青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

149-1/2. パワーデバイスでIGBT

温暖化ガスの排出削減と脱石油社会(低炭素社会)の実現を進めていく上では、日本国内に集積するパワーエレクトロニクスの“デバイス・制御技術”が、国益と世界益の両方を実現できる主要なドライバーの一つとなります。

157でインバータを記述しましたが、大出力用インバータ機器の主要デバイスIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)です。パワー半導体で最も脚光を浴びるデバイスIGBTに関し半導体産業新聞2009年1月14日付は「IGBTの世界チャンピオンは三菱電機で2007年度の売上が6.9億ドル、世界シェア32.7%、過去3年間の伸び率は驚くなかれ98%、二番手は富士電機世界シェア14.2%、過去3年間の伸び率が63.4%。三菱電機によれば、一年間国内販売されるエアコンのすべてにパワー半導体部品を搭載することで、原子力発電所一基分省エネ効果があるという。」と、またパワー半導体全般の市場については「汎用パワー半導体の世界市場は、2003年当時の89億ドルが、2007年には118億ドル、カスタムタイプや小容量タイプなどを加えた広義のパワー半導体だと2兆円を突破。NANDフラッシュメモリーの市場規模1.8兆円よりも大きい。」と報道していました。IGBT世界二番手の富士電機に関し半導体産業新聞2009年4月1日付は「富士電機は、産業用ドライブ向けIGBTモジュール市場で約30%のシェア。販売額の6割日本で、最近はアジアも延びて3割IGBT素子からモジュールまで一貫生産しており、モジュールでの提供が主流。1988年からIGBTの製品化を開始。主力1200V系だが、耐圧600-3300Vまでを対応。モーターを回すすべての用途に対応している。例えば工場個別モーター工作機械エレベータクレーン電車など。容量帯では数kW-MWレベルが多い。最近では、車載向け、風力発電太陽光発電の変換機向けが増えている。車載用パワーデバイスでは、デンソーと共同で業界唯一となる両面冷却(ヒートシンクを前面に設ける)を実現している。富士電機の取締役で半導体CTO/電子デバイス研究所長の藤平龍彦氏は“車載用IPMでは材料からこだわった一貫生産を実現している。電子基板には独自開発のアルミナセラミックス絶縁基板を採用。銅箔を厚くし、薄いジルコニア添加アルミナセラミックスを採用することで低熱抵抗高強度を実現し、放熱用ベースに銅を使用可能とした。・・・中容量帯から大容量帯のパワーデバイスで世界トップを目指す”と語った。」と、また富士電機バイスセミクロンインターナショナル事業提携に関し電産新報2008年12月1日付は「富士電機バイスは独セミクロンインターナショナルと提携した。富士電機バイスIGBTチップを、セミクロンが還流ダイオード及び整流ダイオードチップ、ライセンス供与でスプリング・コンタクト技術を、相互に供与する。富士電機バイス産業用ドライブ向けIGBTモジュール世界シェア30%、独セミクロンはダイオード及びサイリスタ・モジュール40%のシェアを持つ。スプリング・コンタクト技術は、はんだを使用しない電気的接合の方法で、モジュールとい絶縁基板、放熱器を簡単にネジ止めすることが可能。厳しい環境でも優れた熱サイクル特性を持つ。スプリング・コンタクト技術を用いたモジュールの世界市場規模を2.5百億円と見込んでおり、2011年にはシェア10%の獲得を目指す。」と報道していました。
東芝パワーデバイス事業に関し半導体産業新聞2009年3月25日付は「東芝セミコンダクター社のパワーデバイス世界シェア10%を占める。パワーデバイスの売上高の半分近くパワーMOSFET。20-6500Vの幅広い耐圧に対応した製品群を取り揃え、世界シェアトップノートPC電池パックから、携帯電話やPDPなどデジタル家電までを展開している。IGBTでは、1000V程度の中耐圧品をディスクリートIGBTで、飽和電圧低下を要する数千V数千A帯の高耐圧品は独自開発のIEGT(インジェクションエンハンストゲートトランジスタ)で供給している。IEGTには、耐圧3300VのPMI(プラスティックケースモジュールIEGT)と、同4500VPPI(プレスパックIEGT)が存在する。PPIではIEGTチップ40数個搭載しており、高電圧大電流鉄鋼圧延オイルガス輸送用電動機などに採用されている。PMIは同20数個搭載しており、電鉄車両用機器向けなどに供給している。主力拠点は姫路半導体工場で、高耐圧のIEGTから中耐圧のIGBTまで幅広く手がけ、加賀東芝エレクトロニクスでもIGBT及びパワーデバイスを生産している。・・・・素子提供を基本とするIGBTは、デジタル家電IH 化で中長期的伸長が見込めるほか、デジタルカメラ向けに展開してきたキセノンフラッシュIGBTが、カメラ機能付携帯電話向けにも拡大が見込めそう、」と報道していました。
インバータ用パワーデバイスやインバータ機器の市場性に関し測定器メーカー岩通計測で社長の藤田博之氏は電波新聞2009年1月30日付で「パワーエレクトロニクスの風は止んでいない。大きな風になったとき、確実に乗れるように当社一人一人のパワーを出し、スピードを生かす。パワーエレ分野での伸長を目指す。インバータ機器やインバータ用パワーデバイスモーターなど、パワー・エレにおける測定・計測ができる一連の流れを新商品投入で強化できた。より正確に、より確実に測定できる。」と述べておられました。」またパワーエレクトロニクス向け電子部品の展開事例で、電波新聞2009年1月3日付は「スミダコーポレーションは、パワーエレクトロニクス分野での事業を拡大するため、全額出資でスミダパワーエレクトロニクス(SPE)を設立した。SPEは、電源用トランス及び各種コイルのエイワと、産業用大電流コイルトランスのモステックの両社を子会社化した。子会社化で、太陽光・風力発電関連コイル、ハイブリッドカー電気自動車向け各種トランスや大電流コイル製品、産業機器や通信用の一次電源用トランス・コイルなどといった製品ラインアップが拡充する。」と報道していました。
低電圧駆動IGBTに関し、携帯電話の内臓カメラ用途で独占に近いルネサスに関し半導体産業新聞2009年4月29日付は「同社汎用製品統括本部・製品技術部の担当者によれば“2.5Vの低電圧駆動で、150-200Aの大電流を実現している。これだけのスペックで低電圧大電流両立することは容易でない。パッケージではアルミリボンワイヤーボンディングを採用するなどの工夫をしている。ストロボ回路で使用されるストロボチャージャーIC(IGBTドライバ含む)、ダイオードIGBTすべてを擁しているため、サポートを含めトータルソリューションを提案できるのも強みだ。”という。同社はカメラストロボ用IGBT世界シェア5割以上、携帯電話内臓カメラ用途では、独占に近い。また超小型IGBTでは、DSC(デジタルカメラ)のキセノンフラッシュ用IGBT世界シェア40%三洋半導体に関し電波新聞2009年1月26日付で「三洋半導体は、カメラ機能付携帯電話向けに、超小型のキセノンフラッシュ用IGBTを量産開始する。同社パワーマネジメント事業本部の近藤安生取締役本部長は“携帯電話の市場規模はDSCよりも一桁多い。ここでの搭載が進めば、販売数量を飛躍的に伸ばすことができる。”と抱負を語っている。」と報道していました。
パワー半導体組立・実装技術の進化についてElectronic Journal 2008年12月号は「パワー半導体では1チップ化モジュール化が進んでいる。IPM(Intelligent Power Module)やIPD(Intelligent power Device)と呼ばれている製品群だ。MOSFETIGBTダイオードなどを組み合わせることで高効率化低消費電力化が実現できる。一方では、1チップ化やモジュール化に伴って冷却性能接続部熱疲労寿命など、新たな課題も生じている。放熱性の改善策として、水冷化高放熱フィンの採用、サーマルグリースの性能改善などが挙げられる。デバイスの両面冷却が可能なパッケージングや、直接水冷構造などの採用も検討されている。・・・パワー半導体の実装は、まずはんだによるダイボンディングを行う。接着時にフラックスの揮発により気泡(ボイド)が生じる。バンプへの応力が繰り返されるとボイドが原因で亀裂が発生することから、ボイドが問題視されている。・・・ダイボンディング工程の後はワイヤボンディング工程となる。ワイヤは主にアルミが使用され、接続方式は振動と圧力を加える超音波圧着方式が主流で、ワイヤボンダでは超音波出力ボンド荷重ボンド時間が重要なパラメータとなる。特にIGBTは従来に比べ薄厚化が進んでいることから、弱い荷重で確実なボンディング技術が要求される。・・・ワイヤ長が抵抗に比例するため、接続距離を短くすることで抵抗を削減するバンプ接続を使用したワイヤレスボンディングを用いるデバイスも発表されている。・・数本のワイヤで接続していた箇所を、板状アルミを用いて一括接続する方法が採用されている。リボンボンディングとかクリップボンディングと呼ばれている技術だ。」と報道していました。
パワーデバイスの部材に関し、新日鉄パワーデバイス向けの炭化ケイ素ウエハーに参入しますが日刊産業新聞2009年3月27日付は「電子材料事業子会社の新日鉄マテリアルズが炭化ケイ素ウエハーに参入する。4月1日から発電や変電、モーター駆動分野などのパワーデバイス向けに製造・販売を開始する。2-3年後に月産1千枚以上、年間売上高1百億円規模を目指す。ウエハーサイズは、2インチ、3インチ、4インチ。大口径の4インチウエハー量産技術を確立したのは国内初。炭化ケイ素はケイ素炭素1対1で結びついた化合物。ダイヤモンドシリコンの性質をもっている。シリコンウエハーと比較すると炭化ケイ素ウエハーは1/10の厚みでシリコンと同じ耐電圧を持つことから、電力損失がシリコンの1/10となる。耐熱も、シリコンの175度摂氏に対し、炭化ケイ素は500度摂氏と耐熱温度が高いので、デバイスの冷却装置を簡素化できる。パワーデバイス用炭化ケイ素ウエハーの市場規模は、08年16百万ドル15年には約20倍の297百万ドルになる見通し。炭化ケイ素を使ったパワーデバイス市場も08年の24百万ドルから15年にかけて約30倍の823百万ドルに急拡大することが見込まれる。」と報道していました。