青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

エコシステム型の生産財営業でイノベーション共創と好社会を目指す。

148-2/2. グローバル化と雇用維持

日本国の持続的繁栄のために必要なのは持続的なイノベーションと国内投資です。日本のGDPの4-5割を生み出す製造業の国内投資縮小はGDP縮小と雇用縮小をもたらします。

今回の世界同時不況で、自動車を始めとする日本の製造業海外シフトが再び加速する可能性が強まっています。日本国のGDPに占める製造業の割合は統計上2割ぐらいですが、製造業からの派生で創出されるGDPまで含めると4-5割が製造業由来であることを42[2006.7.]で前述しました。例えばサービス産業需要の多くが製造業から生まれる付加価値からの派生需要です。GDPで2割の製造業がゼロになると日本のGDPは半減してしまいます。筆者/青草新吾が懸念しているのは、90年代以降国内投資縮小と、国内投資縮小に起因して急増した“若年失業”や“正規非正規二重構造(格差問題)”です。日本の勤労者3分の1に相当する18.9百万人(07時点)が非正規で、その殆どが登録型派遣で、仕事がない時も派遣会社から一定の給料がでる常用型派遣でないそうです。最近では、失業者2割しか雇用保険受給できていないと聞きました。若い世代雇用創出能力開発機会創出によってこそ、少子化の流れを食い止める、あるいは老後の年金への安心感を高めることができます。今や政治が最優先すべき短中期の内政課題は、年金問題に代表される老後の不安と、雇用流動化失業に対するセーフティネットです。そのためには製造業による国内雇用を維持できるような政策を進めて欲しいものです。労働市場では既得権益に守られた二割ぐらいの役所・大企業正社員を代表する連合などの賃上げ要求三割を占める派遣への規制強化は、激しいグローバル競争の中で活動する企業労働力海外調達へと追い立てていくことにしかなりません。
製造業海外に逃げ出して、国内消費の殆どが輸入品になってしまう現象について、大前研一氏は金融危機に隠れて進行中の“日本の米国化”という日本国の長期衰退招きかねない深刻な事態警鐘を鳴らしておられます。大前研一氏はかねてより“。日本から製造業が海外に逃げ出していけばいくほど日本は衰退していく。米国は製造業が国内から海外に出てしまっても、軍事産業航空機ソフトウエア金融商品・・のような外貨を稼げるものがあった。しかし日本の場合は工業製品以外輸出するものない”と危機感を発露してきておられます。SAPIO[2009.4.22]で「まだ国内に残る素材産業機械産業やりやすい環境を整え、さらに規制緩和新しい産業の勃興を後押しする。一刻も早くそれをやらなければ日本経済は猛スピードで空洞化するだろう。・・・どんなに左派勢力やマスコミが騒いだところで(いや彼らが騒げば騒ぐほど)企業が海外進出の歩みを緩めることはないだろう。」と訴えておられました。わかり易い説明なので以下に抜粋で引用します。
以下引用「財務省貿易統計で、28年ぶり通年赤字に陥ることが確実な情勢だ。2009年1月の貿易収支は4ヶ月連続の赤字、しかも1980年以降で最大の赤字幅。輸出が減って輸入が増えるという変調05年から始まっていた。日本の外貨準備高も05年以降はほとんど増加していない。私が最も危惧していることが起きつつあるか、すでに起きてしまったのかもしれない。それは“日本の米国化”という現象である。米国の製造業が衰退したというのは誤りである。製造業における米企業世界シェアは、この20年間むしろ拡大している。米国では70年代から80年代にかけて製造業が国内から消えてしまった。それは米国の製造企業に競争力がなくなったからではなかった。実は米国製造企業衰退しておらず、米国の労働コストが高くなったため、競争力のある企業が続々と労働コストの安い海外に出ていってグローバル化しただけだったのである。海外に出て行った米企業の経営者たちの頭の中には、アメリカ国内に戻るという発想はなかった。彼らは労働コストが高いうえに労働組合など面倒が多いアメリカ国内では二度と生産したくないと思っている。・・・いま日本製造企業は、かっての米製造企業と完全に同じ動きを見せている。輸出企業だと思われているキャノンニコンは何食わぬ顔で“海外で生産した製品”を日本に持ってきて売っている。それは貿易統計上“輸入”になる。日本は労働コストが高いだけでなく、最近は“派遣切り”や“雇い止め”の問題で雇用規制がどんどん強まる傾向にあるため、日本での国内生産嫌気がさしている経営者は多い。“貿易立国・日本”“技術立国・日本”の根幹が大きく揺らぐ可能性がある。・・・ただしすべての分野で日本が産業のコアを失ったわけではない。製品よりも“素材・材料”の分野こそ日本の最後の砦になっている。シリコンウエハーフォトレジストガラス板接着剤など、製造業の“上流”領域は依然として日本強い。他に工作機械組立機械金型機械など製造装置の領域は、まだ日本世界の8割を握っている。先ずはこれらの産業が日本から逃げ出さないよう考える必要があるだろう。・・・・珠江デルタグレーター上海に移っていった日本や台湾の部品会社は競争力があり、今や最終商品だけでなく、中国産の部品も日本に“逆輸入”される時代になっている。10年前は想像だにしなかった現象である。一方、日本部品クラスタだった大田区東大阪浜松諏訪盆地では空洞化が進んでいる。彼らを組織的に支援する制度や仕掛けがないからである。・・・そこまで日本企業が“生産の場”としての日本に見切りをつけたということは、もはや“日本の米国化”は反転しないと考えた方がよい。ところが経済オンチ日本政府政治家危機感がない。・・・個々の企業は合理的な判断をして、それぞれのタイミングで海外に出て行った。それが積み上がって、貿易統計にも産業流出の証拠が表れてくるようになった。ここまできたら企業を国内に呼び戻すことは不可能だと覚悟しなければならない。“日本の米国化”とは、輸出で稼いできた日本が構造的な輸入超過直面するということであり、それは国家存亡の危機に立たされるくらいシリアスな事態だということを、我々は認識する必要がある。」以上引用。
海外から日本への対内投資が増えるような施策に加え、日本企業が出来るだけの国内投資を行って、国内雇用維持していけるような政策を進めて欲しいものです。海外投融資情報財団によると日本企業による対外直接投資は2006年実績で53兆円だそうです。一方で、外資による日本への対内直接投資は、ITI(国際貿易投資研究所)が提供してくれるデータによると13.2百億ドルです。ちなみに世界各国対内直接投資残高の規模を2007年度実績でみると、米国が最大の2.93兆ドルで1位、中国32.7百億ドルで12位、日本13.2百億ドル23位です。ちなみに日本よりも上位の22位はポーランドで14.2百億ドル、日本の次の24位はオーストリアで12.6百億ドル、25位は韓国で11.9百億ドルです。グローバル化雇用フラット化が進む世界の中で、生産性が低いホワイトカラーの仕事が海外に出て行く動きがあります。“同一労働・同一賃金”への流れがグローバルに進行する中では雇用はどうしても流動化していきます。流動化する現実に反して、日本では先進国の中では最も硬直的な規制が二割役所・大企業正社員既得権益として残されたままです。小泉政権派遣規制緩和したことで雇用が拡大しましたものの、二割役所・大企業正社員への行き過ぎた規制そのまま残したことから正社員と非正規社員との格差拡大がおこりました。他の先進国並に正社員保護規制緩和することで、非正規社員の底上げを進め、“製造業の海外流出をできるだけ防ぐ”ことが求められる時代に入っているような気がします。
戦後日本では労働人口二割ぐらいを占める大企業終身雇用が定着し、役所・大企業正社員賃金企業保険など様々な既得権益を得ています。日本では1960年代以降学校卒業時新卒就職時点で“役所・大企業”の正社員と“その他8割”に分かれてしまうと、その他8割から役所・大企業の正社員になることはまずありません。業績の悪化や経営上のやむをえない理由から人員整理を行う“整理解雇*1を行う上で求められている回避努力については、本来であれば、非正規社員を整理する前に、先ずは“正社員時短賃下げ”など、正社員で雇用調整を行うべきですが、今の日本は逆です。まず最初に非正規社員の整理から入り、正社員の雇用調整は後回しにするような規制が実施されています。変化が激しい時代ですから、人材と事業や職業のミスマッチが発生し易くなっていますから、正社員雇用調整整理解雇、整理解雇の後の再就職をもう少し容易に行える社会にしていく必要があります。雇用全体からは二割役所・大企業雇用の流動化もう少し促進して正社員正規雇用との垣根を低くして格差を縮める、その代わりにセーフティネット、特に“失業者に対する雇用保険による職業訓練”などの在来型ではない公共投資をもっと増やすこと、新規採用でも“数年間のインターンシップ”を経ての採用などの制度化などが、国内での雇用拡大と、ひいては少子化年金不安事態改善に有効と考えます。労働市場二割を占める役所・大企業正社員では規制緩和が必要です。連合官公労あるいは大企業社会に属する大手メディアが“消費拡大のために給与を引き上げよう”などとのキャンペーンを張ることがありますが、話があべこべのような気がします。勤労者のその他八割の“中小企業勤労者非正規社員平均収入底上げ”による消費拡大の方が、飽食の時代に上位二割の大企業社員や官公庁職員による消費拡大よりも、よほど効果があるはずです。OECD(経済協力開発機構)の相対的貧困率のデータによると、先進国中1位は米国で17.1%、2位日本14.9%だそうです。いつの間にか日本貧困大国になってしまっているのです。内需拡大逆行しています。90年以降に増大した生活保護以下非正規労働者の存在が主な理由だそうです。少子化も年金も、内需拡大この層の底上げを図らないと解決しません。欧州諸国、とりわけドイツに比べて貧弱な日本のセーフティネットの早急な是正改善が望まれます。
イノベーションに伴う設備投資に代表される様々な投資の拡大こそが持続的な消費拡大、内需拡大を推進します。イノベーションこそが産業の新陳代謝と雇用の流動化を促し、従来にない雇用を創出し、戦後日本で生まれた身分制度役所・大企業中小企業の所得の二重構造正規社員非正規社員の所得の二重構造是正改善していく推進力になるものと期待できます。企業によるイノベーションが生み出す競争力と日本国での付加価値創出(=雇用創出)に伴う設備投資に代表される様々な投資拡大を促進する様々な政策が望まれています。

*1:「上手に人を辞めさせたい」高井伸夫著 ISBN:4062640260