青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

105-1/2 厄介者の権力とパーソナリティ障害

組織論でいうところの厄介者がパーソナリティ障害(認知行動障害)と重なっている事例も多々あるようです。

下述の自己愛的病的性格者と113で前述の一ツ橋大学大学院教授/沼上幹氏が研究発表された[誹謗中傷をして回る厄介者]や[外部に獰猛なトラを仕立て上げて自分を重要人物に脚色するキツネ]と重なる部分があるようです。下述臨床心理士/矢幡洋氏は、組織を蝕む俺サマ系反社会性サディズム自己愛性とし、組織崩壊への毒性という点で最も危険なのが自己愛性である、と著書*1で研究発表しておられます。
組織を蝕む自己愛的病的性格者とは、精神科用語で自己愛妄想型人格障害とか自己愛性パーソナリティのことで、矢幡洋氏は「妄想の中のビッグでグレートなエライ自分を、現実の中で演出することへの執心から、もっともらしい立派なことをいうが、そのための日々の努力はさほど行っておらず、内心では組織の目標を軽んじ、エライ自分を見せることにエネルギーを消費しているため、何事も仰々しくしてしまうことや、自分勝手に作ったシナリオに敵対すると勝手に決め付けた他者には被害妄想の裏返しで誹謗中傷を行ったりで、組織の生産性低下を引き起こす病的性格者。」です。キーワードは自己演出もったいぶり仰々しさ、であり、絶対にできないのが自然体である、と記述しておられます。職場におけるイメージは「自分を立派に見せるスローガン仰々しい計画論議は大好きだが、泥臭い現実検討が苦手なのでPDCAが回せないし、具体策も出せない。大言壮語の立派な目標に見合う努力もしていないから成果もでない。うまくいかない理由付け他人への非難を始めるが、事情をよく知らない第三者誹謗中傷を振りまいて歩く性癖。」が共通項のような気がします。
米国精神医学会DSM-4は、人格障害3カテゴリー10タイプに分類(次頁115で後述)してますが、臨床心理士/矢幡洋氏は上述著書で「(人格障害のタイプの中で)組織を壊すワーストワンは、自己愛上司(幹部)である。どんな組織であっても、自己愛上司が居座ると、私的利害を追及する組織に変質し、(組織を支えている)前向きな仕事志向の社員達が士気低下してしまうのだ。自己愛上司によって私たちの社会は一体どれほどの生産性と活力とを失っているのであろうか。自己愛タイプの人々は最初の印象演出は得意である。最初に振りまくのは耳に心地良い理屈や(学歴や有名企業や有名人との関係などの)外見的見てくれである、日本ではこの最初のイメージに惑わされて、重要な地位をあてがった後での実行力不足わがままぶりという実態との落差による社会的損失は今後もますます大きくなっていくことであろう。」と警鐘を発しておられます。一方で、「米国では従業員支援サービスという分野が盛んで、自己愛性パーソナリティの治療でも、自己愛上司を抱える上司が、自己愛上司本人に従業員支援プログラムのカウンセリングを受けるよう指示し、指示された自己愛上司が渋々やってきたという事例が多い。」と改善プログラムのヒントも提起しておられます。
矢幡洋氏は自己愛上司妄想深層心理に関し「自分はふんぞりかえっているだけで、大変な価値を持っている存在なのだ、周囲自分の期待通りに動いて当然のこととして期待する。自分の方は、なんの努力もしない。ルールには無頓着で、自分は特別な人間なのだから、一般のルールには縛られないと信じていたりする。他者とは自分のツールであって、自分を賞賛し、欲求を満たしてくれるもの。」とし、日常行動の特徴は「自己愛性パーソナリティの基本的な精神はワガママである。だから日々の振る舞いは、自分一人はルールに従わなくてよい人間であるかのように勝手気ままに振舞い、目下の人間自分の私物であるかのように意のままに使おうとする。仕事スタイルはタスクよりもスタンドプレーである。タスクの目標実現よりも自分をどう見せるかに執心してしまう。いちいちもったいぶって仰々しくしてしまう。言うことは立派だが、実行力は不足している。組織目標を実現するために自分からは動かないスペシャルな俺サマはスペシャルな仕事が似つかわしいと思うから、雑用をやらない。そのくせ細かいことまで口やかまし言う。物事がうまくいかない時、自分の思い通りにならないすべて他人や機構のせいにしてしまう。」と様々な観察結果から整理しておられます。矢幡洋氏による自己愛型の病的性格者による組織崩壊のイメージは、次頁115で記述します。

*1:「自己愛上司があなたを悩ます」矢幡洋ISBN:4896919173