青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

120-1/2 ISO9001とマネジメントシステム

日本型組織には長短紙一重の共同体的要素から派生する短所が内在することも多いのですが、短所への歯止めという点では、ISO9001のようなマネジメントシステムは、とても有効性が高い経営ツールといえます。

TQMISO9001は、欧米マネジメント概念(考え方)と日本小集団活動現場改善活動の相互作用でスパイラル進化が進んできました。日本型組織は、長所と短所が紙一重の共同体的要素を持つ運用型組織なので、紙一重の共同体的要素を固有の強みに転化できている優良な組織もあれば、共同体化が回り始めている組織も多々あります。一部の強い組織を除けば、多数派の並みの日本型組織は共同体化による退廃や頽廃のリスクを抱えています。毒が回って退廃から頽廃まで進んでしまったのが厚労省社会保険庁などの官公庁の官僚組織労働組合(官公労)、裏金作り岐阜県大阪市役所出勤不正奈良市役所などです。競争に晒される民間の私企業であれば業績不振で淘汰されますが、税金で賄われる公的組織は国民への付回しという負担転嫁が簡単にできるので、なかなか淘汰が進みません。これらの退廃あるいは頽廃した組織に共通するのはマネジメントつまり組織目的に向けての経営機能していないということです。
運用型組織を形成する日本人融通無碍精密化が得意ですが、大きな組織を動かすマネジメントが今ひとつ、一方で、制度型組織欧米は全体をもれなくだぶりなくMECE(ミッシー)にシステム化したり大きな組織を動かすのが得意ですが、精密化はいまひとつ・・・。米国生まれQC日本で草の根の小集団活動として進化し、更に本家の米国に里帰りしてからはマネジメントシステムのTQMスパイラル進化し、再び日本に戻ってきました。モトローラ創業家のロバートガルビン氏は著書*1で「1980年代のモトローラにとって最も輝かしい出来事の一つが、マルコム・ボルドリッジ経営品質賞の受賞だ。この賞は産業競争力の強化を掲げるレーガン政権が創設した。モデルとなったのは日本のデミング賞で、賞の名前は不慮の事故でなくなったボルドリッジ前商務長官にちなんだ。88年、われわれは第1回の受賞企業になり、授賞式では私がレーガン大統領から祝福を受けた。日本企業から刺激を受け、全社規模でQCを展開したのは約十年前。その間、品質管理手法着実に進化を遂げ、それをシックスシグマとして体系化した。・・・QCを推し進めると、工場の製造ライン上だけでは完結しない運動だということがわかる。社内の間接部門はもちろん、部品メーカー、物流会社など取引先とも理念を共有しなければならない。」とQCからマネジメントシステムへのスパイラル進化について述べておられます。
筆者/青草新吾は、マネジメントという考え方(概念)は、”In God We trust”の契約と個人主義に根ざす西欧文明だからこそ生まれた考え方ではあるものの、日本型組織の共同体的要素弊害への歯止めをかけるツールとしての有効性が高いと考えています。ISO9001は、英国BS5750が欧州で発展したものです。筆者/青草新吾がISO9001で目を通した単行本の中では、枚方市の桐野正義氏/元サンスター役員の著書*2がBS5750まで記述していました。曰く「日本の品質と顧客志向に目をつけたのがサッチャー首相だった。日本品質指向顧客指向は、英国によって見事に変身した。欧米の契約社会であればこその発想とマネジメントという手法を組合せてISOの前身であるBS5750が制定された。欧米のようにマネジメントという思想やトップダウン方式が底流にある社会には、TQCという考え方や手法はとても入り込めない。日本のように教育レベルの高い国でこそTQC普及したが、世界各国共通にできることではないのだ。・・・・極端な言い方をすると、ISOは企業がマネーをマネジメントするシステムと割り切って考えた方がうまくいく。・・日本では、管理職責任と権限を明確にし、個々の仕事の内容をはっきりさせ、仕事できたできなかったかを正しく評価する運営をしない限り、ISOの効果は上がらない。」と記述しておられました。
マネジメントとは、所与の資源(インプット)を活かして組織の目的である付加価値(アウトプット)を実現することですから、管理ではありません。日本語では経営に相当します。マネジメントに近い日本語は経営です。マネジメントという概念が、管理と誤訳されてしまったことで、日本人にはとても判りにくいものとなってしまいました。マネジメントとは組織目的実現のための経営である、と理解すれば判りやすいものとなります。この経営を意味するマネジメントは、PDCAという概念の発見で可視化(見える化)が容易になりました、PDCAはデミング氏が発見したらしいのですが、旧くは織田信長などもPDCAを回していたものと思われます。歴史的には多くの指導者がPDCAを回していたようなので、デミング氏の功績は、記述されたテキストとして概念化してくれたということだと思います。このPDCAというのは簡単なようで、優良組織を除く並みの多くの日本型組織が回せていないのが実情かと思います。次頁では、矮小化されることが多いISO9001の運用の問題点について記述してみます。

*1:「日本人に学び日本に挑む」ロバートガルビン著 ISBN:4532190185

*2:「ISOを活かした戦略的経営」桐野正義著 ISBN:4835554221