青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

エコシステム型の生産財営業でイノベーション共創と好社会を目指す。

150-1/2. パワーデバイスでSiC

日本の産業集積で勝利の方程式は“強い素材と部材を使ったデバイス”ですが、今まさにテイクオフしつつあるのがSiC(炭化ケイ素)ウエハーとSiCを使ったSiCパワーデバイスです。

前頁158で新日鉄子会社の新日鉄マテリアルズパワーデバイス向けのSiC(炭化ケイ素)ウエハーへの参入発表を記載しました。SiCウエハーは従来のシリコンウエハーよりも高価なので、導入時のイニシャルコストが高くなります。反面で、性能がとても良いことからランニングコストの削減を期待できます。イニシャルコストを長期使用によるランニングコストの削減累積で、トータルコストを下げることができる製品分野ではとても有望です。イニシャルコストをランニングコストで取り返すためには、使用期間が長いほど有利ですから、20年以上使う太陽光発電システム電鉄向け、10年程度使う産業機械自動車が有望市場です。半導体産業新聞2009年5月27日付は「SiC(炭化ケイ素)を使ったデバイス開発では、MOSFET(金属酸化膜電界効果トランジスタ/Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor )の開発が進んでいる。バイポーラ系のIGBT構造は関係者の話を総合すると現状では難しそうだ。目下の焦点となっているのはトレンチ型MOSFETの可否。トレンチ型は素子表面に縦型の溝を形成し、この中にゲートを作りこむもの。横型のプレーナーFETに比べ、高耐圧化・低オン抵抗化に優れている。既に実現している製品としてはSiCダイオードがあるが、その多くが、数十Aクラスとまだまだ小さく、登場が強く望まれているのが100Aクラス。」とレポートしていました。
国内電力会社10社が、太陽電池を使ったメガソーラー計画を発表していますが、半導体産業新聞2009年5月20日付は「メガソーラーとは、1MW規模ソーラー発電事業のことを指す。2020年までに全国約30地点東京ドーム85.6個分に相当する約4百ヘクタールの用地で、約140MWのメガソーラー発電所が建設される。これは約40千軒の家庭の消費量に相当し、CO2排出量約70千トン相当が削減可能となる。同計画はパワーコンディショナー需要拡大、並びに産業用パワコンに搭載されるIGBTモジュールの需要拡大を意味する。明電舎三社電機山洋電気三菱電機などはメガソーラー市場を明確に狙っているとみられる。国内パワコンでは最大耐圧750Vに規定されているため、搭載されるIGBTモジュールには600Vもしくは1200VIGBT素子が用いられていると推測される。産業用パワコンにおける現在の電力変換効率約93-94%程度。これをさらに向上させるには、IGBT性能向上が不可欠だ。関係者の話では、シリコンベースIGBT素子はすでに限界にきており、新材料であるSiCベースIGBT素子が登場することで、電力変換効率99%も夢ではないという。」と、またシリコンカーバイト(SiC)材料について「日産自動車総合研究所の主任研究員/谷本智氏は“乗用車輸送トラック車によるCO2排出量年間4-5Gトンあり、さらに膨らんでいく。そのためガソリン車から電気自動車への移行が始まっており、インバータが重要な役割を果たす。このインバータにSiCが使われる可能性がある。ボンネットの中で大きな面積を占めるインバーターSiC化されれば冷却器不要となり軽量化できる。SiCスイッチング高速化するため、インバーター消費電力低減する。”とする。ウエハー供給では、クリー社が90%のシェアを持つ。日本では新日本製鉄がクリーと並ぶ首位。他にブリジストンが生産能力を増強。デンソーはパワー半導体向けSiC基板を内製化。エアウォーターは、世界最大の8インチ口径でSOI基板を用いたSiC単結晶基板を作成し、試供を準備している。」と、またSiCGaN棲み分けについて「SiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)が本格量産に向けた最終段階を迎えつつある。SiCとGaNは耐圧領域に応じて棲み分けが進んでいくのではないかという意見が増えつつある。具体的には、耐圧600V付近を境に、600V以下GaNが、それ以上はSiCが主役を演じていくのではないかと言われている。アプリケーションでは、SiC電鉄発電用パワーコン自動車などが中心になるほか、GaNエアコンなど白物家電パソコン電源が中心になっていくことが予想される。爆発的な成長が期待されるなか、阻む最大の要因がコスト。低価格化が大きなポイントになる。SiCのウエハー低価格化のカギとなる製法では、住友金属浴液成長によるウエハー作成技術を確立するなどの取り組みがみられる。ベアウエハー上に堆積成長させるエピタキシャル層の高品質化・低コスト化も重要課題。GaNではSiCのような高価な下地基板を用いておらず、むしろ問題はデバイスやエピなどの構造面といわれている。」と特集していました。
シリコンカーバイド(SiC)を使ったパワーデバイスでは、京都企業ロームがSiCを使ったインバータパワーモジュール(IPM)を発表しています。半導体産業新聞2009年6月3日付では「ロームはまもなくSiCデバイスの量産時期を迎えようとしている。同社はSiCデバイス中耐圧デバイスとして位置づけ、耐圧600-1200Vの範囲でアプリケーションの展開を図る。耐圧600Vハイブリッド自動車向けに、同1200V品は産業機器、なかでも海外の電源向けに展開する。同社のSiCデバイス3インチウエハーを採用しており、08年に福岡県筑後市ローム・アポロデバイスに試作ラインを設け、09年1月には、社内にIPMプロジェクトを発足させ、フルSiCパワーモジュールの開発体制を整えている。10年3月までに生産ラインを構築する予定だ。」と、また電波新聞2009年5月22日付は「ロームは、シリコンカーバイトを使ったインバータパワーモジュール(SiC・IPM)で太陽光発電システム市場に参入する。09年からパワーコンディショナーメーカーと共同開発を開始、共同開発中のロボット駆動用のインバータとともに、SiCパワーモジュール事業の中核用途として商品化を急ぐ。京都本社に量産ラインを設け、10年度の早い段階で量産に入る。LSI生産本部IPMプロジェクト副部長の伊野和英氏は“出力1MW級の太陽光発電システムに当社の今回のSiC・IPMを用いると、パワーデバイス損失半減できる。リアクトル周辺での損失半減と合計すると、パワーコンディショナーのシステム全体では変換ロス30-50%削減できるので、CO2排出量年間7トン削減できる。メガワット級産業分野で、従来のシリコン(Si)・IGBTパワーモジュールから置き換えを狙っていく。SiCパワーデバイスの用途は、モーター駆動用やDC-AC、AC-DCの電源用など広い。”と話す。パワーモジュールの事業化に向けて組織横断のIPMプロジェクトが09年1月に発足した。太陽光風力の発電をはじめ、電気自動車電車家電といったインバータコンバータコンディショナーの市場開拓を進める。本田技術研究所とは、世界初のフルSiCパワーデバイスによるハイパワーインバータモジュールを開発し、検証中だ。」と報道していました。
SiC(炭化シリコン)の量産採用では、104[2007.08]で前述した日本インターが米国クリー社のSiC基板を使用したショットバリアダイオード(SiC-SBD)が比国子会社で立ち上がるそうです。電産新報2009年4月27日付は「神奈川県秦野市の日本インターは比国子会社のフィリピンインターエレクトロニクスに専用組立ラインを設置し、6月から稼動を開始する。月産能力は1.5百万個。SiCはシリコンに比べ、絶縁破壊電界強度10倍熱伝導率3倍飽和電子速度2倍と高く、高温動作が可能など優れた特性を有する。薄型テレビPFC(力率改善)回路に用いれば、部品点数削減により電源小型化が可能となる。」と報道していました。