジャガーと英ランドローバー、スエーデンのボルボを株を手放し、経営破たんしたクライスラーは、ランチアアルファロメオフェラーリ、マセラッティを傘下に持つフィアット経営統合し、フィアットクライスラーとして上位進出を目指しているようです。
よくEVハイブリッドかという議論がみられますが、単純な素人メディアの二分法では間違うので、以下で整理してみます。・・・バッテリー重たいコストも高いので長距離に不向きです。バッテリーとモーターだけのピュアEVは通勤用や近距離向きです。長距離だと、日産ノートのようなエンジンで発電してEV走行するシリーズハイブリッドプラグインハイブリッドは近距離をEV走行しバッテリー容量を超えるような長距離を内燃機関走行できます。プリウスのようなハイブリッドEV内燃機関電動モーター適宜で使い分けして長距離走行できます。
  燃料電池はバッテリーではなくて発電機ですから、発電機を搭載した電動車ということでは日産ノートと同じです。発電機がガソリンエンジンでなく燃料電池ですから、ガソリンの代わりに燃料の水素を充填する必要があります。・・・中国でも「2030頃燃料電池が本命」といわれています。電波新聞2018.9.27で「チャイナデイリーは“2030に全販売台数の30%が電動車両。電動車両普及の課題はその時点の燃料電池の耐久性能次第”との専門家の説明を紹介」と報道していました。
  続いて日本型組織の脆弱性に話を戻します。「日本社会は、尊敬するサムライと、その反対の愚か者に、どうしてこうも両極端に分かれてしまうのか」との元英国人社長の嘆きを上で紹介しました。筆者/青草新吾は、英国人ならではの実に的を得た嘆きだと感じ入ります。・・・筆者/青草新吾は、土井健朗(たけお)さんの名著「甘えの構造*2と、東大初の女性教授/中根千枝さんの「タテ社会の人間関係*3で多くが分析されていると感じます。
  日本社会は「組織トップ甘えている人が多い」という特徴があります。欧米社会や大陸チャイナ(支那/中国)の社会との違いです。精神科医土井健郎さんは1971年に出版された「甘えの構造」で、「日本では、他者依存社会規範に取り入れられている。家族や地縁への甘え潤滑剤ともなっている。」と適格な分析を行っています。しかし「政治家や経営者などエリートの甘え国や会社を滅ぼす」との憂慮も示しておられました。
  日本社会には、下克上の戦国時代に続く江戸時代には「閉鎖的な身分社会」と「序列偏重のタテ社会」が形作られました。「嘘も方便」は江戸時代に登場した成句だそうです。これらに敗戦後の戦後日本の「個人主義や民主主義のはき違えとその帰結である極端な悪平等」が重なってできた「日本特有の閉鎖的で序列偏重のタテ社会」を、中根千枝さんが1967年の「タテ社会の人間関係」で分析し記述してくれました。・・・更に高度成長期安定成長期に多くの日本人に染みついた「戦後型雇用システム(一括採用・年功序列・終身雇用)で会社の役所化・官僚化も進み、世界中どこにでもある「官僚制の逆機能」と重なったのが「戦後日本型の大企業病」です。
  オリンパス事件の場合には、会社法金融商品取引法(有価証券の虚偽記載)など、法律違反で会社の「執行組織の頭6人逮捕された」ことで、ガバナンスの軌道修正が図られていきました。・・・反社会勢力に浸食されたイトマン・住銀事件の場合は、会社法の特別背任でオリンパス事件と同じく会社の執行組織の6人が逮捕されています。・・・イトマン・住銀事件の場合には「内部に、膿をだしたいという少なからぬ改革派」が存在していたので、「ガバナンス正常化の速度が速かった」ように記憶しています。営利法人の会社では、ガバナンスの最後の砦内部告発法律所管官庁です。・・・相撲協会の場合には、これら外部の最後の砦がないのが致命的です。本来相撲協会の収益源であるNHKが、ガバナンスの常識国民目線から牽制の圧力でもかければよいのですが、悪いことにNHKそのものが税金のように徴収する受信料を収益源にしてますから、NHKそのもの役所と同じ相撲協会へのガバナンス利きません。・・・先週2018.10.19に発表された相撲協会の第三者委員会/但木(ただき)委員長の「暴力問題但木報告書」からは、昨年末2018.12.22の「相撲協会・危機管理委員会・高野報告書」が「嘘とねつ造の報告書」だったことが分ります。・・・江戸時代に登場した嘘も方便そのものです。相撲協会の事件では、事実に基づかない政治的な嘘が「癒着メディア経由」で大量に流布されたのもどうかと思います。・・・昨年末の事実でない発表(相撲協会・高野報告書)を取り消すとか、訂正する動きもみられません。高野利雄委員長名古屋高裁検事長だそうです。正義も何もあったものではありません。これが相撲協会の寂(さみ)しい現実です。正義も公正さも欠いている、そして内閣府などの行政もガバナンスの最後の砦として機能できないのが、実情です。
  科学民主主義自由主義もISOも「事実に基づく判断」が世界共通の普遍的な規範です。中国共産党や韓国や日本国内の反日活動家の問題は「事実に基づかない性奴隷などの政治的な嘘を世界に流布」することです。政治的な嘘の流布(プロパガンダ)は、民主主義や自由主義、人権尊重とは相いれません
  今の本の学校教育や社会に欠けているもの、今の日本人に足らないものは「欧米の個人主義への正しい理解」ではないでしょうか。個人主義孤立主義と似て非なるものです。個人主義とは「相互理解に基づいて個人を尊重する」ことですから、「他人を理解する努力」を前提した社会です。個人主義社会とは、相手とは違って当然という相互理解と、自分から人間関係を開拓していくためのコミュニケーションが前提された社会です。
  同志社大学教授の太田肇さんが「なぜ日本企業は勝てなくなったのか-個を活かす分化」*4で主張していたように「自律したプロフェッショナルな個人とチーム」が増えていくことで、公正公平を損なう立場あるものの権限の悪用や、取り入ろうとする者」を告発しやすい社会へ、民主主義が成熟した社会へと発展していくものと期待します。

*1:住友銀行秘史」 ISBN:9784062201308

*2:「甘えの構造」ISBN:9784335651298

*3:「タテ社会の人間関係」ISBN:9784062919562

*4: 「なぜ日本企業は勝てなくなったのか」ISBN:9784106037986