青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

中間財の電子基板の世界シェアは3割ぐらいですが、マテリアル系生産財の銅箔は世界シェア7割を獲得しています。川下のセットから川上の素材に遡るほど日系企業の世界シェアが高くなる[最終製品>中間財>マテリアル系生産財]の傾向は電子基板でも同様です。

前述の銅張積層板(CCL)の製造にマテリアル系生産財の電解銅箔を供給する主な日系サプライヤーは、三井金属鉱業、日鉱金属電子材料カンパニー、古河電工(古河サーキットフォイル)、福田金属箔粉工業、日本電解、です。各社ともに高級品のウエイトを高めてい…

前述の電子基板に関し、リジッドの樹脂基板の製造企業に銅張積層板(CCL)を供給する主な日系サプライヤーは、松下電工(郡山松下電工)、日立化成と新神戸電機、住友ベークライト、三菱ガス化学、利昌工業、です。

近年、台湾や韓国の企業が大量生産で参入し、且つ在来製品の汎用化が進んでいるため、日本企業は難易度が高い高付加価値製品に重点を移しています。例えば新神戸電機は車載用基板向けシールド板、日立化成はモバイル機器向けでリジッド基盤とフレキシブル基…

中間財の電子基板の国内生産に関し、75%がリジッド基板で、5%の金属基板やセラミックス基板を除く残りの70%が樹脂基板です。樹脂基板とは、樹脂基材の銅張積層板(CCL)を加工して製造されたものです。

JPCAの統計では、電子回路基板の製造企業として178社が登録されています。この中でリジッドな樹脂基板を製造しているのは、イビデン、日本CMK、日立化成工業、メイコー、パナソニックエレクトロニックデバイス、大昌電子、エルナーなどです。 時代性と…

電機電子の世界市場の規模は中国のGDP相当の150兆円規模ですが、この電機電子の製造で使われているのが中間財の電子基板(統計上は電子部品の一部で電源基板も含む)です。自動車の電子化で車載用途も増えています。日本企業の世界シェアは3割ぐらいですが、高級品では日本企業が過半を維持しています。

電子基板の製造に関し、JPCA(日本電子回路工業会)の05年度統計で、JPCA会員企業の生産額は1兆5千億円で、国内生産が1兆1千2百億円、海外生産が3千8百億円と確認できます。海外生産比率は25%です。 国内生産の1兆1千2百億円を使われる基材で分…

電子化が著しい車載用途と携帯電話機に関し、中原捷雄氏は次のような情報を披瀝してくれました。

車載基板に関し、電子基板の上位60社の平均で車載は2−5%ぐらい。それも音響などが多い。最大手は米国のリアシス社で年商280億円規模、日本のCMKが250-260億円ぐらい、泰国のKCEが100億円規模・・。エンジンコントロールや厚銅基板は、日本勢が強い。…

電子基板の世界を俯瞰する情報に関し、中原捷雄氏は、日本企業の組織能力の強さは[顧客へのサービス+最先端技術+海外事業の拡大]のパッケージで、広範囲の用途で多品種少量の多頻度納入ができることだ、と説明してくれます。

中国は「貨車一杯」の取引だが、日本企業は木目細かなデリバリーを提供できる。韓国は5割が携帯電話機用途でアプリの偏りが弱点。米国もコンピュータとテレコミニュケーションに偏っている。欧米は少量多種で生き残っていくことになる。世界を歩いて見て聞…

中間生産財(中間財)の電子基板の国別生産高に関し、生産地としては、年々中国のウエイトが高まっていますが、国籍としては、台湾企業が伸びています。この点に関し、JPCA(社団法人日本電子回路工業会)の企画催事で、電子回路分野で第一人者の中原捷雄(なかはらやすお)氏*6の訪問実体験に基づく話しをお聞きする機会がありました。

NTインフォメーションズ代表の中原捷雄氏は、電子基板の分野で第一人者。基調講演の内容でも中国で訪問した数十社の電子基板企業の紹介があったが、実によく歩いておられる御仁。歩いて確かめたリアルな五感情報を聞かせて頂いた。 電子基板の生産規模で、2…

前述JSR小塩理事の説明の中で、セールスレップの機能に関し、工業系と商業系で違いがあること、これはとりもなおさず生産財と消費財の違いであり、また日米の違いは、日本の営業パーソンと米国におけるセールスパーソンとの違いなので、以下に特筆しておきたいと考えます。

工業系のセールスレップは妥当な価値(価格)が判りやすい反面で、技術と品質のフォローがついて回るのでメンテナンスが重要、ここが商業系との違い。 商業系のセールスレップの顧客関連プロセスは、受注活動の繰り返しで済むが、妥当な価値(価格)が判りにく…

日本のセールスレップは消費財分野が先導していますが、生産財分野でも東京大田区の株式会社匠ネットのようなフロントランナーもみられるようです。

大阪産創館*1がセールスレップの振興事業として開催してくれた講演会で、セールスレップ協同組合JSR*2の理事長である小塩稲之氏から幾つかの事例をお聞きする機会を得ました。 上述の匠ネットは機械商社出身者など60代の10名ぐらいが立ち上げたシニア世…

セールスレップに関し、経産省が、創業活性化や中小企業振興の事業としても取り組んでいるようです。

経産省の藤和彦氏が著書「中小企業よ、攻めの経営に徹しなさい」*1で、中小企業が積極的に「独立自営のセールスレップが持つ具体的でピンポイントの知見や人脈」を活用することを提唱しておられます。 *1: 「中小企業よ攻めの経営に徹しなさい」藤和彦著 2…

セールスレップが普及することで、中堅中小企業へのものづくり支援プロセスとしての有効性も高いと考えます。技ありの中堅中小企業が営業機能(マーケティングとセールスの両方)を、特に商品開発に直結したマーケティングの機能の外部調達の選択肢が増えます。

輸出に係わっておられる方々の中には輸出先の現地でセールスレップ(生産財の場合にはマニュファチャラーズレップとも)とお付き合いする機会をお持ちの方が少なからずおられるものと推察します。日本の中堅中小の生産財企業では、輸出で現地のセールスレッ…

営業プロセスの生産性向上に関し、日本でもセールスレップ(販売代行で[顧客関連のプロセス]を生業とする独立自営の営業プロ)の活躍の場が増える兆しがでてきています。

セールスレップ協同組合*1の定義。 セールスレップとは、「メーカーに代わって、メーカーの商品の販売を代行するセールスパーソン」のことです。メーカーの社員ではなく独立自営のセールスパーソンであり、メーカーとの契約に基づいて商品を販売します。 *1:…

日本電産の永守創業者は、営業マン教育や販売組織で様々な工夫をしてきておられますが、判り易いのが営業担当者の「三職3P」制度です。

三職三Pを経験する(情熱・熱意・執念の経営)。 三職というのは、営業、経理、生産管理といったように三つの違う職種のことで、三Pとは、東京、大阪、海外など三ヶ所の働く場所を指しています。・・中略・・開発や技術のスタッフとやり取りができるように…

営業プロセスに関し、日本電産の永守創業者は「事業の基本は販売」であるとして、組織営業力とか全社営業力と表現されることが多い[商い組織能力]の向上に腐心しておられることが著書*1の節々で伝わってきます。営業とはマーケティングとセールスを統合した概念ですが、営業の組織能力のモデルとして興味が尽きません。

事業の基本は販売(情熱・熱意・執念の経営)。 対外的には技術をアピールしても「事業の基本は販売」という認識がなければ、ビジネスを成功させることはできません。成功しているベンチャー企業の共通点は販売力の強さなのです。 ユーザーを意識する組織を…

京都の日本電産は、一つの組織能力モデルを提供しています。大きな特徴は永守創業者の「最大の福利厚生は能力アップ」「歩をと金にする」「二流を一流にする」という言葉に代表される人材育成への飽くなき決意と志に牽引された雁行型リーダーシップの組織能力にあると考えています。

企業の組織能力に関する研究が進んでいますが、同一製品アーキテクチャであってもものづくり組織能力へのとことん進化欲求が起源のトヨタ的な組織能力、創業者への共感と創業者を共有できることへの誇りで育まれてきた松下電器や米国IBMのような組織能力…

京都の日本電産は、リーダーシップと組織能力の研究対象として豊潤な事例を提供してくれています。永守重信創業者が1973年に4名の仲間を集めて、永守創業者の自宅の牛小屋を改造した本社からスタートし、何度か訪れたピンチを乗り切り、米国スリーエム社が創業間もない同社製品の実力を認定して採用してくれたことでその後の急成長が始まっています。

2006-04-16で産業アナリストの林隆一氏の戦略分類「日本電産・京セラ・イビデンが、誰よりも早く当たり前のことを当たり前に行う[シンプルルール戦略]」を引用しましたが、日本電産は、成長エンジンであったHDD(ハードディスクドライブ)用のモーターで…

フォーチュン誌の「米国でもっとも称賛される企業」は、企業のこれからの永続性や成長性と直結する権威ある指標で、先行指標といわれる株価よりもさらにその先の先行指標ともいえます。エレクトロニクス部門06年度版で、モーターを製造するシーメンスが2位、同じくエマソン社が3位に入っています。日本からは、東芝、松下電器のモータ製造2社とソニーもトップ10にランクインしています。

電波新聞3月6日付報道から、 フォーチュン誌「米国で最も称賛される企業(06年度版)」エレクトロニクス部門 1(GE)、2(シーメンス)、3(エマソン・エレクトリック)、4(フィリップス)、5(ソニー)、6(東芝)、7(ワールプール)、8(松下電器)、9…

第5回産学官連携推進会議で内閣総理大臣賞を受賞する並木精密宝石は、レコード針開拓の歴史が輝き続けていますが、今は医療内視鏡で世界シェア8割、携帯電話の振動モーターでも世界シェア4割の小さな世界トップ企業です。小さな池の大きな魚とはこのような企業のことを指すのでしょうか・・。

並木精密宝石の精密モータ http://www.namiki.net/ 中間財のモーター(電動回転機)は、用途別に産業用、家電・車載用、小型、精密(電子部品)の4分野に大分類できますが、日本企業の世界シェアが高いのが、摺り合わせ型の製品である精密モーターと制御機器…

第1回ものづくり日本大賞の受賞式が、昨年05年8月4日に行われました。小渕内閣の産学官連携に続き小泉内閣が形成する「政府によるものづくり支援のプロセス」です。

小泉内閣のものづくり日本大賞は、歴史と伝統を大切にした上での未来志向の表彰である点が素晴らしいと思います。 第1回ものづくり日本大賞に関し、筆者購読紙の中で「なぜか日経新聞だけが報道しなかった」ように記憶していますが、そうとすれば、毎日読ん…

電波新聞の報道によると、明日から京都国際会議場で開催される「第5回産学官連携推進会議」で、東北大学・並木精密宝石・長野計器の3者への内閣総理大臣賞が授与されるとのことです。

今回受賞内容は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の産学官連携プロジェクトで「金属ガラスを使用したデバイスの開発」で次の2件とのことです。 1.5ミリ径のマイクロギアドモーター。応用は内視鏡やカテーテルといった医療分野、光学機器など。 圧…

食品安全性に関し、HACCP(ハセップ)は、欧米が得意な事前合理の「こうすればこうなる」との思想に基づく予防のマネジメントシステムとしてはすばらしく価値が高いものです。しかし現実はHACCP認定工場で不具合が発生しているようなのです。細菌汚染食品が発生してしまった場合の流出防止と再発防止といった事後合理性のプロセスも必要です。

筆者はHACCP(ハセップ)については素人なので見当違いもあろうかとは思いますが・・。 HACCPで作り込むだけでは、トヨタ生産方式の開祖である故大野耐一氏の「データは大事、それ以上に事実が大事」の最初の方の「データは大事」までも辿りついていないような…

食品安全性に関し、今の食品衛生法は、地産地消の時代に制定されたままのようです。食の消費者としてもできるだけ地産地消に努めるのが身土不二に適うと思いますが、工業食品の原料はグローバル化していますから、グローバル化対応した食品安全基準が必要となります。電機や自動車の業界と同様の工業製品である食品についても、出荷前検査と社外流出防止の徹底と精度向上を期待したいところです。

身土不二を信条としても、現実の日常生活では選択の余地がない場合が殆どです。工業化された食品の原料の産地まではなかなか把握できません。たとえばコンビニに並ぶカット野菜や弁当を考えると、検査結果を確認するのに24時間を必要とする国が定める寒天…

耐久生産財やMRO間接生産財である迅速自動検査装置の営業プロセスに関し、営業とはセールスとマーケティングの両方を統合する概念ですが、本記事のように従来は存在しなかった新コンセプトの商品を市場投入する場合、市場創造戦略が主となります。

市場創造戦略では、商品属性の新コンセプトの認知と顧客の両方を獲得していく活動が柱となります。営業化(事業化)まではマーケティングが主であり、営業化(事業化)以降は、顧客獲得のための販売が主で顧客関連プロセスの構築が主となります。営業化(事…

国が定める微生物検査の方法だと検査結果が判明するまでに24時間もかかるので、鮮度が必要な食品は検査結果が間に合わず、見切りで製品出荷せざるをえない・・というのが今までの現実のようなのです。雪印事件やO157事件にしても、もっと迅速に細菌測定ができていたら、あそこまでの不幸には至らなかったのではないのだろうか・・とも考えてしまいます。

食品衛生法で基準とされている微生物検査の方法は「寒天培養法」です。これは素晴らしく確実な方法ですが、製造や出荷のスピードに適合できていません。食品製造企業として食品安全性を高めたり信用を維持するために、迅速検査を併用する企業も出始めている…

梅雨入りすると食品安全性が気になります。食品業界でも自動車や電機のものづくりでは常識の出荷前検査、つまり「検査を終えてから出荷する品質ルーティーン」の確立に向けて前進が始まったようです。細菌汚染の出荷前検査で様々な迅速自動検査システム(装置と判断ソフトの組み合わせ)の研究開発や市場投入が活発になり始めています。

キッコーマンのATP検査キットは10年以上の市場投入実績があるようですが、ここ数年でバイオセンサー技術を駆使した自動検査システムの市場導入が始まっています。松下電器・松下エコシステムのバイオプローラ、ダイキン系ベンチャー企業のバイオシータのDO…

06年4月に豊田通商がトーメンを吸収合併しましたが、総合商社系のビジネスモデルと豊田通商系のビジネスモデルが融合するとどう進化していくことになるのか?大変に興味があるところです。

合併後の豊田通商を総合商社業界に置き換えると業界6位と報道されています。売上の4割が鉄鋼製品とのことですから、鉄鋼部門に関しては、2位の三井物産と比肩する規模に相当するものと推察できそうです。鉄鋼主力商社業界のトップであるJFE商事HDと…

自動車部品ものづくり企業の海外生産への材料供給の支援プロセスは、大まかに以下の三つに大別できます。

まず第一に、重量があって嵩高くて汎用性が高い材料、例えば鋼材薄板製品などは、海外各地に設立された日系の加工流通企業(コイルセンター)が支援プロセスを形成して供給しています。次に、現地調達が難しくて且つ汎用性に乏しい素材は、日本からの輸出で…

中間財の半導体デバイスの製造で供給されるシリコンウエハーの生産財流通に関し、輸出の部分では、三菱商事、三井物産、住友商事が大きな役割をはたしているようですが、同じく中間財の自動車部品の製造企業に供給される自動車部品材料の生産財流通の輸出の部分では、トヨタグループでは豊田通商が大きな役割を果たしています。

トヨタの2005年の世界生産台数7360千台を地域別にみると、海外生産3571千台、国内生産3789千台の内訳です。国内生産台数の流通内訳は、国内販売が1713千台、輸出が2043千台です。世界生産の凡そ半分に相当する4百万台弱を国内生産…