113-2/4 日本のものづくり競争力と日本的な心や文化
本稿は、日本のものづくり競争力と日本的な心や文化の関係を、素材とデバイスの中間のファジーな領域で付加価値を高める機能(役割)を担う部材(マテリアル系生産財)の数多の事例から拾い出していこうとしています。
強い競争力を持つ部材(マテリアル系生産財)から中間財への連鎖をつぶさにみていくと、多くの場合には競争力の源泉を育んできた日本的な心や文化を見出すことができます。
2008年1月1日付電波新聞の新春社長対談で、松下電器の大坪社長が、モノづくりイノベーション本部・原価構築実践研究会のイタコナという考え方を披瀝しておられました。松下電器が使う材料は突き詰めていくとイタ(金属や硝子の板)とコナ(樹脂の粉末など)に帰結するという着眼です。95[マテリアル系の電子部品]で前述しましたが、日本の電子部品の強さは、分解しても判らないような素材を部材化するところからのノウハウです。筆者/青草新吾は「日本企業の強さは、和食と共通する材料や出来映えに拘る文化に支えられている」と実感しています。
マクロ統計で見ると、国際競争力が高い産業の事例として、JEITA世界生産動向調査(第1回)によると、世界シェア5割の電子部品のグローバル生産高は9兆円弱で、国内生産が3兆円弱です。電子部品では京セラ、村田製作所、日本電産など日本文化を代表する千年都/京都の京都企業の割合が高いのが特徴です。電子材料の国内生産は104で前述通り7兆円、あるいは自動車部品は政府機械統計で9兆円弱です。41と42で前述通り、日本国のGDP(国単位でみた付加価値額)の4割強を製造業並びに商社などの製造業由来のサービス産業が生み出しています。