青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

148-1/2. 省エネでインバータ

省エネ・低炭素社会へと向う追い風が吹く中で、日系企業が世界シェアの凡そ半分を獲得できているインバータは、日本経済を下支えしてくれる産業分野の一つです。

155でインバータエアコンについて記述しましたが、例えばビル空調インバータを使用すると電気代約1/4にできるそうです。インバータは、モーターの回転数を自在に制御することで、一定速のモーターよりも大きな省エネ効果を発揮します。インバータについては103[2007.8]でも前述しましたが、狭義のインバータとは、直流(DC)を交流(AC)に変換する装置を意味します。インバータ照明では、商用電源の交流を一旦は直流にした上で、インバータ(電子式安定器)で「直流を高周波の交流に変換」しています。広義のインバータとは、“直流を交流化(Invert)する狭義のインバータ”に加えて“電圧周波数変換する回路を内臓”した装置”を意味します。モーター駆動制御するために使われている産業用汎用インバータでは、電源から給電される交流をコンバータ回路整流することで直流に変換し、平滑回路のコンデンサで直流に含まれる変動成分平滑化した上で、平滑化した直流を、インバータ回路スイッチングしながら、つまり逆変換(交流への変換)と周波数変換を行いながら出力しています。直流を交流電力に切り刻むスイッチング素子としては、MOS-FETIGBTが使われています。産業用インバータとは、出力する交流の周波数を自在に変えることで、モーターの回転数を制御する装置で、広義のインバータを意味します。
安川電機の発表では、同社は“1974年世界初トランジスタインバータを出荷して以来、汎用インバータの累計出荷台数が10百万台を超え、2006年度の世界シェア14%でトップシェアを維持”ということですが、電波新聞2009年4月6日付は「安川電機は、ビル空調エレベータなどインフラ系分野をターゲットに、インバータ事業の拡大に取り組んでいる。安川電機は、07年8月に稼働した行橋事業所内のインバータ新工場(ドライブセンター)をマザー工場に、(シカゴ)、(スコットランド)、中国(上海)の4極体制で世界市場にインバータを供給している。インバータ事業部の営業部長/重田正博氏は“誘導モーターよりも8%高効率なIPMモーターが注目されている。市場のIPM化を狙う。新規分野では太陽光発電分野に期待し、太陽電池メーカーPVインバータの納入を始めている。”と語る。」と報道していました。
産業用の汎用インバータでグローバルトップの安川電機に対し、国内に限ると三菱電機国内シェア4割と報道されています。容量範囲75KW以下で且つ標準仕様で量産されている汎用インバータに関し電波新聞2008年8月21日付は「日本電機工業会によると、インバータの国内生産は、07年度実績が836億円2.69百万台。08年見込みが902億円。出荷台数の約85%が3.7kW以下の小型。海外でも市場が広がっており出荷台数に占める輸出の割合も07年度は半分を占めるまでになった。現在はIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を主回路に用いた装置が一般的。駆動周波数回転数を変え、駆動電圧トルクを制御する。周波数と電圧を変化させる方法をV/f制御(VVVF制御)と呼んでいる。かご形モーターが、インバータの周波数制御で速度制御でき、最近ではIPM(磁石埋め込み形モーター)と呼ばれる高効率同期モーターでも用いられている。」と、また企業別に各社の製品展開について「東芝産業機器システム/東芝シュネデール・インバータは、空調用では、外部リアクトルなしで高調波を抑制し、ノイズフィルター内臓で大幅な省スペース、省配線が図れた。主回路コンデンサに長寿命のフィルムコンデンサを採用・・・・同様に富士電機システムズが“3製品系列(ベーシック/EMCフィルター内臓/国交省ガイドライン対応)で構成”、日立産機システムズは“高トルクタイプ”を投入・・・・安川電機は、業界に先駆けて誘導モーターのほか同期モーター(IPMモーター/SPMモーター)も駆動可能な機能を新製品に搭載。IPMモーター駆動時には、位置制御に必要なセンサー(エンコーダ)が不要。今まで難しかったセンサーなしでの同期モーター駆動が可能。」と紹介していました。
インバータ応用製品で、太陽電池で発電された直流(DC)を交流(AC)に変換するパワーコンディショナー(PCS)について、三社電機製作所の電源機器営業本部の取締役執行役員本部長、喜田博司氏は半導体産業新聞2009年5月13日付で「当社パワコン製品はトランスを内臓したコンパクトな設計。当社の製造部門では板金ケースからプリント基板の組立まで内製率80%強。IGBT制御方式では168kWユニットで構成。3個のユニットで5百kWの製品を製造している。リアクトル変圧器をすべて内製化することで、性能設計の全体最適化を実現。家庭向け小容量品では、内製化したIGBTFRD(ファーストリカバリダイオード)を組み込んだ自社製IPMを用いている。電源機器は中小型製品が大阪工場、大型製品が滋賀工場。ここに供給される半導体製品群は岡山工場で製造している。」と述べておられました。同じく山洋電気に関し半導体産業新聞2009年4月29日付は「同社が “UPS技術を用いて太陽光システムインバーターを開発しよう”と思い立ち、パワコン市場に参入したのは95年。日本電信電話(NTT)へのUPS納入で蓄積してきたインバータ技術をコアとした電源装置開発の技術力で、自社の冷却ファンなどにIGBTモジュール電解コンデンサトランスリアクトルなどのデバイスを調達し、長寿命のパワコンを製造している。“UPSでの経験から判断すると、大容量対応が必要な産業用パワコン参入障壁が高いため、アジア勢など簡単には参入できない”と同社の和田好弘氏はいう。」と報道していました。Electronic Journal 2008年12月号は「住宅用システム向けでは、三菱電機階調制御インバータ方式97.5%電力変換効率を持つPCSを上市するなど、変換効率の向上に向けた競争が激化している。・・・変換効率の向上にはインバータユニットの効率を上げることが不可欠だ。ここではIGBTのさらなる性能向上によるところが大きく、SiCGaNデバイスの進展が期待される。」と紹介していました。台湾デルタ電子(台達電子工業股份有限公司)に関し電波新聞2008年11月21日付は「電源供給装置世界トップのデルタ電子は、PV事業を将来的な柱に育成していく方針だ。パワーコンディショナーは現在、中国と07年に操業を開始したスロバキアの2工場で生産し、07年の売上高は約2億ドル。太陽光発電システム用インバータでは、出力11k-100kwに対応し、電力変換効率95.5%を実現している。日本JET認証を受け日本でも採用されている。太陽電池セルは新竹工場で生産しており、年間生産能力は160MW。09年中には600MWに引き上げる。」と紹介していました。