青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財営業でイノベーション共創と社会貢献を目指す。

2018-11-15 216.ハイテク製造業の米中「大競争」と人生100年時代

米中貿易戦争は国力を競う“米国側の「強固な製造業基盤の国内構築」と中国共産党の「製造業2025」の衝突”です。実力は米合衆国が圧倒的ですが、生産財営業の視点からは製造業や商社・物流業の未来を先読みしながら、自分の付加価値を高めることで次世代をサポートしていく人生100年計画が望まれます。

  日産のゴーン会長の逮捕(2018.11.19)はショッキングな出来事でした。1999.10の日産リバイバルプランの発表を、筆者/青草新吾は銀座近くの宿泊先のテレビで見て感動した記憶があります。対話型リーダーの代表格だったゴーンさんが、権力の頂点に立って人格が変質し、側近に囲まれた独裁の専横リーダーに腐っていたことが本当ならば驚きです。「絶対権力は腐敗する」「魚も組織も頭から腐る」は真理だと痛感しました。・・・組織の大小を問わず、組織トップのガバナンスの適正の確保こそは、持続的な発展の肝であると感じます。本題に入ります。
  筆者/青草新吾は、マスコミ用語の貿易戦争という言葉は多くの誤解を招く不適切な用語だと感じます。正しくは「米国が仕掛けた力比べパワーゲーム(力比べ競争)」という表現が事実に近いと思います。・・・国家政策の点では、仏国マクロン大統領の「生産国としての復活」も、米合衆国トランプ大統領の「米国第一」もともに「付加価値と従業員所得が高い製造業の生産自国生産比率高める」との政策目標が共通しています。これに米国の場合は共和党民主党の共通認識として「中国共産党の本質は高度技術の略奪的な取得に代表される。米国は中国共産党に騙されてきた。これ以上はもう騙されない。」という見方が米国世論の主流になりつつあるようです。
  米国トランプ政権がしかけた米中パワーゲーム(力比べ競争/強い合衆国を目指す“戦略通商政策”)の根幹は、米合衆国が国力と軍事力を支えるハイテク製造業の基盤再強化して、これ以上は中国共産党の独善的な台頭許さないというものです。その根底にあるのは、あるいは通底するのは、これまでよいこととされてきたリベラル国際主義グローバリズムの行き過ぎに対する揺り戻しです。
  2016年の米国大統領選では、多くのメディアがトランプ大統領が誕生することはないとの報道をしていましたが、筆者/青草新吾は「可能性あり」と感じ、201[ 2016.7 英国EU離脱と米国大統領選でニッポンこれから]でその根拠を列記しました。一言でいえば、米合衆国・民主党のリベラル国際主義の流れ、第28代ウィルソン大統領(1913-1921)に始まり、特に第32代ローズヴェルト大統領(1922-1945)で加速した“リベラル国際主義の行き過ぎ”に対する小さな政府共和党支持層からの揺り戻しを強く感じていたからです。・・・203[2016.12.30]で、良いこととされてきたグローバリズム言論の自由を奪ってきたポリティカルコレクトネス(日本流で言えば「言葉狩り」)に対して、懐疑的な米国民増えていることを記載しました。
  トランプ大統領が米国を分裂させたのではなく、分裂した流れ片方から政治マーケティングが上手トランプ大統領岩盤支持層を獲得したのだと考えます。・・・トランプ政権は、米国内でポリティカルコレクトネスを打ち破り、中国が悪用しだした国連の制約も打ち破ってしまいました。そのうえで中国との大競争(冷戦)を始めたと考えると、今のトレンドと近未来(「すでに起こった未来」PFドラッカー)が分り易くなります。
  拓殖大学教授の富坂聡(とみさかさとし)氏はVOICE2018.10で「米合衆国の圧倒的な技術優位を崩そうというような“目標を立てるな。許さない。”という警告を発すること」との見立てを示しておられます。また丸三証券経済調査部長の安達誠司氏は「株価は米中貿易戦争の結果を予見するように、中国に近い独連邦韓国株価大きく下落し、米国に近い日本インド株価小幅下落に止まっている。・・・今回のトランプ政権による対中貿易戦争は“(知財の侵害や窃盗など中国が)自由貿易体制にただ乗りして産業構造の高度化をはかるのは許さない”との中長期的な戦略ではないかと考える。戦前の大恐慌後にみられた保護貿易主義とは様相が異なるのではなかろうか。」と寄稿しておられました。・・・ハドソン研究所の日高義樹氏は、トランプ政権三つの政策発動が決定的に不利な立場に中国共産党を追い込んだとして紹介していました。一つは、中国の国営企業の米進出を禁止したこと。二つ目は、対米投資監視委員会を設置して、中国企業の米国進出への監視を強化したこと。日本のLIXILはこれで米国子会社の中国企業への売却を却下されたようです。三つ目が、WTOの上級委員会7名の再任で、中国系3名の再任を認めず、中国に有利な決定ができないようにしてしまったこと。以上三つです。これら方針に従って「商務省は外国の技術を盗んでつくられた中国の新幹線関わりあった企業米国から締め出すことを決定した。財務省は“中国ZTEが対イラン禁輸協定に違反した疑い”で、STEへの制裁措置をとった。」と起こった事実を説明していました。・・・世界経済のシステム大きく変わっていく中では、私たちが係る産業の姿も変わっていかざるを得ません。
  日立製作所社長の東原敏昭氏は日経新聞2018.10.14付で「(今のままの)製造業はなくなる」とのタイトルで掲載しました。久原房乃介が開いた日立鉱山(明治38/1905)の電機技師/小平浪平が大正7に独立した日立製作所は、その後に鮎川義介が起業した戸畑鋳物(現日立金属、明治43/1910)と合流して鮎川義介日産コンツエルンの一員となり、戦後は大きく発展して今日に至ります。時代の大変化の中で生き抜いて発展した歴史を背負うだけあって、時代の変化に真剣に対応していける代表的な会社と思います。
  米国に亡命した資産家/郭文貴氏は、中国高官のスキャンダルを告発したことで、中国共産党から国際指名手配されているお方です。事実に基づく判断をベースに実に公平な世界観をお持ちです。実に的確な日本向けのアドバイスを行っています。曰く「日本の国民非常にかわいそうな目にあうことになってしまった。近年の日本は、金融の分野で世界で最も失敗した国家である。日本は過去数十年にわたる財産をいつの間にか使い果たしてしまったが、これは本当に深刻な失敗であった。・・・・今、日本が改革すべきは、進歩を阻害する社会の保守性であろう。中国人は日本人から多くのものを学ぶべきだが、逆に日本人が中国人から学ぶべきものもある。それは“大局的な国際感覚”だ。ローカルな殻に閉じこもり、進取の気風を失って思考が硬直したことが、かって世界に冠たる水準を誇った日本の戦略的優位性を失わせることになっている。・・・もっと国際的にイニシアチヴを発揮して世界の潮流をリードする国家になって欲しい。日本は世界で最も優秀な民度を持つ国民を要している国家だ。努力家礼儀正しく、政府に迷惑をかけない日本人の民度は世界で最も尊敬されている。日本のいちばんの財産だろう。この良好なイメージをもっと戦略的に利用して欲しい。」とSAPIO2018.(7.8)に寄稿しておられました。有難いアドバイスです。
  上述の資産家/郭文貴氏が指摘されておられる「本当に深刻な日本の失敗」であった「過去数十年にわたる財産をいつの間にか使い果たしてしまったこと」では、戦後の1946-1950頃生まれ団塊世代を抜きには語れません。・・・江戸時代以降の閉鎖社会の序列重視のタテ社会に、戦後の“勘違いの民主主義”などが重なった戦後「日本型大企業病に染め抜かれた方々」と「バブル崩壊以降の失われた20年」は重なっています。
  戦後復興は、戦争で多くの犠牲者を出した明治・大正・昭和一桁の世代の方々が、成し遂げてくれました。その遺産を食いつぶしたのが、その後に続いた1947-1950生まれの団塊世代といえなくもありません。・・・もちろん実にイノベーティブで新しい価値を世に提供してくれた方々もおられます。例えば、京都大学団塊世代では、1947生まれで松本晃さんのように、伊藤忠出身ジョンソンエンドジョンソンの飛躍的成長をリードし、カルビーでは改革で8期連続の増収増益をリードされたお方や、1948生まれ出口治明さんのように、60才を目前にライフネットを起業されて、今は立命館アジア太平洋大学の学長に就任されるような、とてもイノベーティブで素晴らしい方々がおられます。同時にパワフルな全共闘活動家1945生まれ奥平剛士1948生まれ上野千鶴子さんのような面々もおられます。・・・筆者/青草新吾は、団塊の世代に続く1955前後生まれの団塊に続く世代です。振り返ってみると、団塊世代の多くは戦後日本型の大企業病に染め上げられてしまった方が他の世代よりも多かったように思います。・・・上述の亡命資産家/郭文貴氏が指摘するところの「現状維持的で、大局観を欠いた硬直思考の日本人」の固まりのような方々が多い世代だったように思います。社畜という言葉も団塊世代の頃に流行ったことばです。・・・働き方改革で一番大切なのは、団塊世代以降、日本社会に染みついている硬直的な思考を改めて、画一的でない一人一人の事情も加味して仕事のオーナーシップを持って働ける環境を整備することで、一人一人の生産性高めていくことだと考えます。
  「稼ぐ力」すなわち生産性ですが、原動力は「新陳代謝」すなわちイノベーションリノベーションです。日本人はどちらかというと現場に近い狭い領域でのリノベーションが得意な企業家が目立ちますが、ユダヤアングロ系は、ブラックホールのよう周囲を巻き込んでしまうようなイノベーションが得意な企業家が目立ちます。・・・イノベーションのエンジンはリーダー人材その協働者で「ひと」です。優秀なリーダーが引っ張る高生産性・高賃金の会社へと事業と雇用集約していくことで、最大多数の最大幸福へと近づきます。そのような大きなトレンドの中で、個人はどのように職業人として役に立って報酬を得ていくか・・。
  企業とは個人事業を含む経済活動の単位です。企業の内訳で「営利法人会社」といいます。その営利法人の会社にはローカルな地域密着営業型グローバル営業型に二分できます。今の時代は、グローバル営業型であれ、地域密着型営業であれ、グローカル視点と思考が不可欠です。そのうえで論考を進めてみます。
  ローカル密着型は、規模よりも密度の経済が肝です。セブンイレブンの事業モデルは正に、特定地域で集中出店することで物流費などの共有コストを低減し、さらに範囲の経済で、同じ店舗で多くの売れ筋製品を並べることで共有コストを低減させて稼ぐ力を高めるモデルそのものです。・・・ここでは大都市やコンパクトシティが基盤となります。この領域でキャリアを積み上げていく方々は、業態や業種、製品や地域などの専門性を磨き続けていくことになります。
  グローバル営業型は、規模の経済で、同一製品のボリュームアップ共有コストを低減させて生産性を高めていく場合に効果を発揮します。この領域でキャリアを積み重ねていこうとすると、共通基盤は、外国語異文化対応力、マネージャークラスだと、全地球的なグローバルなセンスも必要です。それらの共通基盤の上で、特定地域貿易と物流製品やサービスなどの専門性に磨きをかけていくことになります。