青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

エコシステム型の生産財営業でイノベーション共創と好社会を目指す。

174. 農業大国ニッポンへの期待/ 蝕む農政利権者

農林水産業や食品製造を含む食関連産業の多くは、自動車や電子部品のような他産業が生み出す富と消費に多くを依存して発展してきましたが、これからは世界市場を相手に稼いだ富を日本国にもたらすリーディング産業に発達していけるかもしれません。

日本国内最終消費ベースの“食市場約80兆円”(流通を入れると約100億円)を、川上の“輸入品を含む農水産物食素材供給”からみていきながら、参考書*1を資料として数字を拾い出していくと、最終消費80兆円の2割弱15.1兆円直接消費生鮮食品としての購入、5割強41.5兆円食品製造業が付加価値をつけた加工食品の購入、3割23.7兆円が農水産物や加工食品に付加価値をつけた外食としての購入です。食産業の半分強が食品製造業です。食品製造業の国民経済への貢献を検証するために、原材料費や他企業の産出額重複を省いた付加価値生産額で産業としての純生産額をみると、2005年度の統計からは、食品製造業11兆円は、鉄鋼・金属製品12兆円化学工業11兆円と並び、輸送機械15兆円に次ぐ付加価値(富の源泉)を生み出して日本国に貢献してくれています。
産業としての生産額をみると、原材料や他企業産出額との重複を含む数字ではありますが、世界5位の農業生産額8.8兆円漁業生産額1.5兆円合計10.3兆円食素材の国内生産で、上述通り、生鮮品としての最終消費が15.1兆円もあるということと生活実感からは、国内農産物殆ど家庭の直接消費に向けられていることが判ります。旧来の農協経由に加えて、近年増加が著しいスーパーなどとの“直接契約”を通して家庭の最終消費に直接にリンクしています。一方で、加工食品の国内生産額が32.8兆円とのことですから、穀物など輸入農産物の殆どを食品製造業が調達していることが判ります。このことからは、農産物貿易自由化しても、家庭消費に直結している国内農産物への影響軽微であることが予想できますし、納税者であり消費者である国民と、プロ農家、そして食品製造業にとって農産物貿易自由化は良いことであることが判ります。良いことであるはずの農産物貿易自由化に反対しているのは農協守旧派に代表される「税金にたかる既得権益」です。筆者/青草新吾は「親から農地相続しただけ農業経験ゼロの農家であっても、補助金交付金手にする今の農政は不公正だ」と考えます。エコノミスト2009.5.12に「売上7百万円以上専業農家約200千戸よりも農協職員数220千人の方が多い。」と、また週刊ダイヤモンド2008.7.26には農協組合員数9百万戸に関し「2005年度の農家戸数2,850千戸の内、1年間で60日以上の自営農業に従事する主業農家405千戸のみ。91.5%2,445千戸補助金目当て準主業農家447千戸農業所得平均が580千円副業的農家1,029千戸の農業所得平均が320千円。 」と説明がありました。話を食品製造業に戻します。食品流通まで含めての食市場ということでは、上述週刊ダイヤモンド2008.7.26が引用していた農林水産省の「農業・食料関連産業の経済計算」では、流通を含めた食産業は102兆円。内訳は、食品流通業29.0兆円、食品製造業35.4兆円、外食産業21.0兆円、農林水産業11.5兆円、資材供給等5.1兆円と説明されていました。
食産業の未来について考えると、一つはカゴメのように契約農家との関係を事業基盤にしていく農場と工場が直結するモデル、二つには雪国まいたけのような農業と工業が合体した野菜工場モデル、三つは、外資ネスレクラフトタイソン、日系ではキッコーマン味の素などの全球展開モデルなど、これらに加えて、地産地消モデルが時代の趨勢として伸びていくのだという気がします。食産業の技術開発の未来像について、蘭国「フードバレー」の中核的存在であるワーヘニンゲン大学リサーチセンターのティメルマンス・ディレクター氏は日経ビジネス2008年6月16日号で「欧州ではヘルシーな食の開発に関心が向いている。日本は早くからこの分野の商品開発が進み、市場も発達している。ジェラシーを覚えるくらいに。日本ヘルシーな食を磨けばいい。」と言います。同じ文脈で同誌はキリンフードテックについて「同社の粘増剤カードラン”はブドウ糖から得られる発酵多糖類。日本ではカマボコの増粘に使われてきたが、台湾の素食(精進料理)向けで用途開発に成功し、今は生産量の3割を台湾などのしている。日本企業が食の領域で世界で戦う時に取るべき一つの道といえる。最終製品でなく、その加工に欠かせない要素技術で貢献する道だ。 」と事例紹介していました。以下、食関連の企業について青草新吾が生産財営業の参考になると感じた報道を抜粋してみます。
食肉の“うまみ測定”に関し、日経ものづくり2010年10月号は東京都(日の出町)の相馬化学に関し「薬品や半導体分野向けに液体ガスクロマトグラフ関連機器などを製造販売する相馬化学は、光分析技術を応用し、“食肉脂質測定装置”を2008年春に商品化した。既に40台が畜産事業者や食肉加工事業者、地方自治体などに導入された。牛肉や豚肉に含まれているオレイン酸の量を測定することで、肉質の判定に役立てるもの。生産者としては、数値データとして“見える化”できる利点が大きい。現宮崎大学農学部畜産草地科教授の入江正和氏の指導を受けながら、波長0.7-2.5umの近赤外線の吸光スペクトルが脂質の測定に対して精度が高いことも分かった。多数のデータを集め、統計学的な手法で多数の脂質のデータの中からオレイン酸のデータを抽出する技術を確立した。オレイン酸飽和脂肪酸といったその他の脂質、融点や屈折率についての検量線を導き出していったのである。2データが多いほど精度が高まるため、008年春の発売以降も導入先に協力を仰ぎ、データ収集を続けている。同装置の価格は3.2百万円。韓国からも引き合いが来ているという。 」と紹介していました。
食品加工機械スライサー(食材専用切断機器)について日経新聞2009年7月7日付は大阪府枚方市吉泉産業について「吉泉産業は、野菜を様々な形に切るスライサー製造で、台数ベース国内シェア約4割を誇る。多くの外食店スーパー食品工場で大量の惣菜製造食材下ごしらえに食品加工機械は欠かせない。本社工場のショールームでは、魚の切り身を作る機械の実演をしている。頭部や尾びれ、骨を取り除いたサケの半身を機械に通すと、出てくる10切れ前後の切り身は、形はどれも違うのに、重さを量るとどれも70グラムほぼ均一だ。同社製スライサーは。直前に切った切り身の断面画像を瞬時に把握し、次に切断する切り身の厚さを自動的に変えながら、重さをそろえる仕組み。経験や技術がなくても簡単に設定できるのが強みだ。・・・同社は佐々木社長の実父、故広積氏が食肉を切り刻む機械の丸刃の熱処理を手掛けていた経験から“食品加工機械はさらに需要が高まる”と決意し、1955年に起業。先ず、練り製品野菜を薄く切るスライサーを開発した。その後、作業の省力化を望む顧客の要望を受けて、野菜千切り角切り斜め切り、などの複雑な技術を蓄積していった。今では人手でも難しいハモの骨切りマイコン制御で自動化する機器なども実用化している。同社は部品段階から自前製造できる強みを持ち、機器の内製化率は実に8割に及ぶ。今年09年1月には、韓国で現地企業と合弁会社を設立。“一人当たり消費量が世界一といわれるほど野菜を食べる”韓国で、本格的な足がかりをつかむ戦略だ。」と紹介していました。食品工場温浴過熱・殺菌で有効性が高い温水供給装置三菱重工が発表しています。電波新聞2009年5月19日付で「三菱重工は、工場の冷却塔から排出された30−50度摂氏の温水を含む排熱温水からヒートポンプの原理で熱を汲み上げ、75度摂氏の温水を80度摂氏に過熱して、80度摂氏の温水を連続的に供給できるターボ圧縮機温水供給装置(商品名:ecoターボ温水ヒーポンETW)を業界で初めて開発し、販売を開始した。新製品は化石燃料を使わず電力だけで稼働するため、CO2排出枠最大70%以上削減できる。省エネ効果により運用コスト大幅節減が見込める。食品工場での温浴過熱・殺菌半導体製造工程での洗浄、塗装工程での乾燥過熱などでは、80度摂氏レベルの温水が使われている。通常は、油やガス焚きのボイラーで製造した温水は、そのまま捨てるか、冷却塔で冷やして捨てていた。熱を運ぶ冷媒はHFC-134a。冷媒を蒸発・圧縮・凝縮させるシステムは、蒸発器凝縮器、の二つの熱交換器と、ターボ圧縮機モーターで構成され、消費電力を抑えるためにインバータ制御を採用している。」と報道していました。
ジャパニーズクールや日本食がこれだけ世界に広がってきており、農産物も食品製造業の加工食品も大きく世界に打って出る好機が到来しているのに、農協を圧力団体とする“税金にたかる農政”が手かせ足かせをはめています。国民プロ農家のための農政に転換し、プロ農家や食品製造業が世界に打って出ることを積極支援する農政に変貌を遂げて欲しいと切望します。

*1:「よくわかる食品業界」 ISBN:9784534042132