青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

2017-01-21 204. トランプ時代のデフレ脱却と自動車ロボット産業

本日のトランプ大統領就任に象徴される大転換の一つは、アジア太平洋の時代の幕開けともいえます。生産財がおりなす最終製品で、ロボット分野は「米国を含むアジア太平洋が世界需要の過半を占める」ことになりそうです。またロボットメーカーの乱立が予想されるチャイナ(支那/中国)には中間財の供給が有望です。

国民全体がある程度豊かになるためには「稼ぐ力を高める」ことが必要です。競争力の高い財サービスに移行し、労働が生み出す付加価値に対する適正な分配で、従業員が消費者として消費活動をより活発化することで循環が生まれます。個人会社地域国家稼ぐ力を高めていく必要があります。個人や会社の生産性を高めながら、役所政治家による税金の無駄遣い無駄ドリを進めるには構造改革規制緩和が必要です。個人の生産性や所得を高める働き方改革や、次世代への貧困の連鎖を断ち切るひとり親など貧困家庭の子ども支援も必要です。

生産財営業の観点からは、最終製品の次世代自動車ロボットに多くのビジネスチャンスを見出せそうです。自動車産業では、1百年ぶりの大転換が始まっています。パワートレインの電動化に加えて、自動運転やインターネット利用で、ADAS(Advanced Driver Assistance System)やGNSS(Global Navigation Satellite System)といったイノベーションから様々な派生需要が生まれてきます。
ロボット産業も、産業用ロボットに続いて様々なサービスロボットの市場投入の動きが活発になってきています。JEITAが2016.12に発表した需要予測を電波新聞2017.1.10付が紹介していました。産業用ロボットに加えて、これから実用化が始める「非産業用のサービスロボット」は、4種の需要、より具体的にはa.コミュニケーションロボット、b.業務支援ロボット、c.介護ロボット、d.掃除ロボット、が伸びていくようです。産業用ロボットを含めた「ロボット5種」の世界重要が、15年実績1.7兆円が、25年には38.5兆円へと、年平均成長率36.6%もの重要拡大の見通しが立つそうです。その内訳ですが2025年時点で、aのコミュニケーションロボット20.2兆円へと年平均で76.9%、bの業務支援ロボット7.0兆円へと85.1%もの需要拡大が見込めるそうです。この段階の向け先は、FAインフラ向け270千台、公共ビジネス向け24.8百万台、個人向け34.2百万台、医療介護向け7.0百万台、農業向け2.0百万台。・・・地域別では日本とアジア太平洋31%(内訳で日本が12%)、米州25%、中国20%、欧州24%、ということです。TPPとかぶりますが、米国を含めた広義のアジア太平洋(米国・日本・その他)で括ると過半の56%です。日本にとっては「アジア太平洋という括り」がとても大切で「国別では米合衆国」がきわめて重要です。チャイナについては、最終製品よりも高級部材やデバイスといった中間財が有望です。スマホの市場では、華偽(Huawei)や小米(Xiaomi)のようなグローバル志向の会社は日本製のデバイスや材料を多用しています。ロボットでも同様と見込みます。日本の国民経済の強みは産業集積と素材・部材・デバイスです。

日本にとって「米国とアジア太平洋」の重要性が高まります。その米国にとって「日本の存在価値」は「アジアで米合衆国の国益を維持していくための足掛かり」といえます。「民主党のリベラル国際主義」であろうと、「共和党の内政優先・対外不干渉主義」であろうと、米合衆国の勢力圏は「アジア太平洋米州」というのは変わりません。米国のアジア太平洋への関わりを理解するには、史料で裏付けられた「事実としての歴史」を知る必要があります。米にとって、アジア太平洋は自国の勢力圏です。
米の星条旗州の数を記していますが、米東部の「13植民地がそのまま13共和国」となり、さらにこれら13共和国が連邦を組んで「連邦政府に外交権、徴税権、徴兵権を委譲した1789年の合衆国憲法」からは13州(13 states)となりました。独立当時の13州が今は50州へと増えています。本国の「王権から離脱して共和国を建国」し「資本主義を発展させた」という点では「独立革命は1789年の仏革命と比肩」します。・・・・米の州の増加領土拡大は、1803年の仏からのルイジアナ買収1812年米英戦争を経て、先住民が英国を支援したことを口実に次々に先住民から領土を収奪していきました。先住民だったインディアンの方々から食料のとうもろこしを教えてもらうなどの世話になりながら、反面では西部開拓と称して侵略(中国共産党チベット侵攻とそっくり)を続けました。・・・1819年に西(スペイン)からフロリダを買収し、1823年にはモンロー主義(勢力範囲特定による相互不干渉主義)を発表します。モンロー主義とは「勢力範囲の相互不干渉」を意味します。一国主義とか孤立主義は誤訳です。当時はナポレオン戦争後で、勢力を盛り返した欧州諸国が中米(ラテンアメリカ)に介入しようとするのを牽制・遮断するためでした。・・・・1845年にはスペイン領だったテキサスで、入植者が独立運動を起こした上で、併合(ロシアのクリミア併合そっくりです)し、隣国メキシコとは米墨戦争へと持ち込み、1848年に加(カリフォルニア)州など買収形態で獲得。・・・米で西武開拓史と称する歴史を経て、西海岸に到達。以降、19世紀後半頃から「太平洋への対外拡張」へと進んでいきます。ラテンアメリカに続く勢力圏として狙いを定めたのが「アジア太平洋」です。今の米合衆国はこの延長線上です。1823年からのモンロー主義(勢力範囲特定による相互不干渉主義)は「誤訳(孤立主義)のままだと米の外交を理解できず」となります。本日、日本時間2017.1.21未明に就任したトランプ第45代米大統領の場合の発言も「勢力圏内の内政重視・勢力圏外に対外不干渉主義」と訳すべきと感じます。孤立主義は誤訳です。
アジア太平洋への拡張の最初は1853年以降のペリー艦隊の派遣です。チャイナ(支那/中国)との貿易の中継港を確保するのが目的でした。1898年にはキューバをめぐって米西戦争が起こりますが、最大の戦闘地域は太平洋の比国でした。カリブ海ではありませんでした。モンロー主義を発した共和党、当時のマッキンリー大統領や後の大統領となるセオドアローズヴェルトは、太平洋では実に活発な拡張主義でした。同じ1898年にはハワイ王国併呑を行い、加(カリフォルニア)州からハワイ経由マニラ太平洋の兵站がつながりました。
1905年には日露戦争和平を仲介したものの、日本が露から入手した南満州鉄道利権折半で失敗。日本に要求したものの、日本が反発しました。以降、チャイナ(支那/中国)の利権をめぐって日本との利害衝突が始まります。・・・それでも共和党フーバー第31代大統領までは、共産主義との対決を重視して日本との協力を模索していましたが、第32代大統領をめぐる1933年米大統領で、チャイナ(支那/中国)と協調して日本叩きを優先した民主党Fローズヴェルトが当選したことで、日米対決が加速されて太平洋戦争へと流れていきました。・・・太平洋戦争後、米民主党政権にとっては、チャイナ(支那/中国)の利権を独占できると踏んでいたようですがチャイナ(支那/中国)の共産化で思惑は見事に外れました。「米国というのは敵を見誤ることがよくおこる国」です。・・・冷戦終結90年代半ば以降、トゥ小平(Deng Xiaoping)の経済開放政策でチャイナ(支那/中国)の経済が活況を呈しだしたところで「米証券会社は中国株の急伸を演出して膨大な利益を手にした」ものと推察できます。このタイミングで自動車の「GMも進出」し、今では販売台数が中国で約4百万台弱と、米本土の販売台数約3百万台強を凌ぐようになってきています。・・・そのチャイナ(支那/中国)でも不安定さ不確実性が高まり、米国発のリベラル国際主義衰退が始まったとなると、日本にとってのチャンスが増えます。このチャンスを生かすには、政治家や官僚の「世界とのコミュニケーション能力」なかんづく「米国世論への働きかけ」が重要です。

失われた20年間で「主要先進国の中で日本だけが底ばい」でした。国民の一人当り平均賃金は、過去四半世紀もの間、先進国が2倍前後に伸びた中で、日本だけが底ばいでした。消費者物価も同様でした。・・・過去1百年間の米国発リベラル国際主義最大の経済的受益者チャイナ(支那/中国)だったといえます。その米国発リベラル国際主義衰退しだしたことで、日本には追い風が吹きやすくなってきました。この潮の流れ変化を活かすためにも、日本の政治家は「米国への“親日世論形成”にもっと努力」すべきです。・・・歴史に学ぶとすれば「日本の政治家・官僚は世界と対話するコミュニケーション能力が足らない」ので、いつも日本は後手に追い込まれ日本国民へのとばっちりとなります。
戦前の日米はともに1933年ロンドン世界経済会議(64カ国)までは「ブロック経済に反対し自由貿易を主張」で共同歩調でした。がしかし、同年の第32代米大統領民主党のFローズヴェルトが当選し、潮の流れがニューディール政策を経てリベラル国際主義へと大きく変わりました。・・・ブロック経済形成に方向転換します。当時の日本は今以上に米国への貿易依存度が高かったようですから致命的でした。・・・日本の政治家・官僚は戦前も今も世界と対話するコミュニケーション能力が足りません。例えば満州事変では、「契約したら日本の主張世界に広めてあげます」との売り込みで広告会社セールスパーソン日本大使館に殺到した際に、当時の出淵勝次大使は「日本は下品な宣伝活動などやらない」と追い払ったそうです。一方で、中華民国大使館はその逆でどんどん契約していったといいます。数か月後ジュネーブ会議(1931.11)あたりからは日本の孤立目立ち始めたそうです。戦前のギャラップ調査の米国世論は「対日2%対チャイナ76%」ということだったそうですから、既に「対米情報戦日本は負け孤立していた」といえます。

米合衆国は、前頁203で前述の通り、民主党のFローズヴェルト第32代米大統領の下に集まったニューディーラー以降のリベラル国際主義行き過ぎに対する自浄作用で、共和党トランプ第45代大統領登場してしまいました。米中西部ハートランドラストベルトといわれる本流アメリカ意識の方々が「リベラル行き過ぎ反対」をつきつけた結果のようです。ですからポリティカルコレクトネス(PC/偏見や差別が含まれない言葉)に名を借りたリベラル主導の言論統制行き過ぎも正常化されていくと期待できます。・・・ただしグローバリズムについては、手前どもビジネスマンはもっと正確に分解して理解しておく必要があります。・・・自由貿易は、経済合理性を高めて消費面で人々の生活を豊かにしていると思います。・・・問題なのは「無国籍金融人の移動」です。実体経済からかけ離れたマネーが自由に国境を越えて移動するのは弊害が大きいから規制やむなしです。人の移動も然りです。
政治外交しっかりしてこそ民間の経済活動持続的に発展できますから、内弁慶が多い日本の政治家や官僚の諸氏には是非とも頑張って欲しいところです。テレビや新聞、特に朝日新聞毎日新聞NHKなどは政治色が濃い活動家のプロパガンダのような報道は差し控えて、読者が判断するため事実の報道に努めて欲しいところです。手前どもビジネスパーソンは「より価値が高い仕事の創出」にまい進していかねばなりません。