青草新吾の惺々著考 glocaleigyo

エコシステム型の生産財営業でイノベーション共創と好社会を目指す。

168. 日本の素材産業とアジア市場

輸出なかりせば“食べていけるのは3千万人くらい”といわれる日本列島の産業と雇用の縮小をできるだけ食い止めていきたいと切に願うものです。日本の“国内生産と雇用の最後の砦”といわれてきた素材産業ですが、アジア需要をどこまで囲い込めるのか正念場を迎え始めています。

日本のお家芸とも言われてきた素材産業電子部品の世界シェアがじりじりと下がり始めています。国際競争は政治とも密接に絡んでいますが、今の“急激な円高”は、明らかに“政治の無策”によるものといえそうな気がします。日本が衰退していくのを何とか食い止めていかねばなりませんが、一方では企業個人地域共同体保守していくためにも、“現実検討”を怠らず、生き残っていかねばなりません。“事実に基づく判断”がますます重要となっていきます。
飲料缶で使われるブリキの需要が、東南アジア(アセアン)と中国で伸びています。鉄鋼新聞2010年7月8日付は「人口の多さと経済成長に伴いブリキ需要は増加する。米州欧州アジア各5百万トン15百万トン市場が長らく続いたが、アジアの伸び18百万トンへの拡大が見込めれている。飲料食品用途なので安全性で高い品質が要求され、板厚が0.2ミリ前後と極めて薄いことから、生産できるミルは、世界でも限られている。日本のブリキ(ティンフリー)輸出量年間800千トン前後で安定。缶用鋼板の需要は、先進国の例でみると人口一人当り9キロ程度まで伸びるとされる。欧米市場成熟傾向で、西欧を拠点とするアルセロールミッタル(AM)の事業会社のAMパッケージングは年産能力1.8百万トンへと約1割削減。薄物であるブリキは、高い生産技術が必要で、競争力があるメーカーは限られるから、供給増の動き乏しい品種になっている。南米では、チリのCSH社が、1基保有していた年産能力100千トンの電気錫めっきライン(ETL)を休止した。伯国(ブラジル)唯一のブリキメーカーであるCSNは、3基保有するETLのうち1基を電気亜鉛めっき鋼板(EG)生産ラインへと改造した。・・・アジアでは、日本約1百万トン韓国0.3-0.4百万トンで、需要拡大は一服。韓国では、ポスコが電気錫めっきライン(ETL)を中国に移設し、07年からは厚板のローモを輸出する体制に移行し、ブリキ生産から撤退した。・・・中国ではブリキの年間需要が3百万トン規模。半分は工業用や雑缶。低級ブリキの年産能力は1百万トン規模。飲料缶などの高級ブリキの需要の伸びはまだ途上でこれからとされる。」と試算される。中国のブリキメーカーは、宝山鋼鉄が年産能力1.2百万トンで圧倒的な大手、武漢鋼鉄が年産200千トン。新日鉄廣州太平洋馬口鉄(PATIN)が年産能力200千トン、JFEスチール福建中日達金属が年産能力170千トン、海南海宇錫板工業が350千トン、ポスコ華北拠点の中山中号など外資系も多い。・・・アセアン(東南アジア)では、泰国(タイ)で、新日鉄系のSTPが年産能力260千トン、JFE系のTTPが年産能力440千トン、馬国(マレーシア)では、JFE系のペルスティマが年産能力170千トン、尼国(インドネシア)では新日鉄が買収したラティヌサが、越国(ベトナム)では、JFE系のペルスティマ・ベトナムが年産能力80千トンで既に現地生産している。インドでは、有力なブリキミルがタタ製鉄系のTCILに限られる。」とまた同じく鉄鋼新聞209年11月12日付は「世界のブリキ市場は16百万トンとされ、食品関連や人口増もあって年率2-3%の安定成長が続いている。中でもASEANのブリキ需要の伸び率4-8%比較的高い。一方、供給面では安全性などブリキは高い品質が求められる高級薄板のため、原板のローモを一貫で生産し供給できるミルは新日鉄のほかJFEスチール、韓国ポスコ、中国・豊山鋼鉄など世界有数の大手に限られている。・・・・新日鉄インドネシアのブリキメーカのラティヌサの買収を決めた。新日鉄による海外のブリキ生産拠点は、中国の廣州太平洋馬口鉄(PATIN)、泰国のサイアム・ティンプレート(STP)に続く3社目となる。 」と報道していました。
電子機器自動車コネクタなどで使われる[[伸銅品]]の需要が伸びています。日本伸銅協会が発表した09年度の伸銅品の国内生産実績が鉄鋼新聞2010年4月28日付で掲載されていました。要約すると、品種別にみると、主にグローバル企業の電子機器自動車部品で使用される板条は、08年の384千トンから09年は2.3%増の393千トンへと回復傾向を示していますが、国内の建設分野が主用途の管棒線は、08年の422千トンが09年には15%減の360千トンへと減少し、品種別で真逆の動向を示しています。電子機器や自動車部品で使われることから回復が著しい板条の内訳は、銅条が08年の211千トンから09年は6.6%増の226千トンへ、黄銅条が08年の98千トンから09年は0.3%増の99千トンへ、青銅板状が08年の39千トンから09年は6.7%増の42千トンへと増加しています。国内の需要が主体で需要衰退が続く管棒線の内訳は、管で銅管が141千トンから16.3%減の118千トン、黄銅管も12千トンから21.7%減の9千トンへと減少しています。グローバル企業向けで回復傾向が著しい板条と、国内需要主体で減少傾向の管棒線の両方を合計した総合計では、08年度の806千トンから754千トンと6.4%の減少です。伸銅品世界生産に関し、国際銅加工業者協議会(IWCC)が、欧州・北米・中・日の2008暦年実績は前年比6%減の7.2百万トンと発表していました。日刊産業新聞2009年5月28日付は「中国2.835百万トン。07年の2.832百万トンを僅かに3千トン上回ったことで、IWCCが統計を開始した00年以降で最高を更新。中国国内のインフラ需要が依然堅調で、配電盤や変圧器の部材に伸銅品がつかわれているためとみられる。中国が全体に占める割合は39%。07年の37%から2ポイント上昇。欧州2.393百万トン。輸出産業を中心に企業業績は悪化しており、米国以上の景気悪化も指摘される。米国1.118百万トン。07年比で14%減、過去10年間で最小の生産量。日本0.902百万トン。07年比6%減。」と報道していました。
ステンレス板ニッケル水素電池の原料として使われる基礎原料のニッケル地金について住友金属鉱山は2010年4月16日付で「10年のニッケル需要量は、前年比12.6%増の1.41百万トン過去最高を更新する。 」との見方を示しています。世界のステンレス粗鋼生産に関し鉄鋼新聞2010年3月25日付は「ISSF(国際ステンレス鋼フォーラム)によると、09年の世界ステンレス・耐熱鋼粗鋼生産実績は、24.5百万トン。例外的に中国で26.8%増加し、台湾が13%増加したものの、中国と台湾以外のほぼ全世界で1-3割程度減少したことから、世界需要としては、前年08年対比で5.2%減少した。2009年の生産実績を地域別にみると、最大市場の中国が26.8%増で8.8百万トン、続く中国以外のアジア7.1百万トンで11.6%減、西欧・アフリカ6.4百万トンで22.0%減、米州1.9百万トンで14.4%減、中・東欧が28.9%減の0.2百万トン。世界の中で例外的に需要が伸びた中国と台湾だが、中国は過去最高を記録し、世界シェアが08年の27%から09年の36%へと拡大し、中国以外のアジアでは台湾も13%増加した。韓国はほぼ前年並み、日本は27%減、インドは11%減となった。 」と報道していました。ニッケル地金の主な需要分野であるステンレス鋼世界生産に関し、日刊産業新聞2009年6月10日付は「国際ステンレス鋼フォーラム(ISSF)のピーターカウマンス氏によれば、08年の世界ステンレス鋼生産(粗鋼ベース)は、前年比6.8%減の約25.9百万トンで、09年も合せて3年連続の減産基調を予想する。なお、08年の中国のステンレス鋼生産は、世界の27%を占めたが、3.6%減の6.9百万トンと報告された。加えて、世界のステンレス鋼需要に関しては、同氏は09年が9.5%減、10年は3%増と予想する」と報道していました。
鉄鋼製品業界の電炉製鋼板に関し、東京製鐵の社長、西本利一氏は鉄鋼新聞2010年7月8日付で「米国では電炉製ホットコイルが一定の社会的認知を得ている。そこが日本と随分違う。・・・東京製鐵としては、今2010年期は、鋼板比率60%に引き上げていきたい。目指すのは技術向上による汎用品のコストダウンなどで、当社はボリュームが大きい需要を追いかける必要がある。当社のホットは国内シェア5%に満たず、田原と岡山をフル稼働しても月200千トン造ればまずは良いほうだ。薄板の中でトップクラスの品質が要求される自動車用高級鋼板を狙うのは、当社がやるべきことではない。当社のユーザーも、国内トップクラスの高級鋼を期待しているわけではなく、ボリュームゾーンでいかに安価にスクラップリサイクルできるかを期待している。当社も同じ考えだ。・・・・日本からのスクラップ輸出は昨年2009年で9.4百万トン、その上ビレットも輸出している。これは国内で使い道がなかったのと同じこと。条鋼だけでなくスクラップから再生できる製品群を増やしてスクラップを国内にとどめていくべきだ。・・・・」と述べておられました。
鉄鋼製品需要に及ぼす“日本企業海外生産シフトへの影響”について、日刊産業新聞2009年10月6日付は電機業界向け鋼材の事例を取り上げ「日本鉄鋼連盟がまとめた用途別受注統計によると、電機向け内需は1990年代半ばまで2.3-2.4百万トンだったが、アジア通貨危機のあった98年に2.0百万トンを割り込み、01年には1.8百万トンを下回る水準にまで落ち込んだ。02年からは国内景気の回復に伴い増加基調をたどっていたが、昨年9月のリーマンショックが環境を一変させた。09年3月決算で軒並み大幅赤字に陥った、家電メーカーは危機感を深め、消費地であるBRICsなど成長市場でのシェア拡大、為替リスク低減のため現地生産シフトへとかじを切り始めた。関係筋によると、薄型テレビなど、“海外シフトが最も進んでいるソニー”の鋼材消費は国内5%に対し、海外95%になっている。・・・エコポイント精度の政府支援策をテコに鉄鋼需要の回復分野の一つである家電業界だが、ここにきて海外生産シフト再燃する懸念が高まっている。家電最大手のパナソニックは、白物家電のうち約7割に相当する製品を草津で生産する体制に再編した。三国工場の食洗機、藤沢工場の自動販売機用コンプレッサーを草津に移管した。・・東芝は、家電機器事業で愛知工場での製造を終了する。中国現地法人と子会社の東芝ホームテクノに移管した。・・・新日本製鉄、など国内高炉メーカーは、電機向けの国内・輸出比率は、JFEスチールおおむね3対7と輸出比率が過半数を超えるが、輸出比率もう一段高まるとみている。 」と報道していました。
160[2009.6]で前述した素材産業の石油化学製品に関し、化学最大手の三菱化学の事業内容の入替が参考になります。背景には中東勢の勃興川上石油業界の統合があります。日経新聞2009年5月27日付は「三菱化学は、自動車部品や繊維原料として使うナイロン事業から撤退する方針を固めた。同社のナイロン樹脂の年産能力は30千トンで国内シェア約20%。カプロラクタムと呼ばれる原料の年産能力は60千トンで国内シェアが11%。三菱化学はABS樹脂、ポリエステル繊維原料の国内生産、塩化ビニール樹脂からの撤退を決めるなど、昨年末から事業の選択と集中を加速している。」と、5月30日付では「三菱化学は29日、オランダの化学大手DSMから自動車部品などに使うポリカーホネート樹脂販売事業買収すると発表した。事業交換の形でナイロン樹脂の販売事業はDSMに譲渡する。両事業の規模はそれぞれ120億円。相互に顧客を引き継ぎ、得意分野に経営資源を集中する。三菱化学はベルギーにあるDSMの工場にポリカー骨―との生産を委託。DSM三菱化学にナイロン樹脂の日本での生産を委託する。撤退するのは食品用フィルムや自動車部品、合成繊維などに幅広く使われるナイロン樹脂の原料と、家電などに使う汎用樹脂のポリスチレンの原料。両事業を合せた売上高は約610億円。記者会見した石塚博昭常務執行役員撤退する製品について“アジアへの輸出難しくなってきたため”と語った。一連の製品絞込みにより、石油化学コンビナートの化学製品の基礎原料となるエチレンの余剰感が強まるため、旭化成水島コンビナートで事業統合する方針を固めている。」と、さらに6月3日付では「三菱ケミカルホールディングスは2日、傘下の三菱化学旭化成水島コンビナートでエチレン事業を統合すると発表した。水島コンビナートでは来春に経営統合予定の新日鉱ホールディングス新日本石油がエチレンの原料となるナフサを旭化成三菱化学にそれぞれ供給。今後は化学メーカーだけでなく、石油精製会社も巻き込んだ再編が進むとみられ、三井化学も出光興産と千葉コンビナートの石油精製設備とエチレン設備2基を一体運営する検討を始める。」報道していました。日本では1983年に特定産業構造改善臨時措置法(産構法)が制定され、各社が一律に設備を縮小。日本のコンビナートが護送船団方式で秩序が維持されたのに対し、自由競争で設備集約や再編が進んだ欧米の化学メーカーは、競争力の低い企業撤退し、上位企業に集中。日本最大手の三菱ケミカルHDでさえ、世界の化学企業の売上高トップ10に入らない。国内各社合計のエチレン生産能力は焼く7.7百万トン。中東やアジアでは1.0百万トン暮らすのプラントが乱立。全国に15ヶ所あるエチレン設備がこぞって生き残れる余地は少ない。」と報道していました。