青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

2008-3-8 119-1/2 日本型組織が持つ毒と薬

西洋の企業組織は機能体(ゲゼルシャフト)ですが、日本企業には薬にも毒にもなる共同体的要素が混じっています。薬にして持続する組織もあれば、毒となって衰退する組織もあります。

機能体(ゲゼルシャフト)とは、軍隊企業あるいは官庁など、外部に働きかけ価値を創造することを目的とした外部親和的な組織です。一方で共同体(ゲマインシャフト)とは、趣味同好会や村落共同体や町内会など、構成員の満足を追求する内部親和的な組織です。共同体的要素を持つ日本企業強い組織を獲得するためには、紡績のように組織内の部分部分の共同体的エネルギー糸を紡ぐことで、組織の機能目的実現のベクトルへと撚り上げていく組織経営が重要です。
機能体にとって共同体的要素(ゲマインシャフト)とは劇薬(適量であれば良薬になるし、過ぎると毒になる)のようなものです。強い組織とは、「共同体的要素を苦い良薬にできている」組織であり、弱い組織とは共同体的要素がとなり、機能体としての価値創造(アウトプット)が脆弱になっている組織です。機能組織が共同体化してしまうと堺屋太一氏が指摘されるように、悪いと知りながらへ理屈をつけて正当化して行う退廃や善悪の区別がつかなくなっている頽廃がおこります。例えば、厚生労働省は、犯罪として立証されたエイズ薬害の不作為、国民から徴収した年金財源で天下り先の高級車を購入、国土交通省では外郭団体が道路特定財源を使って社員の親睦旅行を行ったり、岐阜県庁や大阪市役所などのように職場で堂々と裏金作りを行うなど、制度を悪用した構成員の私的利益追求が蔓延ります。組織目標がすりかえられて、構成員の安住感と満足や私的利益の追求が主目的になっています。
機能体と共同体の違いについて、筆者/青草新語が、判りやすい説明として重宝しているのが、127で前述した堺屋太一氏の「共同体組織機能組織違いが、最も端的に表れるのは、人事評価である。機能組織では、(社会に価値を提供する)組織への貢献を中心とした能力主義実績主義が、(一方の)共同体では、組織内での評判を中心とした内的評価が評価基準となる。・・・・伝統も名声も、資産も規模もある組織が、実に短時間に滅亡する例も少なくない。組織の体質が冒され気質が異常化し、自浄作用も転換再建も不能に陥った場合、巨大組織死に至る病に罹った場合である。原因は三つしかない。第一に機能体の共同体化。第二は環境への過剰適応(から変われない)。第三は成功体験への埋没(から変われない)。」*1です。三枝匡氏/現ミスミCEOが雑誌で「日本企業の問題は多くの従業員に巣食う強い政治性にある。」と語られていたことがありましたが、従業員が内部を権力闘争的に見立てた噂話や憶測などにエネルギーを割く政治性とは、共同体化した組織の病理の一つとみられます。
121で前述した組織生産性集団規模の視点からは、集団としての性格が強い日本型組織では、5名ぐらいQCサークル10名ぐらい陸軍分隊(squad)から、30人から50人規模の小隊(platoon)や狩猟民の生態学的集団の規模で組織品質が決まっているような気がします。この規模で共同体的要素を利点(良薬)にできている、つまり、機能目的へのベクトル量が高い組織とは、共同体的エネルギーが組織全体の機能目的のベクトルへと紡がれている組織です。中隊(company/100-200人)や認知的集団(100-200人)の規模ぐらいになると、分隊や小隊毎のバラツキが出てきます。内向きで閉鎖的な共同体への変質を予防する上では、分隊(5-10名)あるいは小隊(30-50人)での組織目的(機能目標)の見える化がきわめて重要となります。組織生産性が低下する主な原因が、機能体の共同体化とマネジメントの限界です。
125で前述した日本運用型組織と上述の共同体化という視点からは、最近のイージス艦事故では、諸外国では国民を守る軍隊に敬意を表して道を譲るのですが、そのことは別にして組織内部の統制とマネジメント(経営)という視点からは、日本型組織に特徴的な不具合が出ています。今回のイージス艦では、見えたものをすべて報告すべき見張り員が、自分で勝手に判断して漁船の存在を報告しなかったらしいのですが、イージス艦に限らず日本の運用型組織ではとても起こりやすい事態といえます。逆に、職務記述書ですべきことをルール化する米国制度型組織では起こりにくい事態です。日本型組織とは、127で前述通り、西欧的な組織よりも集団としての性格が強いだけに、現場の裁量が大きくなりますが、今回のイージス艦事故のように現場でそのままやり過ごしてしまう現場の勝手判断は、ダブルチェックがかからないだけに危険な場合が多いといえます。日本型組織の弱点を補強していく上ではISO9001などは有効性が高いと考えますので、次頁ではこれらのマネジメントシステムについて記述してみます。

*1:「組織の盛衰」堺屋太一ISBN:4569568513

2008-3-8 119-2/2 携帯電話の世界需要

携帯電話端末がマルチメディア端末へと進化することで電子部品の高付加価値化が更に進んでいきます。

携帯電話世界需要07年11.4億台にまで達したそうです。寡占化が進み、大手5社合計83%、大手5社のシェアと生産台数は、ノキア38%(4.37億台)、サムスン14%(1.61億台)、モトローラ14%(1.59億台)、ソニーエリクソン9%(1.04億台)、LG7%(0.81億台)、と発表されています。ちなみに需要拡大の推移は、03年5.31億台(内訳で28%の1.47億台が新興国向け)、04年6.77億台(同29%で1.97億台)、05年8.33億台(同33%で2.72億台)、06年9.99億台(同40%で3.98億台)と5年で倍増のペースですが、今は新興国向けの割合が高まっています。
携帯電話の世界需要を金額でみるとJEITA(電子情報技術産業協会)の2007年度見込みでは世界総生産額が15.9兆円です。実績は、2005年度統計によると、世界の携帯電話生産額は11.5兆円で、世界の電子工業(電子機器)140兆円の8.2%に相当します。電子部品・デバイス50.3兆円の規模の22.9%です。携帯電話の端末には、アンテナスピーカーマイクディスプレイバッテリー操作スイッチなどに加えて、筐体内部には制御する電子基板と回路が搭載されています。米粒やゴマ粒のような電子部品まで含めると。1台当り5-7百個も搭載されているそうですが、日系企業6-7割を供給しています。
1979年自動車電話1985年頃の肩から提げるショルダーフォーンから始まった携帯電話ですが、1990年頃に需要増加に加速度がつき始めました。筆者/青草新吾は、1990年前後に携帯電話向け部材供給ビジネスに係りましたが、携帯電話端末の当時の世界シェアは、1位がモトローラ、2位が日本電気、3位から6位の団子状態で、エリクソンノキア松下通信三菱電機でした。シカゴ郊外のモトローラ社に出張した際には、幹部が「マイクロタックは2百グラムよりも軽いが、とてもタフ(頑丈)」と誇らしげに語っておられたのがとても印象的でした。日本の電々公社の関係者からは「将来(の第2世代で)は通信がデジタル化されるが、今はまだデジタル機はとてつも大きなモノしかできない。」と聞きました。その第2世代デジタル化された携帯電話端末も90年代半ばには市場投入が相次ぎ、105で前述したニッケル水素電池の搭載と相俟った小型高性能化で需要が拡大し、更にリチウムイオン電池を搭載した第3世代ではテレビ電話やパソコンとのデータ送信ができるようになってきました。今現在では、カメラの高精細画化(メガピクセル化)、ワンセグ搭載、電子決済機など、高性能マルチメディア端末として進化中です。今や携帯電話は、マルチメディア端末として進化しています。部品点数が増え続けることから、内部に搭載される部品はモジュール化(複合化)が進みます。日本企業が得意とする摺り合せの統合型技術が精密部品のモジュール化を支えています。