青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

エコシステム型の生産財営業でイノベーション共創と好社会を目指す。

2016-12-30 203.米国トランプ大統領登場のリスクと機会

1920年以降の国際政治の二大潮流(共産主義とリベラル国際主義)のスパイラル変化で、ロシア革命(1905-17)以降の共産主義ソ連崩壊(1991.12)で過去のものとなり、共和党のフーヴァー大統領を破った民主党のFローズヴェルト大統領(1933-)以降に猛威をふるってきたリベラル国際主義も、今回のトランプ大統領選出(2016.11、共和党)で巻き戻しが始まりました。2017年は革命を意味する辛酉(かのととり)の年にふさわしい1百年ぶりの歴史の大転換が始まりそうです。

米国の第45代大統領選(2016.2-11.10)は、筆者/青草新吾も201[2016.7.31 英国のEU離脱と米国の大統領選 ニッポンこれから]で指摘した「メディア偏向報道情報操作」がいかにでたらめで酷いものであるかを実証できるよい機会となりました。日本でトランプ大統領可能性を予見できていたのは、木村太郎氏(ジャーナリスト)や、渡辺惣樹氏(日米近現代史研究家)、高山眞知子氏(江戸川大学名誉教授)など、実際に多様な米国の現実のありのまま、特にハートランドアメリをご存じの方々でした。ニューヨークやロスに時々訪れるくらいの「したり顔で米国通ぶる評論家」の方々の偏見や先入観たるや酷いものでした。・・・VOICE 2017.1で渡辺惣樹氏は「今回の大統領選でメディアの中立性を担保していたのはFOX系メディアだけだった。米国主要ネットワークすべてが反トランプで、特に酷かったのがCNNに登場するジャーナリストやコメンテータの態度。他のメディアの偏向も酷かった。」と寄稿していました。
米国のメディアは殆どが民主党系のリベラル国際主義だそうです。リベラル国際主義は共産主義と同様イデオロギー優先で「レッテル貼り言葉狩り議論封じ」を行います。日本では朝日新聞など同じ手口を真似します。リベラルな米国メディアや国連が「科学を装って政治テーマにしてしまった」のが「地球温暖化」です。164[2009.8.23 排出量取引金づる日本]、167[2009.11.7 CO2削減で貢献する日本の高炉メーカー]、171[2010.4.17 ねつ造報道メディアの環境問題報道]で前述しましたが、日本も既にかなりのお金を巻き上げられてしまいました。地球温暖化では、多くの科学者が「地球温暖化と人類の炭酸ガス排出とは殆ど関係ないのではないか」と考えていますが、メディアにはこのような意見はあまり登場しません。最近の米国ではデパートでクリスマスツリーを飾らなくなったそうです。ポリティカルコレクトネス(PC/偏見や差別が含まれない言葉)は必要です。しかし拡大解釈されてリベラル急進派のイデオロギー聖域化するような濫用は行き過ぎです。道徳や理念といった「モラルを悪用」するという点では、パワーハラスメントの中でも最も悪質で巧妙といわれる「モラルハラスメント」とよく似ています。・・・加藤諦三氏(ニッポン放送人生相談)によるとモラルハラスメントとは「加害者のサディズムが良識や理念のモラルに変装して、被害者の尊厳と人格を壊すことを執拗に続ける陰湿なパワハラ犯罪行為*1です。今回の電通事件のように、多くの日本企業にとって職場の「安全配慮義務違反」は「コンプライアンス(対社員・対株主・対取引先・対消費者・他)」の重要事項です。
今回の米第45代大統領選でトランプ氏に投票した方々の分析をしておく必要があります。まず投票をされた方々で特筆すべきは、米国の歴史で本流を形成してきた中西部の方々、ミシシッピ川オハイオ川に沿ったハートランドアメリカや、元々は民主党の大票田だったラストベルト(Rust belt/錆びついた工業地帯)の方々がトランプ大統領に一斉に投票したようです。上述の渡辺惣樹氏は同じくVOICE 2017.1への寄稿で「多くの米国人がリベラル建前ばかりの言語空間にもう疲れた。建前ではない本音のアメリ取り戻そうとトランプに投票した。安倍政権を含めて自民党は、大きな政府民主党のリベラル政策に近似してきた。トランプ政権は共和党の小さな政府を志向し、過度な政府規制を排除し、民間経済を活性化させようとしている。大きな政府を目指す自民党安倍政権がどのようにトランプ政権と折り合いをつけていくのか、難しい舵取りになろう。」と述べておられます。・・・一方で、トランプ氏に影響力を行使する政治勢力については、反グローバリニズム勢力からの支持が目立ちましたが、この反グローバリズム勢力に加えて、中西輝政氏(京都大学名誉教授)は「伝統的グローバリズム(アングロサクソンユダヤ系)に属する金融業界、ニューヨーク、ワシントンの面々にはトランプ支持者がかなりいた。もっと注目すべきは新たに登場してきた無政府主義に近いネオ・グローバリズムがトランプ政権に便乗しだしたこと。ネオコン(筆者は異論あり後述)や新興のヘッジファンドSNSとそのフォロワーなどである。2016.6のブリグジット(Brexit 英国EU離脱)では、反グローバリストネオ・グローバリストが、伝統グローバリストをなぎ払った。シティの中の新興金融勢力EUの規制を嫌って、反グローバリストの離脱派に大量の資金を供給して、ブリグジットを実現させた構図である。トランプ政権下では、これら反グローバリズムと伝統グローバリズムに加えて、ネオ・グローバリズム、の三つ巴の主導権争いがどうなっていくか、三つ巴の構図から分析していくことが求められる。」とVOICE 2017.1に寄稿しておられました。
米国のネオコンとは、元々はロシア革命ソ連から追い出されてメキシコで暗殺されたトロツキーからの流れもあると聞いたことがあります。リベラル国際主義をパワーアップしたFローズヴェルト政権(1933-1945)の時代あたりからは、米民主党と合流し、戦後の冷戦時代には米民主党タカ派として強硬な反ソ連共産主義の国際主義を推進、共和党に近づきだしたのはレーガン政権あたりからで、親中嫌日クリントン政権時代の中東政策への反発から共和党に鞍替え。続く共和党ブッシュ政権時代にイラク戦争を主導したのがネオコン。今回の共和党の大統領候補の指名では、共和党内で反トランプに回ったのがこのネオコン共和党内ではトランプ氏が勝利したことで、ネオコンはヒラリー支援に回ったともいわれています。中西輝政氏が言われるようにネオコンにとってトランプ政権への便乗はそう簡単でないような気がしてます。しかしビジネスマンあがりのトランプ氏ですから「ネオコンの利用価値が出てくれば」利用するでしょう。それがどのような場合かは筆者/青草新吾にはよく分りません。
共和党は、第3代大統領ジェファソン(1801-1809)のリパブリカン自由主義(Republican) といわれる「小さな政府・緩やかな共和国連合(分権連邦政府)」から発展した「家族共同体の自治自由」を標榜する政党です。第16代リンカーン大統領(1861-1865)が「奴隷解放を主張」したのは北部の商工業者を支持母体としていたからです。外交については、総じて「反共且つ親日嫌中・嫌国連国益重視の対外不干渉主義」といえそうです。・・・民主党は、ジェファーソンの対極としてハミルトン(-1804)が目指した「大きな政府・連邦主義(中央集権連邦政府)」から発展した「各個人の自由リベラル国際主義」とを標榜する政党です。「奴隷解放に反対」したのは南部の白人を支持母体としていたからです。外交については、総じて「容共且つ親中嫌日・親国連リベラル国際主義」といえます。・・・この民主党のリベラル国際主義からでしょうか、米国の対外戦争は、第一次世界大戦第二次世界大戦朝鮮戦争ベトナム戦争、とすべて民主党が主導しました。・・・米共和党と米民主党について実によく整理されたブログ*2を見つけましたので貼りつけときます。
日本経済と生産財営業にとって、重要性が一番高い国はやはり米国です。手前どもビジネスマンの肌感覚からは交易による利益を日本にもたらしているのは米国市場が一番です。OECD(経済協力開発機構)やWTO(世界貿易機関)が発表した「付加価値貿易統計」がこの肌感覚の正しさを立証してくれました。日本の輸出先トップは付加価値ベースでは今でも米国です。中韓アジア諸国への輸出も最終的には米国で消費される場合が多いからです。もうひとつこの統計のお蔭で判ったのが、日本の輸出に占める「国内付加価値の割合は85%(2009年)」で「他のOECD諸国よりもかなり高い」ことです。米国向け国際生産分業からの収益依存度が高いだけに、トランプ政権の貿易政策から影響を受けやすくなっているから要注意ではあります。

リベラル国際主義のポリティカルコレクトネスにケチをつけるわけではありませんが、国際舞台で「人種平等最初に主張したのは日本だという歴史的事実」を銘記しておきたいと思います。パリ講和条約(1919)で日本の牧野伸顕が提出した「人種差別撤廃提案」に反対し葬ったのは、議長だった米民主党ウイルソン大統領と英豪です。・・・太平洋戦争については、1933年の米大統領選で共和党のフーバー第31代大統領(日本と連携して共産主義と対決する)が敗れて、第32代でFローズヴェルト(ソ連・中国と連携して日本と対決する)が就任した影響が大きかったと思います。この点では、米政治学会長と歴史協会会長のチャールズ・ビーアドなるお方が1948年の出版で「日米は戦う必要なかったのに、ローズヴェルトは表向き不戦の態度を貫きながら、裏では日本に先に撃たせるべく、日本を追い詰めて、開戦へと突き進んだ」と発表されたことがあるそうです。
144[2008.10.25 米国人による東京裁判批判]で、江崎道朗氏の寄稿「「戦前において米国の保守主義者たち強い日本がないと、米国による極東への介入が起こり、戦争に巻き込まれると考えていた。戦争は必然的に政府権力を強大化させ、国民の自由を抑制する全体主義に発展するから保守主義者は戦争に巻き込まれることを嫌った。」を紹介しましたが、この一文は、米大統領になるトランプさんの発言通底するものがあります。米共和党保守主義者(反共且つ親日嫌中・嫌国連の国益重視の対外不干渉主義)にとっては、強い日本が防波堤となって、米国を巻き込まないでくれというところが本音でしょう。そのうえで対等な日米同盟を期待しているのです。中国寄りで日本を抑え込みながらの米民主党の容共リベラル国際主義の中での従属的な日米同盟よりは、対等な日米同盟に発展させていくチャンスが到来してきているといえます。

過去1百年の国際政治の二大潮流(共産主義リベラル国際主義)のスパイラル変化、螺旋を上から見ると巻き戻し、横からみると次の次元への昇華が始まったようです。日本にとっては「リスクと機会」が大きく広がっているといえます。ロシア革命以降の共産主義は、ソ連崩壊(1991.12)で下火になり、米民主党のFローズヴェルト大統領(1933-)以降に猛威を奮ってきた、そして敗戦後の日本を支配し洗脳してしまった「リベラル国際主義と戦後」の終わりの始まりです。その脈絡で、トランプ大統領の登場は、クリントン大統領よりもベターといえます。この機会を活かしていきたいものです。政治家の皆様、よろしくお願いします。手前どもビジネスマンも「日本国の稼ぐ力」をさらに高めていきましょう。