青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

営業プロセスに関し、シリコンウエハーの輸出で大手商社が果たしている役割は、顧客関連のプロセスと営業業務プロセスに大別できます。顧客関連のプロセスでは、主にコミュニケーションと契約実務の機能ですが、供給者であるシリコンウエハーメーカーも含めた営業プロセス全体としては、与信と代金回収や、為替管理、国際搬送、などの営業業務も重要な機能です。

与信と代金回収及び国際搬送について「電子材料王国ニッポンの逆襲」の中にも以下の記述があります。 シリコンウエハーの供給については、三菱商事、住友商事、三井物産といった大手総合商社が徹底的に関与している。(中略)支払いリスクの回避に対する保証…

日本のシリコンウエハーメーカーが世界シェアを高めたのは、米国・台湾・韓国の半導体デバイスメーカーが日本製ウエハーの購入比率を高めたからです。日系メーカーがQCDSに集約できる生産財営業の競争力と顧客満足度を改善できたからですが、このQCDSのSの部分では、大手商社の海外ネットワークが大きな貢献をしているようです。

2006-05-20で触れた半導体30年の泉谷渉氏が5月に出版された著書の中に以下の記述があります。 以下「電子材料王国日本の逆襲」*1 三菱商事にあって、電子材料分野の統括マネージャーの任にある川上秀文氏は、商社を取り巻く事情について次のように語る。…

シリコンウエハーは、川上から流れを追うと、原料から多結晶シリコンのインゴットが製造され、この多結晶インゴットから単結晶シリコンのインゴットが製造されます。単結晶のインゴットをスライスしたウエハーにエピ加工などのマテリアル系のノウハウを駆使した調整加工を加えて半導体デバイスメーカーに供給されます。これに太陽電池による太陽光発電向けの需要が加わったのですが、ソーラー発電向けは、多結晶シリコンも単結晶シリコンも両方が使われています。

シリコンに関し、経営者やビジネスパーソン向けには以下の懇切丁寧ブログがお薦めです。 http://blogs.yahoo.co.jp/camonohasi555/33244681.html 東邦チタニウム『応援ブログ』」 シリコンものづくりの担い手は、川下から遡ると、単結晶製品で信越化学(信越…

2007年のイメージで、中間財で約30兆円前後の半導体デバイスを製造するために、マテリアル系生産財で約3兆円規模の工業材料が調達され、そのうちの約4割弱−1兆円前後がシリコンウエハーです。日本のお家芸産業に加わったシリコンウエハーですが、今現在の日系ウエハーメーカの世界シェアは6割ぐらいとのことです。21世紀に入ってからは太陽電池の光電変換セル向けの需要も鰻登りです。かなりの長期に亘って持続しそうな勢いです。

20年前の1985年頃に筆者もシリコンウエハー業界の方々と係わりを持てた経験がありますが、当時はまだワッカーやモンサントといった海外の強豪もいて「利益なき繁忙」を続けておられる印象でした。世界シェアもまだ3割ぐらいだったような記憶が残って…

生産財の商社や加工流通企業の場合には、マテリアルが語源であろうと推察できる造語もかなり使われているようです。ジャスダックに上場したばかりのアルコニックスは単純明快な造語だと感じました。

以下、マテリアル系生産財の工業材料を扱う貿易商社や加工流通商社。 アルコニックス(06年4月にジャスダック上場したばかり。非鉄金属製品の貿易商社、社名はアルミの「AL」銅の「Co」ニッケルの「Ni」輝ける未来への夢の「X」を組み合わせた造語…

マテリアル系の製造企業では、〜〜化成、〜〜セラミックス、〜〜金属、というように、社名には創業のマテリアル品目を表記した企業が多いのですが、中間財である電子基板への高機能銅箔の供給で世界トップの三井金属は「マテリアルの知恵を活かす」と社名の真下でテーマ表現をしていました。

マテリアルという用語を使う場合には、そのままマテリアルを使う企業が多いようですが、中には三菱電機メテックスのように工夫した造語を使う企業もみられます。また日鉱マテリアルズのようにズがついている事例もありました。 以下、マテリアル系生産財の製…

マテリアル系企業のCI(Corporate Identity)やDI(Domain Identity)に関し、マテリアルやマテリアル由来の造語を組織名に頂く大学や企業をインターネットでピックアップしてみました。

大学の工学部がマテリアルという用語を使う場合にはストレートに使われているようで、大学や研究機関ではマテリアル系もかなりポピュラーな概念のようです。 以下、大学の工学部の事例。 大阪市立大学マテリアル系研究機構(ナノマテリアル、エネルギー・バ…

東洋経済新報社から5月に出版されたばかりの「電子材料王国ニッポンの逆襲」の中で、半導体産業新聞編集長の泉谷渉氏は、半導体・電子部品・ディスプレー・太陽電池などのエネルギーデバイス、を総称するデジタル素材に関し、2015年の市場規模を30兆円と見積もった上で、この市場で圧倒的な世界シェアを持つ、且つご自身が取材された企業から60社以上ものデジタル素材の企業群を紹介しておられます。

半導体業界歴30年の泉谷渉氏は「いまやマテリアルの時代が到来してきているとの確信を胸に、日本列島を駆け回り、その立てた仮説がやはり正しかった」と著書*1の中で述べておられますが、生産財営業歴30年の筆者もまったくの同感です。以下 「電子材料王…

日本国の産業別の世界シェアは、耐久消費財<中間財<マテリアル系生産財と川上に近づくほど高くなっていきます。営業プロセスの主要部分である顧客関連のプロセスを理解する上でも、また海外展開を考える上でも、このことは大きな意味を持ちます。

携帯電話機に代表される情報通信機器の事例で、日系企業の世界シェアは3割弱ですが、中間生産財(中間財)の部品やデバイスとなると6−7割、マテリアル系生産財の素材ではもっと高くなると推察できます。2006-05-06で触れた四日市のプレス金型の製造企業で…

日本国統計で、化学・非鉄・鉄鋼などのいわゆる素材産業の産業付加価値額が自動車産業を上回り始めた・・という事実を前に、日本の産業構造のスパイラルな進化発展を実感しています。マテリアル系企業のスパイラルな進化発展に関し、日本有数の老舗企業の住友金属鉱山と戦後企業のフジプレアムの事例でレビユーしてみます。

老舗企業の例で、住友金属鉱山は400年前に京都で蘇我理右門が興した銅吹き(銅精錬)を長子の友似が養子入りした住友家で発展させたのが起源です。銅地金製造の副産物で化成品事業、更には電子材料、電池材料へと進化発展を続け、今は携帯電話の分野では…

住商の浜中氏の下で働いておられた江守哲氏と青柳孝直氏の共著「住商事件」*1では、次のように訴えています。

相場とは、宗教に似た、摩訶不思議な「人間が制御できない自然」である。「明日はなぜ雨が降るのか」を論議しても始まらない。−中略− 人間が唯一できるのは、市場を制御することではなく、人間が行う市場取引に対するルールを確立することである。相場に付き…

住商・浜中事件が明るみに出始めてLME銅相場が暴落したのが、10年前の今頃、1996年の5月から6月にかけてでした。結局は3千億円もの巨額損失が発生していました。

日本経済新聞社発刊の「銅マフイアの影」*1をめくり返してみると、業界内で噂が広まり銅相場が下落しだしたのが5月下旬、事件が表面化して「銅相場が暴落」したのが6月6日と記述されています。 *1: 「銅マフイアの影」日本経済新聞社 1997年 isbn:453…

金属鉱物資源の有限性に関し、鉱業レベルの埋蔵量は、鉛・亜鉛・錫が約20年、銅が40年、ニッケルが60年、鉄が70年ぐらい、とのことです。鉱石品位の低下は続きますから、更なる価格高騰で経済性を合せていくようになります。それでも枯渇してしまえばもう終わりです。そうなると残される金属資源は金属スクラップしかありません。

希少金属の回収とリサイクルは、経済性や効果で疑問点が残るペットボトルのリサイクルよりもはるかに重要度が高いと考えます。松下電器などは自社でリサイクル事業を開始していますし、三井金属や同和鉱業のような非鉄金属精錬企業が事業化して成長戦略を描…

金属スクラップの資源価値が高まり続けていきます。ベースメタル*1の鉛・亜鉛・錫の採掘も残り20年ぐらいで枯渇してしまう、とみられています。日本のお家芸である自動車やエレクトロニクス製品では、レアメタル*2とレアアース*3がリスク要因です。レアメタルに関し、日本で自給は殆どできません。

特にレアメタルの中でもレアアースは、供給面では中国が世界の9割を供給しており、需要面では日本が世界の3割を消費しています。レアアースは、光学ガラス、永久磁石、蛍光体、などで使われます。「日本の高品質素材はレアアースが隠し味」とでもいえまし…

銅地金の取引ルールに関し、世界中の電気銅取引の殆どはロンドンのLMEを中心とした定期市場の相場に基づいて値決めされます。LMEで形成される国際価格による取引ですから値決めは株式売買と同じです。トヨタや松下電器のような国際優良企業であっても、日々のLME相場そのものは交渉の対象外です。「買いを入れるタイミングで適用相場と購入価格が決定」します。これらの企業では安定調達が最優先ですから、主なポジションは長期契約で値決めしているようです。相場が上がっても下がっても平均して均してしまえば収支とんとんにできて、収益

日本では、日鉱金属が銅地金のLME相場を円に為替換算した上で日鉱金属が銅地金の国内建値を発表することになっています。この発表建値はキログラム当たりの円単価ですが、4月6日に700円の大台を突破し720円をつけました。これは1980年3月以…

自動車やエレクトロニクスの分野で多用される銅製品の顧客関連のプロセスに関し、海外から輸入した銅原料(銅鉱石・銅精鉱・粗銅)を精錬する買鉱精錬で製造されるのが電気銅(銅地金)で銅の1次製品です。非鉄精錬企業が買鉱精錬で銅地金を製造しています。日鉱金属、三井金属、同和鉱業、三菱マテリアル、住友金属鉱山の5社です。非鉄精錬企業が製造する銅地金は、電線や伸銅品といった2次製品の製造企業に供給されています。

並行して松下電器の国際商事本部(旧松下電器貿易)や総合商社・専門商社による銅地金の輸入販売も行われています。1次製品の銅地金を調達して2次製品の伸銅品を製造販売する主なプレーヤー企業は、神戸製鋼所、日立電線、古河電工、三宝伸銅、三菱伸銅、…

日本のお家芸ともいえる自動車とエレクトロニクスの両業界の主要部品である電装部品・エアコン熱交換器他の電機部品・電子部品・・・等々、中間財の製造で多用される銅の2次製品(電線・伸銅品・銅箔など)で価格急騰が続いています。1次製品である銅地金の国際相場急騰の玉突きです。1次製品の銅地金は、LMEなどの定期市場で取引されるコモディティ商品です。日本企業は「円高のお蔭で輸入価格の高騰が緩和されている分、諸外国の企業よりはまだ恵まれています」が、それでも今回の銅地金の相場急騰はあまりにも急峻といえます。

天然資源の銅鉱石を製錬し精錬することで製造された1次製品の銅地金を加工した2次製品が電線や伸銅品です。電子回路基板の回路部を構成する銅箔や半導体リードフレーム、精密コネクタの端子など、高品質分野では日系企業が世界シェアの過半を維持していま…

マーケティングを稼ぎネタにしておられるコンサルタントや学者の中には、生産財と消費財の顧客関連プロセスにおける特徴の違いをよく理解しておられない御仁も案外とおられるようです。生産財企業の研修などで依頼するセミナー講師の中にも混じっておられます。「生産財流通なら何でもミスミ」のような御仁も中にはおられますから笑えません。

ミスミのモデルを稼ぎネタの万能薬にしておられるような方々のことはともかくとして、ミスミのビジネスモデルが果たした貢献は大きなものがあると考えます。金型製造業の支援プロセスとしての生産財流通を考える際に、ミスミモデルは避けて通れません。ミス…

生産財では「主たるマーケティングはセールス活動のチャネルで行う」のが普通だし理に適ってます。反対に消費財の顧客関連プロセスでは、セールスはマーケティング4P概念の下位概念として位置づけられます。消費財大企業のマスマーケティングではこれも理に適っています。マーケティングの概念そのものは大切ですが、企業存続の生命線の一つである顧客関連プロセスにおいては「生産財と消費財では大きな相違」があります。セールスパーソンに求められる能力要件やスキルにも違いが出てきます。

米国から翻訳なしで持ち込まれたマーケティングで、日本語が混乱したり、経営用語が混乱したりしています。マーケティング学者やカタカナコンサルタントの責任は軽くはないと思います。マーケティングは、米国式の販売慣習や手法をベースにマネジメントの概…

営業プロセスに関し、中小の金型製造企業に生産財営業の原風景をみることができるように思います。中小の金型製造企業のトップは「営業も製造も兼任」というのが普通です。組織が大きくなり役割と機能が分化していく前の原風景です。京セラや村田製作所、あるいは日本電産など、京都企業の創業者の方々も起業当時のことをよく伝えてくださってます。2006-03-25で触れましたが、ソフトブレーン社創業者である宋文洲氏がその著書*2で「本来の言葉の意味では『営業とは事業を営むこと』ではありませんか?」と述べていますが、正にその通り

2006-05-06で触れた大野耐一氏の著書*1の中には、トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎氏*2がトヨタ自動車が独立する前年に発表した「トヨタ自動車が今日に至るまで(昭和11年)」を紹介する次のくだりがでてきます。 以下、豊田喜一郎氏。 日本では製鋼…

金型製造企業のグローバル展開に関し、伊藤製作所のグローバル化モデルは示唆に富んでいます。比国(フィリピン)に進出し「設計を比国で行い日本で加工する」というモデルで組織能力の継続的改善に取り組んでおられます。「政治と行政の品質の国際競争で見劣りする日本国そのものが駄目になってしまうリスク」に対する予防策は、「日本本社を支えることができるような比国現地法人を育て上げていくこと」で対処するという逆張りの発想です。

google:ものづくり 伊藤澄夫 伊藤製作所http://www.itoseisakusho.co.jp/ 同氏が繰り返しの現実検討とシミュレーションを行った結果で、独立自営の経営者として「進出先は比国と決断」した理由はよく理解できます。既に過当競争の泰国でもなく、中小企業が単…

自動車産業や松下電器にプレス金型を供給する四日市の伊藤製作所の伊藤社長は、耐久生産財であるCNCマシンなどの登場による環境激変を以下のように説明しておられます。

「モノづくりこそニッポンの砦―中小企業の体験的アジア戦略」伊藤澄夫著 isbn:4769361564: 何千工程もかけて製作していた金型製作の工程において、CNCマシンが加工工程の大半をカバーできるようになったのです。・・中略・・設計と試し打ちをした後の対策…

間接生産財を代表する金型に関し、日本の産業規模は出荷高1兆円で就業者100千人を超えるそうです。その金型の最終製品である電機と自動車の組み立て工程の海外シフトが進み、更には90年代後半からは金型製造のコンピュータ化も進み、日本の金型各社の多くが、21世紀モデルに向けての変態脱皮を進めているようです。

参考:日本金型工業会 http://www.jdma.net/日本の金型製造企業は、90年代の顧客企業の急速な海外シフトと、どさくさで行われた日本から中国やアジアへの図面持ち出し、耐久生産財でCNCマシンの登場やコンピュータ化による加工の簡易化、中国で多い反則…

トヨタ方式について、若い時分にトヨタ関連で取引を経験した際に断片的に学ばせてもらいましたが、故大野耐一氏*3が切り開いた運動が、最近はホワイトカラー部門でも展開されるようになってきたようです。故大野耐一氏の「脱規模の経営を目指して」「日本の風土に根ざしたオリジナルの方法」の経営哲学が企業のホワイトカラーのルーティーン部門にも浸透すると、ホワイトカラー部門の組織能力が更に高まり、少なからぬ日本企業の助けになると思います。

以下「トヨタ生産方式」大野耐一著1978年の抜粋 喜一郎氏がだれよりも熱心にアメリカのGM、フォードに学ぼうとしたのは、自動車工業の基礎を一刻も早く学びとろうとしたからである。アメリカの自動車産業から基礎を学び、日本との比較材料を得、日本式…