青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

生産財の青草新吾1はリタイア。シニアの青草新吾2は複業で貢献を目指す。

125-2/2 携帯電話の実装設備と金型など

携帯電話の小型・薄型化を主な背景として部品のマウンタ(実装機)メーカー各社による半導体製造の後工程分野への参入が活発になっています。

電波新聞2008年3月4日付は「多機能をいかに軽薄短小の筐体に収めるか。薄化を目的に、パッケージングしない裸のICチップを直接基板に載せるベアチップ実装や、ワイヤボンディングに変えてバンプと呼ばれる突起状の端子で実装面積を減らし、2層3層に重ねる3次元実装チップの需要が高まっている。パナソニックファクトリーソリューションズ(奥田信夫常務)は、ベアチップチップ部品混載ができるマウンタ(IPAC)をはじめ、ベアチップを基板やリードフレームに実装するダイボンダーバンプ付のベアチップを表裏反転させて実装するフリップチップボンダー、プラズマを応用して」リードフレームの金線表面を研磨し、ボンディングをスムーズに行うプラズマクリーナー、ドライバーICを高精度に実装するFPDボンダーなどを市場投入している。ヤマハ発動機(加藤敏純IMカンパニープレジデント)は、マウンタを応用したベアチップ実装対応i-CUBU2Dを1月から発売開始した。迎え撃つ半導体製造後工程装置メーカーで、ダイボンダー大手の新川(田辺哲也常務)はICチップを直接FPCにボンディングするCOF(チップオンフィルム)ボンダーのCOF-1000を発売開始した。」と報道していました。
携帯電話機製造付加価値に関しパナソニックファクトリーソリューションズの上野省三氏(電子部品実装ソリューションビジネスユニット参事)は電子材料2008年3月号で「現在、日本の携帯電話機製造コスト全体に占める実装コスト(人件費、設備償却費、家屋費、原動費、およびはんだや接着剤や窒素などの材料費)の比率は7%であるが、今後は付加価値半導体パッケージプリント配線板に向かう可能性が高く、実装の付加価値はさらに低下する可能性がある。実装設備メーカーとしてはこの点を考慮し実装コスト低減に向けた実装設備開発を行う必要がある。・・・最小部品サイズとしては、0402サイズ部品実用上の限界と考えられる。現在の吸着方式で0402サイズより小さい部品対応は物理的に困難。」と述べておられました。またJUKIの永嶋弘和氏(常務・産業装置事業部長)は電波新聞2008年5月26日付で「当社は電子部品半導体混載実装機の分野を強化する。トップシェアの中速機に加えて、高速機のFX-3を投入した。事業拡大のためには携帯電話など高速大量生産に対応する高速機が不可欠である。高速モジュラマウンタのFX-3は、搭載タクト数が最適条件時74千CPH、IPC9850準拠60千CPHを実現している。奥行きが1650ミリで、高速もジュラマウンタの中では業界で最もスリム。面積生産性の向上に貢献する。0402チップから33.5ミリ角部品にまで対応する。本体価格は37.8百万円。初年度4百台の販売を計画している。混載機実装機では、半導体混載のトレンドに対応して、今後3次元実装の分野にも積極的に対応し、高速機とともに事業拡大の柱にしていく。08年度は産業装置全体で310億円の売上を計画している。売上の5割を占める中国市場でもFX-3を中心に需要を拡大していく。」と述べておられました。
携帯電話の金型に関し、サンクス社が2005年にスタートしたものづくり日本大賞経済産業大臣を受賞しています。受賞内容は、金型生産工程熟練レス化超短納期の実現です。インクス社長の山田眞次郎氏は、三井金属デトロイト駐在時代に「ITで熟練の技を無駄なく生かせる」と実感し起業を決意、金型製造9割自動化単純作業に切り替え、職人が残る1割に集中する工程を設計し、45日かかっていた携帯電話の金型設計・製作を45時間でできるようにしたとのことです。12[金型産業の進化/2005年5月]で記述した伊東製作所社長の伊藤澄夫氏*1の金型産業の生き残りと進化のモデルは「比国(フィリピン)で金型を設計し、日本で加工して金型を仕上げる」でしたが、本件インクス社のモデルは「熟練作業への依存を無くして、IT化ノウハウによる超短納期化で競争力を高めた」モデルといえます。
上述実装設備との関連では、部品実装面積縮小と工程削減のために132で前述した機能ブロックモジュール化IC化が進んでいます。電波新聞2008年5月29日付は「携帯電話ではアンテナの切り替えスイッチ部や、送受信フロンエンド、TCXO(温度補償型水晶発振器)、VCO(電圧制御発振器)、RTC(リアルタイムクロック)、に加えてワンセグチューナーFMチューナーGPS、赤外線通信部、ETCフロントエンド、などもモジュールされてくる。無線LANモジュールBluetoothモジュールは、携帯電話への搭載や車載需要の拡大が期待されることからより小型・高集積化へ向けての開発が進められている。さらに、今後普及が期待されるモバイルWiMAX端末向けでは、世界最小15ミリ角RFモジュールが開発されている。」と報道していました。
半導体産業新聞2008年5月28日付は、携帯電話の高機能化で需要が大きく拡大しているSAWフィルターに関し「SAWフィルターでトップの村田製作所は、08年度について金額ベース15%プラスを見込んでいる。MLCCと同等の利益率を有する同製品の増産を積極的に進める考えで、仙台に取得した新工場での生産を開始し、供給体制を拡大させていく。SAWフィルターは昨今、携帯電話高機能化マルチバンド化に伴い、1台当り搭載員数増加しており、需要が大きく拡大している製品の一つ。」と、また携帯電話向けSi(シリコン)マイクと音源LSIに関し同紙同日付でヤマハ執行役員半導体事業部長の小原辰三氏は「携帯電話向けSIマイクは、先行メーカーが圧倒的なシェアを形成しているが、まずはセカンドベンダーの地位を確保したい。現状サイズは1.5ミリ角だが、小型化については技術的なめどはたっている。携帯電話用音源LSIは急速にソフト化が進んでいる影響により、特に海外需要が減少し苦戦を強いられている。ピーク時は売上げの8割を占めていたが今は6割程度。付加価値向上をキーワードに維持拡大に努めていく。アナログハイブリッドIC(HIC)、MEMSの3事業の施策を進めることで08年度売上高370億円を見込んでいる。」と述べておられました。

*1:「モノづくりこそニッポンの砦」伊藤澄夫著 ISBN:4769361564