152-1/2. 電動車(xEV)向け車載デバイスと部材
ハイブリッド車(HEV)と電気自動車(EV)で使われる車載デバイスと部材の産業が拡大中です。
三菱自動車が量産型電気自動車(EV)の“アイ・ミーブ”の市場投入を発表していますが、半導体産業新聞2009年7月1日付は「国内販売を7月下旬からスタート。09年度は法人や自治体向けに14百台を見込む。個人向けは10年4月からで、10年には世界で5千台の販売を見込む。補助金の組合せで実質3.2百万円で購入できる。走行距離は160Km。充電時間は200V電源で約7時間。搭載するリチウムイオン電池は、88個の電池セルを接続して、車体床下の中央部に配置した。最新のパワー半導体などで構成されたインバータやDC/DCコンバータを搭載。独自開発の永久磁石式同期型モーターを採用。回生ブレーキ機能で、モーターを発電機としても働かせ回収した電気エネルギーを駆動用バッテリーに充電できる。このほかLEDヘッドライトを搭載。ロービーム部に3個の白色LEDを使用した。」と紹介していました。
ハイブリッド車の派生需要では、筆者/青草新吾にとって目新しかったのは、新型プリウス(第三世代)のルーフに搭載された太陽電池です。昼の炎天下の駐車時に、車体ルーフの太陽電池が発電する電力で、社内換気を行い、社内温度の上昇を抑えるというものです。電波新聞2009年5月21日付は「京セラは、トヨタ自動車が今月18日に発売開始した新型プリウスのオプションシステムである“ソーラーベンチレーションシステム”に太陽電池モジュールを供給する。見た目の美しさにおいても高いレベルが求められ、色調は均一性のある濃紺色を実現した。同社独自のRIE(リアクティブ・イオン・エッチング)でプラズマと反応性ガスによって表面に微細な凹凸をつける技術で、表面に反射する太陽光をこれらのエッジで吸収し、出力・変換効率の向上につなげ、見た目の美しさも実現した。太陽電池セルは滋賀八日市工場、太陽電池モジュールは三重伊勢工場で生産する。太陽電池セルの変換効率16.5%。」と報道していました。また新型プリウスとへの採用では、長野日本無線のトロイダルコイルについて電波新聞2009年6月29日付が「トロイダルコイルは従来、手巻き作業を行ってきたが、長野日本無線は、トロイダルコイルの自動巻線機の開発に成功し、ハイブリッド車向けに同機でコイルの量産を開始した。新型プリウスとレクサスに採用された。車載用途に年間1百万個を供給できる生産体制を整える予定。同機は、コイルの仕様に合わせ、直径20-30ミリメートル程度の小さなコアに直径1-2ミリメートル程度の太線の高精度な自動巻きを、独創的な巻線方式の採用により世界で初めて可能にした。同社は、“平角電線の特殊巻き”と“太線トロイダルの自動巻き”をキー技術に、さらに特徴のある巻線部品の開発を行い、各種ノイズ対策部品のラインアップを拡充する。業務用空調機、FA機器、コンピュータ周辺機器などの産業機器用電源およびインバータについても一層の大電流化が求められ、回路の小型化・高精度化に伴い、ノイズ対策の重要性と難易度が増すことが予想されている。」と紹介していました。
ハイブリッド車向け部材の派生需要に関し日経新聞2009年4月24日付は「ホンダのインサイト向けに内装部品を供給する朝日電機化成(大阪市)の原直宏社長は“工場はフル稼働。三月の売上高は前年に比べて80%増えている。”という。ハイブリッド車はガソリン車より車内に多くの電気が流れ帯電しやすい。同社は水回り用部品製造で導電性を持たせた樹脂加工を手掛けた経験を踏まえ、新技術を開発した。
深絞り加工の朝田金属工業(大阪市)は、窓を開閉する小型電動モーター用など11種類のハイブリッド車向け部品生産を始めた。同社の坂井康恩専務は“車全体が電動で、余計な電圧負荷が掛からないよう部品の小型化が必要。一枚の板から携帯電話用のミリ単位の超小型部品を作る技術を活用した。”という。」と、また日経新聞2009年2月25日付は「名古屋市の生方製作所は、ハイブリッド車向けの絶縁端子を増産する。4-5月をメドに生産能力を現在の10倍の月間40千個に引き上げる。増産する絶縁端子は、ハイブリッド車の電動コンプレッサーの電源部分に搭載される鉄やガラスなどで構成する部品。直径10センチメートルほどの円形または楕円形の小型部品だが、電気が設計にない場所に流れてドライバーが感電するのを防ぐ役割を果たす。同社は過電流に起因する爆発を防ぐエアコンの安全スイッチ市場で世界シェア7割を持つ。」と報道していました。
ハイブリッド車や電気自動車で使用されるインバータモジュールに関し電波新聞2008年9月12日付は「ロームは本田技術研究所と共同で世界初のフルシリコンカーバイド(SiC)パワーデバイスによるハイパワーインバータモジュールを開発したと発表した。本田技術研究所のハイパワーインバータモジュール技術を使い、ロームで1200V・230A(2800kVA)クラスのパワーインバータモジュールに仕上げた。1相のコンバータ回路と3相のインバータ回路をワンパッケージに搭載し、モジュールサイズを195x135x30ミリに小型化した。これまでのシリコンIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)との比較で、パワーモジュール性能としてのスイッチング損失を約1/4以下に低減できる。スイッチング損失を低減できる分、スイッチング周波数を上げることができる。20キロヘルツのPWM周波数の場合、4倍の80キロヘルツに高周波化が図れる。」と報道していました。またパワーモジュールの放熱構造に関し電波新聞2008年8月28日付は「日本インターはアルミフィン一体型パワーモジュールを発表した。現在主流のパワーモジュールは銅ベース材に絶縁基板をハンダ接合した構造で、これに放熱用フィンを取り付けている。これに対し新モジュールは、フィン形状をしたアルミニウム部材に絶縁基板を溶湯接合法により直接接合した構造となっている。モジュールとフィンの接続部分がなくなり、接触熱抵抗の問題が発生しない。この新構造により、モジュール内部の温度上昇を従来構造の同機能製品に比較して約4割低減が可能となった。銅ベース材を使用しないことで2割軽量化、容量も3割程度小型化。溶湯接合法は、真空中などで溶解したアルミニウムの液体を鋳型内で、セラミックの絶縁基板と接触させて冷却固化し、アルミニウム部材と絶縁基板を直接接合する技術。ろう材などの中間材料を不要とした。」と、またハイブリッド車の生産拡大でパワーモジュールの需要が拡大していきますが、日本インターに関し半導体産業新聞2008年3月26日付は「日本インターは、今後需要の拡大が見込まれるパワーモジュールの生産体制を強化するために、秦野事業所内に新工場の建設を決定した。現在、ハイブリッド車関連の売上高は自動車市場向けの10%だが、10年以降には約50%まで拡大させる計画。汎用インバータ、UPS、産業用電源と並ぶ重要な市場に位置づけている。」と報道していました。
71[自動車向け電子基板]で前述したハイブリッドICに関し、自動車の電装化とHEVの普及が需要を後押ししているとのことで半導体産業新聞2007年8月29日付は「受動部品を自由に組み合わせてシステムの一部をカスタムメードで実現できるハイブリッドICが、ハイブリッド車や薄型テレビに代表される高度かつ大容量のパワー制御や高周波特性機能への必要性から、堅調に需要が推移している。これを受け関連材料市場も賑わっている。車載向けでは特にアルミ基板やセラミック基板の需要が好調だ。配線多層化などが容易な銅基板といった新材料のニーズも高まっている。またLTCC基板も信号系回路向けを中心に好調に推移しているようだ。パワー制御・スイッチング部分はMOSFETが代表例で、より高耐圧などが要求される用途ではIGBTなどが活躍している。」と報道していました。
車載電子部品に関し電波新聞2008年5月21日付は「自動車1台当りの電子部品点数は20千から30千個といわれる。エコカー、特にハイブリッド車の生産台数増加が回路部品の需要を押し上げている。モーターや二次電池の駆動では電源にインバータやコンバータが必要になり、そのためのパワー用部品の需要が増加している。高電圧の大容量コンデンサの市場形成の動きが表面化している。フィルムコンデンサとアルミ電解コンデンサが用いられているが、750Vという超高電圧化を実現して例もみられる。さらに注目されているのが電気二重層キャパシタ。F単位の大容量で繰り返し充放電が可能。しかも環境に優しい。その他回路部品では、無線通信を応用したキーレスエントリー、タイヤ空気圧センサー、などの搭載増加で、周波数を選定、発振する水晶デバイスやバンドパスフィルター(BPF)などの高周波対応部品の地位が高まっている。RFモジュールでは、0603サイズなどのチップ抵抗器や積層セラミックコンデンサなどの超小型化部品による回路構成で高密度実装化し、小型化を推進するために有機系基板ではビルドアップ多層板、セラミック系ではLTCCが用いられるようになってきた。抵抗器では、電流検出用途の広がりで耐硫化タイプの低抵抗チップの開発が活発化している。小型高精度の追求では金属板タイプの採用が目立っている。接続部品では、車載コネクタの高速伝送や高耐圧仕様などへのニーズは高く、ハイブリッド車やEVでは、コネクタに対し、1ピン当り180A、240A、などの高容量ニーズもある。スイッチでは、運転者が、前方から目を離さずに操作できるスイッチやリモコンの開発が活発。変換部品では、小型モータの需要が大きく増加。車1台のモーター搭載数は、中級車で40-50個、高級車で50-60個。年々増加傾向で今後も着実な増加が見込まれる。増えてきているのが急な坂道で安全性を向上するヘッドランプ光軸調ランバーサポート、トランクロックオープナー、電動パーキングブレーキ、スロットルボディコントロール、プリテンションシートベルトなど。ステッピングモーターもメーター周りなどに使用され、座席シートに空気を送り込むためファンが使用されるケースもある。スピーカーは、1台当りの搭載数は通常4-5個だが、高級車は10個前後搭載するケースもある。
自動車の革新に対するエレクトロニクス技術の割合に関し電波新聞2007年12月20日付は「独国FKFS(シュツットガルト自動車・原動機研究所)の発表では、今では自動車の革新のほぼ9割が、エレクトロニクス技術によるもの。ダイムラー、BMW、自動車部品のボッシュなど7社は08年始めから、共同で自動車のエレクトロニクス技術の研究・開発を行う。独教育・研究省もこの共同事業を支援する。参加企業は、今後数年、研究結果の製品化のため5億ユーロ(約810億円)以上を投資する。」と報道していました。