226. 水害とウイルスそして香港時代革命
揚子江上流の洪水報道から一週間後、7月4日早朝7時頃に飛び込んできた熊本県人吉市の青井町(青井阿蘇神社)に始まる水害報道は、瑞穂の国(日本)を継承して未来を切り開いていく継往開来の思考をめぐらす機会になりました。自己防衛のためにも一定の資産を築きながら自由と民主主義を応援していくことで、経済危機やパンデミックを乗り越えていけると考えます。
このたびの未曾有の災害で被災された皆様にお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復興を願います。
水は、生命体の維持と健康衛生のために必要です。と同時に 「水」は究極の生産財です。人間の生産活動では、農業の小麦1キロで 2千L(リットル)、養鶏の鶏肉1キロで 5千L(リットル)、畜産の豚肉1キロで6千L、牛肉1キロで20千L、工業用品では、スマホ1台で910 L(リットル)、乗用車1台で65千L の淡水が使われます。
阿蘇山の水資源は清澄( clean せいちょう )なので純水や超純水に最適です。台湾の半導体業界は、1999年の台湾地震で水不足に陥った際に、阿蘇山の水を空輸を含めて緊急調達できたことで、当時の台湾の李登輝 総統以下、半導体業界や関連業界の方々はとても喜んでおられました。・・・水を資源としてみると、日本は「降水量が多いのに水資源に恵まれない国」です。水資源に恵まれない国でありながら、先人は様々な工夫と努力で「瑞穂の国」を築き上げてきてくれました。
アフガニスタンでペジャワール会現地代表を務められた故中村医師は、今も福岡県朝倉市に残る山田堰(せき)を現地の方々に来日して見学してもらって理解してもらった上で、「安上りで現地の人々だけで管理できる灌漑システム」として現地で推奨し整備を進めました。瑞穂の国造りを進めてくれた先人の遺産を活かして、現地の人々への手助けをしました。昨年2019.12.7、アフガン国旗に覆われた中村医師の棺を担いだガニ大統領は「全てのアフガン人は、彼を勇敢な男として記憶する」と、医師でありながらも井戸や農業用水路の整備に尽力した功績をたたえました。ご冥福を祈ります。恐らくは現地の利権や政争絡みからであろう襲撃メンバーには怒りがこみあげてきます・・・。
現人類は「ウイルス由来のウイルスゲノム」を持つそうです。「 JT生命誌研究館 」を訪問して得た知識です。JR高槻駅西口から徒歩10分ほどで、日本たばこ産業が運営し、大阪大学大学院と連携して展示してます。ウイルスを含めた自然との共生を考えるための全体像の知識を得るには、とても便利な施設です。・・・水の惑星の地球で、小さな生命体( 原核細胞 ) が生まれ、古細菌と真正細菌に分かれ、さらにはゲノムが変化して少し大きな古細菌が生まれて、小さな真正細菌を飲み込んで内部共生が始まり、細胞の中で細胞が暮らす真核細胞が25億年ほど前に誕生。ばらばらに生きていた真核細胞が集まって一つの個体として暮らすようになり、ゲノム重複が進みながら、多細胞生物が10億年ほど前に誕生。そこから菌類、植物、動物が生まれた。・・・遠い祖先に感染したウイルスが、現人類の母親の胎盤作りで働いているそうです。
地球生命史の現実からは、ウイルスとの共生をしていくしかないないようです。「 人間だって自然の一部。毒性を持つ微生物やウイルス、自然災害を人間の力で根絶することなどできません。できるのは避けて遠ざかる。」ことです。「遠ざかるための堤防であり除菌(不活性化)」です。日本人の自然観と生命観がとても有効です。
西欧の自然征服の思想や中国共産党の全体主義が垣間見える気がするのが「 ウイルスとの戦争 」という表現です。毒性が強いウイルスや自然災害は「押し返して遠ざけるのみ」です。根絶などできません。遠ざかるためには、生きていくために、衛生のために、生産のために、先ずは何よりも水が必要です。
アジアの給水塔といわれるチベット高原を水源とする揚子江、黄河、メコン川、インダス川などからは、アジア20億人に淡水が供給されています。・・・中国共産党は、水資源の確保でも貪欲で侵略的です。世界が朝鮮戦争に耳目を奪われていた1948年に、残虐行為を多々伴ったチベット侵略が開始されました。キリスト教でいえばバチカン市国のような平和な仏教の宗教国家に、1年間の高地戦闘訓練を施した人民解放軍が大軍で襲い掛かり、武力侵略で併合してしまいました。
中国共産党の侵略に抵抗運動を続けたマイケル・ダナム氏の 著書 *1には「最初は友好的に振舞うが、機をみて暴力的になる中国共産党の侵略性」が分かり易く事例説明されています。本の英語のタイトルは Budda's Warriors ( 仏の戦士 )です。 ・・・ 歴史上、一度も中国領であることなどなかったチベットの歴史と豊かな資源については、166 [ 2010.7.25 「チベットの資源」]、125 [ 2008.6.7 「チベット国旗( 雪山獅子旗 ) 」、122 [ 2008.4.26 「長野聖火リレー騒乱」 ] などで前述しましたので省略します。
中国は共産党国家です。憲法は「国家は共産党の指導を受ける」と、はっきり言えば国家は共産党のツールであると明記してます。 ・・・ 終末論や共産党ユートピアは西洋文明の負の産物です。・・・実は、筆者/青草新吾も10代後半でマルクス主義の理想にシンパシーを感じた時期がありました。しかし人間とて自然の一部です。全知全能でコントロールするなんぞ恐怖の夢想です。できるはずがありません。だから人類を不幸にする夢想であることに気づきました。
中国共産党の7月1日付「香港国家安全維持法」施行発表は、自由と人権そして民主主義からは人類史の汚点です。 ・・・ 日本の報道各社の汚点は、中国共産党への偏向が多いことです。ルーツは、中国共産党に不利な報道はさせないための日中記者交換協定(1964)の「政治三原則」にへの合意です。不服従は産経新聞のみだったといわれます。NHKなんぞは公共放送などと自称しながら、中国共産党の報道機関と合弁事業まで行ってます。 ・・・ 今回も日本の媚中メディア各社は、米国の報道を紹介するようなおっかなびっくりの報道でしたが、産経新聞のみが「香港は死んだ」と黒背景の白抜き文字で抗議の報道をしてました。産経以外では日経新聞も経済紙らしく貿易ハブの香港を殺してしまうことに抗議が滲みでてました。
筆者青草新吾が不思議に思うのは、日本の人権派弁護士やら護憲派民主勢力と自称する政党は、自由香港を見殺しの態度です。所詮はイデオロギー闘争のために人権という言葉を都合よく悪用しているからでないでしょうか。 ・・・ 自民党にも中国共産党に買収されているのではないかと見えてしまう代議士が多々潜んでいそうな気配です。この方々は既得権益や利権のために自由民主党をツールにしておられる方々なのかもしれません。
自民党親中派の頭目で幹事長で近畿地盤の二階俊博さんは、中国共産党の習近平主席の国賓来日に関し、報道陣の前で「 日中関係を築いてきた先人の努力を水疱に帰すつもりか!撤回などとんでもない。」と声を荒げてましたが「築き上げてきた利権をどうしてくれる!」と置き換えると本音がよく分かります。・・・自由と民主主義のために大変な覚悟をせまられている香港や台湾の方々へのシンパシー皆無の自民党幹事長なんぞ、同じ日本人として、とても恥ずかしい限りです。「自由や民主主義よりも媚中がお得」との本音が、そのキャリアからも透けます。
六四天安門事件( 1989.6.4 )の虐殺と民主化鎮圧に対し欧米は経済制裁で抗議しました。反対に加担し支援したのが日本です。天皇の政治利用までしてやらかしました。そこまでやったのにろくに感謝もされずに、その後の反日です。 ・・・ 日本政府の恥ずべき天皇の政治利用で最大受益者の一人のはずの国家主席/ 江沢民( Jiāng Zémín ) は、1993.3に国家主席に就任するや否や全土で反日教育を始めました。副首相で外交を担った銭其琛( Qián Qíchēn ) は、自身の回顧録で「 西側諸国の対中制裁崩しの突破口となったのが日本の天皇訪中 ( 1992,10 )だった。日本は(中国に制裁する西側諸国の中で)最も結束が弱かった」と証言されてしまいました。日本政府はまるで間抜け扱いです。 ・・・ 当時の日本は、前年発足したばかりの宮澤喜一内閣でしたが、金丸信・竹下登・小沢一郎の「こんちくしょう時代」ともいわれ、天皇訪中を強引に押し進めたメンバーです。金丸信氏は、天皇訪中と重なるように、数々の不正蓄財が明るみに出て議員辞職に追い込まれ、小沢一郎( 現国民民主党 )がパワーを引き継ぎました。金丸さんや小沢さんにはぴたりと二階俊博( 現幹事長) 氏も連なっていたと聞きます。
西欧社会では「自由も民主主義も勝ち取るもの」です。奴隷が存在した社会の中から発展して犠牲を伴って勝ち取ってきたものだからです。だからリーダーの資質と能力・才能を重視します。がしかし、日本の場合は八百万の神に象徴されるがごとく、元々が奴隷もおらず比較的自由な社会で、一般人の民度が高いことで、激動期を除けば、リーダーよりも集団の力で世の中を発展させてきました。一方で民主主義の考え方は敗戦の占領でもたらされたものですから消化不良です。
今は激動期ですから、世直ししていくイノベーション・維新が必要です。ですから政治行政と会社のリーダーの資質や能力・才能がとても大切な時代です。 ・・・ 新陳代謝を活性化させねばなりません。105[ 2007.11.11 厄介者の権力 ] でも前述しましたが、日本低迷の原因である世襲の既得権や奇妙な権力 *2 に胡坐(あぐら)をかく政界や会社のリーダーもどきには退散してもらう必要があります。まずは個人が稼ぐ力を高めてある程度の資産を形成し、基盤を固めながら、世直ししていける政界や会社における適正なリーダーを応援していきましょう。
*1: 「中国(共産党)はいかにチベットを侵略したか」講談社 ISBN:9784770040305
225.コロナ後の変化を自分と社会に活かそう!
世界史的な危機がもたらす変化はチャンスにもなります。「まずは生き残ること」です。生業(稼業)について、自分と家族のため、更に生命体の生存に貢献できる働き方や会社・産業について考えてみましょう。
コロナショック後の変化の方向性については、PFドラッカー提唱の観察手法(すでにおこった未来)がとても有用です。感染リスクのキーワードは、都市部への人口集中、交通機関の発達、グローバル化、です。物事には必ず 功罪・陰陽・光陰 の裏表があります。1918年のスペイン風邪からは感染パターンを、14世紀欧州の ペスト(黒死病)のパンデミック( Pandemic ) からはグローバル化の弊害、を学ぶことができます。
今回のコロナ危機は 「 生存危機 」 です。生き残ってこそ次の飛翔の機会に巡りあうこともあります。生命体として、ビジネスマンとして、生き残りノウハウを高めていきましょう。・・・・日本だけが先進国唯一で貧困化が止まず、先人の世界最速の近代化や戦後復興の遺産を食い潰し続けているのも、正しく稼ぐ力を持ったリーダーや会社が足らないからです。足らないながらも少なからず存在する、正しく稼ぐ力を持ったリーダーと会社やその支援者を応援していきましょう。
1百年前のスペイン風邪 からは、感染パターンを学べます。ウイルスは宿主を陣地にして、陣地を増やしていきます。有力説だと、発端はどうも今の中国山西省で1917年頃に感染爆発した呼吸器疾患が、カナダ経由 で広がっていったようで、北米から広がって1918年に感染爆発 したのではないかということです。・・・・ 第一次世界大戦の塹壕戦で感染した兵士が、1918年休戦 で復員して自国に持ち帰って、世界中に広がった。当時の致死率は今回の武漢肺炎 とは逆で、老人の致死率が低くて、若者の致死率が高かったようです。
14世紀のペスト(黒死病) からはグローバル化の必然としてのパンデミックを学べます。史上空前の広大な領土を統治するに至ったモンゴル帝国の モンゴルによる平和 ( パックスモンゴリア Pax Mongolia ) の下で、シルクロードが整い、グローバル通商が芽生えて繁栄しました。詳しくは、2011.8.14付179頁 [ 戦後世界と日本を台湾から俯瞰 ] と、2009.1.25付の 141-3/3頁 [ グローバル通貨 ]と 141-2/3頁 [ 法治国家とグローバル通商国家のモデル ] で前述しました。・・・・モンゴルによる平和で実現した人々の広範な自由往来により、元々は中国のどこかの疫病であったろう ペスト感染 が、短期間で欧州にまで広がり、欧州では人口が半減(?)するような惨禍になってしまった・・・・。
グローバル化は、ウイルスの広範囲な移動も容易にします。・・・・ 国家や会社などには マネジメントの限界 が存在します。筆者/青草新吾には、遠い未来はさておき、今はまだ国民国家をベースにした国際化 くらいが、国境なきグローバル化よりもベターなのだと感じます。マネジメントの限界については、国家規模と統治構造については、200頁( 2015,12.31付 )、194-1/2頁( 2014.7.20付 )、191頁 ( 2013.9.16 )、 会社の事業規模については、112-1/3頁2007.12.30付けや、111-1/2頁2007.12.22付け、で前述しました。・・・・国境なき世界など夢のまた夢、適度な国境管理が今後とも重要と考えると、日本で伸びていく産業や会社、生業として自分が関わっていきたい分野と職業も見えてきます。
今回のコロナ危機で強調されている自身と家族や共同体を守るための 「 適度な距離と非接触 」 は、このまま日常に定着していくと思います。観光業や飲食業では お客に安心感を与える工夫が要ります。できなければ淘汰される ことになりそうです。インバウンドビジネスにも淘汰が進みますから、黄色信号が点滅を始めたといえます。コロナ後に伸びる事業の条件や分野をみていく必要があります。・・・・ 幸いにも、日本は、先進国の中では米国に次ぐ内需国大国です。貿易依存度はGDP比30%くらいです。内需中心に、TPP11か国と米国・台湾・比国も含めた環太平洋中心でもやれることがまだまだ多々あります。先進国唯一の貧困化を食い止めて、再び一人当たりで豊かな国にしていけるだけのネタはまだまだあります。日本には、後述のように得意な産業分野と仕事が多々あります。・・・・ まずは、これからは繰り返し見舞われるであろう世界危機で沈没してしまわないように事実に基づく 頭の整理をしておきましょう。
戦後の日本が遭遇した世界的な経済危機は、1970年代の二度のオイルショック、1990年代のバブル崩壊 ( 日本以外の他国はソ連崩壊 ) 、2008年の世界金融危機で、株価の大暴落と失業などの社会不安が繰り返されました。・・・・筆者/青草新吾は、今の日本の低迷、先進国唯一の貧困化は、1990年代に変化できずに積み残した課題が放置されたことで悪循環に陥ってもたらされたと考えています。・・・・1990年代当時、日本以外の先進各国では、ソ連崩壊と東西冷戦終結の大変化を機会に、グローバル化と世界的なパラダイムシフトが猛烈に進みました。この同じ1990年代に、日本だけがバブル崩壊と内向きな現状維持の政治で足踏みしてしまい、世界の変化から取り残されて、多くの旧態依然が既得権益とともに残ってしまったと感じています。
前回の危機爆発は2008年でした。2008年は8月に iPhone が登場し、変化の予兆を感じさせてくれましたが、翌9月には、米国でリーマン社が破綻しました。・・・・危機で、それまでの深層海流が浮上して表層海流になるように、幾つかの大変化が見えるようになりました。
経済面と生活面での表層海流について。情報通信の分野では、通信規格第3世代(3G)の爆発的変化が起こりました。そのことで、より大きな産業という括りでは、米国のGAFMA ( Google、Apple、Facebook、Microsoft、Amazon ) が巨大化し、 追いかけるように中国のBATH ( 百度、阿里巴巴、騰訊、華為 ) が爆発的に成長拡大しました。・・・・この大変化を通して、スマホやタブレットを道具にしたWebサービスが、日常の隅々にまで浸透しました。
政治面での表層海流について。前回2008年のリーマンショック以降で浮上してきたのは、英連合王国が、2016年6月の国民投票で EU離脱( Brexit ) を選択し、翌2017年1月に米合衆国ではトランプ大統領が誕生しました。・・・・グルーバル化の思想潮流は、共産主義( 国際共産主義運動 ) や、米国リベラル派( リベラル国際主義 )です。共産主義は思想洗脳、米国リベラル派は ポリティカルコレクトネス( Political correctness ) と称する 思想統制 と言葉狩り( word hunting ) がを正当化するイデオロギーが共通してます。・・・・ブレグジットもトランプ大統領も行き過ぎたグローバル化 に対する揺り戻しの象徴ともいえます。・・・・リーマンショック以降の大変化で良かったこともあります。
まず日本国民にとって良かったことです。スマホやタブレットの登場とWebサービスの飛躍的な発展のお蔭で、多くの日本人が 「自分で調べて選択する」 ことができるようになりました。受け身なことが多い日本社会ですが、自分から求めて動くというスタイルをもたらされたのは良かったです。自由主義と民主主義にとってはとてもよいことだと感じます。
続いて日本経済にとって良かったことです。米中と比べると地味で小粒ですが、戦後復興期のソニーやホンダのような、危機をばねにして 著しく発展する日本企業が存在すること です。代表事例として、株式時価総額のトップ100 からも確認できます。起業者が一流事業家としても著名な会社ばかりです。このような会社が増えてくれると、日本全体も長期低迷から浮上していけます。
バブル崩壊以降の上場企業で、上場後30年でトップ100にまでたどり着いた青年の会社。91位 1.2兆円で LINE (2016.7上場)、86位 1.4兆円で 楽天 ( 2000.4上場)、9位 6.7兆円で ソフトバンク ( 1994店頭公開 )。
オイルショック以降の上場企業で、上場後50年を経た中年の会社です。31位 3.5兆円に 日本電産 ( 1988.11上場 )、15位 5.4兆円 に ファーストリテイリング ( 1994.7広島上場 )、5位 9.1 兆円 に キーエンス ( 1987.10大阪上場 ) ・・・。
さて今回のコロナ危機 ( 武漢肺炎 ) は、生命自衛戦争なので、今までの経済の経済危機とは質が違います。ややこしいのは、経済危機の部分です。前回の2008年リーマンショック以降、ショックから脱するための政策の結果でもありますが、世界中で債務が膨張 しました。
日本国民が生きていく上では中国経済には注意が要ります。隣国で巻き込まれやすいことに加えて、巨大化して世界への影響力が高まったからです。中国共産党の統治がいつまで続くか分かりませんが、中国経済のバブル崩壊は必ず起こると思われます。・・・・産経新聞特別記者の田村秀男さんのレポートによると、中国は、政府、企業、家計の債務合計がGDP比300%の40兆ドル( 43百兆円 )で、日本の銀行も預金運用では国際金融市場を経ての間接的な貸付がかなりあるようです。他に日本企業14千社の対中直接投資の合計は14.8兆円だそうです。
IMFなどのレポートだと、世界債務は180兆ドルで、世界GDPの2.2倍にまで膨れており、これは前回のリーマン危機時の2.6倍だそうです。前述の中国もそうですが、米国企業を含めて、世界中で膨れ上がってます。慶大教授の白井さゆりさんによると「米国では現金需要の増加が金融政策運営を難しくしている。各銀行の準備預金が減り続け、銀行間市場のマネーが不足しがち 」 とのことです。
国家単位の地産地消に緩やかな国際貿易を組み合わせたくらいがベターなのだと感じます。国境を最も低くみた金融資本主義の行き過ぎは、是正方向です。自動車産業のグローバル化の行き過ぎも今回で臨界点を超えてしまったようです。・・・・ モノとしては、生きていくための水や食料、持続可能な循環型社会に貢献する省エネ・省資源な産物、これらを使うコトやサービスとしては、関わる方の関心やミッションによって千差万別です。その中で、筆者/青草新吾が感銘を受けたコトとサービスの事例の一つが、比国の三輪タクシー向け Fintech と IoT のビジネスモデルです。
三輪タクシーの運転手が、自前の三輪タクシーを購入してオーナーになるための融資をサポートするモデルです。ローンを滞納したらエンジンが動かなくできる沿革システムの提供で現地銀行の融資と新規オーナーの借り入れをサポートします。・・・・日本は、戦後の農地解放で、多くの小作人が自営農となり、首都圏などでは多数の土地成金も生まれましたが、所有して個人事業主になることで日本全体が豊かになることに貢献しました。・・・・ 筆者/青草新吾は、商社勤務で比国駐在した時期がありますが、多くの貧しい方々がより豊かで幸福にることで喜ぶ顔が目に浮かんでくるようです。・・・・起業者は、1967年岐阜生まれの中島徳至なる御仁で、会社名は、GMS ( Global Mobility Service )。インターネット検索したら、比国に加えてインドネシア、カンボジア、韓国でも事業展開されているようです。 株主や提携企業にも有力どころが参加しておられ、期待の高さが分かります。
今回のコロナ危機( 武漢肺炎 ) は、隔離という名の「 自由主義の強制停止 」を伴います。公共のために 共産党国家のように全体主義的なことも已む無しです。だからこそ徴税者である国家は、納税者に対して 隔離手当としての給付をする義務があります。・・・・稀な例外を除いて、リーダーに恵まれないのが日本です。日本の官僚と政治家の多数派は、敗戦を終戦と言い換え、責任を軍人に押し付け、一億総ざんげと称して、国民全員に責任転嫁してしまうような表層海流の漂流物です。自由主義と民主主義の立場からも、今回のコロナ危機は見直すよい機会にしたいものです。
224 若者がシニア資産家になれる好社会
若者が、数十年の蓄積を経てある程度のシニア資産家になっていく「資産形成の健全な世代循環」が必要です。米国中流層がモデルになると思います。・・資本主義と民主主義は「財産権」と「機会の平等」で国民全体を豊かにしてきました。・・しかし1989年の「6.4天安門」と「11.9ベルリンの壁解放」以降に始まった「猛烈なグローバル化」で大変化が起こり始めました。大転換の時期に日本は、政局騒ぎや、民の会社も多くが硬直化したままで転換が遅れ、今現在で「日本は先進国唯一のマイナス成長国」です。・・変化から取り残された日本は没落が続きます。マインドセットのリセットが必要です。まずは個人が生き残りましょう。そしてニッポン復活に向けて民主主義の進化と資本主義のリセットを支えていきましょう。
先進国唯一でマイナス成長した日本では貧困化が進んでいます。主な稼ぎ手で社会の公器でもある株式会社がもっと富を生み出して適正に分配することが求められます。貧困化は日本の若者の未来を暗く閉ざす、確実に日本を衰退に追い込んでいく致命傷になります。慶大教授の井出英策氏は「日本は母子家庭の貧困率が先進国で最悪の1位。母子家庭のお母さんが働く割合も1位。生活保護を使わず働く方が多い。"納税者みんなが受益者" からは程遠い現状。」を指摘しておられますが同感です。
今日本で起こっていることは格差拡大というよりも貧困化です。他先進国で起こっている格差拡大とは「拡大する富が超富裕層と途上国にばかり集まっていく過度なグローバル化への異議申し立ての深刻化」ですから、日本の貧困化と同じではありません。この違いを分かっていない、お気楽な評論家が多いことを年末年始の番組で知り呆(あき)れてしまいました。
統計でみても明らかですが、1995年から2016年までの20年間で「日本は世界唯一で貧困化してしまった国」です。日本人の勝算*1の著者であるデービッド・アトキンソンさんの「日本の経営者は、優秀な世界4位の日本人を使って、先進国最低の生産性(世界28位)しか生み出せていない」との指摘はその通りです。筆者/青草新吾は、既得権益団体のような自民党守旧派と、稼ぐことを考えない野党の不作為責任も大きいと感じます。一番の問題は国全体の稼ぎ、国内総生産(GDP)が過去20年間減り続けて、原状復帰さえもできていないことです。
日本全体では、会社が稼ぎ出す付加価値が300兆円弱で大企業と中規模・小企業が半々で稼ぎ出しています。雇用面では、大企業が3割で中規模・小企業で7割を担っています。 日本の就業者数67百万人の内、家族従事者含む自営業者が7百万人で、雇用者(役員と従業員)が60百万人がです。次に給与所得と国民総所得( GNI ) と国内総生産( GDP )の関係をみてみます。
GNI(国民総所得)は、法人含む日本居住者が国内で生み出した付加価値(GDP)と外国からの純所得の合計ですから、日本居住者の年間所得です。GNIは、分配されて、従業員への給与や株主への配当で支払われると民間消費の原資となり、行政に税として支払われて政府消費の原資になります。・・・日本の家計消費支出は、バブル崩壊(1991~1993.10)の雰囲気の中で1993年にピークアウト、後を追って5年後の1998年に会社が支払う給与総額も「222.8兆円」でピークアウトして以降は緩やかに減少しました。
日本は国民総所得が停滞する中で、経営者報酬は増えたのでしょうが、従業員報酬が減少し、中間層からシフトダウンした貧困層が拡大しています。日本を衰退させていく貧困化を食い止めて改善していくために、近代社会の原理原則である資本主義・自由主義・民主主義ついて考えてみます。基本的人権にも関わる問題です。
資本主義と自由主義が生み出すイノベーションと成長は、国民所得を拡大し、国民所得は家計(給与)と会社(純利益)、行政(税金)に分配されます。資本主義と自由主義は民主主義との組合せで人々のエネルギーを引き出します。資本主義の象徴はアメリカンドリームです。才能や知見と努力は平等ではないが「機会は平等である」という「階層間移動が活発なチャンスに溢れる社会」です。・・・ところが過度のグローバル化が米国を可笑しくしたというのが「 99%運動( ウォール街を占拠せよ ) 」です。米国内の99%の人々を犠牲にして、経済発展の恩恵が1%の超富裕層と中国などに偏っているというものです。・・・民主主義とは「自由を制度化したもの」ですので法の下の平等や機会の平等など、「身分や門閥で差別されない」ことが大原則です。
資本主義は、富を生み出し人々を豊かにすることにおいては優れています。しかし「資本主義には分配する仕組みが備わっていない」という現実があります。富を生み出す主な単位である会社のガバナンスと全体の分配を司(つかさど)る政治のガバナンスと、両方のガバナンスが極めて重要です。政策としては、貧困の再生産(世襲化)を防ぐための「子供が選択する高等教育への補助拡充」や、子供の医療サービスへの補填など、「勤労意欲を阻害しない未来のための投資」が必要です。機会の平等を歪めて階層移動を邪魔するような格差は政策で是正していくことが必要です。
筆者/青草新吾は、バブル崩壊以降の日本の衰退で、世界を識者を驚嘆させた明治・大正・昭和一桁の戦前世代が成し遂げた戦後復興が食いつぶされてきた感が否めません。民主主義と個人主義の未熟さが主な要因とみています。敗戦後のGHQ占領教育とその後の日教組教育の強い影響、及び高度成長型雇用システムで年功序列と悪平等が染みついた戦中・団塊の世代( 1935~1950生まれ ) が中堅層(コアリーダー)やトップ層を占めた時期と重なります。自分では何ら付加価値を生み出さず、ただただ他人の仕事の管理だけしかやってないような低迷大企業の中堅層やトップ層が、自分では仕事をした気になって日本を衰退に導いた側面もあるような気がします。バブル崩壊以降、官界でも多くの不祥事が表面化しました。グローバル化で大転換が始まったのに、日本は、内向きな政局騒ぎや、民の会社でも多くが単なる人減らしリストラで時間を浪費した感が拭えません。日本企業の多くが硬直化してしまっていました。
日本は行政も会社も自浄作用が足らないと思えます。・・人間がやることに完璧などありませんから、ISOなどで継続的改善やPDCA、最近のOODAなどで仕組みを作るのですが、日本国内を見渡すと、司法やメディアが最も取り残された遅れた部門のような気がしてなりません。・・年末から頻繁に流されるゴーン・日産元会長の国外逃亡の報道にも、民主主義の未熟さと国際性の欠如が目立ちます。
司法ムラの方々の無謬性(むびゅうせい)が垣間見えて気になります。無実の方々を苦しめる冤罪が現実に起きているのにバージョンアップと説明の努力が足りてません。・・今回のゴーン事件でも、法務大臣や検察出身者が「ゴーン氏は無実である証拠をだせ」などと平気な顔で言います。しかし検察が「有罪の証拠を示す」ことが先でないでしょうか?検察のリークにメディアが悪乗りして、冤罪が作られてきた事実をどう考えているのでしょうか?
2004年に表面化した厚労省の郵政不正事件の冤罪事件で、当時の厚労省企画課長だった村木厚子さんは、いきなり逮捕されて独房に監禁され、454日後の大阪地方裁判所の無罪判決までは罪人扱いをされました。その村木さんが解放後に「密室での取り調べは問題です。無理な取り調べと自白の強要で、私の事件でも二人に一人が、事実と違う調書にサインさせられました。無理な取り調べによる冤罪がなくなることを願います。」と メッセージを発しておられます。・・・1994.6の松本サリン事件で河野義行さんが受けた冤罪も酷いものでした。長野警察が流すリーク情報に乗ったメディア各社も一斉に尾ひれをつけた報道を繰り返しましたが、最後は長野県警の「河野さんは事件への関与はない」と手のひら返しの発表と、メディア各社の河野さんへの謝罪で終わりました。この事件とて、途中でオウムのサリン事件が出てきたから河野さんへの冤罪が晴れていったようなもので、もしあの事件なかりせばと考えてしまいます。
外国人トップが当事者の会社法事件としては、今回のゴーン事件は、前回のオリンパス事件の逆パターンです。英国人社長( ウッドフォード氏 )が往年の巨額不正に気付いて旧経営陣の不正を正しく会計処理しようとしたところで、実力会長と他取締役に取締役会で解任された事件です。雑誌FACTAの調査報道2011.7がきっかけでしたが、他先進国では日本の株式会社の閉鎖性と重ねてよく知られた事件です。
日産の取締役は任務懈怠(けたい)だと感じます。オリンパス事件と同様の内紛ですから、まずは取締役会で決着すべき内容です。安倍総理が「日産内部で解決して欲しかった」とつぶやいた気持ちが分かるような気がします。・・・会社法に従えば、取締役は代表取締役の専横を防止する義務もあるし、取締役相互に職務執行を監督する義務もあります。会社法が定める解任手続きをすっ飛ばして、検察を巻き込んだクーデターで追い出した上に、追い出した後の企業価値を維持する使命感も伝わってきません。株価も1/2に減じました。
筆者/青草新吾は日産の株主です。日産経営者の無責任ぶりに呆れています。グローバル企業は世界が監視する対象です。今の日産はあまりにも内向き過ぎます。報道も広告スポンサーの日産には触れないで、検察リークの垂れ流しのような報道ばかりが目立ちます。日産には世界からの信頼回復と企業価値復活を期待します。
令和でニッポンが民主主義と個人主義をバージョンアップして、資本主義を進化させ、元気な会社が増え、産業の新陳代謝も進み、政界と官界と司法はもっと自浄能力を高め、若者にとって未来が楽しみな、世界中から若者が集まってくる国になりますよう。令和二年吉日。
*1:ISBN:9784492396499 「2020年 日本はこうなる」
223. ノーベル賞LIBと平成30年間の回顧「↑(香港・深セン)と↓(日本)」
リチウムイオン電池(LIB)は「平成元年(1989)にソニーが世界初の上市」を行い、上市から31年を経て「発明者の一人である旭化成/吉野彰さん」のノーベル賞受賞が決定しました。・・平成元年とは、中国の八九六四(天安門事件1989.6.4)の年でもありました。民主化運動で行き場を失った「天安門世代」の方々の中にBYDやCATLを起業した方々がおられました。・・日本の平成30年間は「高度成長エスカレータ世代」( 1935-1949生まれの「焼け跡世代」と「団塊世代 」、戦後復興世代の子供たち ) が担う時代でしたが、会社単位ではユニクロや日本電産などの成長企業は少数事例で、会社の多数事例と日本の政治や行政は「凋落と低迷の時代」でもありました。
2次電池ともいわれる蓄電池の「平成30年間の進化」を振り返りながら、蓄電池産業を通して日本の稼ぐ力の在り方を考察してみます。LIBの進化では、液体LIBに続いてゲルLIB (リチウムポリマー電池)が登場し、今は全個体LIBの実用化が始まっています。ノーベル賞とは40年前の発展の起点となった発見者や発明者への表彰ですが、現実は絶え間なく進化が続き、グローバルな競争が続いています。
慶大教授の井出栄策氏によると、日本は先進国で「母子家庭の貧困率が1位(最悪)」です。生活保護を使わずに働く、母子家庭のお母さんが働く割合がトップであるにもかかわらずです。明らかに「稼ぐ力が薄い会社」ばかりが多くて「賃金が低い会社が多い」のです。なのに一方では「税金を扱う統治構造と行政の仕組み」に是正改善すべき点があるからです。個人の稼ぐ力と会社の稼ぐ力を高め、産業の稼ぐ力も高め、行政の仕組みを改善していかねばなりません。以下、蓄電池を産業として稼ぐ力の潜在力を考察していきます。
まず二次電池ともいわれる蓄電池ですが、富士経済の調査では、2016年度の世界の蓄電池需要が7.88兆円。内、鉛が7割、LIBが2割、その他1割。25年に14.4兆円へと倍増と予測しています。
次に、車載や産業用の大型電池と、スマホやPCで使われる小型電池に大別すると、矢野経済の調査では、2016年の時点で、自動車・産機用の大型と、スマホなどの小型の需要が、ほぼ半々となり、2017年以降は、大型が小型を上回るようになったそうです。
大型電池を代表する車載電池(主にニッケル水素電池とLIB)の産業規模をみてみます。2018年度の世界生産は 92.5 GWhです。 CATLとパナソニックで世界の半分を生産しています。出荷量では、首位がCATLで世界生産の1/4、ほぼ同規模での2位がパナソニ ックで世界の1/4、3位 BYD 13%、4位 韓 LG化学 8%、5位 中 AESC 4%、6位 サムスンSDI 3.7%、・・です。5位のAESC( Automotive Energy Supply )は、元々はNECと日産の合弁会社でスタートしましたが、エンビジョン( Envision ) なる中国の再生可能エネルギー会社に80%が譲渡され、今は主要顧客で株主でもある日産の持株20%、NECの持株ゼロだそうです。
リチウムイオン電池(LIB)を発明したのは、今回ノーベル賞を受賞した三名に、米グッドイナフ氏の下にいた東芝の現エグゼクティブフェローの水島公一さんです。今回のノーベル賞受賞と東芝の水島さんによってベースモデルが発明され発表されました。・・・LIBを製品化して実用化したのがソニーです。ソニーが91(平成2)年に「世界初で製品化して市場投入しました。電池事業のトップだった西美緒さんにリードされた
ソニーです。ラミネート型LIBを世界初で世に送り出したエナックスを起業した小沢和典さんも当時のソニーの起業メンバーです。本稿97-2/3 ( 2007-9-8 リチウムイオンでマンガン系 )で前述しました。エナックスはその後、自動車部品のメガサプライヤーである独コンチネンタルや日本の積水化学との協業をして発展しているようです。・・・今回受賞された吉野さんの旭化成は、東芝との合弁(ATバッテリー)で製造販売を開始しました。・・・日本の電池メーカーは、GSユアサ(当時は日本電池と湯浅電池)、日立マクセル、パナソニック(当時は松下電池と三洋電機) などが参入しました。・・・TDKは、下術の香港ATLの親会社として、今やIPhone向けLIBの主要サプライヤーですが、当時は電極のみを製造する部材メーカーで、電池メーカーに電極をOEM販売していたと記憶してます。・・・LIBの産業としての発展の様子は、まるでラグビーのようです。「後ろの走者へのパス」と「キック」で、ラインアウトやスクラムを交えながら前進していく様子にとても近いものを感じます。
1995(平成7)年に、今や車載用LIBで世界最大手の一角を占める BYD( 比亜迪)が深センで起業されました。筆者は翌年に同社関係者から、起業家・創業者のWan Chafu( 王伝福 )さんは確か「豪州の留学から帰国されたお方」と聞いた記憶が残ってます。・・・当時は、ニカド電池を高性能化したニッケル水素電池の成長期で、LIBは導入期でした。筆者/青草新吾は、成長期のニッケル水素電池向けを主力としながらも、導入期のRIB向けの受注を追いかけていました。
上述のBYD(比亜迪)は、2002年に香港H市場で上場し、2003年に自動車製造に進出し、2008年に世界初でPHVを発表し、9月にリーマン破綻直後に、投資家ウォーレンバフェット氏率いる米パークシャハサウェイが出資、12月に世界初でPHVを発売開始しました。BYDは、日本でも2010年に自動車金型でオギハラ館林工場を買収し、2011.6に深センAで上場しました。
車載LIBの生産量で世界一にのし上ったCATLは、TDK子会社の香港ATLから独立したLIBメーカーです。創業者で起業家の Robin Zeng (曾毓群)なるお方が、前職上司の梁少康なるお方と香港でATL ( Amprex Technology )を設立し、2005年にTDKに売却して資本を積み上げ、創業メンバーはそのまま車載向けの事業化を進めました。広東省政府の電気自動車プロジェクトに呼応して、2011年に、福建省の寧徳市に CATL ( Contenporary Amprex Technology 寧徳 時代 新能源 科技 )を設立し、ATLから車載部門まるごと、技術者や研究者などをそのままCATLに引き連れて、中国政府のEV支援策に乗って急成長を果たし、2018.6に深センマザーズに上場しました。
平成の30年間を振り返ると、上述の1995(平成7)年は、日本経済がピークアウトして失われた20年へと凋落していった転機の年でした。例えば、1月に阪神大震災、オーム地下鉄サリン事件、村山富市首相の中韓向け「反省と謝罪」表明、金融機関の経営破綻、急激な円高で円相場が初の70円台への突入、世界貿易ではGATT廃止とWTO発足での再スタート、等々、凝縮して数年分が重なって起こったような年でした。
香港の民主化デモを見るたびに、BYDやATLとCATLのように、香港の世界に開かれた窓を使って、天安門世代が起業して飛躍していった中国の新興産業分野の起業家と会社を想起します。中国を政治支配するのが毛沢東の真似事に走る習近平(66歳)など紅衛兵世代ですが、イノベーション盛んな新興分野で起業して事業を大きくしてきたのが天安門世代です。民主化運動に関わった方々は就職で苦労しながらもその後に起業した方々も多々おられるようで、電池やITサービスの分野に多いようです。電池やITの例で、上述のCATLのRobin Zeng( 51歳 3割株主 )やHuang Shilin( 黄世霖 1割株主 )、eコマースのアリババを起業したJack Ma( 56歳 馬雲)などの各氏は、民主化運動ピークの天安門事件の頃に20代前半だった方々です。Jack Maは就活で30社から断られたお方だそうです。
米国と直結した深センのエコシステムについては、本稿211 [ 2018-05-02 ( 会社の役目は営利とイノベーション)で前述しました。深センでは、経営機能を分業するインキュベータ(Incubator 起業支援会社)やアクセラレータ( Accerator 成長加速支援会社)に加えて、設計製造機能を分業する ODM (Original Design Manufacturing )や IDH ( Independent Design House ) など、スタートアップや成長事業をサポートするエコシステムが充実しています。・・・深センが発達したことで、香港の機能と役割が相対的に低下していくといわれてきました。がしかし、米中摩擦や、先進各国の対中政策をみていると、潮目が変わって「やっぱり香港がないと」で香港の役割が再び高まっていく方向です。最後に、今回のLIBノーベル受賞分野を、ラグビーのようにパスとキックで、この日本でパワフルにつないで前進しながら、稼ぐ力を高めて好社会実現へのエネルギーにしていけそうかどうか?を考察してみます。同じデバイス分野の半導体デバイスの歴史的事実が参考になります。
銘記すべきは、パワー半導体及び、半導体デバイス向けの機能材料は今でも世界最強であることです。パワー以外のその他の半導体デバイスは凋落したのですが・・・。凋落した主な原因は、経営人材の薄さと、日本政府の政策の誤り(対米交渉)に依ります。 ・・・ 反対に、パワー半導体と機能材料が個々の会社としても産業としても、今でも世界最強なのはアナログ技術と材料技術の広がりと厚みによります。日本は要素技術が豊かで強い。しかし付加価値を厚く広くしていくには、本稿214 ( 2018-09-15 変化に強い会社と働き方 )で前述しましたが「強みの要素技術を生かしたシステム技術」を強化していく必要があります。LIBとその産業連関ではどうなっていくのでしょうか??
筆者/青草新吾は1995年頃に「成長期のニッケル水素電池向けを主力としながらも、導入期のRIB向けの受注を追いかけていました。」と上述しました。日本の電池業界は「総合電池メーカー」が担っていました。ニカド電池とニッケル水素電池は「酸化還元反応を使うアルカリ蓄電池」です。これに対してLIBは「イオン移動を使うイオン電池」です。当時は「連続的な改良」で理解されていましたが、実は「不連続な激変」だったのではないかと、今は考えています。
イオン電池のリチウムイオン電池( LIB )は、液体LIBの進化でラミネートタイプに代表されるゲルLIB( ポリマーLIB /リチウムポリマー電池 )が登場し、今は全個体LIBが次世代電池として開発の競争下にあります。ゲルLIBではソニーや日立マクセルが先行しましたが、全個体電池では、TDKや村田製作所が小型電池で先導しています。進化とともに日本勢が再び世界市場で盛り返すか、このまま衰退していくか・・会社の経営者と政治家の力量と働き次第です。
不連続なイノベーションの特徴であるアウトサイダーの参入に関し、日本のLIBではソニーが参入し、TDKが今や小型(ポータブル)では世界トップグループです。更にソニーは「2017年に電池事業を村田製作所に譲渡」しました。業界の垣根を越えたイノベーションが起こり、産業構造が激変していくのは、半導体デバイスと電機業界で経験済みで、自動車業界でも始まっています。・・・このような変化の中でも、日本の「部材化された機能材料」と「電子部品」の両産業は、競争力を維持できています。そして日本をより豊かな好社会にしていくには、稼ぐ力をもっと厚く広くしていくことが望まれます。・・・個々の会社としては各々「ニッチトップな会社」が増えて、シナジーで「システム化された製品」がもっと増えて「産業連関がもっと広がって」いく姿は、まるでラグビーです。「後方へのパス」と「キック」でスクラムやラインアウトを交えて戦い、試合が終われば敵味方なく称え合うノーサイドのイメージです。台風直後ですが、本日の「スコットランドx日本」は面白そうです。
久方ぶりの投稿でしたが、次回は「グローバル化よりも国際化!!」を寄稿します。
222.米中摩擦の中でも「稼ぐ強い生産財」を考える
3年前の今頃、メディアの多くが「トランプ当選はない」との報道でした。筆者は「違和感を感じた」のですが結果は「トランプ大統領誕生」でした。今回の米中摩擦についても多数派報道のような「拮抗する衝突」ではなくて「パワーバランスの変化。潮流は共産党衰退も含めて大転換。日米中ともにビジネスチャンスが多々」とみます。
ビジネスチャンスが多々な事業分野は、日本をベースに展開していく上では、どうしても「目の前の見える素材を極めていく領域」になると考えますが、後述します。
2016年の米大統領選では、日本のメディアの殆どが「トランプ大統領ありえず」との報道でした。例外は、木村太郎さんや、筆者/青草新吾が201[ 2016.7.31 英国EU離脱と米国大統領選 ]で引用させてもらった江戸川大学名誉教授の高山眞知子さん(トランプはバカじゃない)などの少数派でした。青草新吾はこの方々の見立ては外れていないと感じました。理由は当時も記載しましたが「米国の潮流が変わりつつある。米国のメディアとインテリの多数派はリベラル国際主義への偏りが大きい。日本のメディアはそこからの翻訳を伝えているだけが多いのでは。」と感じていたからです。
米合衆国は多人種多民族で世界の縮小版ですから、幾つかの米国があると考えるとわかりやすいです。世界を席巻した都市部やCNNのリベラルな米国に対する歴史の揺り戻しで「俺がアメリカだ」の中西部やFoxニュースからの異議申し立てで流れに乗ってせりでてきたのがトランプ大統領といえます。米国の場合は、会社でいえば起業家タイプのパワフルなリーダーを押し出す社会です。そのことで「回りまわって結局は自分も得をする」という資本主義と自由主義の考え方が根付いているからだと思います。
中国も同様に多民族国家なのですが、米国と違うのは世界の縮小版ではなくて、国というよりも地域です。中国共産党と官僚、一般大衆がばらばらです。中華民国を建国した孫文の嘆き(漢人は砂のような民族 )を142 (2009.2.14)で前述しました。中華民国以前は国家というよりはすべて王朝です。米国と中国のリーダーシップの違いと、その時々のリーダーを生み出す潮流の変化を見続ける必要あります。
中国大陸の歴代の王朝で名君 といわれるのは康熙帝(こうきてい Elhe taifin)など満州族の清が最多で、漢族では漢の起業家の劉邦くらいのようです。満州族は「跡継ぎは親戚から一番優秀な人を選ぶ風習」があって、長男や子供に限定しなかったようで、このあたりは日本企業のキッコーマンやサントリー、トヨタと似ています。
逆にいうと、中国は、戦後の日本と同様で「優秀な人材を潰す」傾向が強い社会のようです。拮抗する勢力の真空地帯で潰されなかった者が生き残って権力を手にする。今の習近平 ( Xi Jinping ) さんもこの類のように感じます。反対に、才覚溢れ出て、潰されてしまったのが薄熙来(はくきらい Bo Xilai)さん・・。何がいいたいかといいますと、習近平さんが毛沢東( Mao Zedong )の真似事をしたりで完全独裁者のようだとの報道が増えているのですが、取材力に乏しい日本のメディアの報道は外れていること多しです。実は習近平さんは裸の王様になりつつあり、中国大陸で繰り返されてきた歴史のように、習近平王朝の遠く離れたところでは、様々なパワーが勃興して、共産党レジームがピークアウトして分裂衰退の方に向かいだしているのではなかろうか・・そう感じることが増えてきているように思います。米国の潮流が変わって米国が仕掛けだした中国との摩擦で、中国共産党の衰退の潮流がとめどもなく大きくなっていく可能性あり、とみます。もしそうならば、国営企業を中心とした中国の産業も「民」中心に変わっていきます。変化はピンチですがチャンスでもあります。
ここで本題の「稼ぐ生産財ビジネス」を考えてみます。日本の会社として米中摩擦の中で稼ぎ続ける生産財であるためには、対米と対中の両方で強い競争力を持っていることが必要です。以下で生産財全般を俯瞰してみます。
生産財ビジネスは「資源活用」が主な領域です。川上からみていきますと、最初は資源エネルギー産業です。資源エネルギーから素材や工業材料、部材や部品など中間財を経て消費財へと付加価値を高めていきます。これらの多段階なサプライチェーンに耐久生産財の製造設備も供給されます。
日本が強いのは「再生資源の回収」です。それまで捨てられていたものや利用できなかたものを資源化する産業モデルです。電子基板から貴金属などの有価値材を回収したりの都市鉱山や、鉱山で捨てられて放置されてきた低品位からの精密抽出・精錬はとても強い。世界6位の海洋面積を持つ海洋大国としては、東京都の南鳥島の周辺海底のレアアースなど、海底からの採取技術も有望です。米国は石油・ガスをシェール層から採掘する技術が発明されたことで石油ガスのビジネスでイノベーションを起こし、今や世界NO1の産油国になりました。筆者/青草新吾は南鳥島の深海レアアースに同様の期待を寄せています。
これらの資源を工業材料にするのが素材産業や加工産業です。JFEスチール社長の北野嘉久氏が日経2019.6.5付で「中国勢が強いのは、汎用の鋼材。鉄は装置さえ揃えば同じレベルの製品がつくれるほど簡単でない。自動車鋼板は加工ノウハウの固まり。質の高いデータと最新のAIを組合せてリードしていく。」と述べてられましたが、日本の会社が強いのはこの極める制御技術です。装置産業が株価で反映されにくかったのは、規模の経済で汎用材も生産しないといけないからです。しかし世界需要が拡大していくことで、汎用材の量への依存度が低下していくことで株価も上がっていくと思います。筆者/青草新吾は、JFEの株主ですが、今や高配当株の有力銘柄入りし、有難い存在です。確か、20年前の日産のゴーン改革で、日産自動車の調達から跳ね飛ばされた当時の日本鋼管が川崎製鉄にアプローチして2002年に合併した当時のストーリーを思いだすのですが、日本の会社はどん底まで追い込まれると火事場の馬鹿力を発揮するものだとしみじみ感じ入ります。
工業材料を部品にするのが部品産業ですが、日本は電子部品、特に回路部品のLRCといわれるコイル(L)・抵抗器(R)・コンデンサ(C)が圧倒的に強い。台韓の追い上げもありますが、高機能な精密部品は日本が数歩リードしているように見えます。強い理由は、例えば村田製作所のように、材料も調合も加工も加工機械もすべて内製しているからです。巨大産業でもなく、こじんまりの巨大でない産業で変化も激しくて、そうならざるをえないのですが、結果的には外部からは完全なブラックボックス化が実現できています。その村田製作所も高周波領域での事業強化で、2017年にソニーから電池事業を買収し、樹脂多層基板のメトロサークを立ち上げました。世界的にも稀な高周波電子部品の総合企業が誕生しつつあるのかもしれません。このあたりは後日にまた投稿します。
材料と中間財を総合してシステム活用するのが耐久生産財のFAシステムやロボットなどの産業と、耐久消費財の自動車などです。この領域も日本には強い会社が揃ってます。・・・FAシステムやロボットでは、安川電機が中国の同業へのサーボモータや汎用インバータの販売にも力を入れています。ライバルにもコア部品を供給しながら市場全体の拡大を目指す戦略です。
中国は世界最大の自動車市場にのし上がったのですが、共産党の衰退が潮流にあるならば、この中国の自動車産業を取り巻く力関係も大きく変わっていくことになります。自動車産業の競争力を高めていこうとして、中国では電気自動車(EV)の産業育成を急いでいます。しかしここでパワーバランスが変われば、官が退いて民が前にでてくるようになると、エコカー全般では、日本の自動車会社からの支援は必須です。多少の混乱とともにビジネスチャンスが多々でてくるものと期待できます。
最後に日本の産業の弱点です。広範にシステム化するシステム製品が弱い。216 [ 2008.10.23 ] や 214 [ 2018.9.15 ]、旧くは2006.7.23 [ 米国が強い産業でシステム製品 ] で前述しましたが、学校教育や、国民性や歴史の積み重ねなどからのギャップがあるように思います。まずは日本が強い製品群を複合化させたシステム製品的なものが増えていけばと期待してます。
221 令和は「会社組織を活かした自営業的働き方」でより幸福に
「会社組織を生かせない日本社会」を象徴する産業が漁業です。同じ漁業大国なのに、ノルウェー漁業者の一人当たり生産量は日本の8倍で、平均年収も日本の3-4倍の9百万円、40歳以下の若者が全体の4割で、人気の職業です。この日諾 ( ノルウェー ) 両国の漁業者格差の原因は一言でいえば「ノルウェーの会社組織と、日本の既得権組織の、両者の創造性と生産性の格差」です。日本の既得権組織の構造は「農水省(経営者)>漁業組合(管理職)>漁業者(作業者) 」です。
「漁業はノルウェーに学べ、農業はオランダに学べ」を、212 [ 2018,7,7 働き方を戦後日本型から先進国型へ ] で引用しました。これからの日本にとって食品産業はとても有望です。漁業の場合には、加工設備や加工食品用中間財のような生産財で取引される割合は大きくはないのかもしれませんが、商材や事業の競争力の点ではとても参考になります。
ノルウェーの漁業は「起業家のイノベーティブな創意工夫」」と「事業家の組合せによる事業拡大」が能力発揮を続けている状態です。反対に、日本は「農水省( 管理者 ) >漁業協同組合( 中間管理職 ) >漁業者 (作業者 ) 」といった規制型既得権モデルの典型事例です。174 [ 2010.12.18 農業大国ニッポンへの夢 ]で指摘した「 農水省>農協>農家」の発展を妨げる管理過剰でマーケティングなど工夫や朝鮮を阻害する組織の典型事例です。
新幹線岡山駅の隣接エリアで「海水魚と淡水魚が同じ水槽の同じ水の中で泳いでいる」のをみて感動したことがあります。岡山理化大学 専門学校のアクアリウム学科 研究チーム が発明した古代水( 好適環境水 )だそうです。他にも日経新聞2019.4.2付が報道していた「日本水産と日立造船の生食サバの陸上養殖を事業家」、近大マグロなど、技術面では期待できることが多々あるのに、産業の全体としては規模が大きなだけで貧しくて脆弱で残念な日本の水産業・・。活性化していく一番の方法は「資本主義と株式会社の適正な導入」です。漁業権の再配分と資源管理では福岡県の成功事例( 週刊ダイヤモンド 2011.10.8 )もあります、行政も大規模な中央集権から、地域の事情に応じやすい道州制の方がベターです。
太平洋戦争の敗戦後、生き残った明治・大正・昭和一桁の世代の方々が、戦後復興を成し遂げてくれました。その復興世代の子供世代の「団塊世代を中心とした全共闘ノンポリ世代」には少数派としては、世界レベルで見劣りしない事業家・経営者が多数輩出されています。しかしこの世代の多数派は、大企業病に感染してバブル崩壊以降の競争力低下をもたらした方々が多かったように感じます。大企業病で硬直化し、他人を管理する仕事ばかりが増えた反面ではイノベーションを阻害した側面が強かったからです。
大企業病とは、オムロン創業者が言い出した日本特有の表現ですが、筆者/青草新吾は、江戸時代以降の閉鎖的タテ序列偏重に、戦後の雇用システムの行き過ぎ( 一括採用・年功序列・終身雇用 から生まれやすい悪平等や画一主義)と、世界共通の官僚組織の逆機能が、複雑に絡み合ってもたらされた非効率な会社組織のことだと、経験的にも理解してます。
失われた20年を象徴する「就職氷河期世代」とは、一括採用と年功序列の犠牲者だったという側面もあります。つまり一括採用で中高年になった団塊と全共闘ノンポリ世代の雇用を維持するために、新卒の一括採用を1993年から2004年頃の約10年間も急減させたことで発生したものです。
金子勝 慶大名誉教授の寄稿によると「日本のGDPは、平成9年 (1997)でピークアウトして停滞し、名目賃金( 現金給与総額 )も同372千円が平成27年(2015)の314千円へと84%に、実質賃金指数でも同年を100とした場合に88.7へと収入が減っている。世帯所得も平成7年( 1995 )の 5,5百万円から平成27年( 2015 )には 4.27百万円へと減少」しています。
小西美術工藝社の社長/アトキンソン氏は「日本の経営者は、世界4位の優秀な人材を使って、一人当りGDPが世界28位で先進国最低の生産性しか生み出せていない。GDP以外でも、日経新聞の報道では、会社のPBR、最低賃金、勤労者1時間当たりの収入の伸び率で、日本だけがマイナスだそうです。稼ぐに追いつく貧乏なしといいますが、日本の会社の稼ぐ力を先進国並みに再生することが必要だと感じます。そのためにはイノベーティブな起業家を増やし、事業を大きくする事業家を増やし、安定して成長して事業継続できる経営者を増やしていくことが望まれます。
神戸大学教授/ 三品和広氏がVOICE2019.5月号で「 日本の経営者の質を上げていく必要がある。サラリーマンポストの上りに過ぎないような人が多い。米欧の今の経営者は、若いころから経営者になるための投資と時々のリスクもとってきた能力と実績が図抜けた人が多い。比較すると、今の日本の経営者の報酬は高すぎるのではないか」と指摘しておられましたが、筆者/青草慎吾も同感です。
団塊世代の少数派例外の稀有な例では、日本電産の永守重信 創業者( 1944生まれ/ 現74歳 )、ユニクロの柳井正 会長 (1949生まれ/現70歳 )、ライフネット生命創業者で現立命館アジア太平洋の出口治明 学長 ( 1948生まれ/ 現71歳 )等々多数おられますが、若手の起業家も世界的に羽ばたきそうな頼もしい方々が増えてきているような気がします。
テレビ東京モーニングサテライトあたりからの受け売りですが、慶大発ベンチャーで「タンパク質から作る人工クモ糸」の Spiber 株式会社、紙の代替で「石灰から作るストーンペーパーLIMEX」の 株式会社TBMなど。特にTBMの場合は、34歳で起業したTBM社/ 山崎敦義(のぶよし)氏は中卒。台湾の方から教えてもらったストーンペーパーで輸入から入り、元日本製紙専務の角裕一郎さんと出会って応援メンバーと品質を獲得し、今は伊藤忠やDNP、凸版、三洋化成、GoldmanSacks、JR東日本スタートアップ、SBI から1百億円の投資を集めて、事業が本格化するそうです。
本日は平成最後の日。明日から令和です。平成は、平和であったけれども、起業家や事業家、そして訓練された経営者、が足らなくて、政治は政争ばかりで、未熟な資本主義と会社が多くて、明治・大正・昭和一桁の戦後復興世代が残した「世界から賞賛された偉業の遺産」を食いつぶしてしまった感があります。今の日本は、稼ぐ力が弱ってしまったので、格差よりも貧困化が問題です。氷河期世代や母子家庭の苦境を緩和することを急ぐべきです。でないと日本人全員に降りかかってきます。本当に困ってる方々を助けることが結局は自分を助けることにもなります。
国民全体が豊かになるには、競争で富をもたらす資本主義と、その主要なしくみである会社を正しく機能させて、経済を強くしていくしかありません。働き方と組織の世の趨勢は、20世紀型組織( 階層・規律・統制 )から 21世紀型組織 ( 自立・分散・協調 )へと変化が続きます。働き方も、自営業的となり、収益をもたらすクリエイティブな能力を求められる職業では、目的に応じて離合集散を繰り返すプロジェクト的なチーム仕事が増え、そこでは、相互補完でお互いの能力をシェアし合う協調がベースとなってゆきます。明日からの令和は、職業人にとってより良き時代となりますよう・・。