青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

93-1/3 エネルギー低炭素化でオール電化とコージェネ

ガス業界のコージェネ提案と電力会社のオール電化提案が様々なイノベーションをもたらしています。産業用省エネではコージェネ(熱電併給)の導入が進んでいます。

コージェネ(Co-Generation)とは、発電で発生する回収し有効活用することでエネルギー効率を高めるシステムです。97で記述したESCO(Energy Service Company)事業とは「耐久生産財などの企業が省エネに関する包括的なサービスを提供し、実現できたコストダウンの一部から報酬を得る事業のこと」です。BOO(Build Own Operate)とは耐久生産財の企業などが資産を所有して安価なエネルギーを供給することです。ESCOもBOOもともに環境経済性両立が基本コンセプトです。日本のCO2排出量12億トン4割弱を工場などの産業部門が占めています。
産業用コージェネの事例に関し、Electronic Journal 2007年7月号が今やDRAMでニッポン半導体の再興の旗手ともいえるエルピーダメモリの事例を「エルピーダでは新CGS(コジェネレーションシステム)の採用と様々な省エネの取り組みにより、実現できた削減消費電力約24%、年間のCO2排出量約169千トンエルピーダメモリ広島工場の使用エネルギー約100千KWにも上り、小さな地方都市に匹敵する。省エネとCO2排出量削減を目的として発電能力96千KWの大規模なコージェネレーションシステム(CGS)を稼動させている。従来は捨てられていた温水を回収し、熱源として吸収し冷凍機などに使用することで、商用電力使用時に比べエネルギー変換効率20%改善している。さらにCGS市販電力組み合わせで効率の良い電力供給を行っている。例えば空気圧縮機CGS廃熱(蒸気)をメイン動力として使用し、電力補助動力として活用することで消費電力87%CO2約2100t削減できた。更にCGS採用の利点は無停電電源装置UPS(Uninterruptible Power Supply)電源を削減できることによるコスト削減や電力の安定供給が挙げられる。瞬時停電が起こっても問題が少ない冷凍機などは商用電力を使用し、その他はCGSで動かすことで効率の良いエネルギー使用が可能となる。」と報道していました。
家庭用コージェネでは、大阪ガスを幹事会社とするコンソーシアム[東邦ガス西部ガスノーリツ長府製作所本田技研]がガスエンジンで発電する家庭用ガスエンジンコージェネレーションシステムで2005年に環境庁(当時/小池百合子大臣)及び愛知万博の愛・地球賞を受賞しています。燃料電池で発電するシステムでは東京ガスのコンソーシアム[大阪ガス東邦ガス]も受賞しました。東京ガスを通じての市場投入の準備を進める松下電器は、2005年に竣工した首相新公邸(当時/小泉総理大臣)に第一号機を納入したそうです。

93-2/3 オール電化とコージェネ

家庭用省エネではオール電化の普及が加速しています。エコキュートとIH調理器を主力商材とし、ヒートポンプ床暖房の需要も高まりつつあります。太陽電池オール電化の支援商材です。

オール電化西日本を中心に2002年ごろから本格的な普及の段階に入り、今年07年度新築住宅着工に占めるオール電化4割を超える勢いになってきました。オール電化の商材は、給湯調理暖房向けでキッチン、バスなどの住宅設備と電源の太陽電池です。
産経新聞2007年5月6日付は「オール電化住宅の普及件数が07年3月末2百万世帯を超えたことが5日までに分かった。普及件数は平成18年度だけでも490千世帯近く増え、17年度の純増数を23%以上も上回った。大都市圏に比べて都市ガスの普及率が低い中国電力四国電力の管内では、オール電化住宅のシェアが過半を占めている。東京電力も新築だけでなくリフォームの顧客をとる方針。ガス会社防戦に躍起だ。広告宣伝費や販売促進費を積みます方針で最新機器のよさを知ってもらう機会を増やす方針だ。」と報道していました。
新築住宅着工に占めるオール電化住宅の割合は、01年の77千戸が02年110千戸となり(三菱電機提供資料/電波新聞2006年12月26日付)、以降は加速度がついて逓増しています。一方、既築住宅オール電化に関し、三菱電機のリビング・デジタルメディア事業本部でオール電化事業を展開する電材住設事業部の桑原雄二事業部長は電波新聞2007年4月20日付で「約51百万世帯ある既築住宅市場の電化率はまだ4%。新築とともに既築向けオール電化提案が重要・・。電材事業部は売上高を06年度の1千9百億円から今年度は2千億円に引き上げる方針。」と述べておられました。
筆者/青草新吾は、利用者の立場からは家庭用でもオール電化コージェネのハイブリッド化がベターと考えますが、電力業界とガス業界が激しく競う今の段階では期待薄で将来の可能性に期待するしかありません。

93-3/3 エコキュートと自然冷媒ヒートポンプ

エコキュートは自然冷媒のヒートポンプで大気の熱を回収し活用するオール電化の目玉の一つですが、高圧の自然冷媒を使うことから新規の派生需要が生まれています。

日本国の二酸化炭素排出量に関し、97で前述通り家庭部門14.5%の175百万トンを排出しているそうです。その家庭部門エネルギー1/3を消費する給湯の省エネではエコキュートが期待されています。但しエコキュートで使う自然冷媒は、冷媒としての性能ではフロンよりも劣っていますから、劣る性能自然冷媒を何とか使いこなすための工夫が行われており、そのことから派生需要が出てきています。99[鉛フリー化]で今までの鉛ハンダのハンダとしての性能があまりにも優れていたために性能が劣る鉛フリーハンダを使いこなすことで出てくる製造技術上の課題例について記述しましたが、同様の構図です。
エコ給湯派生需要と加工流通に関し、日刊産業新聞2007年7月5日付は「(堺市で)冷媒銅管加工扶桑工業は初めてのエコ給湯向け銅管加工事業を立ち上げる。新工場でヒートポンプ配管の端末加工と組立を行う。エコ給湯用の銅管は空調用銅管と規格が異なり、公差は従来の三分の一以上の高精度が求められる。接合も従来のロウ付けではなく、銅管端末を拡管加工し、オーリングシールゴムパッキンを用いて黄銅金具で接合する。」と報道していました。同じく日刊産業新聞2007年7月17日付で「キッツはパイプ・継手メーカーの三葉製作所からエコパイプの供給を受け、エコキュート配管用のアルミ三層複合架橋ポリエチレンの配管キットの販売を開始したと発表した。内面架橋ポリエチレン3層構造を用いることで耐熱性を向上させ、常用温度(空気中で連続使用できる温度)セ氏95度を実現した。耐候性断熱材がついているため屋内外を問わず遮光テープが不要で、施工時間が短縮できる。重量は銅管のおよそ半分・・云々」と報道していました。