138-1/2. 金文学さんの助言「中国の反日は裏表の二重心理をみるべし」
中国の反日とは、反日日本人が中国訪問の度に煽り立ててきた反日、親中日本人による中国の支配層と癒着した振る舞いに対する反発からの反日、中国共産党の対日交渉カード、・・と多層的なようです。
中国人(漢人)の反日について中国出身の金文学氏は近著*1で「2005年春、中国で反日騒動が起こったとき、実は反日騒動の裏側では、多くの親日的、媚日的中国人がいたことが日本では知られていない。中華思想の表側だけを鵜呑みにして、中国人をステレオタイプの先入観や固定観念で決め付けてみるのは危険である。中華思想の裏側に潜む、もう一つの深層を見破ることこそ、中国および中国人を見極める極意である。阿片戦争以前、中国人は西洋人を洋鬼子や禽獣と呼び、一敗地にまみれると、今度は洋大人として崇拝する。こうした表裏の二重心理こそ、中国人なのである。この表と裏の呼名がいかに変わるかは、自分自身の状況しだいである。相手が劣勢の場合は鬼子であり、自分にとって利益をもたらすとなればすぐさま大人になってしまう。日本および日本人に対する態度も、この二重構造の表れにすぎない。」と述べています。
親中日本人の中国支配層との癒着と振る舞いに対する一般中国人の反日感情について漫画「危ない中国」*2は「あの政治家の鷲尾みたいな日本人はたくさん見てきました。・・・・あの文革の時代も、農民たちがバタバタと餓えて死んでいる時に、日本人の訪問団は、困窮している農村の実態に気がつきもせずに、中国政府の招待でやってきては、物見遊山をした挙句、共産党政府の支持者になって帰っていった。・・・今まで見てきた日中友好人士とよばれる日本人たちは、中国の権力に媚びへつらう人間ばかりだった。中国では、いったん権力者の側に立ちさえすれば、実に快適に暮らすことができる。国家の車も住宅も使い放題。そのような中国の権力者に近づく日本人は、口先では日中友好を言いながら、中国人の悩みや苦しみなんか何もみていない。中国社会の実態なんか見て見ぬふりで、共産党政府の喜ぶような発言ばかりする。中国政府の金で飲み食いし、観光しては帰っていく。・・供応した支配層の中国人は見返りとして娘の留学を手配してもらったりする。」と説明していました。
反日日本人が中国に出かけてまで煽りたてる反日について、中国留学の経験もある中国専門家の富坂聡氏は著書「苛立つ中国」*3で「靖国参拝を日中問題にしてしまった張本人は中曽根元首相ですが、わざと火をつけて回った日本人たちがいた。日本の国内問題を中国に持ち込み、火をつけて回った日本人とは、社会党の議員や朝日新聞の記者たちのことである。彼らが靖国問題に火をつけるために、中国という外圧を利用したことはすでによく知られた話だ。・・・日本からでかけていった社会党の議員や朝日新聞の記者たちは胡耀邦(Hu Yaobang)総書記があまり反応しないとみると、わざわざ地方まで足を伸ばして掻き回した。胡総書記は国内から突き上げられてその後の天安門事件で失脚していった。・・・日中外交に本当に危機的な状況を作り出したのは、日頃から親中を標榜しながら狭い視野しかなく、自説をゴリ押しするためならば手段を選ばない勢力のエゴイズムだったといって過言ではない。」と記述しています。また、小泉首相の靖国参拝に関して、関西経済同友会は「政治と経済は別、政治の世界にでしゃばるべきでない」という立場ですが、東京の経済同友会(東京経済同友会)は2006年に代表幹事/北城恪太郎氏が参拝自粛を訴えました。この東京経済同友会に関し富坂聡氏は「はっきりいえば、中国に反日感情を引き起こしている淵源は、日系企業や日本の経済界にあるのである。小泉首相の靖国参拝にクレームをつける前に、もっと自分の足元を見るべきである。靖国神社の参拝を取りやめたとしても、それは相手を刺激しないというだけのことで、根本解決とは程遠い。現地に最も多くの人間を派遣している経済界が、なぜ中国人の持つイメージを根っこから塗り替えようとする発想を持とうとしないのか。そのことを踏まえて考えなければ05年4月の反日デモの本質は見えてこないのだ。馬鹿の一つ覚えのように単に“首相の靖国参拝反対”と繰り返しているのは、思考停止という以外にないだろう。対インドネシアで日本が踏んだ轍そのものが、今また中国相手で繰り返しが行われている。例えば“共産党の権力者さえ押えておけばなんとでもなる”という台詞は、中国に出て行った日本のビジネスマンたちが常套句のように唱える文句だ。これほど中国の一般人を無視した考えを如実に表現した言葉はない。」と述べています。富坂聡氏は、日本の陋習(ろうしゅう=良くない風習)の一つが、相手国の権力に取り入ろうとするあまり、相手の一般国民の目線を気にしないことであると指摘しています。日本の陋習から日本がインドネシアで踏んだ轍についてマイケル・グリーン氏[元米国NSC(国家安全保障会議)のアジア上級部長、今はCSIS(米国戦略国際問題研究所)の上級顧問]の言葉「日本はかってODAなどを通じインドネシアで物凄く大きな影響力を持ったことがありました。しかしスハルト大統領が失脚すると、日本の影響力はゼロになってしまった。いやゼロ以下です。あれほど湯水のようにODAを使ったというのに。日本のお金も関係も、すべてスハルトという権力者とその一族との間にしか築けなかったからです。だからいま、民主化されて生まれたインドネシア新政権もインドネシア国民も少しも日本に感謝の気持ちを持っていない。」を引用しています。宮崎聡氏は、正常な日中関係を構築していくために「これから中国で起こる民主化のプロセスは、日本が中国の権力ではなく中国人と向き合う千載一遇のチャンスである。自由や人権に絡む問題が持ち上がれば、日本は、中国共産党政府がいかなる圧力をかけてこようとも支持し、亡命者も受け入れる。そうすることで日本の価値観を中国人にむかって発信する。中国ではなくて中国人に大して発信する。中国人の頭の中で日本のイメージが民主化と重なれば、日本を受け入れるようになるかもしれない。いやむしろ、日中問題の解決の糸口はそこにしかないかもしれない。もしも日本がこの機に権力とばかり通じて民主化の動きの逆風となれば、日本は再び50年間は中国人の敵であり続けることになるだろう。」と提言しています。
*1:「混(フン)の中国人」金文学著 ISBN:9784396613174
*2:「危ない中国」ISBN:9784796664578
*3:「苛立つ中国」富坂聡著 ISBN:9784167717957