青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

エコシステム型の生産財営業でイノベーション共創と好社会を目指す。

122-2/3 ISO 9000sと営業プロセス

名古屋NKS社の社長/松尾茂樹氏は、ISO9000sを活用した事業再編に止まらず、営業プロセスの改革にまで踏み込んだ経験を上梓してくれています。

中堅中小企業にとっては、ISO9000sは安上がりな改革ツールとなります。筆者/青草新吾が目を通した十数冊のISO9000sに係る出版物の中で、あるべき論や建前論とは一線を画した実際的な解釈で参考になったのが、129で前述の桐野正義氏の著書*1であり、経営システムのツールとしての有効性に関心を持たせてくれたのが、これから記述する松尾茂樹氏の二冊の著書です。両氏に共通しているのは、ISO9000sの功罪両方を理解した上で、「いかに活用できるか?」とポジティブ思考を展開しておられる点です。
エヌケイエス(NKS)社とは、名古屋市西区城西2丁目に本社を構える企業ですが、上述著書のひとつ「ISOで会社はこんなにかわれる」*2で松尾茂樹氏は「我が社(NKS)は元々、設備・機器のメンテナンス屋であった。経営者である私がISOと出会い、ISOの認証取得を目指して真剣に取り組んでいるうちに、ISOの本質に気づき、経営戦略が劇的に変化を遂げた結果、ISOに絡む業務を行うようになった。今のNKSは、ISOの認証を受けた企業の品質に関わる機器検定校正したり、時にはISO認証取得コンサルタントをしたりなど、ISOに絡んだ業務を行っている。・・・我が社の場合、それまでは漠然とメンテナンスの分野が我々の事業領域だととらえていた。ISOの準備段階で、自社の事業細かくチェックした結果、我社の得意な業務は、メンテナンス全般なのではなく、その一部であるモノはかり、その正しさ証明することだと気づいた。・・・はかることがベースとなっている自動制御メンテナンスなどは、我社の得意な業務に分類できる。測定を得意とする我社向きの仕事なのである。またはかるという得意な領域の確定で、それまで見えていなかった建設業での需要を発見し、新規顧客開拓を進めることができた。・・・反対にエンジニアリング業務は縮小・撤退を進めた。数百万円規模ならこなせるが、10百万円超だと、もう我社のエンジニアはてんてこ舞いしてしまう。ノウハウを持っていないから、コストパフォーマンスも悪い。ISO導入の過程でドメインが確定すると、これは本来業務と違うと明確に判断できることとなり、自信をもって撤退できるようになった。」と事業内容の垢落としと整理について振り返っておられます。事業内容が整理できてくると、次は営業プロセス改革です。
上述著書のもうひとつ「ISOを活かしたシンプル経営入門」*3では人事システム営業プロセス改革を振り返っておられます。改革の過程では社員の1割が辞めていったそうです。ベテランほど頑迷になり易いものです。変化そのものは自然の摂理であり必然です。京和傘京都職人[西堀耕太郎]氏は、伝統とは革新の連続であり、新しきを追い求め続けることであると京都職人としての実感を述べておられます。釈迦は、二千数百年もの昔に、自然の摂理とは生々流転である、万物は絶えず移り変わっていくもので永遠に変化しないものはないと、そして般若心経では色即是空・空即是色*4と無常を唱えています。変化しない絶対永遠などというものはありません。
営業部門への展開では「営業誰でも行える業務とする。ある程度のレベルの営業パーソンを短期間で育成できるようにする。営業とは業種によって扱う商品が違うだけ。営業は営業の業務に集中してもらう。本社的な感覚を営業現場に持ち込まぬこと。そのために本社が必要な資料本社が自分で作る。本社にとって必要な資料を作成するのは本社の業務であって営業に押し付けてはいけない。戦略転換では頑迷なベテランほど守旧派になり易い。」というような見解が記述されていますが、筆者/青草新吾の生産財営業30年の経験からも殆ど同感です。54で前述しましたが、営業能力とは、経営者やスポーツ選手あるいは料理人などと同様に先天的な資質、生い立ち、入社後の鍛錬などの化学反応で格付格差がでてくるものではありますが、プロとして世の中に価値を提供することで生きていく意欲を持つ者であれば、誰でもある程度までは到達します。テニスをしたければ誰でもある程度までは到達できるのと同じです。稀有な天才に依存する発見や発明の世界とは異なって、生産や営業の事業組織では、誰でも到達できるレベルの個々が集団と組織を形成し、組織能力を高めて付加価値を創出する企業間競争をしています。この点で著者の松尾茂樹氏は「営業ISO的に変えるとは、まず一つは、基本的なやり方会社が決定する責任を負うこと、もう一つは、営業の結果も会社が責任を負うこと。そのためにうまくいっている営業パーソンやり方など集大成し、出来上がった営業手法会社のスタンダードとして公式に認定する。ISO的に営業を整理すると、やり方は会社が決定したのだから、仮に業績が悪くとも、それはまずいやり方を決めた会社の責任となる。営業パーソンは、営業のやり方についても、その結果についても一切の責任を負わず、ただ会社のやり方遵守する責任のみを負う。今までは不穏当な言い方であるが、個人の行き当たりばったりのやり方に左右されていた。これでは企業の存在自体が不安定になる。企業にとって営業の業績には死活問題がかかっており、営業は最重要の業務である。その業務の品質こそ、ISO的な仕組みで管理し安定化を図るべきなのである。こうしておけば、営業パーソンは業務において絶対に迷わない。また学校を出たての新人でも、専門的な知識さえきちんと身につけさせれば、一定の業務をこなせるようになる。実際、我社の販売システムを、産業機器の販売会社医療機器関係の企業販売したが、この二社では我が社の営業システムがうまく機能しているそうだ。ISO的に業務を整えてみれば、営業というのは一見複雑そうで、意外と単純だということがわかるのである。」と、そしてここまでくると「決して社員を個人攻撃してはならない。失敗させたのは仕組みが悪い、仕組みが悪いのは会社が悪いのである。社員に責任を押し付けてはならない。社員の責任追及などするのではなく、せっかくの機会を仕組みの改善へと活かすことを考えるべきである。」と強調しておられます。

*1: 「ISOを活かした戦略的経営」ISBN:4835554221

*2:「ISOで会社はこんなに変われる」松尾茂樹著 ISBN:4492553525

*3:「ISOを生かしたシンプル経営入門」松尾茂樹著 ISBN:4492554378

*4:「生きて死ぬ智慧」柳沢桂子著 ISBN:4094802614