129-1/2 中国共産党6千万人
中国共産党は行政・立法と警察権に加えて軍隊(共産党軍事委員会)まで抱えていますから「すべては力次第」と真善美や自由競争からは程遠い利権まみれの腐敗社会を生み出しています。
中国で最も繁栄したのは元(モンゴル帝国)や清(満州帝国)の異民族支配を受けた時代のようです。24(?)もの王朝が易姓革命で支配層入れ替わりの度に歴史も書き換えられたそうですから、異民族から支配されて栄えたことを認めたくない漢人から発せられる中国4千年の悠久の歴史というのは宣伝用のフィクションに過ぎませんが、過酷な歴史の中で[何事も力次第]という思考スタイルが蔓延した社会であることは間違いないようです。
四川(Sichuan)出身で今は日本国籍の石平氏/拓殖大学客員教授は、党員6千万人を抱える中国共産党の性格に関し137で前述の共著*1で「中国では、すべての権力あるところに共産党ありなのです。銀行なら銀行幹部が共産党、税務署なら税務署幹部が共産党、大学なら大学学長が共産党、中国ではすべてのところに共産党組織と共産党員がいる。例外は私企業トップですが、財産内容などすべてを共産党が把握していますから、共産党がその気になればいつでも潰せるのです。」と、対談相手の日下公人氏は「日本では旧大蔵省と現財務省が中国共産党に近いことをやってきた。ありとあらゆるところへ天下りで大蔵省出身者を送り込み、税務署情報を支配力強化に濫用し悪用してきた。橋本龍太郎さん、あなた脱税していますよ、などと脅したりする。役所しかない情報を自分たちの思惑のために利用した。安倍内閣を潰そうとして新大臣を一人一人潰した。だからこそ財務省からは税務署を分離すべきです。」と、これに対し石平氏は「でも中国共産党は、日本の財務省に加えて軍隊と警察を持っているのですからとてつもなく異常です。自民党が政権党だということと、中国共産党が政権党だということは全然違うのです。」と、そして中国共産党の出世パターンに関し「私企業を除けば、偉くなるには、まず共産党員になる、からです。日本みたいな試験制度は、一般の下っ端の公務員にはあるんですけど上のほうはない。そこから上がっていくのですが、出世とは上司に渡す賄賂の金額の多寡で決まるんです。日本と違うのは仕事ができるからと引っ張られるのではないということです。例えばX社社員が入党したければX社共産党支部の支部長に申請書提出を行い支部長からは2-3年間の観察を受けます。観察というのは党員にしてやったら俺にちゃんとしてくれるか?つまり支部長は若い社員から2-3年間、取れるだけの袖の下をとって推薦する。支部長は、賄賂を受け取って喜んでいるだけでなく、自分も支部長である限り、支部長の上にも賄賂を渡さないと、来年はその支部長の地位が危なくなる。それで共産党員になってだんだんと出世していくためには、まずは幹部に現金と賄賂を渡し、次は命令されたことをやり遂げる。そのときは下々に迷惑をかけても構わないが、上には絶対に迷惑をかけてはいけないんです。(日下公人氏:すると一番やりやすいのは外国企業を絞ることとなる。)」というのが中国共産党で出世していくパターンとのことです。
共産党に人材を送り込む教育環境に関し、作家の河添恵子氏は正論2008年8月号で「世界三十カ国以上の小学校や中学校を長年、取材してきた私の目からみると、中国の教育現場はクローン人間の大量製造工場ってことらしい。中国の授業は、アドリブなしの決め言葉をリハーサル中って感じ。台湾の学校は雰囲気が違う。少年たちはとにかく無邪気で自然。韓国ソウルの中学生は青春そのものだった。なぜ中国人は価値観の多様化ができないのだろう。世界の学校教育は、思考型と暗記型に大別できる。PISA(経済協力開発機構の学習到達度調査)は読解力、科学的リテラシー、数学的リテラシーを問うが、求められるのは知識ではなく応用力。好成績を修めるフィンランドの思考型教育の対極に位置するのが中国の暗記型教育。中国人エリートとはまさに知識大食い競争の勝者。知識とテクニックをモノにしたロボット型秀才は沢山いても、奇想天外なオリジナリティー溢れる天才型は少ない。中国の子供たちの特殊性とは自由な時間をほとんど持たず、スポーツ、同世代との対等な人間関係、遊びなどでの思考すら置き去りのまま、教科書に書かれたウソでもホントでも中国政府が決めた暫定的な正しい内容を読み書き含め丸暗記している点だ。中国の子供に重くのしかかるのが漢字の存在である。日本語はひらがな、カタカナ、それに数字の読み書きまで習得すれば100%表記できる。まさに世界でも類稀な秀逸な発明言語といえる。そのお陰で、花や虫の名前など、子供の図鑑をめくったりスーパーなどの日常生活からでも自発的に学ぶことが可能である。反対に中国では、小学校に入った途端、子どもたちは漢字の読み書きに膨大な時間と労力を日々費やす。正確な発音を含めた漢字表現を丸暗記しなければ、大人そして先生の話を聞いても理解できない。例えばピーマンは青椒、パソコンは電脳、と漢字が表記の唯一の手段であり、漢字を知らなければ、理解していることをペーパーテストで発揮する手段がない。ボキャブラリーそのものが頭になければ、脳裏に何も浮かばないため、会話がところどころ空白のままになる。・・・中国には都市部のみならず田舎までもないのが、スポーツを通じて競い合うという習慣。大人にしても競い合うのはマージャンなど博打系。とりわけグループで行う球技は疎遠だ。地域スポーツも疎遠なようである。私が知る限りでは、唯一、中国の子供たちだけがそういう環境&習慣がない。全身で競うことによって味わう喜び、悔しさ、感動、相手を称える、仲間との一体感といった湧き出る感情を経験することなく、大人になっていく。・・・チベット系やウイグル系の自治区などを除き、中国ではひたすら唯物的で、見えないものに対する感謝の念を抱くことも、反省の気持ちを抱くこともない。大自然に対する畏敬の念を持っていない。人間を超越した力や宗教(心)が社会の規範となってきた歴史がない。バイブルもコーランも仏典も不要。民族としての一貫した倫理観や道徳観もない。」と専門家の視点を披瀝してくれていました。
中国経済の発展予測に関し日下公人氏は上述共著で「表面的、短期的な議論ですね。戦後アメリカからマクロ経済学が入ってきて、マクロ経済計算というのが大流行して、乗数効果とか波及効果といった係数を入れて計算すれば将来の所得や生産が分るという話でしょう。でも、あれはモデルごっこで計算ごっこなんです。その乗数効果は、国民の勤勉の精神とか会社同士が助け合うとか、真面目な技術者がいるとか政府が経済に干渉しないとかの要素があってのことで、そのことを抜きにして、波及効果はどうか、乗数効果はどうかといっても意味はない。日本の場合、乗数効果は2.4だった。しかし田中角栄さんが登場して無駄な公共事業を増やしだしたらどんどん下がった。1より以下になったとき、ゼロ成長時代がきた。」と述べておられますが、次頁では、ビル・エモット氏/英エコノミスト誌元編集長の近著[アジア三国志(中国・インド・日本の大戦略)]を参考に、欧米からみたアジアを記述してみます。
*1:「中国の崩壊が始まった」ISBN:9784898315842