青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

222.米中摩擦の中でも「稼ぐ強い生産財」を考える

3年前の今頃、メディアの多くが「トランプ当選はない」との報道でした。筆者は「違和感を感じた」のですが結果は「トランプ大統領誕生」でした。今回の米中摩擦についても多数派報道のような「拮抗する衝突」ではなくて「パワーバランスの変化。潮流は共産党衰退も含めて大転換。日米中ともにビジネスチャンスが多々」とみます。

  ビジネスチャンスが多々な事業分野は、日本をベースに展開していく上では、どうしても「目の前の見える素材極めていく領域」になると考えますが、後述します。

  2016年の米大統領選では、日本のメディアの殆どが「トランプ大統領ありえず」との報道でした。例外は、木村太郎さんや、筆者/青草新吾が201[ 2016.7.31 英国EU離脱と米国大統領選 ]で引用させてもらった江戸川大学名誉教授の高山眞知子さん(トランプはバカじゃない)などの少数派でした。青草新吾はこの方々の見立ては外れていないと感じました。理由は当時も記載しましたが「米国の潮流が変わりつつある。米国のメディアとインテリの多数派リベラル国際主義への偏りが大きい。日本のメディアはそこからの翻訳を伝えているだけが多いのでは。」と感じていたからです。

  米合衆国は多人種多民族世界の縮小版ですから、幾つかの米国があると考えるとわかりやすいです。世界を席巻した都市部やCNNのリベラルな米国に対する歴史の揺り戻しで「俺がアメリだ」の中西部Foxニュースからの異議申し立てで流れに乗ってせりでてきたのがトランプ大統領といえます。米国の場合は、会社でいえば起業家タイプパワフルなリーダー押し出す社会です。そのことで「回りまわって結局は自分も得をする」という資本主義と自由主義の考え方が根付いているからだと思います。

  中国同様に多民族国家なのですが、米国と違うのは世界の縮小版ではなくて、国というよりも地域です。中国共産党と官僚、一般大衆がばらばらです。中華民国を建国した孫文の嘆き(漢人砂のような民族 )を142 (2009.2.14)で前述しました。中華民国以前は国家というよりはすべて王朝です。米国と中国のリーダーシップの違いと、その時々のリーダーを生み出す潮流の変化を見続ける必要あります。

  中国大陸の歴代の王朝で名君 といわれるのは康熙帝(こうきてい Elhe taifin)など満州族の清が最多で、漢族では漢の起業家の劉邦くらいのようです。満州族は「跡継ぎは親戚から一番優秀な人を選ぶ風習」があって、長男や子供に限定しなかったようで、このあたりは日本企業のキッコーマンサントリートヨタと似ています。

  逆にいうと、中国は、戦後の日本と同様で「優秀な人材を潰す」傾向が強い社会のようです。拮抗する勢力の真空地帯潰されなかった者が生き残って権力を手にする。今の習近平 ( Xi Jinping ) さんもこの類のように感じます。反対に、才覚溢れ出て、潰されてしまったのが薄熙来(はくきらい Bo Xilai)さん・・。何がいいたいかといいますと、習近平さんが毛沢東( Mao Zedong )の真似事をしたりで完全独裁者のようだとの報道が増えているのですが、取材力に乏しい日本のメディアの報道外れていること多しです。実は習近平さんは裸の王様になりつつあり、中国大陸で繰り返されてきた歴史のように、習近平王朝の遠く離れたところでは、様々なパワーが勃興して、共産党ジーピークアウトして分裂衰退の方に向かいだしているのではなかろうか・・そう感じることが増えてきているように思います。米国の潮流が変わって米国が仕掛けだした中国との摩擦で、中国共産党の衰退の潮流がとめどもなく大きくなっていく可能性あり、とみます。もしそうならば、国営企業を中心とした中国の産業も「民」中心に変わっていきます。変化はピンチですがチャンスでもあります。

  ここで本題の「稼ぐ生産財ビジネス」を考えてみます。日本の会社として米中摩擦の中で稼ぎ続ける生産財であるためには、対米と対中の両方で強い競争力を持っていることが必要です。以下で生産財全般を俯瞰してみます。

  生産財ビジネスは「資源活用」が主な領域です。川上からみていきますと、最初は資源エネルギー産業です。資源エネルギーから素材や工業材料、部材や部品など中間財を経て消費財へと付加価値を高めていきます。これらの多段階なサプライチェーン耐久生産財の製造設備も供給されます。

  日本が強いのは「再生資源の回収」です。それまで捨てられていたもの利用できなかたもの資源化する産業モデルです。電子基板から貴金属などの有価値材を回収したりの都市鉱山や、鉱山で捨てられて放置されてきた低品位から精密抽出・精錬はとても強い。世界6位海洋面積を持つ海洋大国としては、東京都の南鳥島の周辺海底のレアアースなど、海底からの採取技術も有望です。米国は石油・ガスをシェール層から採掘する技術が発明されたことで石油ガスのビジネスでイノベーションを起こし、今や世界NO1の産油国になりました。筆者/青草新吾は南鳥島の深海レアアース同様の期待を寄せています。

  これらの資源を工業材料にするのが素材産業や加工産業です。JFEスチール社長の北野嘉久氏が日経2019.6.5付で「中国勢が強いのは、汎用の鋼材。鉄は装置さえ揃えば同じレベルの製品がつくれるほど簡単でない。自動車鋼板は加工ノウハウの固まり。質の高いデータと最新のAIを組合せてリードしていく。」と述べてられましたが、日本の会社が強いのはこの極める制御技術です。装置産業株価で反映されにくかったのは、規模の経済で汎用材も生産しないといけないからです。しかし世界需要が拡大していくことで、汎用材の量への依存度が低下していくことで株価も上がっていくと思います。筆者/青草新吾は、JFEの株主ですが、今や高配当株の有力銘柄入りし、有難い存在です。確か、20年前の日産のゴーン改革で、日産自動車の調達から跳ね飛ばされた当時の日本鋼管川崎製鉄にアプローチして2002年に合併した当時のストーリーを思いだすのですが、日本の会社どん底まで追い込まれると火事場の馬鹿力を発揮するものだとしみじみ感じ入ります。 

  工業材料を部品にするのが部品産業ですが、日本は電子部品、特に回路部品のLRCといわれるコイル(L)・抵抗器(R)・コンデンサ(C)が圧倒的に強い。台韓の追い上げもありますが、高機能な精密部品は日本が数歩リードしているように見えます。強い理由は、例えば村田製作所のように、材料調合加工加工機械もすべて内製しているからです。巨大産業でもなく、こじんまりの巨大でない産業変化も激しくて、そうならざるをえないのですが、結果的には外部からは完全なブラックボックス化が実現できています。その村田製作所高周波領域での事業強化で、2017年にソニーから電池事業を買収し、樹脂多層基板メトロサークを立ち上げました。世界的にも稀な高周波電子部品の総合企業が誕生しつつあるのかもしれません。このあたりは後日にまた投稿します。 

  材料中間財総合してシステム活用するのが耐久生産財FAシステムロボットなどの産業と、耐久消費財自動車などです。この領域も日本には強い会社が揃ってます。・・・FAシステムロボットでは、安川電機が中国の同業へのサーボモータ汎用インバータの販売にも力を入れています。ライバルにもコア部品を供給しながら市場全体の拡大を目指す戦略です。

  中国世界最大の自動車市場にのし上がったのですが、共産党の衰退が潮流にあるならば、この中国の自動車産業を取り巻く力関係も大きく変わっていくことになります。自動車産業の競争力を高めていこうとして、中国では電気自動車(EV)の産業育成を急いでいます。しかしここでパワーバランスが変われば、官が退いて民が前にでてくるようになると、エコカー全般では、日本の自動車会社からの支援必須です。多少の混乱とともにビジネスチャンスが多々でてくるものと期待できます。

  最後に日本の産業の弱点です。広範にシステム化するシステム製品が弱い。216 [ 2008.10.23 ] や 214 [ 2018.9.15 ]、旧くは2006.7.23 [ 米国が強い産業でシステム製品 ] で前述しましたが、学校教育や、国民性や歴史の積み重ねなどからのギャップがあるように思います。まずは日本が強い製品群を複合化させたシステム製品的なものが増えていけばと期待してます。