青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

219.次世代の会社組織や職業への発展と日本再生/ 株主ガバナンスの強化を

20世紀から21世紀へと、ビジネスは「業界別の競争」から「業態別の競争」へ、職業も「AIやロボットが苦手で人間にしかできない職種」へと、会社組織も「計画経済的 中央統制命令型 階層組織」から「市場経済的 多元的自律型 プロジェクト組織やティール組織」へと、「時代に合わせていくための変化」が続きます。このメガトレンドでは、日本の脆弱な部分である「株主ガバナンス」を強化して、日本国民の膨大な株式資産をもっと活かせると、日本国民がより幸福度を高めていく助けになると思います。

  本朝の日経新聞2019.3.16で「伊藤忠デサントに対するTOBが成立」と報道されていましたが、株主ガバナンスの点で日本を良くする動きだと感じました。理由は、とても公正な方法だからです。持株比率51%を取得しての力づくでもぎ取るような経営権強奪ではなくあくまでも持株比率40%ですから、株主間、あるいは株主と経営者との議論が成立します。しかも中立な社外取締役を入れて「株主やステークホルダーの立場から、世間に開かれた常識的な見方を入れる」というとてもフェアな方法です。さすが伊藤忠と感じます。経営者や、持株比率を超えた特定株主過度の越権私物化歪み是正適正化していくよい事例になると期待します。

  米合衆国は資本主義の行き過ぎの弊害がでていますが、日本は逆です。資本の論理未熟なままの日本では、適正を欠いた経営者が跋扈して、株式会社の制度やガバナンスを歪めて、日本経済再生の邪魔をしているように感じます。

  失われた30年は、株式会社に巣食う「資質を欠いたままで政治的にトップに就任した経営者創業家二代目、それらにとりいる政治的サラリーマン」によってガバナンスが歪んで、メガトレンドからぽつんと置いてけぼりになった会社や組織が多いからです。

  日産ではゴーンさんがトップ一任と称して一人で全役員の個別報酬額を決めていたことが問題になりました。がその横で、日経新聞 2019.3.20付の報道では、今回の会社法改正要綱では「トップに一任への規制(新ルール導入)」が見送りで葬られたられたそうです。雇われ経営者が多い経団連などの横やりです。米国の経営者報酬は高額すぎると思いますが、株主への説明をした上でのことです。・・・株式会社後進国の日本固有の事情では、大企業被雇用者団体労働組合など、日本の1-2割日本国民全体を巻き込むような過度の影響力行使したりするのもガバナンスが歪む一因です。

  日本人材機構の小城武彦氏が著書「衰退の法則*1で示したように、環境激変でも衰退しない会社には、適正で公正な人材登用プロセスがあります。同族系会社であっても持続的に発展が続く会社には、必ず競争と選別のプロセスが働いてます。

  例えば、キッコーマン創業八家の中で適正があるお方経営者に推薦されるルールのようですし、トヨタサントリーなども複数の創業家の中からルールに基づいて経営者に推薦されてます。そうでなかった松下電器の場合は「パナソニック人事抗争史」に書かれているように、創業家二世(松下正治氏)以降は、政治的な風土になってしまったからなのか、衰退と回復の浮き沈みの繰り返しです。

  同じ企業犯罪なのに、東芝の旧経営陣逮捕されずに、日産のゴーンさん逮捕されるというチグハグさは、日本のメディア報道政治や行政歪みを象徴していると感じます。2011年のオリンパス事件では、逮捕された菊川会長に役員全員が賛成して、不正を表に出して処理しようとした英国人社長(Michael Woodford)を解任し、全世界に向けてその自浄能力のなさガバナンスの歪みをさらしています。昨年はLIXIL創業家二代目の潮田洋一郎氏が「指名委員会で嘘の説明を行い、説明後にプロ経営者の瀬戸欣哉氏との社長交代を決定し、自身をトップに選出した」(日経3.16)というのが世界中に報道されて「日本では、3%株主でしかない潮田氏なんでそんな専制経営ができるのだ?」とLIXILの大株主の米資産運用会社などが問題視しているそうですが、当然と思います。日本では株式会社制度悪用事例が多々見受けられます。

  なぜこんなことがまかり通るかといえば、株主によるガバナンスまったく機能していないからです。そのような中で、昨年2018.2にUACJが発表した人事に、筆頭株主古河電工がガバナンスに問題ありとの異議申し立てを行い、UACJ修正に追い込まれたのは、株主ガバナンスが働いたまれな事例といえます。

  日本が残念なのは、日本国民のせっかくの個人資産が、死に金寝た金にされていることです。上述の「資質を欠いたままで、政治的にトップに就任した経営者創業家二代目、それらにとりいる政治的サラリーマン」がこの非効率と低生産性の元凶です。例えば、日銀資金循環統計2017.9末では、個人金融資産の中には株式が約198兆円もあります。さらに分解すると上場株107兆円非上場株84兆円です。

  株式会社とは、生産性を競いながら産み出した付加価値分配する仕組であり社会の公器です。多くのステークホルダーが係る社会の公器ですからガバナンスが必要です。株主は、出資金の持分と運用を、株主総会選出した経営者に委任しています。なのに上述のLIXILのように、持株3%でしかない創業家二世が持株比率を超える越権私物化をしたり、東芝オリンパスのように株主に雇われた立場の経営者が、こそこそ目立たぬように自分達にはお手盛りをしながら、一方では、株主への配当や従業員への給与を渋ったり、リストラしたり、株主に不利益を付け回しをしたりなど、ガバナンスの歪み放置されたままでは、回りまわって多くの国民が困ることになります。「国民全体では貧しくなってないか?」という結果になってます。日本の常用雇用の8割を占める資本金10億円以下非公開企業で、かなり見苦しい少数株主抑圧従業員抑圧が発生している実例も多々あるようです。

  弁護士で「少数株主」(幻冬舎)*2の著者でもある牛島信氏が「少数株主が何とかフェアに扱われるようにして、併せて非上場会社にもコーポレートガバナンスしっかりと浸透させることは、日本経済再生の上で重要な課題だ」述べておられることには全くの同感です。

  元気印若者の起業などで目を見張るような事例がありますが、日本全体としては、上述のような歪んだガバナンスによる死蔵金非効率の方が何倍も大きくて、国民にとってせっかくの良い変化かき消されてしまう傾向にあります。

  これら日本を上に押し上げてくれている「若者起業家とこれを支援するシニア伯楽」の輝かしいスタートアップへの注目と応援も必要と思いますので、次回以降は、こちらの経済を押し上げてくれている面々についても、見聞きしたことや自分の考察を記述していきます。

 

*1: 「衰退の法則」 ISBN:9784492533901

*2: 「少数株主」ISBN:9784344428065