青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

221 令和は「会社組織を活かした自営業的働き方」でより幸福に

  「会社組織を生かせない日本社会」を象徴する産業が漁業です。同じ漁業大国なのに、ノルウェー漁業者の一人当たり生産量は日本の8倍で、平均年収も日本の3-4倍の9百万円、40歳以下の若者が全体の4割で、人気の職業です。この日諾 ( ノルウェー ) 両国の漁業者格差の原因は一言でいえば「ノルウェーの会社組織と、日本の既得権組織の、両者の創造性と生産性の格差」です。日本の既得権組織の構造は「農水省(経営者)>漁業組合(管理職)>漁業者(作業者) 」です。

  「漁業ノルウェーに学べ、農業はオランダに学べ」を、212 [ 2018,7,7 働き方戦後日本型から先進国型へ ] で引用しました。これからの日本にとって食品産業とても有望です。漁業の場合には、加工設備や加工食品用中間財のような生産財で取引される割合は大きくはないのかもしれませんが、商材や事業の競争力の点ではとても参考になります。

   ノルウェーの漁業は「起業家のイノベーティブな創意工夫」」と「事業家の組合せによる事業拡大」が能力発揮を続けている状態です。反対に、日本は「農水省( 管理者 ) >漁業協同組合( 中間管理職 ) >漁業者 (作業者 ) 」といった規制型既得権モデルの典型事例です。174 [ 2010.12.18 農業大国ニッポンへの夢 ]で指摘した「 農水省>農協>農家」の発展を妨げる管理過剰マーケティングなど工夫や朝鮮を阻害する組織の典型事例です。

   新幹線岡山駅の隣接エリアで「海水魚淡水魚同じ水槽の同じ水の中で泳いでいる」のをみて感動したことがあります。岡山理化大学 専門学校アクアリウム学科 研究チーム が発明した古代水( 好適環境水 )だそうです。他にも日経新聞2019.4.2付が報道していた「日本水産日立造船生食サバ陸上養殖を事業家」、近大マグロなど、技術面では期待できること多々あるのに、産業の全体としては規模が大きなだけで貧しくて脆弱で残念日本の水産業・・。活性化していく一番の方法は「資本主義株式会社適正な導入」です。漁業権の再配分資源管理では福岡県の成功事例( 週刊ダイヤモンド 2011.10.8 )もあります、行政も大規模な中央集権から、地域の事情に応じやすい道州制の方がベターです。

  太平洋戦争の敗戦後、生き残った明治・大正・昭和一桁の世代の方々が、戦後復興を成し遂げてくれました。その復興世代の子供世代の「団塊世代を中心とした全共闘ノンポリ世代」には少数派としては、世界レベルで見劣りしない事業家・経営者が多数輩出されています。しかしこの世代の多数派は、大企業病に感染してバブル崩壊以降の競争力低下をもたらした方々が多かったように感じます。大企業病で硬直化し、他人を管理する仕事ばかりが増えた反面ではイノベーションを阻害した側面が強かったからです。

        大企業病とは、オムロン創業者が言い出した日本特有の表現ですが、筆者/青草新吾は、江戸時代以降の閉鎖的タテ序列偏重に、戦後の雇用システムの行き過ぎ( 一括採用・年功序列・終身雇用 から生まれやすい悪平等画一主義)と、世界共通の官僚組織の逆機能が、複雑に絡み合ってもたらされた非効率な会社組織のことだと、経験的にも理解してます。

  失われた20年を象徴する「就職氷河期世代」とは、一括採用と年功序列の犠牲者だったという側面もあります。つまり一括採用で中高年になった団塊全共闘ノンポリ世代の雇用を維持するために、新卒の一括採用を1993年から2004年頃の約10年間も急減させたことで発生したものです。

  金子勝 慶大名誉教授の寄稿によると「日本のGDPは、平成9年 (1997)でピークアウトして停滞し、名目賃金( 現金給与総額 )も同372千円が平成27年(2015)の314千円へと84%に、実質賃金指数でも同年を100とした場合に88.7へと収入が減っている。世帯所得も平成7年( 1995 )の 5,5百万円から平成27年( 2015 )には 4.27百万円へと減少」しています。

  小西美術工藝社の社長/アトキンソン氏は「日本の経営者は、世界4位の優秀な人材を使って、一人当りGDPが世界28位先進国最低の生産性しか生み出せていない。GDP以外でも、日経新聞の報道では、会社のPBR最低賃金勤労者1時間当たりの収入伸び率で、日本だけがマイナスだそうです。稼ぐに追いつく貧乏なしといいますが、日本の会社の稼ぐ力先進国並みに再生することが必要だと感じます。そのためにはイノベーティブな起業家を増やし、事業を大きくする事業家を増やし、安定して成長して事業継続できる経営者を増やしていくことが望まれます。

  神戸大学教授/ 三品和広氏がVOICE2019.5月号で「 日本の経営者の質上げていく必要がある。サラリーマンポスト上りに過ぎないような人が多い。米欧の今の経営者は、若いころから経営者になるため投資と時々のリスクもとってきた能力と実績が図抜けた人が多い。比較すると、今の日本の経営者の報酬高すぎるのではないか」と指摘しておられましたが、筆者/青草慎吾も同感です。

   団塊世代の少数派例外の稀有な例では、日本電産永守重信 創業者( 1944生まれ/ 現74歳 )、ユニクロ柳井正 会長 (1949生まれ/現70歳 )、ライフネット生命創業者で現立命館アジア太平洋の出口治明 学長 ( 1948生まれ/ 現71歳 )等々多数おられますが、若手の起業家も世界的に羽ばたきそうな頼もしい方々が増えてきているような気がします。

           テレビ東京モーニングサテライトあたりからの受け売りですが、慶大発ベンチャーで「タンパク質から作る人工クモ糸」の Spiber 株式会社、紙の代替で「石灰から作るストーンペーパーLIMEX」の 株式会社TBMなど。特にTBMの場合は、34歳で起業したTBM社/ 山崎敦義(のぶよし)氏は中卒。台湾の方から教えてもらったストーンペーパーで輸入から入り、元日本製紙専務の角裕一郎さんと出会って応援メンバーと品質を獲得し、今は伊藤忠DNP凸版三洋化成GoldmanSacksJR東日本スタートアップSBI から1百億円の投資を集めて、事業が本格化するそうです。

  本日は平成最後の日。明日から令和です。平成は、平和であったけれども、起業家事業家、そして訓練された経営者、が足らなくて、政治は政争ばかりで、未熟な資本主義と会社が多くて、明治・大正・昭和一桁の戦後復興世代が残した「世界から賞賛された偉業の遺産」を食いつぶしてしまった感があります。今の日本は、稼ぐ力が弱ってしまったので、格差よりも貧困化が問題です。氷河期世代や母子家庭の苦境を緩和することを急ぐべきです。でないと日本人全員に降りかかってきます。本当に困ってる方々を助けることが結局は自分を助けることにもなります。

  国民全体が豊かになるには、競争で富をもたらす資本主義と、その主要なしくみである会社を正しく機能させて、経済を強くしていくしかありません。働き方と組織の世の趨勢は、20世紀型組織( 階層・規律・統制 )から 21世紀型組織 ( 自立・分散・協調 )へと変化が続きます。働き方も、自営業的となり、収益をもたらすクリエイティブな能力を求められる職業では、目的に応じ離合集散を繰り返すプロジェクト的チーム仕事が増え、そこでは、相互補完でお互いの能力をシェアし合う協調がベースとなってゆきます。明日からの令和は、職業人にとってより良き時代となりますよう・・。